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詢子「夢の中で何かあったような」

魔法少女まどか☆マギカ

1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 09:33:50.11 ID:fVlzemOt0
まどマギSS
詢子さん視点、しんみり系、オリジナルちょっと、戦闘なし、「…」が多い。
初SSなのでマナー違反等あればその度指摘して下さい。
書きためてるので修正は難しいかも知れないけどお話はちゃんと締めます。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1359765207


2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 10:42:56.33 ID:fVlzemOt0
あ立ってた。これから書き込みます。

外は何もかも洗い流すような土砂降り。私はどこかで女の子と言い争っている。
私はその子をよく知っているはずだけど誰だか全く思い出せない。

「わたしが良い子に育ったって言ってくれたよね。今でもそう思ってくれる?わたしを信じてくれる?」

しっかりと私を見つめて力強く問いかける(あぁこの目が信じられない訳がない)

「……絶対に下手打ったりしねぇな?」(違う!こんなこと言いたいんじゃない。)

小さかった顔が頷く。

「誰かの嘘に踊らされたりしてねぇな?」

「うん」

まだ頼りない顔が力強く頷く。(こないだまでランドセル背負ってたんだろ。なにそんな顔してるんだよ。)

手が勝手に肩を押してしまう。(違うだろ。それは絶対にやばい。何してんだ私は)

「ありがとう。ママ」

押された体を立て直して、たよりなくも力強い顔で私に笑いかける。

(馬鹿。そんな顔するんじゃねぇ。もっと情けない顔しろ。本当は力ずくで止めたいんだ。)

私に笑いかけたその顔が振り返って階段を下りていく。

(行くんじゃない!)本当に言いたい言葉がどうしても出て来ない。

目ぇ伏せんな私。信じて送り出すんだろ。最後まで見守ってやらないでどうする。

無理に視線を上げた時、後ろ姿はもう見えなくなっていた……

3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 10:46:03.05 ID:fVlzemOt0
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

……前もこんな感じで目が覚めたな。

……寝てる時はこんなにはっきり覚えてんのに何で起きたら覚えてないのかねぇ。

……休みだし。もっぺん寝なおすかな。

隙間から差し込む太陽に背を向け布団を被り直す。

4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 10:48:26.24 ID:fVlzemOt0
「    」

「なんだぁ!!」

誰かが私を何かを言ったような気がして、飛び起きて辺りを見回すが誰もいない。

……何で飛び起きてるんだ私。確か夢を見てたはずなんだけど何も思い出せない。

「また忘れてんじゃないか。何なんだ最近」

何か寝なおす気分がぶっ飛んでしまった。ちくしょう!!

枕に八つ当たりしてベッドから体をおこす。なんか最近寝覚めが悪いよなぁ。

5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 10:51:07.65 ID:fVlzemOt0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

いつもの河川敷。空は青から赤に染まりはじめ川面と土手も赤く色付きはじめている。

知久「気分転換出来た?」

詢子「えっ!」

知久「何かさ。最近考え事してる時が多いみたいだから。会社でトラブルでもあったの?」

詢子「ありがと。ん~っ仕事の方は順調なんだけど、最近目覚めが良すぎるって言うか」

知久「最近、朝早いよね。タツヤがママより早く起こしてって拗ねてたよ」

詢子「あの子楽しそうに人の上で飛び跳ねてたからなぁ」

6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 10:53:25.38 ID:fVlzemOt0
知久「けど確かにちょっと考え込むことが多い気はするよ。何かあったの」

詢子「なんて言うのかな。寝覚めが良すぎるというか、夢が気になるっていうか」

知久「夢?どんな?」

詢子「いや全然覚えてないんだけど、それが気になって二度寝出来ないの」

知久「別に起きられるんだったらそれで起きれば良いんじゃないかな」

詢子「え~っ、朝惰眠を貪って、それを人に起こしてもらうって最っ高に幸せじゃない」

知久「はいはい。二度寝出来たらタツヤに起こしに行って貰うよ」

詢子「よぉし!頑張ってもっぺん寝るぞぉ。夢のことなんて気にしてても仕方ないしなぁ」

他愛のない会話が心に残った何かを溶かしていく。…でも何だろう。何かがひっかかってしかたがない。

…鬱病とかじゃないだろうな。帰ったら調べてみるかな。

7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 10:55:26.41 ID:fVlzemOt0
知久「あ、またお絵かきになってるみたいだね」

さっきまでバッタを相手に追いかけっこをしていたタツヤが歩道の隅でうずくまっていた。

詢子「あはは。また『まどか』だろうね」

知久「だろうね。でもどこで覚えたんだろうね」

あの子が物心つくころからの『お友達』なのだけど一体どこで覚えたんだろう。

私も懐かしく思うことがあるからどこかで見たんだろうけど、他に『まどか』を知っている人は見たことがない。

そういえば何かひっかかってるのって、夢だけじゃなくてこれもだったなぁ。

夢のこともこんな風にいつの間にか忘れてしまうものなのかも知れない。あんまり気にしてもしかたがないのかな。

8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 10:57:10.69 ID:fVlzemOt0
知久「あれ。タツヤもすみにおけないなぁ」

詢子「なになに?」

前を見るとタツヤが中学生位の女の子に話しかけられているみたいだ。

詢子「おお~っやるなタツヤ。かわいい子じゃない。その子だったらいつ家ん連れて来てもいいぞ」

タツヤは自分の絵を女の子に自慢してるみたいだ。よし自慢出来るものを前面に出すのは悪くないぞ。

自分でも親バカが過ぎると思うがこんなのは楽しんだ者の勝ちだ。あ、笑いかけられてる。よし頑張れ!

あ、こら。積極的なのは良いけれど地面さわった手で髪の毛触るのはやめとけ。私だってそんなの嫌だよ。

10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 11:00:34.50 ID:fVlzemOt0
知久「こら!ダメじゃないかタツヤ!女の子の髪を引っ張るのはだぁめ」

間一髪セーフかな。女の子の髪にさわろうとしたタツヤが抱きかかえられる。

タツヤ「まろか♪まろか♪まろかぁ♪まろか♪まろか♪まろかぁ♪」

絵を誉めてもらったのか、タツヤは妙に機嫌が良い。

詢子「すみません、大丈夫でしたか?」

女の子「いえ、こちらこそお邪魔してしまって」

立ち上がった女の子が優しい顔でタツヤに話しかける。

女の子「『まどか』だね」

タツヤ「はいぃ」

タツヤが大まじめにうなずく。

あれ?この子まどかを知ってる?

