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あけましておめでとうございます。٩(๑´0`๑)۶

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もしライブ! ~もしもμ’sのみんながUTX学院生だったら~ 前編③

2018年6月30日ラブライブ!

前回のもしライブ!(声:東條希)デン 

初ライブ動画の再生数が伸び悩んでいることから、真姫ちゃんはライブの魅せ方を考えようと決意! 

だけど、アイドル応援部の限られた財力では思い通りにステージを作ることができず迷走。 

そこでうちが提案したのが…。 

希「取材やぁぁっ!!!」

一同「し、取材っ!?」

UTXの色々な部活動を取材して回ることでその部固有の魅せ方を取り入れようと奔走する4人。

でもそんな折、ついにC☆cuteの存在がUTX中に広まってしまう!

それは花陽ちゃんと因縁の深い彼女にも伝わってしまって…。

凛「久しぶり、…小泉さん」

凛ちゃんからの冷たい言葉と不甲斐ない自分に涙する花陽ちゃん。でもそこで挫けないのが今の花陽ちゃんだった!

A-RISEのみんなからの協力もあって、ついにライブの魅せ方が完成!これで万全を期してライブに挑める!

…けれど現実はそうもいかず、花陽ちゃんの親衛隊の一人に個人的な恨みでステージが破壊されてしまい…。

親衛隊A「許せなかった…!お前は私の気持ちを裏切ったんだっ!!だから私も踏みにじってやった!!」

親衛隊A「お前が私の前で踏みにじったアイドル専攻の権利みたいに、お前にアイドルをさせる権利を、私があぁっ!!」

絶望するみんなだったけど、パーツモデル部部長の登場がきっかけで今まで取材した部を頼ろうと提案する真姫ちゃん!

取材して得られたのが魅せ方だけでなくほんの少しの繋がりだったと気づくことができ、そして…。

花陽「…もしそうなら、それが」

花陽「私の、夢なんだよ」

今度こそ本気でアイドルを目指すと親衛隊の子に誓った花陽ちゃん。

花陽ちゃんの優しさに救われた彼女も、心を入れ替えて手伝ってくれるようになった!

もうどんな苦難が待っていても、アイドル応援部の4人なら乗り越えていけそうな予感がするね!

…あ、5人かな?うちを入れてっ♪
 


    

316: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 22:54:34.53 ID:OyyP/ZgXo
街道

レポーター「はーい!みなさーん、盛り上がってるかーい!!」

イエェェェェェェッ!!

レポーター「いい返事だー!ついにアキバハロウィンフェスタ最終日ー!んんー、楽しかったお祭りが終わっちゃうのは寂しいねー!」

レポーター「けど安心して!そんな寂しさを埋めるように、今日はスペシャルなゲストをお呼びしてるんだぁぁんっ!」

レポーター「みんなももう知ってるよねー?第一回ラブライブ優勝者、その名を全国に轟かせた、スクールアイドルの頂点!」

レポーター「今夜、A-RISEがハロウィンの終幕に華を飾ってくれるぜー!イェーフー!!」

レポーター「会場は混雑が予想されるからー、A-RISEが大好きだー、って人は早めに席に着いとくといいんだよー!」

レポーター「そしてそしてー、司会はなんとこの私がやっちゃうよー!じゃ、そゆわけでまた会おうねー!」

花陽「つ、ついにA-RISEのライブが生で見られるんだよね…。ドキドキ…!」

海未「一介のスクールアイドルとは思えないほどの盛り上がりですね…。街の人たちもA-RISEに燃えています」

ことり「さっきのレポーターさんが言ってたように、見に行くなら早くに行ったほうが良さそうだね」

希「せやねー。いい席も確保しておきたいし」

真姫「一体どんなライブになるのか、期待と同時に、不安も大きいわね…」

真姫(今のA-RISEに、私たちが太刀打ちできるのか)

真姫(今日のライブは、それを見定めるいい機会になると思う)

真姫(先日アップロードした、私たちのライブ映像)

真姫(それは、最初のメイドカフェライブを大きく凌ぐほどの再生数の伸びを誇った)

真姫(まだアップして数日しか経っていないけど、既に前回の動画の再生数を越している)

真姫(動画内コメントはもちろん他の掲示板等にも、C☆cuteのことを書き込んでいる人も少なからず増えてきた)

真姫(これで、UTXに存在する、もう一つのスクールアイドルの存在が、前回以上に大々的に知れ渡ったと言えるわね)

真姫(もちろん、まだ賛否は分かれるところだけど、知られたってことは大きい)

真姫(少しだけでも私たちを知ってくれる人がいて、ファンでいてくれる人たちがいるかも知れないというのは、希望になるからね)

真姫(UTX生の中にも私たちの存在を快く思ってくれない人たちもいるけれど、このライブ映像を見て、彼女たちを見返せると嬉しいところね)

真姫(でも、このライブはA-RISEの今日のライブに対抗するためのものでもあるけど)

真姫(本当に彼女たちに傷跡を残すことができるかは、そのパフォーマンス如何によるわね)

真姫(下手をすれば、私たちが逆に大怪我を負いかねない。『やはりUTXはA-RISEしかいない』…とは思われたくないわね)

真姫(だから、このハロウィンフェスタの参加は、楽しくもあるけど…、それ以上に胸が締め付けられる思いでいっぱいだった)

真姫(お願いだから、彼女たちのパフォーマンスに片腕だけでも届いてくれたなら)

真姫(それをただただ、願うばかりだった)

318: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 22:55:49.94 ID:OyyP/ZgXo
花陽「そっかぁ…。それはそれでなんだか、しょんぼりだね」

