卯月「『もしも渋谷凛が超クールなツンデレだったら?』」
凛ちゃんと初めて会った時、凛ちゃんは既にトップアイドルとして活躍していました。
そんな凛ちゃんとご一緒することができて、私は胸がいっぱいでした。
今でもはっきりと覚えています。
卯月「はい!」
私の返事にキツい視線が突き刺さります。
凛「やる気だけあっても無駄だから。才能ないなら早く消えて」
卯月「……え?」
凛「目障りだから。アイドルになりたい子はあんただけじゃないってこと」
あの日のレッスンはボロボロでした。
私、憧れのアイドルから嫌われてるんだって。
やっぱり泣いてしまいました。
下を向いて、私は子供のように泣いたのです。
それは私を嫌っていたはずの……凛ちゃんでした。
凛ちゃんは私の首にタオルを回し、「汗かいてる。喉は意外と冷えやすいから」と、スポーツドリンクを置いて去って行きました。
私は茫然と、凛ちゃんの置いたスポーツドリンクを見つめていました。
その横に何かあります。
お守りとチョコレートでした。
嫌な気持ちがスッと消えていきました。
現金ですよね、私。
凛ちゃんの厳しさ、凛ちゃんの優しさ。
その両方に触れ、私はもう一度立ち上がります。
会う度に舌打ちされ、罵倒され、私は凛ちゃんに認められたくて、凛ちゃんの隣に立つためだけに死に物狂いで頑張りました。
島村卯月、頑張ります!を合言葉に、私は何があっても折れることはありませんでした。
凛ちゃんは、私の弱点になりそうな部分を見抜いていました。
それは心です。
アイドルは決して楽な仕事ではありません。
ライバルだってたくさんいます。
ネットで悪口を言われることだって少なくありません。
たとえ理不尽な悪口であっても、私はきっと気にしてしまうでしょう。
凛ちゃんは、私がこの業界で生きていくために、私のメンタルを強くしてくれようとしていたのです。
凛ちゃんは照れ臭そうに、「そう」とだけ言葉をもらしたのです。
卯月「どうしてですか?どうして私なんかのために」
純粋な疑問と、もしもという願望。
凛ちゃんが私を認めてくれていたらという、小さな願い。
凛「私の背中を追いかけてきて」
凛「そうすればきっと……私を越える日が来るかも」
凛「なんて……今のは忘れて」
居心地が悪そうです。凛ちゃんも恥ずかしかったのでしょう。
卯月「忘れません。絶対に」
私は笑顔で応えました。
凛「ふふっ。生意気な後輩だね」
初めてです。
凛ちゃんが私に笑顔を向けたのは。
凛ちゃんは驚いた顔で私を見つめ、私の頭を一度だけ撫でて、ゆっくりと背を向けました。
振り返らず、手を軽く振って、私は凛ちゃんの背中を見つめていました。
これが私の憧れのアイドルだって。
私は嬉しくなって、久しぶりに友達と長電話をしました。
内容は取り留めも無い話題だったと思います。
その夜だけは、アイドルではない『島村卯月』という普通の女の子に戻っていました。
以前との違いといえば、もう凛ちゃんを怖がることがなくなったことでしょうか。
どんなに罵倒されても、睨まれても。
私は凛ちゃんが大好きでした。
それに、どんなに厳しく接しても、最後には必ずアドバイスがありました。
こんなにも私を思ってくれる他人は、友達にだっていないでしょう。
本気で夢に向かって努力している人がいたら、その人に必要なのは優しさではありません。
甘やかさないことの大切さを、私は凛ちゃんとの出会いで知りました。
では、私がシンデレラガールに選ばれた日を思い出してみましょう。
長い夢を見ていたような気持ち。
夢ならどうか覚めないで。
凛ちゃんはこの結果に対し、どう思っているのか気になりました。
『いい気にならないで』とか、『まだこれからが始まり』とか、きっとそんなことを言われるのだと思いました。
けれど私の予想は全て的外れ。
待っていたのは心からの祝福でした。
涙が止まりません。
私の笑顔も、涙で悲惨なことになっているはずです。
きっと、ずっとその言葉を私は望んでいたのでしょう。
凛ちゃんに認められたいという願いは、もう叶っていたのです。
卯月「ありがとう……ございます……凛ちゃん……」
私をゆっくりと抱き締め、私の涙を拭ってくれます。
凛「頑張ったね、卯月」
それが何よりのご褒美で。
卯月「はい!」
私は涙でぐちゃぐちゃになった笑顔で、そう返しました。
友達でも、親友でも、恋人でも、家族でも、夫婦でもない存在。
説明はできません。
そうですね。たとえるなら酸素……でしょうか。
酸素が無ければ私は生きられませんし、逆に酸素が濃すぎても、私は生きることができません。
近すぎず、遠すぎす。
そんな適度な距離を持った人なのです。
最後に語るのは私のその後。
私と凛ちゃんはユニットを組みました。
私にも後輩ができて、名前は本田未央ちゃん。
凛ちゃんの真似をして、キリッとした表情で未央ちゃんを説教してみましたが、私の顔を見た凛ちゃんと未央ちゃんが大爆笑。
どうやら私にクールキャラは向いてないみたいです。
未央「しまむーとしぶりんだ!」
あの凛ちゃんにあだ名をつけるくらいですからね。
私たちの関係は謎に満ちています。
仲良し?ライバル?
緊張を解すために、長々と考え事をしていたようです。
時々思い出しては私を笑顔にしてくれる……そんな大切な思い出を。
ステージの幕が上がり始めました。
魔法が解ける時間です。
私たち三人の、最後のステージ。
恐れていたいつか。
夢の終わりを始めるときがきたのです。
ニュージェネとして駆け抜けた数年間。
長いようで短い。
一瞬のような煌めきの毎日。
一つ一つの思い出が特別で。
それこそが私の宝物。
凛ちゃんに出会えて、未央ちゃんに出会って。
この三人だからたどり着けたのだと。
胸を張って叫びたいから!
凛ちゃんと目が合いました。
もう言葉はいりません。
行きましょう!凛ちゃん!未央ちゃん!
光の先へ。
三人の歌声。
夢のバトンを一人でも多くの人に届けたい!
私たちは今、生きています。
卯月「凛ちゃん。お誕生日、おめでとうございます」
未央「おめでとーしぶりん」
凛「ありがとう」
どんなに時が過ぎようとも、三人の絆は永遠です。
元スレ
タイトル:卯月「『もしも渋谷凛が超クールなツンデレだったら?』」
URL:http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1470786810/
掲載サイト:SS深夜VIPに投稿されたスレッドの紹介です
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