詢子「ねぇあなた『まどか』って知ってるの?」

気がつくと私はその女の子に声を掛けていた。

11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 11:03:39.02 ID:fVlzemOt0
地平線に呑み込まれていく夕日が河川敷を真っ赤に染め上げる。河原からは父親に遊んで貰うタツヤの声。

なんだろう女の子と並んでタツヤ達を見下ろすことが何だかすごく懐かしく感じられる。

詢子「まぁ、その。あの子が一人遊びするときの見えないお友達ってやつ?子供の頃にはよくあることなんだけどねぇ」

女の子「ええ、私にも覚えがあります」

詢子「まどかってさ、貴方も知ってるの?アニメか何かのキャラクター?」

女の子「さぁ、どうだったか。聞き覚えがあるような、ないような」

詢子「そっかぁ。私もどっかでタツヤと一緒に見たのかなぁ」

詢子「たまにね。すっごく懐かしい響きだなって思うことがあるんだよね。まどか……」

女の子「そうですか」

知らないのかぁ。ひょっとしたらって思ったんだけどな。

12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 11:07:14.18 ID:fVlzemOt0
ふと視線を移すと女の子は河原で遊ぶタツヤ達を眺めていた。私は夕日に照らされた女の子につい見とれてしまう。

幼さを残した整った顔立ち。流れるような長い黒髪。絵に描いた様ってこんなことを言うんだろう。

でもその中で一番私の目を引いたのは、女の子には少し幼い雰囲気の赤いリボンだった。

詢子「お。そのリボンすっごく可愛いね!あたしの好みにど直球だわ。ちょっとびっくりしたくらい!」

女の子「差し上げましょうか?」

詢子「あはははは!!こんなおばさんには似合わないって!」

詢子「まぁ、娘とかいたら着けさせたかもしれないねぇ」

女の子が笑みを浮かべ河原で遊ぶタツヤ達に目を向ける。

娘か。もし結婚してすぐに子供が生まれていたらこれくらいの年齢になるはずだ。いたら楽しかっただろうなぁ。

13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 11:09:38.44 ID:fVlzemOt0
詢子「ねぇ。呼び止めた上ずうずうしいんだけど、ちょっとお願いしても良いかな」

結ばれたリボンをゆっくりと解き、宵闇を束ねたような黒髪を梳らせ髪を結い上げる。

しゅっ、きゅっ。黒髪を再びリボンで束ねる。

詢子「よし出来た。勝手に髪型変えちゃってごめんね」

リボンで2つに束ねられた髪が、目の前の女の子に少し幼い雰囲気を纏わせる。

詢子「はい」

女の子は差し出したコンパクトを覗くと、少し驚いた様な顔とそしてはにかんだような笑顔を浮かべる。

詢子「私の好みど直球のリボンだったし、話してたら我慢出来なくなっちゃってね。娘がいたらこういうのやってみたかったんだ」

だからといって初対面の女の子にお願いするのは自分でもどうかと思う。

でもリボンの話をして「もし娘がいたら」なんて考えていたらどうにも止まらなくなっていた。

でもやっぱりこういうのっていいよなぁ。娘か。欲しかったなぁ。

14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 11:11:36.28 ID:fVlzemOt0
詢子「わがままに付き合わせてごめんね。じゃあ元に戻すよ」

女の子「いえ。このままで良いです」

女の子はにっこり笑って少し首を横に振ると嬉しそうに話し出した。

女の子「このリボン、友達のだったんです」

詢子「友達?」

女の子「はい。事情があって会えなくなっちゃったんですけど、その子から貰ったものなんです」

女の子「このリボンの結び方、その子がしてたのと同じなんですよ」

女の子「最近寂しくて、ついここに来たりしてたんですけど、あの子もこうして貰ってたんだなって思うとちょっと嬉しくなって」

女の子「だから今日はこのまま帰ります。ありがとうございました」

15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 11:13:03.90 ID:fVlzemOt0
女の子が頭を下げ橋の方へ歩き出そうときびすを返す。そして振り向いたリボンと2つに束ねられた髪が夕日に染まる。

詢子「!!」

確かに好みのリボンだった。娘がいたらしてみたかった髪型だった。

でも何でこんなに懐かしく感じるんだろう。何でこんなに寂しく感じるんだろう。

気がつくとつい女の子の手を掴んで引き止めていた。

詢子「あっ、ご、ごめん。……あははははっ!!」

詢子「タ、タツヤさ、あなたのこと気にいったみたいなんだ。また見かけたら声かけてやってね。あははははっ!!」

う~何だろう。手が勝手に引き止めてしまった。これじゃ変なおばさんじゃないか。

16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 11:14:38.89 ID:fVlzemOt0
女の子「タツヤ君すごくかわいいですよね。私ここをよく通るんです。また見かけたら私にも声をかけて下さい」

女の子がにっこりと微笑む。つられて私もつい微笑んでしまう。

いい娘だなぁ。少しパニックを起こしていた気持ちが落ち着いていく。

詢子「私は詢子。鹿目詢子。よろしくね」

女の子「暁美ほむらです。見滝原中学に通ってます…詢子さんじゃあまた」

にっこりと微笑んでお互いに会釈をする。

そしてその女の子「ほむらちゃん」は、また振り返り橋の方へと歩いていった。

かわいくていい娘だったなぁ。あれ?そういや見滝原って和子の学校じゃなかったかな?

17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 11:17:08.62 ID:fVlzemOt0
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

何もかもを押し流す様な土砂降りの雨。私は体育館の中で女の子と話している。

「わたしが良い子に育ったって言ってくれたよね。今でもそう思ってくれる?わたしを信じてくれる?」

……何で思い出せなかったんだろう。

「絶対に下手打ったりしねぇな?」

……そうあの台風の日。……ここは避難先の体育館だ。

「誰かの嘘に踊らされたりしてねぇな?」

「うん」

「ありがとう。ママ」

私に笑いかけたその顔が振り返る。

そうこのリボンこの髪型。私が選んだリボン。そう私が結んだこともある。そうこの子は「まどか」「鹿目まどか」だ。

「おい。まどか!ちょっと待て!!」

階段を下りようとした手をもう一度掴んで引き止める。でも掴もうとしたその手は形を失い私の手をすり抜ける。

18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 11:20:36.29 ID:fVlzemOt0
まどかがそして体育館が淡く霞んで行く。

……そう……まどかだ。……なんで…忘れて……たんだろう。

…でも。なんで…私はまどかの事をほとんど思い出せない…違う…なんで…私は「まどか」を知っているんだ。

カーテンの隙間から朝日がこぼれている。普通なら気持ちの良い休日の朝だ。

夢の中身は完全に覚えている。私に娘なんかいない。でも私は夢の中であった「まどか」を知っている。覚えている。

あの子は…私の娘だ。

それならタツヤがまどかを知っていたのも、私がそれを懐かしく思ったのも何となく納得は行く。

でも私には娘はいない。なんだこれは?ただの夢なのにそれが奇妙な現実味を帯びながら大きなものにと変わっていく。

詢子「まどか。鹿目まどか」

呼びかけたのか自分に言い聞かせたのか口から零れた名前が私の胸を締め付けていた。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 11:23:22.80 ID:fVlzemOt0
詢子「……ねぇ。『まどか』のことなんだけど」

知久「どうしたの?」

詢子「こないだ夢の話してたでしょ。あれ多分『まどか』の夢なんだ」

知久「タツヤの書いてる?」

詢子「そうなんだけどそうじゃないって言うか」

全部話したいけどうまく話せない。私は今あの夢を本当にあった事だと知っている。

でもそれが本当はなかったこともよくわかっている。

自分の中でもそんな矛盾しているものをどう話していいのか全然考えがまとまらない。

詢子「ねぇ。『まどか』って言ってなんか思い出す事ある?」

知久「思い出す事?」

20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 11:26:04.49 ID:fVlzemOt0
詢子「あ~なんかね。私やっぱりどっかで『まどか』を見たんだと思うんだ」