真姫「まだたった二つだけしかライブを撮影できてないからね。良く言えば、これからよ。頑張りましょう」

花陽「うんっ。いつか有名人になれたらいいね」

希「ただいまー。買ってきたよー」

真姫「お帰りなさい」

花陽「あ、それがパンケーキ?美味しそう!」

ことり「でしょー?焼きたてのホカホカ!一緒に食べよ!」

花陽「はいっ!」

海未「あ…、わ、私もことりと食べたかったです…。仕方ありません、妥協して真姫、お願いします」

真姫「…あなたも結構失礼な人ね。いいわよ、妥協して付き合ってあげるわ」

希「もー、みんなで一斉にあーんしたらいいんと違う?」

花陽「五人であーん…!?なんだかすごく新鮮かもです…!!」

ことり「注目度がヤバいよそんなことしたら…」

ザワッ…

海未「あ、列が動き出したようです。入れそうですね」

真姫「はふはふっ…、ま、まだ食べてる途中なのに…」

希「んー、おいし。甘いものはいいねー」

ことり「希ちゃん先輩食べるのはやっ!もうほとんどない…」

希「こういう時はいかに素早く味わうかがコツやよ。心配しなくてももう一枚買ってあるしー」

真姫「どれだけ食べるつもりよアンタ…」

花陽「あち、あちっ…。ふー、ふー…。あわわ…、歩きながらは食べづらいね…」

海未「諦めて、席についてからゆっくりいただくとしましょう」

希「せやねー。…もぐもぐ」

ことり「言ってることとやってることが一致してないよこの人!」

319: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 22:56:26.59 ID:OyyP/ZgXo
ライブ会場内

ことり「ふぅ、やっと座れたねー」

海未「これは…。なかなかに広いですね…。ステージも豪華です…。ぐぬぬ…」

真姫「…羨ましい?」

海未「うっ…!そ、そうですね…!羨ましいです…!」

花陽「あはっ、海未さん、アイドルをやりたい気持ちが強いんですね!」

真姫「まだまだメイドアイドルは現役ってことね。安心したわ」

海未「こういうところを見るとウズウズしてしまいます…」

ことり「あの海未ちゃんがここまでアイドルやりたがるなんてねー…。人生何があるかわかんないものだよね」

希「…ま、それはうちらが一番良く身にしみてわかってることやね」

真姫「地味に深い言葉ね…。そうね、何があるかわかったものじゃないわ」

花陽「真姫ちゃんと出会わなかったら、きっとアイドルなんてやってなかっただろうしね…」

希「ここにいる子はみんな、真姫ちゃんと出会えてよかったって思えてるよ?ね?」

ことり「うん!」

海未「えぇ。本当に、感謝しています」

真姫「や、やめてよ…。…はぁ、わ、私も…、まぁ、あなたたちと会えてよかったって思えてるわ…」

ことり「おぉ!真姫ちゃんがデレた!」

真姫「うっさい!ほら、そろそろ始まるんだから精神統一!集中して見るのよ!」

海未「集中…、そうですね、これはただのライブではなく、私たちの倒すべき敵の視察とも言えますから」

花陽「倒すべき、敵…。うっ…、そう思うとなんだか緊張してきた…」

希「まぁまぁ、そう深く考えんでも、楽しむことが第一やん?」

ことり「そうだそうだ!まずは楽しも?」

真姫「…そうね」

花陽「それに、そろそろ始まるって言ってもまだ時間に余裕あるし、その間はリラックスしてよっか」

真姫「わかったわよ、ふぅ…」

真姫(花陽に言われたように、始まるまでのしばらくの間、みんなと話し合ってリラックスすることにした)

真姫(けど、迫り来るその時に、胸の高鳴りを抑えることはできず)

真姫(緊張がピークに達しそうな瞬間、ついに)

『皆さん、今日は私たちA-RISEのライブへようこそ!』

キャアァァァァァァァッッ!!

花陽「あ、綺羅さんのアナウンス!」

希「そろそろ、始まるかな…」

真姫「…っ」ゴクリッ

320: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 22:56:58.12 ID:OyyP/ZgXo
『アキバハロウィンフェスタ最終日、最後まで存分に楽しんでいってください!』

『それでは…、We are A-RISE!! Let’s Party Time!!』

キャアァァァァァァァッッ!!

ことり「ひぃっ…!会場が揺れるほどの歓声…!」

海未「き、来ました!A-RISEです!その後ろには…」

真姫「…バックダンサー」

レポーター『ついに開幕!A-RISE、ライブinアキバハロウィンフェスタ!』

レポーター『聞いてくださいこの割れんばかりの歓声!圧倒的だねっ!』

レポーター『そしてそしてっ!ステージの奥からはA-RISEの3人が入場だぁぁあぁっ!!』

レポーター『もうみんな知ってると思うけど、それでも一人ずつ紹介していきましょうっ!!』

レポーター『その可憐なボディで広いステージを所狭しと舞い踊る!その姿はまさに妖精のごとくっ!』

レポーター『「ダンスの貴公子」こと、我らがA-RISEのリーダー!綺羅ツバサっ!』

レポーター『美しき長身と切れ長の瞳に魅了される殿方多数っ!泣きボクロがめっちゃセクシーっ!!』

レポーター『踏んでください女王サマっ!冷たきA-RISEのクイーン!統堂英玲奈っ!』

レポーター『ゆるふわヘアーのプリティフェイス!その実態はまだ誰も知らないっ!』

レポーター『歌唱力はナンバーワン!キャラクターはオンリーワン!優木あんじゅっ!!』

レポーター『A-RISEそろい踏みっ!今夜は一体どんなパフォーマンスを我々に見せてくれるんでしょうかっ!!』

花陽「れ、レポーターさんの司会にも気合が入ってるねー…」

希「…あれ、バックダンサーは紹介しないんやね」

海未「確かに…。穂乃果はどう紹介されるのかと少し期待してたんですが…」

ことり「仕方ないよー。バックダンサーを紹介するアイドルってあんまりいないだろうし」

花陽「でも、凛ちゃんは目立ちたがりだし、見えないところでふくれっ面してそう…」

真姫「かもしれないわね。そういうものだと割り切ってる穂乃果やにこちゃんならまだしも、凛は…」

真姫「…って、あれ?」

英玲奈「ふふ、熱い紹介をどうもありがとう!そして今日ここに集まってくれたみんなにも!」

あんじゅ「私たちのためにこんなにもたくさんの人が集まってくれるなんて、私感激です!」

ツバサ「それ以上の感動を、みんなに与えられるよう…、最高のパフォーマンスを、お届けするわ!」

ツバサ「まず最初は…、こんな曲、いかがかしら?We are A-RISE!ミュージック…」

「「「スタートっ!!」」」

321: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 22:57:31.60 ID:OyyP/ZgXo
~♪

花陽「こ、これっ…!新曲です!」

希「新曲のリリースがいつもよりも早いね…。それにこれ…」

ことり「いつものA-RISEと違って、なんだか…」

海未「とても、可愛らしいですね…。クールなイメージなA-RISEには珍しい…」

花陽「でもすごくいい曲っ…!いつもとは違うけど確かなA-RISEを感じるし…、真姫ちゃんもそう思うよね!?」

真姫「…」

花陽「…真姫ちゃん?」

真姫「え…、あ、あぁ…。そうね」

真姫(周りを見ても、特に反応はなかった)

真姫(やはりこの人たちは、『A-RISE』を見に来ているのだな、とそれで再確認できた)

真姫(そして、花陽たちも…)

真姫(この時期の新曲は、私たちの世界にもなかったこと。私の全く知らない、A-RISEの曲と言える)

真姫(花陽や海未たちの感想は確かに正しかった。私も、同意見なことには間違いない、…けど)

真姫(今はそんなこと、どうでもいいくらい…、気になることがあった)

真姫(私以外のほとんどが気にしていない、A-RISEから『喪失』したもの)

真姫(それまでの、ライブのパフォーマンスを気にしていたのはすっかり消え去り、そのことばかりを考えてしまっていた)

~♪…

パチパチパチパチ…!!

花陽「おぉぉっ!!すごぉいっ!!」

ことり「はわぁぁぁ…、可愛かった…!」

海未「く、悔しいですが…、完璧と言わざるを得ません…」

希「ここまでとは…、正直予想外やったかもね」

真姫「…どうして」

希「ん?どないしたん?」

真姫「どうしてよ…、なんで…」

真姫「…くっ」

真姫(そのあともライブは続き、ほんの数曲の短いライブではあったけれど、大盛況に終わった)

真姫(正直、出来は最高だったと言わざるを得ない。私たちのライブが、傷跡を残すのは…、難しいのかもしれない)

真姫(でも私は…、私はそのライブを、終始複雑な気持ちで見るしか、できなかった)

真姫(A-RISEとバックダンサー…、合わせて『5人』が、歌い、踊る、そのライブを)

322: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 22:58:05.15 ID:OyyP/ZgXo
翌日 放課後

アイドル応援部部室

花陽「はわぁぁぁぁぁ…、A-RISEのライブ、最高だったねぇ…」

真姫「…そうね。けど、喜んでばかりもいられないのよ」

ことり「そうだよ!れ、連休が終わっちゃったんだよぉぉ…!!悲しいよ…」

海未「そういうことではないと思いますが…。あのライブには圧倒されましたね…」

花陽「あれに立ち向かうのは相当骨が折れる、ってことだよ、ね…」

希「ふふ、まぁまぁ。確かに超えるのは大変やけど、でもうちらかて負けてない、って思うよ。うちは」

希「単体で強いA-RISEと、まだまだ未熟だけどみんなの応援が強くしてくれるC☆cute」

希「伸びしろならうちらのほうが断然やん!このまま前向きに突っ走ってればいけるいける!」

海未「…そう、ですね。落ち込んでいても前には進めません!A-RISEを打倒するならば、練習あるのみです!」

ことり「よしっ!今日も練習だね!」

花陽「うんっ!えいえいおー!」

真姫「…」

花陽「ま、真姫ちゃん?元気ないね…、どうしたの?」

真姫「え?あ、いや…。元気ないことはないんだけど。ごめんなさい、ボーッとしてたわ」

真姫「…そうね。パフォーマンスでは勝ててるとは言えなくても、負けてるってことは絶対にないわ」

真姫「まだA-RISEを凌ぐのは難しいかもだけど、追い付くならきっとすぐできると思う!頑張りましょう!おー!」

ことり「うん、その調子その調子!」

海未「次の曲もバシバシ作っていきましょうね!」

真姫「えぇ!」

花陽「ふふふ…、やっぱり真姫ちゃんはこうでないとね」

希「うんうん。元気でよかったよかった!」

真姫「…」

323: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 22:58:45.29 ID:OyyP/ZgXo
数時間後…

音楽室

真姫「…じゃあ、今日の練習はここまでにしましょう」

花陽「ふーっ、熱いよー…」

海未「もう冬も近いといえど、動くと汗をかきますね…」

ことり「窓開けるねー」ガラガラッ ヒュオォッ…

海未「うふぅっ…!さ、さぶいです…」

希「この時期は風邪を引きやすいから。気をつけなあかんよ?」

ことり「はーい。気をつけまーす」

希「うん、はいドリンク」

花陽「あ、ありがとうございます。…ごくごく、ふぅ、じゃ、そろそろ着替えて帰ろっか」

海未「いつまでも濡れた練習着では風邪を引いてしまいますからね」

真姫「…ごめん。先、帰ってて。私用事あるから」

ことり「え?そうなの?何の用事?」

真姫「ちょっと、私的なやつよ」

花陽「そ、そっか…。わかった。今日は先、帰ってるよ」

花陽「バイバイ、真姫ちゃん。また明日ね!」

真姫「えぇ、また明日」

海未「次の曲、早めに完成させてくださいね」

真姫「わかってるわ。ちゃんと考える」

真姫「…ふぅ」

真姫「さて、と…。はぁ…」

真姫「…何やってんのかな、私」

真姫「こんなことする意味、ないはずなのに…」

324: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 22:59:20.59 ID:OyyP/ZgXo
それから数時間後…

夜 多目的ホール

カツンッ… カツンッ…!!

ダンッ!!