詢子「でここんとこ、それが夢に出て来て気になってしかたないの」

詢子「私が今『まどか』って言われて思い出すのが『リボン』と『台風』と『体育館』なんだよね」

知久「『リボン』はタツヤの絵だよね。台風と体育館?避難訓練かな?」

詢子「もし何処かで家族で見たならみんなで思い出すものないかなって」

知久「う~ん」

詢子「なんかすごく気になるんだ。…何か思い出さないかな?」

知久「そういえば。僕はココアかな」

詢子「ココア?あの飲み物?」

21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 11:27:43.51 ID:fVlzemOt0
知久「うん。この間買い物に行った時、タツヤが『まろか、まろか』って言ってココアをねだってね」

知久「けど買ったは良いんだけど飲んでくれないんだ」

詢子「そうなの」

知久「うん。入れてあげても『まろか、まろか』って口もつけないんだ」

知久「なんかタツヤの中ではココアはまどかのものになってるのかな」

知久「まぁ、もったいないからけっきょく僕が飲んでるんだけどね」

詢子「あれ。あなたもあんまり甘いもの好きじゃなかったと思うんだけど」

知久「まぁね。だから夜起こされて寝付けない時に少し飲むくらいなんだけどね」

詢子「あれ?タツヤそんなに夜泣きとかしてたっけ」

知久「あははっ。まぁタツヤとは限らないかもね」

詢子「うん?」

何かをはぐらかされたような気もするけどまぁ気にしなくても良いのかな。

22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 11:29:15.06 ID:fVlzemOt0
けど、まどかとココアねぇ。正直私には何にも心当たりがない。

知久「あぁそういえばさ。昨日の女の子。帰る時髪の毛ふたつにしてたよね」

知久「タツヤがそれを見て『まろか』って呼んでたけど。あの子の名前『まどか』なの?」

あの夕焼けの河原であった女の子「ほむらちゃん」あの子の話していた言葉が心に浮かぶ。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「『まどか』だね」

「差し上げましょうか?」

「このリボン、友達のだったんです」

「このリボンの結び方、その子がしてたのと同じなんですよ」

「あの子もこうして貰ってたんだなって思うとちょっと嬉しくなって」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 11:40:13.54 ID:fVlzemOt0
タツヤの書いた『まどか』……あのリボン……私の好みだからって……同じ髪型……

それが一番自然な……いや全然繋がってない。これじゃこじつけもいいところだ。

でもそうであって欲しい。そうだと思うとそれ以外に考えられなくなってしまう。

知久「あれ?何か心当たりあったの?」

詢子「…うん。やっぱりわかんない。もっかいあの子見かけたら聞いてみようかなぁ」

自分でもそれが本当はなかったことだと知っているあり得ない話。

24: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 11:41:26.90 ID:fVlzemOt0
なかったことなんだから誰に聞いてもそれを知っているはずはない。でももしそのなかったことを知っている人がいるとしたら。

あの子はまどかの友達で、まどかのことを覚えている。

思い込みでつくりあげたあり得ない話。絶対に正しいはずがない答え。

でもそれが正しいと思わなければ。このまま何もしなければ「まどか」はそのままなかったことになってしまう。

今の私にはまどかのことをなかったこと、単なる夢の話として忘れることは出来そうにない。

だったら私はありえない話を信じて出来ることをしてみるしかないじゃないだろうか。

25: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 11:43:41.03 ID:fVlzemOt0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

いつもの河原は、昼から曇りだした空のせいでいつもより早く夜を迎えようとしている。

あの子を待ち始めてもうどれくらいたったのだろう。浮かんでは消える不安の数々。待ち始めてから何回帰ろうかと思ったか。

詢子「あ~くそっ!!」

何度目になるのか、いらだちを口からはき出す。自分に自信がないだけに不安が全くなくならない。

詢子「!」

川下からこちらに歩いてくるリボンの女の子が目に入る。

というかこれだけ遠目で暗いのにリボンが目につくって、やっぱり私ちょっときてるのかも知れない。

27: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 11:47:55.50 ID:fVlzemOt0
詢子「こんにちわ。ほむらちゃん」

ほむら「こんにちわ。詢子さん」

聞きたいこと知りたいことはいろいろと頭の中を渦巻いていた。でも顔を合わせると本当に聞きたいことがひとつ零れてきた。

詢子「今日は聞きたいことがあって来たんだ」

軽く深呼吸をして気持ちを落ち着ける。

詢子「あなた『まどか』の友達…だよね?」

ほむらちゃんの身体がかすかに震える。そして少しの沈黙のあと、

ほむら「はい」

もしそうなら必ずそう答えてくれると信じていた答えが返ってくる。

詢子「『鹿目まどか』…だね」

ほむら「はい」

28: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 11:49:57.07 ID:fVlzemOt0
詢子「そっか。やっぱりそうなんだ。あははっ」

あの子が本当にいて、それを憶えている友達がいる。あの子はただの夢じゃないそれだけで満足している自分がいた。

ほむら「何も…聞かれないんですか」

詢子「あぁっ、ごめん。話しかけてなんだけど何か根拠があった訳じゃないんだ」

詢子「昨日会ってからさ、なんだかまどかが私の娘で、あなたがまどかの友達だって思っちゃってね」

詢子「こんな思い込みで話しかけるのは非常識だってわかってたけど、どうしても聞きたかったんだ」

詢子「ごめんね。こんな事で話しかけちゃって」

まどかが本当にいたことが分かって嬉しかったのか照れ隠しなのかつい早口でまくし立てる。

ほむら「…はい」

ほむらちゃんはどう反応して良いのか図りかねてるようだった。

29: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 11:51:25.84 ID:fVlzemOt0
詢子「あ、そうだ忘れてた。えっとまどかの友達なんだよね。あの子と仲良くしてくれてありがとうね」

私の娘の友達だからとつい御礼の言葉が口に出てしまう。

ほむらちゃんは少しあっけにとられた顔をしたあと、少し微笑…いや笑ったのかな。

詢子「あれ?なんか変なこと言った」

ほむら「すみません。いきなりお礼を言われるって思ってなかったので」

ほむら「別に変じゃないんですけど、何かタイミングがずれてて。ちょっとまどかみたいだなって」

ほむら「やっぱりまどかのお母さんなんだって思ったらつい。すみませんでした」

私はまどかのことをほとんど憶えていない。でも私とあの子に共通点があると言われるのはちょっと嬉しい。そして少し寂しい。

30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 11:52:45.56 ID:fVlzemOt0
詢子「ねぇ。ちょっと付き合って貰って良いかな」

ほむら「はい」

土手の中腹に腰をかけて話し出す。西の空はまだ少し赤みを残していた。

詢子「ここのところ何回も見てる夢なんだけどね」

詢子「すごい台風かなんかで体育館に避難してるのかな。そこで私が女の子叱りつけてるの」

詢子「台風の中、友達を助けに行くっていうから素人がそんな危ないことするんじゃないってね」

詢子「でもその子がすごく真剣な目で『私でなきゃだめなの。私のこと信じてくれる』って言うんだよ」

詢子「それ見てたらね……止めなくちゃいけないのに私が背中押しちゃうんだ」

詢子「んでさ、後押ししたくせにそれを見届けることも出来ずそれっきりあえなくなっちゃうの」

ほむらちゃんは寂しげな目をして私の話をただ静かに聞いていた。

31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 11:54:22.85 ID:fVlzemOt0
詢子「そして起きたら思い出すことも出来ない。ただそれだけの夢だったんだ。」