「はぁっ…!はぁっ…!!や、やっと、できた…」

「目標の、ダンス、100回…、達成…。はぁっ…、はぁっ…」

「…早く帰って、寝ない、と…。はぁ、…っふ…」

「…」

「…あははっ…、もう、誰もいないわね」

「私が…、最後…」

キィッ… バタンッ

コツ、コツ…

「…夜の校舎って、キライ」

「お化けが出そうだもん」

「はぁ…、非常灯の光がやけに怪しく見えるのよね…」

「不審者に襲われたりしないかしら…」

真姫「…独り言、大きいのね」

「…きゃっ!?!だだだ、誰っ!!!?」

真姫「ごめんなさい、待ってたの。あなたを」

真姫「…すこしだけ、お話、いい?」

真姫「にこちゃん」

にこ「あなた…、たしか…、真姫ちゃん、だったかしら…?」

にこ「ど、どうして…、どうしてここにいるの?だ、ダメじゃないっ、もー、にこみたいなダメダメな子にもー、出待ちは禁止にこっ!」

にこ「…っぷはぁ、今は、こういうのもキツ…」

真姫「…ふふ、こんな時でもファンサービスは欠かさないのね。憧れちゃうわ」

真姫「なのに、どうして?…そうね、どうして、は、こっちのセリフ」

真姫「A-RISEのバックダンサーのはずのあなたが、どうして」

真姫「昨日のハロウィンライブに、いなかったの?」

にこ「…」

325: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:00:05.22 ID:OyyP/ZgXo
真姫(アキバハロウィンフェスタ最終日に行われた、A-RISEのライブ)

真姫(そのステージには、にこちゃんもいるはずだった)

真姫(けれど、6人が立つはずのそのステージには、何故か5人しかいなくて)

真姫(そのことが、昨日からずっと気になっていた)

にこ「…」

にこ「そんなの知って、どうするのよ」

真姫「…別に。気になるから、知りたかっただけ」

にこ「…そう。そっか」

にこ「いいわ、教えたげる。簡単よ」

にこ「下ろされたの。…バックダンサー」

真姫「っ…!な、なんで…?」

にこ「その実力に達していないから、って言われたわね」

真姫「そんなことっ…!!」

にこ「あーん、もう…、大きな声出さない。ホントはこんな遅くまで練習してちゃダメなんだから」

にこ「続きは、外のベンチで話しましょ」

真姫「…わかったわ」

ベンチ

にこ「…はい、コーヒー。あ、お茶がよかった?」

真姫「いえ。…ありがとう」

にこ「どういたしまして。…で、どこまで話したっけ。あ、そうそう、下ろされたってことだけだったわね」

真姫「実力に達していないって…」

にこ「最近、ダンスレッスンが失敗続きでね…。体力的についていけなくなってきて」

にこ「その無様な姿をお客さんには見せられない、って…下ろされちゃった」

真姫「今までは…、そんなことはなかったの?ダンス中に失敗って…」

にこ「ない、ってことはないわよ。まー、去年はすっごい頑張ってトップだったんだけど」

にこ「最近は無理が祟ったのかな、すぐバテるようになってきちゃって」

にこ「結局、このザマよ」

真姫「…そう。でも、なんでバックダンサーは二人だったの?にこちゃんが抜けたなら補填されるんじゃ」

にこ「モデル専攻は結構アイドル志望が少ないからね。私が抜けたのも最近だったし、お客さんに見せられるダンスができる子も少なかったってわけ」

真姫「へぇ…、だから二人で…。だったら他の専攻の子を入れてあげても…」

真姫「…」

真姫「…ん?」

にこ「どうしたのよ」

真姫「…あの、に、にこちゃん…。あなた、な、何、専攻って言った…?」

にこ「モデルだけど?」

真姫「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!?!?!」

326: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:00:42.01 ID:OyyP/ZgXo
真姫(バックダンサーはA-RISE候補生であることから、選出もそのままA-RISEと同じように)

真姫(各専攻のトップがそれぞれメンバーとなる)

真姫(凛がダンサー専攻で、穂乃果が歌手専攻なんだから、必然的に残ったにこちゃんは、ってなるんだけど…)

真姫(今まで考えたこともなかったから…。ま、まさかにこちゃんが、も、モデル専攻…、だなんて…!)

にこ「な、何よ…。そんなに意外?まぁ、確かに…、私がモデルなんて笑えるでしょうけど」

真姫「い、いえそんなことは…。でもどうして…」

にこ「別に、モデルの方がライバルが少ないって思ったからよ。A-RISEになるための」

にこ「最もアイドル専攻志望が少ない専攻が、モデルだったからね」

真姫「そんな理由で…?」

にこ「私にとっては、本専攻はオマケよ。アイドル専攻が、私の目指す道」

にこ「なんとしても私は、A-RISEにならなくちゃいけないのよ。…それが私の、夢なんだから」

真姫「…にこちゃん」

にこ「そのために必死で頑張って、何度落ちても這い上がって、まさかのバックダンサーに選出されたときは、やった!って喜んだものだけど」

にこ「…また、落とされたちゃったわね。再び1からのスタートよ」

にこ「バックダンサーの空いた穴はすぐに埋まるわけじゃない。選出されるまでには少し余裕があるから」

にこ「それまでに先輩に認められるように、人一倍…、うぅん、人百倍は頑張らないと」

真姫「…諦めないのね」

にこ「えぇ、諦めてたまるもんですか。夢なんだもん」

にこ「もっかい上に行って、もっかい認められる。絶対に…、絶対に」

にこ「真姫ちゃんが私のこと気にかけてくれたのは、すごい励みになったわ。ハロウィンライブ、出られなくてごめんね」

にこ「でもでもっ!次のライブにはぜーったいに出てやるからっ!!凛や穂乃果にも負けないくらいっ…、うぅん、A-RISEにだって負けないダンスを見せたげる!」

にこ「だから、真姫ちゃんも応援よろしく!…あと、アイドル、頑張ってね」

真姫「あっ…」

にこ「驚いたわ。あなたまで、アイドルやってたなんてね。負けないんだからね?」

真姫「…えぇ。私も、負けない。A-RISEに追いつけるよう…、追い越せるよう、共に頑張りましょうね」

にこ「うん!じゃ、そろそろ時間だから帰るわね。バイバイ」

真姫「えぇ…。バイバイ」

真姫(そう言って去っていく小さい背中が)

真姫(なんだか、前よりずっとずっと、小さくなっている気がして)

真姫(そのまま、暗い闇に消えてしまいそうな気がして)

真姫(私は、言いようのない不安に襲われた)

真姫(とても強い心を持ったにこちゃん。今も気丈に振舞ってはいたけれど)

真姫(いつか簡単に、ポキリと折れてしまいそうで、私は…)

真姫(私は…)

327: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:01:21.96 ID:OyyP/ZgXo
数日後

花陽「あ、真姫ちゃん。おはよー。ね、聞いてよー!昨日ねー…」

真姫「あぁ…、うん…。おはよ」

花陽「あの、真姫ちゃん…?」

真姫「…何?」

花陽「いや…、何でもないけど…」

昼休み

真姫「…もぐもぐ」

海未「…」

ことり「…」

真姫「…もぐもぐ」

真姫「ごちそうさま」スッ

海未「…ひ、一言も喋りませんでしたね」

ことり「なんだか心、ここにアルカトラズって感じだね」

海未「は?」

ことり「…言わなきゃよかった」

歌手専攻 音楽室

親衛隊C「あ!西木野さん!今度手伝うのはいつごろになりそうですの?」

親衛隊B「また今月中に新曲出すの?」

真姫「今度手伝う日、か…。そうね…」

真姫「…」

親衛隊A「…ちょっと?」

真姫「…」

親衛隊A「おーい…、生きてる?」

真姫「…え?あ、あぁ…。ごめんなさい、別のことを考えてたわ」

真姫「次は大体…、えっと…」

真姫「…」

親衛隊C「ま、また止まってしまわれましたわ」

花陽「…」

328: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:01:57.48 ID:OyyP/ZgXo
放課後

アイドル応援部

花陽「…なんだか最近、真姫ちゃんの様子がおかしい」

ことり「ラノベのタイトルみたいだね」

海未「言っている場合ですか。あれでは腑抜けのようなものですよ」

ことり「うーん、そうだねー…。練習になると真面目にはなるんだけど」

花陽「夜のほうはどうですか?真姫ちゃんの様子」

希「ん?せやねー…、食事中もずーっと考え事してるみたいな顔してるね」

希「一度何かあったん?って聞いてみたりはしたけど、すぐにはぐらかしてきたし」

海未「また何か一人で抱えているのでしょうか…」

花陽「もう、真姫ちゃんったら!私には説教しておいて、私と同じことしてるってどういうこと!」

花陽「何か悩み事があったらちゃんと相談して欲しいよね」

ことり「私たちに言えないことなのかな?例えば…」

ことり「カレシさんができちゃったとか!」

海未「えっ…」

花陽「えぇぇぇぇぇぇぇっ!!!?!ま、真姫ちゃんにカレシ!?」

花陽「ないないないないない!絶対にありえないですっ!!」

希「どうしてそこまで言い切れるんよ?」

花陽「だ、だって…、真姫ちゃんですよ!?ま、真姫ちゃんに彼氏なんて…そんなの、嫌だなぁ…って」

海未「感情論ですか…」

ことり「でもさ、最近用事があるからって私たちとは別々に帰ってるよね?」

希「うちのお家に帰ってくるのも、結構遅い時間やったりもするし」

海未「…そう考えると、あながち間違った意見ではないのかも」

花陽「え、えぇぇぇぇぇぇ…!?う、うぅぅ…真姫ちゃんに、彼氏…。彼氏だなんて…」

花陽「ぬぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!!」

ことり「は、花陽ちゃんがすごい表情!」

希「クラスメイトの前で見せたら引かれそうな顔やね…」

花陽「だって、ま、真姫ちゃんは私と…、私とが…、ぬふっ…」

海未「今度はまた一段と気持ち悪い表情に…」

ことり「花陽ちゃんも意外と何考えてるかわかんない子だね」

希「んー、そんなに気になるんやったらそれとなーく、聞きだしたらいいんと違う?」

花陽「そ、それとなく…」

ことり「ソルトレイクシティ!」

海未「いきなり何を言い出すんですかあなたは…」

ことり「語呂が似てるよねって。面白くない?」

海未「…どうでもいいです」

花陽「…でも、真姫ちゃんが何を考えているかは、彼氏の有無関係なく知りたいですよね…」

花陽「で、でももし真姫ちゃんが彼氏持ちだなんて発覚しちゃったら…!!う、うぅぅぅぅぅぅぅっ…!!!」

ガチャッ

真姫「…何の話題で盛り上がってるの?」

329: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:02:28.74 ID:OyyP/ZgXo
花陽「ま、真姫ちゃんっ!」

海未「ど、どこまで聞いていましたか…?」

真姫「…別に、何も聞いてないわよ。盛り上がってるな、って思っただけ」

ことり「そ、そう…。ちょっと相談タイム!」

真姫「え?」

ことり「ど、どする?ついに来ちゃったけど…」

海未「やはり問いただすべきでしょうか…。か、彼氏のことについて」

花陽「直球ですか!?それは少し怖いというか…」

希「…となると、やっぱりソルトレイク…、それとなく、聞き出すのがいいのかな」

海未「…あなたまでよくわからないこと言い出さないでください」

ことり「よし!じゃあ回りくどい感じの質問で行ってみよう…!」

真姫「…?何の話を…」

ことり「ま、真姫ちゃん!」

真姫「はい」

ことり「え、えっとー…」

ことり「最近、色っぽくなったねー…、えへへ」

真姫「え?」

希「そ、そうかも!なんだか、えー…、肌に艶が出てきたというか」

海未「夢現といいますか…」

花陽「とにかく、可愛くなったよね!」

真姫「…わ、私が?」

真姫「へぇ…、そう、見えるのね…。そっか…」

真姫「…」

花陽(…え!?何その反応!?)

海未(これはもしかするともしかして…!)

ことり(マジなのかな!?)

希(ここは一発、直球を放ってみるんや!花陽ちゃん、行こ!)

花陽(わ、わわ、私っ!?う…、えぇい、ままよっ!)