詢子「でも昨日あなたにあった後、その女の子が『まどか』だって気付いちゃってね」

詢子「でも私にそんな娘はいない。単なる夢の話、なかったはずのお話のはずなんだ」

詢子「でもやっぱりそれが夢なんかじゃないって思いが消えなくてね。それで非常識なのはわかってるんだけど声かけさせて貰ったんだ」

ほむら「あの時…そんな事があったんですね」

ほむら「私は直接その話を知りません…でもまどかが言ってるその友達は私です」

詢子「そのリボンは」

ほむら「はい。まどかに貰ったリボンです。そのお話の後まどかから貰ったんです」

ほむら「このリボンは詢子さんが選んでくれたって聞いています」

32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 11:57:56.31 ID:fVlzemOt0
詢子「…何があったのか、今何がどうなってるのか…話して欲しいんだ」

詢子「私さ、まどか自分の娘だって自覚もあるし、あのやり取りが本当にあったって事も信じてるんだ」

詢子「でもそれだけなんだ。本当に娘だっていうなら忘れるはずなんてないのにね」

詢子「だからさ、聞いて納得出来るのかわからないけど「まどか」のこと教えて欲しいんだ」

あの子を思いだしてから感じていた寂しさが堰を切った様に零れてくる。

詢子「娘を危ないところに行かせて忘れて今さら母親面なんて虫が良いかも知れないけどあの子は私をママって呼んでたんだ」

詢子「私は母親なんだ。あいつが危ないの分かってて止めなかったんだ。何があったのか知らないままなんて絶対ダメなんだ」

詢子「だからお願い。あの子ことを話して」

33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 11:59:33.98 ID:fVlzemOt0
ほむら「…お話は出来ます。でもそれを信じて貰えるかはわかりません」

詢子「現実離れした話なのはなんとなくわかるよ。それでも聞かせて欲しいんだ」

ほむら「…」

ほむら「奇跡や魔法を信じて…」

突然途切れた言葉に視線を移すとほむらちゃんがうつむいて何かを考え込みだす。

詢子「どうかしたの?」

ほむら「それが叶うこともお約束出来ません。そしてそれが叶っても良いことだけが起こるとも言えません」

詢子「ごめん?ちょっと話が見えないんだけど」

ほむら「詢子さん。まどかに会いたいですか」

詢子「っ!!会える…の?」

34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:00:54.23 ID:fVlzemOt0
ほむら「いえ。約束出来る訳じゃありません。でも試したいことがあるんです」

ほむら「ただのおまじないなんですけど、奇跡を起こせるかも知れません」

詢子「奇跡?」

ほむら「はい。ささやかな。でも本物の奇跡を」

そういった彼女の手にはいつの間にか弓の様なものが握られていた。

詢子「えっ何っ?」

彼女は左手で真っ直ぐ天をさすと、それをゆっくりと引き絞る。

ほむら「この力はあなたから引き継いだもの。だったら私にも出来るはず」

何もなかった所に藤色の淡い光が集まる。その光はゆらめく炎の様に見えた。

ほむら「お願い。届いて」

小さなつぶやきと共に藤色の光が雲にまっすぐ吸い込まれていく。

35: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:02:22.04 ID:fVlzemOt0
光を吸い込んだ雲は淡い藤色の光を帯び、そしてその光は淡くゆっくりと空一面に広がって行く。

そして気が付くと雲は淡い光と一緒に消えて空は満天の星空に変わっていた。

詢子「…これって」

ほむら「魔法です。私たちが触れた奇跡。魂を代償に一つの願いを叶える奇跡の一部です」

話しかける声に目を移せばさっきの弓はもうどこにもなかった。

ほむら「私はまどかが叶えた奇跡のおかげで今ここにいられるんです」

ほむら「けれどまどかはそれを叶える為にどこにもいられなくなってしまいました…みんなの思い出からも」

ほむらちゃんはゆっくりとリボンをほどいて、手のひらで束ねて行く。

36: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:05:29.68 ID:fVlzemOt0
ほむらちゃんが束ねたリボンを優しく撫でるとリボンが淡く優しい藤色の光を帯びていく。

ほむら「奇跡が本当に起こせるのか約束は出来せん。…それが起きることが詢子さんの救いになるのかも」

ほむら「でもこれが叶えばあの子は喜んでくれると思うんです。そして詢子さんが知りたいことも分かります」

ほむら「だから私の起こす奇跡を信じて委ねてもらえませんか」

奇跡や魔法。さっきまでなら絶対に信じなかったおとぎ話だ。でも目の前の女の子が今それを目の前で見せてくれた。

詢子「あなたはまどかの友達なんだよね」

ほむら「はい」

詢子「あなたはあなたの言う奇跡が叶ったらあの子が喜ぶと思ってるんだよね」

ほむら「はい」

37: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:07:45.14 ID:fVlzemOt0
詢子「わかった。それで十分だよ。リボンを預かって良いかな」

ほむら「…ありがとうございます」

差し出した私の右手にリボンを乗せるとほむらちゃんはその手とリボンを両手で包み込む。

私の右手を包むほむらちゃんの両手から暖かい光が漏れだしてくる。

ほむら「先輩の受け売りなんですけど、リボンには何かを繋ぎ止めるっていう意味があるそうです」

ほむら「このリボンは私にとってはまどかとの絆の形です。でもまどかにとっては家族との絆の形でもあるはずなんです」

ほむらちゃんは目を閉じて手に少し力を込める。両手から零れる光が強さを増した後、静かに消えていく。

ほむらちゃんが手を放した時、私の手の中には淡い光を帯びたリボンが残されていた。

ほむら「受け取って下さい」

そう告げられて、もう一度それを手にして、かつてそれを手にしていたことを実感として感じる。

38: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:12:03.88 ID:fVlzemOt0
詢子「えっ!?」

手のひらのリボンは包む光がゆっくりと消えると共にリボンもその姿を消して行く。

ほむら「大丈夫です。リボンはなくなった訳じゃありません。ちゃんと詢子さんの手の中にあります。」

右手に感じる温もりが、その言葉を私に納得させる。

ほむら「私はそのリボンが奇跡をくれたんだって信じています。だからきっと詢子さんにも奇跡を起こしてくれるはずです」

詢子「そう…だよね」

奇跡を信じきれない自分に言い聞かせる。

39: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:13:18.12 ID:fVlzemOt0
ほむら「質問をはぐらかす様なことになってしまってすみません。でもこのことは私なんかが話しちゃいけないと思うんです」

ほむらちゃんが悲しさと優しさが入り交じったような表情を浮かべる。

ほむら「私は毎日ここに来ています。何かあればまた声をかけて下さい」

ほむらちゃんは私に一礼すると川上に向かって歩き出す。

私は1人河川敷に取り残されて、温もりを帯びた右手を胸に抱き寄せる。

詢子「奇跡…か」

微かに光を帯びた星空の下、いつもの河原はいつもより優しい表情を見せていた。

40: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:14:17.29 ID:fVlzemOt0
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