花陽「真姫ちゃんっ!!」

真姫「ひぇっ!?な、何…」

花陽「ま、真姫ちゃん…!!う、うぅぅっ…!!」

花陽「うぇぇぇぇぇぇぇんっ!!ヤダよぉぉぉっ!!真姫ちゃああぁぁぁんっ!!」

真姫「はぁあっ!?なんでっ…、なんでイキナリ泣き出してんのよ?!」

花陽「せめて付き合うなら女の人とでお願いぃぃぃぃぃ…、…あ、でも彼氏とはまだ決まってないんだっけ…」

花陽「んんんん…、でもやっぱり別の人と付き合うのは嫌だよぉぉぉぉぉぉ…!真姫ちゃあぁぁぁぁ…」

真姫「…な、何の話ぃ…?」

330: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:03:26.82 ID:OyyP/ZgXo
数分後…

真姫「…はぁ、なるほどね。それで私に彼氏ができたんじゃないかと」

ことり「だって真姫ちゃん、最近上の空だから…」

希「男にうつつを抜かしてるんやないかと心配してたんよね。…主に花陽ちゃんが」

花陽「わ、私だけじゃないですよ!?」

海未「一番ハラハラしていたのは間違いなく花陽ですけれどね」

真姫「私が男の人と、ね…。っは、それはないわね」

真姫「大体アイドル始めようってときに男性と付き合ったりするわけないでしょ。自殺行為だわ」

花陽「っ!そ、そうだよね!アイドルはみんなのものだもん!いやぁ真姫ちゃんそういうとこわかってるなぁ!」

海未「急に元気ですね」

希「じゃあ結局、真姫ちゃんは何に悩んでるん?」

ことり「あ、そうだよ!それが肝心なんじゃない!正直に言ってよ!」

真姫「あっ…」

真姫「…」

海未「まただんまりですか?…花陽、言ってあげてください」

花陽「は、はいっ…!真姫ちゃん!私たち、友達でしょ!」

花陽「悩み事があるなら、みんなで共有しようって言ったのは真姫ちゃんじゃない!忘れたの!?」

真姫「あ、あぁ…。そうね…。うーん…」

花陽「真姫ちゃんっ!」

真姫「…はぁ。わかった、わかったわよ。言うわ、私が何考えてるのか」

真姫「なんで言いたくなかったのか。全部、言うから」

ことり「うん…」

真姫「…っていうかあなたたち、この間のハロウィンフェスタのライブで気づいたこと、ないの?」

希「気づいたこと?」

海未「え、えっと…、何かあったでしょうか…」

真姫「やっぱり、あまり注目されてないのね。いえ、あなたたちの場合は他に注目すべき人がいるからかもしれないけど」

真姫「この間、あのステージにいたのは5人だったのよ」

花陽「5人…、あっ!ひ、一人足りない…?」

真姫「…そう。バックダンサーが一人、ね。矢澤にこちゃん…、知ってるでしょ?」

希「…!に、にこっち…!」

海未「矢澤さんが…、まさかいなかった、ということですか!?」

真姫「そういうこと。やっぱり、気づいてなかったのね」

ことり「うーん…、A-RISEや穂乃果ちゃんのことばかり目で追いかけてたから、あんまり気にしてなかったかも…」

花陽「私は凛ちゃんを…。でも気づいてもいいよね…、一人足りないんだから」

希「いきなりの新曲で熱狂的になってたから、気づきづらかったのかもしれないね」

真姫「まぁ多分、向こう側もそれを狙ったんでしょう。A-RISEに注目させておきたかったのね」

海未「はぁ…。つまり真姫は、そのことについてずっと悩んでいた、ということですか?」

真姫「えぇ。そういうこと」

希「せやけど、どうして言いたくなかったん?」

真姫「それは…」

331: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:04:52.24 ID:OyyP/ZgXo
真姫「…私、最近ずっと帰るのを遅くして、にこちゃんと会ってて…」

真姫「彼女はバックダンサーとしての不振が理由で下ろされて、私、彼女を支えてあげたい、って思ったんだけど」

真姫「…でも彼女は、私たちにとっては…、敵、だから…」

海未「敵…」

ことり「A-RISE候補生だから、ってこと?」

真姫「…えぇ。それに、彼女を手伝ってあげて、私たちのスケジュールに支障が出るのも避けたいことだったし…」

真姫「やるなら、私一人でやりたい、って思ってたの。私はあなたたちより…、余裕があるからね」

花陽「だ、ダメだよ!一人でやろうって思うのはいけないって真姫ちゃんも言ってたのに…」

真姫「…そうね。自分で言ってたことなのにね…」

海未「しかし、どうしてそこまで彼女のことを…?」

真姫「えっと、それは…あ、憧れてるのよ。彼女に」

ことり「なんと!真姫ちゃんはにこちゃんファンだったの!?」

真姫「…そ、そうね。そういうことになるわね」

希「…手伝う、って具体的にどういう風に考えてるん?」

真姫「まだ、何も…。一人で頑張ってる彼女に言い出せなくて」

真姫「そんなのいらない、って言われそうで」

ことり「ふぅん…、そっかー。つまり、真姫ちゃんはにこちゃんのこと、好きってことだね」

花陽「えぇぇっ!!?なんでそうなるの!?」

ことり「だって断られるのが怖くて言いよどんでるんでしょ?告白前のオンナノコの心境と同じじゃないかな」

海未「そういうものでしょうか…」

真姫「…ふふ、そうかもしれないわね」

真姫「トップで有り続けるために、必死で食らいつくその姿に…私は心を打たれたのよ」

真姫「だから、いつか折れてしまうかもしれない彼女を、支えてあげたいの」

花陽「真姫ちゃん…」

希「んー、なるほどねー…」

希「…となると、やっぱうちらに早く相談するべきやったね」

真姫「えっ」

希「真姫ちゃん一人にできることは限られてる。だけどうちら全員ならそれ以上のことができるやん?」

真姫「だけど彼女は私たちが倒すべき敵で…」

希「今のにこっちはA-RISEでも何でもない、ただのアイドル専攻の一人でしょ?なら敵って言うんは少しおかしいんと違うかな?」

真姫「でも、彼女は…彼女をまたバックダンサーに押し戻せば、将来的に私たちを阻む大きな壁になる…」

真姫「それは、確信を持って言えるわ。だから…」

希「そんなの、真姫ちゃん一人が支えてあげて、バックダンサーに戻ったとしても結果は一緒でしょ?」

真姫「そ、それは…そうだけど」

希「どうするか悩んで、結局どっちつかずになるのは一番良くないことや。なら、最初から全力でサポートしてあげようよ」

希「アイドルを目指す女の子に、敵も味方もないんやし」

真姫「…」

希「そーれーに、A-RISEのことを思い出して?彼女たちはうちらを手伝ってくれたやん。取材に応じてくれた。将来は強大な敵になるかもしれんのに」

希「それと同じことを、うちらがにこっちにやる。それでいいやん!なんせうちらは…」

希「アイドルを夢見る少女を応援する、アイドル応援部なんやから。ね?」

真姫「…!」

332: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:05:18.95 ID:OyyP/ZgXo
海未「…真姫は、優しいですからね。矢澤さんが困っているなら、助けてあげたいと心から思ったのでしょう」

海未「しかし、彼女はA-RISEのバックダンサーであり、強大な敵になりうる。その二律背反に悩んでいたのですね」

海未「…悩むことなんてありませんよ。彼女を助けたいと思ったなら、助けましょう」

海未「もしその結果、強大な敵となったのなら、それすら追い越せばいいことです。全力でないA-RISEを超えても、意味ないですしね」

花陽「真姫ちゃんはバラバラだった私達をまとめあげて、最初は無理だって思ってたスクールアイドルの結成まで成し遂げちゃったすごい子だもん」

花陽「そんな真姫ちゃんがやりたい、って思ったことなら、きっとそれは正しいことだと思うよ」

花陽「それに、何回でも言うけど、私たちは仲間でしょ?やるならみんな一緒に。だよね?」

ことり「…えーっと、大体のこと、言われちゃったなぁ…」

ことり「わ、私もそう思う!真姫ちゃんファイト!」

真姫「みんな…」

真姫「…えぇ、そうだったわね。悩んでたのがバカみたいだわ」

真姫「にこちゃんをもう一度、バックダンサーまで押し戻す。それが今、私のやりたいこと」

真姫「この行動に私たちにとっての利点はないわ。デメリットの方が大きいとさえ言える」

真姫「それでも、一緒についてきてくれるのね?」

花陽「もちろん!」

ことり「うん!」

海未「当たり前です」

希「むしろそれこそが、アイドル応援部の真の活動やん!」

真姫「…ありがとう。みんな」

真姫「じゃあ、やりましょう。次のアイドル応援部の活動は、にこちゃんの応援よ!」

ことり「…とはいったものの、応援って具体的にどんなことをすればいいのかな?」

花陽「んーと、やっぱり練習のお手伝い?効率的に練習が出来るような…」

海未「しかし、私たちがアイドル専攻に勝るようなレッスンをしているとも思えませんが…」

真姫「にこちゃんがバックダンサーを降ろされたのは、体力が足りなくなってきたから、って言ってたわ」

真姫「バテるのが早くなってきて、それでダンスについていけてないんだとか」

希「ふむふむ…、なるほどねー…」

希「…にゅふふ、ならうちにいい考えがあるよ~?」

海未「…なんだか、少し怖いのですが」

希「遠慮はいらんて!うちに任せておけば万事解決や!」

真姫「ホントかしら…?」

希「なんてったって元生徒会長サマやもんね。ま、今はにこっちもアイドル専攻の授業中やろうから、どうしようもないし…」

花陽「私たちも練習ですか?」

希「せやねー。頑張って!」

真姫「わかったわ。音楽室へ向かいましょう」

333: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:08:58.29 ID:OyyP/ZgXo
数時間後 夜

多目的ホール

にこ「…ふぅ」ガチャッ

にこ「戸締りも済んだし、忘れ物もない…わよね?」

にこ「うん、大丈夫。帰りましょう」

カツ… カツ…

にこ「はぁぁ…、今日も、疲れたわ…。明日も朝から夕方まで練習…」

にこ「帰ったらご飯食べて、お風呂入って寝るだけ…」

にこ「こころもここあもこたも、帰る頃には寝てるし…」

にこ「…はぁ。辛い…けど、頑張らなくちゃ!」

にこ「…」

にこ「確かに私って、独り言、多いかも…」

UTX学院 改札前

ピッ

にこ「…ん?あ…」

真姫「こんばんは、にこちゃん」

にこ「真姫ちゃん!今日もいたのね…。だから出待ちはダメだって言ってるニコ!」

真姫「今はバックダンサーじゃないから、特別よ?って言ったのはあなたじゃない」

にこ「そういえばそんなことも言ってたわね。…で、今日もお話?」

真姫「えぇ。そうなるわね」

にこ「そっか。じゃあまたあのベンチに…」

真姫「いえ、ベンチは寒いから、別のところへ行きましょう」

にこ「別の?屋内ってこと?どこに行くの?」

真姫「…とっておきの場所、よ」

334: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:09:33.71 ID:OyyP/ZgXo
ガチャッ