詢子「ただいま」

知久「おかえり。雨、大丈夫だった?」

詢子「うん。ほとんど小雨だったし、帰りは晴れてたからね」

知久「へぇ。夕方から本格的に降るって言ってたのに。良かったね」

女の子が魔法で雨雲を晴らしたなんて言っても信じて貰えないだろうなぁ。

詢子「多分、しばらくは雨降らないんじゃないかな」

知久「ふぅん。今日は天気予報通り雨になると思ってたんだけどなぁ。明日も水やりしなきゃいけないかなぁ」

この人は本当にそういうのにマメだよなぁ。私だったらサボテンだって枯らす自信があるんだけどな。

41: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:15:48.28 ID:fVlzemOt0
詢子「あれこの臭いって」

知久「うん。今日はクリームシチューなんだ。作ってから気が付いたんだけど一昨日ビーフシチューだったよね。似たようなものが続いちゃってごめんね」

詢子「ふ~ん。作ってから気が付くとかめずらしいよね」

知久「ちょっと考え事してたらね。でも味の方は保証するから」

詢子「味のことは心配なんかしてないけどさ。…ねぇ」

知久「どうしたの?」

詢子「朝の続きになるんだけどさ。『まどか』のことで何か憶えてることない?」

知久「うん。僕もちょっと気になってね。今日はずっとそのことを考えてたんだ。」

朝のことを気にしてくれて、そのことを考えていてくれたことが思いのほか嬉しかった。

42: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:17:52.69 ID:fVlzemOt0
知久「でもやっぱりなんにも憶えはないんだ。何だかそれが大事なことだった様な気はするんだけどね」

知久「大事って思ってるのになんにも憶えてないのも変な話なんだけどね」

詢子「…そっか」

少しの期待が小さな落胆に変わる。「まどかは私たちの娘なんだよ」そんな言葉が喉元まで出そうになる。

でも、もしそのことを否定されたら?信じて貰えないことよりも、この人がまどかを知らないと口にすることが怖かった。

詢子「ねぇ」

言えない気持ちを飲み込んで、目の前の胸元に身体を預けて腰に軽く手を回す。

知久「どうかしたの?」

私の肩に優しく手が回される。

詢子「うん。おまじない…かな?」

今日あの子が言ってた言葉が自然に口に上る。

43: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:19:00.26 ID:fVlzemOt0
知久「おまじない?」

詢子「そ、おまじない」

預けていた身体を起こすと今度は腕を取って台所に向かう。

詢子「さぁっ!!。お腹減ったから早くクリームシチュー食べよ」

わけがわからないよと言うあきれ顔が私に引っ張られて付いてくる。

詢子「タツヤ待たせたな」

タツヤ「あいっ」

すでに自分の席に座っているタツヤの頭を右手でがしがしとなでてやる。

……とくん

突然目の前の色が消えてしまった様な感覚に襲われる。

44: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:20:15.27 ID:fVlzemOt0
ねぇここにはあの子が残してくれたリボンがあるんだよ。こんなに暖かいじゃない。

さっき抱きついたでしょ。頭を撫でたでしょ。なのに何で気がつかないかな?

「それが叶っても良いことだけが起こるとも言えません」

あの時、気に留めていなかった言葉が頭の中で再び繰り返される。

知久「大丈夫?体調悪いの?」

タツヤ「ママぁ」

ふいにかけられた声で我に返る。気がつけば2人が心配そうにのぞき込んでいる。

詢子「あ~~っと、ごめん。ちょっと本調子じゃないかも」

引きつった笑いで沈んだ空気をごまかそうとする。

知久「まどかのこと?」

45: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:22:01.68 ID:fVlzemOt0
おそらくは何気ない、私を心配しての一言だったのだろう。でも私はそれにまどかを責める響きを感じてしまう。

詢子「違う」

思っているよりは冷静に答えられたとは思う。それでも声に苛立ちの感情が零れる。

詢子「関係がない訳じゃないけど、まどかを悪い事みたいに言うのはやめて」

知久「悪く言ってる様に聞こえたのならごめん。でもね、そこまで悩んでるとやっぱり心配なんだ」

知久「だから今すぐでなくても良いから、何を悩んでるのか僕に話してよ。解決出来なくても一緒に悩むくらいは出来るんだからさ」

本当に聞きたい言葉ではなかった。でもあの子によく似た優しいそれが私の気持ちを解きほぐしていく。

46: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:22:49.88 ID:fVlzemOt0
ふうっ。ゆっくりと息を吸い込む。

詢子「うん。心配させてごめん。私ちょっと煮詰まってたかもしんないね」

詢子「けどちょっと話すには考えがまとまらないんだ。近々話せると思うからしばらくは1人で考えさせて」

知久「うん、わかった。その時はいつでも声かけてね」

タツヤ「たぁくんも」

詢子・知久「あはは」

意味がわかってないであろうタツヤの一言につい笑いがこぼれる。

47: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:24:05.67 ID:fVlzemOt0
今ここにあるこれは間違いなく幸せのはずだ。

でもまどかのことを知ってそれは大切なものが欠けた色あせたものだと感じる自分がいる。

私があの子を思い出さなければこんなことは感じなかったのだろう。

でもあの子を思い出すことなくここにある幸せだけを感じていることは、それで良かったのだろうか。

いや、それで良かったも何もそれが当たり前のはずだったんだ。でも私はあの子のことを思い出してしまった。

ひょっとするとあの子のことをこれ以上思い出したら今の幸せは形を変えてしまうのかも知れない。

でも、もうそれをなかったことには出来ないんだ。ごめん。目の前の二人に心の中でつぶやいた。

48: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:25:38.39 ID:fVlzemOt0
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

何もかもを流してしまいそうな土砂降り。私たちは見滝原の体育館に避難している。

あいつが最近思い詰めてたのは知っていた。いつか頼ってくれるだろうと待ち続けていた。

でも私はけっきょくあいつが抱え込んでいた何かに気付いてやることが出来ないまま送り出してしまった。

あの時あいつは何を悩んでいたんだ。何で私に何も話してくれなかったんだ。

そしてあいつはそんな悩みと一緒に自分自身までどこかに消えてしまった。

今、そのあいつが、あの時と同じようにたったひとりで嵐の中へ踏み出そうとしている。

なぁ私にはあんたに何にもしてやることは出来ないのかも知れない。でも悩みもあんた自身も何もかも忘れてしまうなんて嫌だよ。

何もしてやれなかったかも知れないけれど、今さらかも知れないけれどあんたのことで悩ませてくれよ。

49: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:26:57.51 ID:fVlzemOt0
詢子「まどか」

階段を下りようとしていた後ろ姿を抱きしめる。その背中は一瞬私の手の中に暖かさを残した後、この間のようにその形を崩していく。

またダメなのか。いや!右手にまだ暖かさが残っている。

右手からは、淡い藤色の光がこぼれ、そこの周りの光だけが消えずに残っている。

「リボンには何かを繋ぎ止めるっていう意味があるそうです」

あの子の声が頭の中で繰り返される。

詢子「まどかっ!」

私の叫びにあわせて右手の光が強さを増す。

詢子「もどってこい!何もかも自分ひとりで背負ってるんじゃねぇぞ」

50: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:27:43.64 ID:fVlzemOt0
詢子「出来が悪かったかも知れないけれど私はお前の母親なんだ!何にも出来ないかも知れないけれど何にも言わずに行くんじゃねぇよ」

詢子「あんたのことで一生後悔しても良い。でも何もかも忘れるなんて絶対に嫌だ!」

右手の光が一段と強くなる

詢子「…お願い…帰って来て。まどかっ」

右手から零れる藤色の光がひときわ強く輝いて辺りを包み込む。

眩しすぎて何も見えない。私はただ右手に残る温もりをつかみ続ける。

気が付くと光は何事もなかったかのように消えている。そして私の右手はまどかの右手をしっかりと握りしめている。

詢子「まどかっ!」

目の前のまどかを抱き寄せる。もう絶対に話さない。

51: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:28:33.85 ID:fVlzemOt0
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

52: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:29:25.05 ID:fVlzemOt0
その女の子は土手に腰掛けて物憂げに夕日を眺めていた。

あぁいたいた。あれからひと月近くが過ぎている。ちょっと待たせちゃったかな。

詢子「こんにちは。ほむらちゃん」

ほむら「こんにちは。詢子さん」

あの時と同じくほむらちゃんの左隣に腰を下ろす。そして何も話さずに2人で並んで夕日を眺める。

河川敷からは子供達の遊ぶ声が聞こえてくる。

詢子「あの子から全部聞いたよ。なんかすごく世話になったみたいだね。あいつからと私からもだけどありがとう」

ほむら「…いえ…まどか、詢子さんとあえて喜んでましたか」

詢子「うん。でも私の方が嬉しくてさ。けっこう浮かれちまったからひかれたかもなぁ」

53: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:31:11.06 ID:fVlzemOt0
ほむら「じゃあ大丈夫です。まどか人が喜んでたら自分も本気で喜んじゃったりしますから。詢子さんが喜んでたのなら絶対喜んでると思います」

詢子「あぁ、あるある。あいつ自分のことより、なんか他人のことで夢中になっちゃったりするからなぁ」

ほむら「はい。自分がたいへんな時でもすぐに他人のことを気にかけちゃうんですよね」

ほむら「私がまどかのことを心配していたら、気がつくとまどかが誰かのことを心配してたりするんです。」

ほむら「心配してたはずの私が心配されてたこともありますし…優しすぎるのも困っちゃいますよね」

ふう。ほむらちゃんは寂しそうにため息をつく。

詢子「あははは。…ありがとね」

ほむら「え?」

詢子「あ。ごめんごめん。愚痴かなって思ったらそんな顔であの子のこと話すもんだからさ」

ほむら「…私何か変な顔してましたか?」

54: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:32:18.79 ID:fVlzemOt0
詢子「なんかさ、恋する乙女の顔?って感じかな」

ほむら「じゅ!詢子さんっ!私そんなんじゃっ////」

詢子「う~ん。じゃあ『お嬢さんを僕に下さい』って言われたら安心して任せられる顔にしとこうかな」

ほむら「だ、だからそんなんじゃっ////」

詢子「あははは!ごめんごめん」

詢子「でもあいつのこともだけどさ、まどかに会わせてくれて本当にありがとう」

ほむらちゃんの表情がかすかに陰りを帯びる

ほむら「……」

詢子「私とあの子を会わせたこと。まだ良かったかどうか悩んでるの?」

55: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:33:35.21 ID:fVlzemOt0
ほむら「…大切な人がいない世界でその人のことを思いだして貰うことは良いことなのかって考えてしまうとどうしても」

詢子「あぁそれはわかるな。私もあの子のこと話したいんだけどまだ誰にも話せてないんだ」

詢子「思い出したらあの人は絶対に受け止めてくれるっては信じてるんだけどね」

詢子「…まぁ難しい話だよね。そういうの誰にとっても正しい答えなんてないもんね」

詢子「でも私の答えもあなたと同じだよ。ありがとう。まどかと会わせてくれて」

ほむら「…」

詢子「そんな顔しなくて良いよ。確かにさ辛くないって言ったら嘘になっちゃうと思うんだけどね」

詢子「そういうの引っくるめて、やっぱりあいつのことを思い出せて良かったって思うんだ」

詢子「だからさ。ありがとう」

ほむらちゃんの顔に寂しげな笑顔が浮かぶ。やっぱりそんな急には割り切れないか。

56: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:34:57.84 ID:fVlzemOt0
詢子「ま、良いよ。自分のしたことを悩むのも大事なことなんだから」

詢子「でも私の返事はありがとうだよ。これからもずっとね。その事はちゃんと憶えててね」

だからそんな顔しないで笑いなよ。そんな顔してたらあいつも心配しちゃうよ。

そんな気持ちを載せてほむらちゃんに微笑みかける。

ほむら「…ありがとうございます」

さっきより力強い笑顔が返ってくる。

詢子「うん」

二人で微笑みあった後、もう一度二人で夕暮れに目を向ける。

57: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:36:31.59 ID:fVlzemOt0
詢子「そういやリボン預かったままだよね」

バッグからリボンを取り出してほむらちゃんに差し出す。

詢子「はい。ありがとう」

ほむらちゃんがほんの少しの間差し出されたリボンを見つめる。

ほむら「詢子さん。このリボン貰ってくれませんか」

詢子「どうして?」

ほむら「…私、あの子が喜んでくれること何も出来なかったんです」

ほむら「どっちかと言うと悲しませてばっかりだったから、何か喜んでくれることをしてみたいんです」

ほむら「大好きな家族のところにもどれたらまどかは絶対に喜んぶと思うんです」

ほむら「だから詢子さん。このリボンを持っていて下さい」

詢子「ありがと。でもそれは『それには及ばない』ってやつだよ」

58: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:38:09.48 ID:fVlzemOt0
ほむら「?」

詢子「私も似た様なこと考えてたんだ。はい、これ」

バッグの中からこのひと月の努力の結晶を取り出す。ほんとは三日くらいでなんとかなると思ってたんだけどなぁ。

詢子「なんか細かいことはうちの旦那にお願いしたんだけど縫ったのは私なんだよ」

それは手のひらサイズより少し大きな、

ほむら「まどか」

詢子「うん。かわいいでしょ」

髪の毛を二つにまとめた女の子のぬいぐるみ。

59: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:39:12.16 ID:fVlzemOt0
詢子「ほむらちゃん。ちょっと仕上げ手伝ってくれないかな」

ほむら「仕上げ?」

詢子「うん。これお願い」

ほむらちゃんにぬいぐるみの女の子には少し大きいかも知れないリボンを手渡す。

詢子「やっぱりあの子にはこれがないとね。でさ結んでやってくれない」

ほむら「私で…良いんでしょうか?」

詢子「うん。ほむらちゃんにお願いしたいんだ。というかあなたじゃないとダメな気がするんだ」

詢子「あの子をずっと憶えててくれた、あの子の友達のほむらちゃんでないとね」

ほむら「……ありがとうございます。ぜひ…お願いします」

詢子「うん。もちろん」

60: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:40:12.57 ID:fVlzemOt0
リボンと女の子のぬいぐるみを受け取るとほむらちゃんは優しい手つきでリボンを髪の付け根に結びつけていく。

詢子「うん。やっぱりまどかはこうでなきゃね」

ほむら「まどか…良かったね」

なんだろう。さっきまでただの女の子のぬいぐるみのはずだったんだけどな。

リボンを付けた時、私達二人は確かにそこにあの子を感じていたんだと思う。

詢子「ね、その子ちょっとお願い」

私は立ち上がってほむらちゃんの後ろに回り込む。

詢子「また髪さわらせてね」

あの時の様にほむらちゃんの髪を梳っていく。

詢子「このリボンはやっぱりあなたが持ってて欲しいんだ」

61: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:42:35.60 ID:fVlzemOt0
詢子「やっぱりこういうものは年頃の女の子が友達と遊んだり恋したり、そういう時間を飾って欲しいんだ」

ほむら「…」

詢子「もし良かったらあの子をそう言う時間に一緒に連れて行ってやってよ。あいつそういうの絶対喜ぶからさ」

ほむらちゃんは寂しげに顔を伏せている。

詢子「ねぇ。再来週の日曜日、家に遊びにおいでよ」

ほむら「えっ」

詢子「お昼ご飯作って待ってるから。あなたはなんでも良いから手作りのお菓子を手みやげに持って来るってことで」

ほむら「私そういうの作ったこと…」

詢子「大丈夫。1週間もあればひとつくらいなんとかなるから。確かよくお茶会とかしてる先輩がいるんだよね」

62: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:43:44.23 ID:fVlzemOt0
ほむら「それは…はい」

詢子「それじゃ決まり。もし何か都合が悪くなったら早めに連絡して。はいこれ連絡先」

ほむら「え、あ…あの」

詢子「期待してるからね、手作りのお菓子」

ほむら「ほんとに…私、その」

詢子「いっぺんやってみなよ」

ほむら「え?」

詢子「いきなり恋だのなんだのはハードル高いだろうけどさ。友達と一緒にお菓子を作るなんて良いんじゃないかな」

ほむら「…」

63: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:46:35.88 ID:fVlzemOt0
詢子「さっきあの子が喜ぶことがしたいって言ってたよね」

ほむら「はい」

詢子「私もおんなじ。それであいつが喜びそうなこといくつか考えたんだ」

詢子「ひとつはこの子。家でまどかって呼びかけてやったら喜ぶんじゃないかってね」

詢子「もうひとつはリボン。あの子を憶えているほむらちゃんとずっと一緒にいられたら嬉しいだろうなって」

詢子「あとはほむらちゃん」

ほむら「私…ですか?」

詢子「うん。あいつ夢の中であなたのことすごく気にしてたんだ。私のせいでいつも一人にしちゃったって」

64: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:47:57.87 ID:fVlzemOt0
詢子「だから友達とお菓子作りで交流を深めて、手作りのお菓子で友達の家族と交流を深めるなんてどうかなって」

詢子「まぁ、おばさんのお節介なんだけど、あいつの心配は少しくらい晴らしてやりたいしね」

詢子「あいつが喜ぶことしたいって言ってくれたけどさ、あなたがちゃんと笑っていられたらそれだけでも十分なんだよ。それは憶えててね」

ほむら「……まどか」

つぶやいたほむらちゃんの瞳から涙がぽろぽろとこぼれ落ちる。

ほむらちゃんの横に座って頭を優しく抱きしめる。ほむらちゃんは声もなくただ涙を流し続ける。

私は夕日が大きくなるのを見ながらただほむらちゃんの頭を抱きしめていた。

65: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:49:20.66 ID:fVlzemOt0

ほむら「すみませんでした」

詢子「良いよ。子供に頼られるってけっこう嬉しいもんだからね」

泣きやんだほむらちゃんが私に微笑みかける。

ほむら「手作りのお菓子でしたね」

詢子「うん。上手く出来そう?」

ほむら「わかりません。でも先輩にお願いしてみようと思います」

詢子「その先輩ってそう言うの得意なの?」

ほむら「どうでしょう?でもお願いしたら上手く行くまで手伝ってくれると思います」

ほむら「それに味見だったらいくらでも手伝ってくれる心当たりもありますから頑張ってみます」

詢子「そっか。じゃあ期待してるよ」

ほむら「はい」

66: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:51:05.37 ID:fVlzemOt0
詢子「じゃあ」

ほむら「はい」

そしてほむらちゃんは胸元のまどかの人形に話しかける。

ほむら「まどか、今度お菓子を持って遊びに行かせて貰うね」

ほむら「じゃあ、詢子さん」

詢子「あっ、ちょっと待って」

立ち去ろうとするほむらちゃんを呼び止める。

詢子「ごめん。ちょっと手出してくれる。あぁ、そうじゃなくて上向きで」

詢子「こうやってさ、あの子が出かける時に良くやってたんだ」

ぱん。手と手が響きあう。

詢子「それじゃあ、ほむらちゃん」

ほむら「はい、それじゃあ詢子さん」

そして私達は別々の方向に歩き出す。もう夕日は沈み夜の寂しさが街を覆い始めていた。

67: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:53:04.01 ID:fVlzemOt0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

そこは街一番になるだろう建築中の高層ビルの一角。少女はクレーンの端から街を見下ろしていた。

そこは少女が眼鏡をかけていた頃、友達と2人で忍び込んで語り明かした場所。

口裏を合わせてくれた先輩を招待してお茶会を開いた場所。

景色の美しさとそんなあたたかい思い出がその場所を少女のお気に入りにさせていた。

そして今では少女の提案で彼女たちの待ち合わせ場所として使われている。

少女はそこで一人考える。

手作りのお菓子のこと。それをどうやって切り出そうかと。

そしてその時自分が体験したことを全て話したとしたら信じてくれるだろうかと。

68: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:54:04.39 ID:fVlzemOt0
もうあの子はどこにもいない。でもあの子は最初からいなかった訳じゃない。

私達はあの子と辛くてもかけがえのない時間を過ごしてきた。

あの二人なら私が話せばならば思い出してくれるかもしれない。

いや言葉が伝わるなら奇跡は必ず起こせるはずだ。

よし。

「最初にここに来た誰かにあの子のことを話す。そうすればあの子達がまどかのことを思い出してくれる」

少女は自らの願望を口に出して願をかけてみる。

あの二人ならば絶対に信じてくれる。そして思い出してくれたなら

69: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:56:42.92 ID:fVlzemOt0
「やあ。なかなか見晴らしの良い場所だね」

少女の眉間に深いしわが刻まれる。

あぁそうだった。忘れていた。いや考えたくもなかった。

「どうしたんだい。なんだか元気がない様に見えるんだけど」

あなたがここに来たからよ。心の中でつぶやく。

さっきの願掛けは無効にしよう。こいつは人じゃないから別に良いわよね。

…でもこいつに信じさせることが出来たなら二人にも信じさせることが出来るんじゃないだろうか

普段なら思いもしない言葉が頭によぎる。

「ねぇあなたなんかに話したくないんだけどひとついいことを教えてあげるわ」

少女は寛容の限りを尽くして目の前の招かれざる客に告げてやる。

70: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 12:59:32.64 ID:fVlzemOt0
「いや、話したくないなら話さなくて良いよ。僕は君たちのサポートをするための存在だからね」

「ストレスになる様ならお互いのためにそんなことはするべきじゃないよ」

くっ!!

この世界の彼らは魔法少女と利害が一致しているため真摯にサポートをしている。

それでも以前の彼らを知る身としては彼らの言葉の端々に皮肉めいた何かを感じてしまう。

特に魔法少女を気遣う様な口調に対しては何かの含みを感じざるを得ない。

もういいこんな奴に何かを求めた私が馬鹿だった。

少女は彼に向けた目を再び眼下の街明かりに移す。

「ほむら。ひょっとして君は僕に何か聞いて欲しいのかい。それなら僕はいつでも話を聞くよ」

少女が気持ちを切り替えようとしたその時再び心を乱す一言がかけられる。

71: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 13:02:51.42 ID:fVlzemOt0
こいつ分かってやってるんじゃないんだろうか。やっぱりこいつらは大っ嫌いだと再認識する。

「あなたは私の話が聞きたいの」

苛立ちを込めて少女はつぶやく。

「僕にそんな感情がないことは君が一番知ってるんじゃないかな。けど君が話したいなら聞くのが僕の役割だからね」

気疲れした少女はため息をはき出し彼に尋ねる。

「私が話そうとしたことは、汚れをため込んだソウルジェムが何故消えてしまうのかについてよ」

「あなたに興味があるのなら話を続ける。興味がないのなら私も話したくないからもうやめるわ。どうする?」

彼はしばし考え込む。

72: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 13:04:31.29 ID:fVlzemOt0
「確かに僕らはその現象について仮説すら立てられていない。もし良かったら話してくれないかな」

「そういえば君が魔法少女になった経緯についてもよくわからないことが多いからね。確かにそれも含めて君の話は聞きたいと言って良いよね」

よしっ!聞きたいって言わせてやった。

不毛なやり取りの中少女はささやかな達成感を得て淡々と話し出す。

もう一度必ずあえる彼女の友達の話を。

……本人達の認識はともかく端から見ていると仲良く見えなくもない組み合わせだった。

73: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 13:05:32.06 ID:fVlzemOt0
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

「何にも話さなかった私を信じてくれてありがとう」

「下手打つなって言ってたのに信じてくれたのに帰って来れなくてごめんなさい」

「もう会えないって思ってた。だからすごく嬉しいんだ」

「私ね、ずっとママみたいな格好いい大人になりたかったんだ」

「わからない。けど多分もう会えないと思う」

「ひとつだけわがまま言って良いかな。玄関でみんなに行ってきますって言って行きたいの」

「タッくん後はよろしくね」

「うぇへへ、いいのパパもちょっと嬉しいでしょ」

「ママ。ごめんね迷惑かけちゃって。でもママと話せてほんとに嬉しかった」

「タッくん!パパ!ママ!…ありがとう。じゃあ、行ってきます!!」

そしてドアが閉ざされる。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

74: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 13:07:09.36 ID:fVlzemOt0
ばたん。

ドアの閉まる音で目を覚ます。

気がつけば右手がどこかに行ってしまう何かを掴もうと天井に向かって伸びていた。

あの時の夢か。もう一度見るってのもけっこう効くなぁ。

天井に伸ばしていた右手を目の上に降ろす。

あの時はもう一度あの子に別れを告げたことに耐えられなくてしばらく泣いてたっけな。

あの子を思いだしたことには全く後悔はない。

それでもあの子がいたと言う幸せを知ったことに応じた喪失感は決して拭えることはないだろう。

馬鹿野郎。夢の中だけってなんなんだよ。夢の中に来れるならちゃんと玄関から帰ってきやがれ。

溢れそうな涙を押しとどめようと心の中で悪態をつく。

75: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 13:08:33.69 ID:fVlzemOt0
詢子「…まどか」

悪態は一瞬だけ涙を押しとどめる。ちくしょう。また涙に押し流されそうになる。

しゃあっ!!ぽて。

カーテンの開く音が聞こえる。まどかっ!?

ベッドから飛び起きて音のした方向に向き直る。

寝室のカーテンが片方だけ開けられている。いつものあの子の起こし方だ。まどか!?

「…ううっ」

よく見るとカーテンの裾でタツヤが突っ伏している…たぶんカーテンを開ける時に転んだんだろうなぁ。

76: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 13:09:29.45 ID:fVlzemOt0
タツヤは涙を堪えて顔を上げると絞り出すように声を出す。

タツヤ「おきお~おっ…おうっ…うっ…うあ~っん!!」

けっきょく堪えきれずに大声で泣き出す。

詢子「…はぁ」

体に漂う脱力感にさっきまでの涙もどこかに消えてしまう。

詢子「お~いタツヤ大丈夫か」

転んだまま泣いているタツヤを抱きあげる。

タツヤ「うぇひゃひゃ。ママおきた~」

私が抱き上げた途端にタツヤが笑い出す。まったく子供ってのは現金なもんだ。

あとその変な笑い方はやめとけ。14年間は彼女が出来なくなるぞ。前例もあるんだ間違いない。

77: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 13:11:15.19 ID:fVlzemOt0
詢子「そういやあの子あんたに頼むとか言ってたよな」

タツヤ「はあぁい」

タツヤが大まじめな顔でうなずく。

まったく。うちの子はどっちも頑張ってくれてんじゃんか。

タツヤを抱いたまま片手で伸びをする。夢が終わったら目を覚ますしかないってことか。

詢子「お~っし!!おはよう!」

タツヤにそしておそらく私達を見ているであろうあの子に朝の挨拶をする。

「    」

いつもの夢の終わりに感じていた何かが訪れて消えていく。そうか、こっちは気がつかないのにちゃんと来てたんだ。

78: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 13:13:14.41 ID:fVlzemOt0
安心しろ。これから起こすのはタツヤに任せていいぞ。寂しいんだったらこっちから声かけてやるからさ。

だからお前は自分が思ったとおりやりたいことをやって来い。いつでも帰って来れる様に待ってるから。

「いってきます」って出てったんだから、ちゃんと「ただいま」って帰って来いよ。

いっしょに酒飲むのも帰って来なきゃ話にならないんだからな。

詢子「よしっ!起きるかタツヤ」

タツヤ「はあぁい」

詢子「そういや今日はほむらちゃんが来る日だったな」

タツヤ「ほむあ?」

詢子「まどかの友達だよ」

タツヤ「まろか♪まろかぁ♪」

詢子「お菓子作って持って来てくれるってさ」

タツヤ「おっかし~ぃ♪い~ぃ♪」

79: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 13:16:13.03 ID:fVlzemOt0
さぁ、ちょっとは準備を手伝わなきゃ。タツヤを抱いて夢の気配が残る寝床を後にする。

胸の中にはまだ少し寂しさが漂っている。でも大丈夫。

私には支えてくれる人がいる。同じ痛みに耐えている子も知っている。

そして私があいつがなりたいって言ってくれた格好いい大人でいられたらあいつは喜んでくれる。

だから私はちゃんと上を向いていられる。

「私はここで待ってるからな」

心の中であの子に告げる。そして私はあの子がいない日常を守りに行く。

あの子が帰った時、お互いに最高の笑顔でいられるように。

おわり

84: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 14:14:22.25 ID:219eWyQ/0

改変後のこういった話はいいね
85: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 14:38:03.20 ID:VmoljSGIO
おつ
いい話だった
89: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/02(土) 15:57:11.84 ID:lWtGJbjAO

こういうSSずっと読みたかった
叛逆でも鹿目家出て欲しい


元スレ
タイトル:詢子「夢の中で何かあったような」
URL:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1359765207/
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