真姫「さ、入って」

にこ「こ、ここって…?」

真姫「いいから、早く入りなさい、よっ!」グイッ

にこ「ひゃんっ!」

にこ「ととと…、え…」

希「やっほ、久しぶりやねー。にこっち」

にこ「の、希…、さん!?」

海未「矢澤さん、こんばんは」

ことり「あんまり顔合わせたことないけど、同級生だよー」

花陽「わ、私っ…!にこにーのキャラ大好きなんです!応援してます!!」

にこ「え、え、えぇぇっ!!?な、何よこれ…」

にこ「というか結局、ここはなんなのよ!?」

希「ここはうちの家やよ。よくUTXの生徒を泊めることで有名な」

にこ「知りませんよそんなの!真姫ちゃん、なんで私ここに連れてこられた訳!?」

真姫「…そこの、アイドル応援部部長さんのアイデアよ」

真姫「にこちゃんへの、おもてなし」

にこ「おもてなし…?」

希「にこっち、覚悟してよ~?」

にこ「へっ…?」

希「それっ!わしわしわしぃぃ~~!!」

にこ「にぎゃあぁぁぁああぁぁぁあぁぁぁぁぁぁっ!!!!な、何するのよぉぉっ!!」

希「うん、うん…。なるほどなるほど…」

にこ「はぁっ…、はぁっ…!せ、先輩だからってやっていいことと悪いことがあるわよ!」

希「にこっち、やっぱり筋肉が凝り固まってるね。疲労が全身に溜まってる」

にこ「えっ…」

希「いつもの休息じゃ、疲れが取れてないって証拠よ。ただ寝てるだけになってる」

真姫「だから、今日ここで、正しい休息を学びましょう、ってこと…らしいわ」

にこ「ここで、ってもし、かして…」

ことり「はい、にこちゃん!これ、私のだけど…、サイズはちょっと大きめだけど、多分大丈夫!」

にこ「こ、これは…!」

海未「食事も、疲労回復に滋養強壮など、体に良い効果のあるものを使った料理を用意しています!」

にこ「あ、あの…!」

花陽「お風呂も、元気になれる香りの入浴剤を買ってきました!」

希「寝る前にちょっとしたゲームとかも疲労回復には有効やよ!」

にこ「これって、つまり…」

真姫「…パジャマパーティ、するんですって」

にこ「…え」

にこ「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!?!」

335: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:10:26.47 ID:OyyP/ZgXo
にこ「…うん、そう…、えー、っと、友達の家」

にこ「わかってる…。うん、明日は休みだし、大丈夫よ。迷惑もかけないから…」

にこ「はい、うん…ありがと、ママ。それじゃ、おやすみなさい」ピッ

にこ「…はぁぁぁ」

希「どやった?おうちの人の許可、取れたかな?」

にこ「いい、って言ってくれました。…大丈夫ですよ」

ことり「そっか!よかったー」

にこ「…良くないわよ」

ことり「え?」

にこ「なんなのよコレ!?意味わかんないまま先輩の家に連れ込まれるってどんな状況よ!?」

にこ「しかもほとんど喋ったことのない同級生のパジャマ押し付けられて…ここで寝泊り!?」

にこ「無碍に断るのは失礼かも、って思って親の許可は取ったけど…、私の意見ガン無視だし」

にこ「…どういうつもりなの、真姫ちゃん。それとも希さんが言い出したことなの?」

希「え、あー…、うちは…」

真姫「ごめんなさい。これは私が言い出したことなのよ」

真姫「バックダンサーに戻ろうとしてるにこちゃんのお手伝いがしたくて、みんなに手伝ってもらったの」

にこ「お手伝い…?」

にこ「な、なによ、それ…。余計なお世話よ!」

花陽「そ、そんな…、真姫ちゃんはにこにーのことを思って…」

にこ「もしかして、今まで私が真姫ちゃんをファンとして大事に扱いすぎちゃったから勘違いしちゃったの?」

にこ「でも、…真姫ちゃんはあくまでファンの一人よ。お手伝いなんて、そこまでしてもらう筋合い、ないわ」

にこ「しかもあなたたちは…A-RISEの敵じゃない。ふざけてるわけ?」

海未「うっ…。た、確かに、そう捉えられてもおかしくはありませんね…。むしろ自然です…」

にこ「ねぇ、真姫ちゃんっ…、悪気は無いのかもしれないけど、これじゃ私、舐められてるって感じるんだけど…!」

にこ「どうなの?真姫ちゃん。…何か、答えてよ」

真姫「…私は、私は…、あなたの…、にこちゃんの前に進もうって気概が、好きなのよ」

真姫「何があっても決して諦めない心。それはきっと…、スクールアイドルの中の誰よりも強いものを、あなたは持っていると思う」

真姫「だけど、このままじゃ、あなたはいつか折れてしまうって思ったのよ。孤独なにこちゃんのままじゃ」

にこ「私が、諦めるってこと…?何の根拠があってそんな…」

真姫「根拠はないけど!ただ、そんな気がするってだけ、だけど…」

真姫「でももし折れてしまったとしたら…、私、そんなあなたを見たくないのよ」

真姫「…あなたは、いつまでも、スクールアイドルであってほしい。それが何よりの、私の願いなの」

真姫「あなたの一人のファンとして…、そして、ライバルとして」

にこ「…」

336: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:11:01.89 ID:OyyP/ZgXo
希「まーまーにこっち。そうピリピリせんと」モミッ

にこ「ひっ!だから胸を揉むのはやめっ…!」

希「真姫ちゃんだってにこっちを舐めてる訳やないことくらい、にこっちでもわかってるでしょ?」

希「心配やから協力したい、ただそれだけのことやん。何を疑問に思うことがあるんよ」

にこ「…それは、そうかもしれないですけど」

希「あとね、うちも含めて、ここにいるみんなはアイドル応援部やん」

希「応援部の活動は、にこっちならよーくわかってることよね?」

にこ「…元部員、ですからね」

花陽「えっ!そ、そうだったんですか!?」

にこ「そ、そうよ!アイドル専攻の傍らでA-RISEにできるだけ近づきたくて…結局一言も話せないまま退部したけど…」

にこ「って!そんなことどうでもよくて…」

希「あの頃の応援部みたく、頑張ってるスクールアイドルの応援をするのがうちらの活動や」

希「それでも、にこっちはダメって言うんかな?」

にこ「…」

にこ「あぁもうっ…、言えるわけないじゃないですか!背後から得体の知れないプレッシャーかかってるし…」

ことり「大きいおっぱいが押し付けられてるもんね」

にこ「そういうことじゃないっ!」

希「ま、それに何も練習そのものをどうこうしようなんて言ってへんやん?」

希「にこっちに正しい休息の仕方を教えるってだけ。これなら直接アイドル活動をサポートしてるわけでもないし、文句ないでしょ?」

にこ「はいはい、わかりました…。で、正しい休息って一体…」

希「簡単なこと。栄養たっぷりの美味しい食事を食べて、あったかいお風呂に入って、楽しくおしゃべりをして、疲れたら寝る」

希「それだけよ」

にこ「それだけって…、それなら私だって…」

真姫「いいからっ。どのみち今日は帰らないってお母さんには言ってあるんでしょ?なら…」

海未「矢澤さん…いえ、にこには言いなりになってもらいますよ。さ、まずは食事からです!」

337: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:11:29.66 ID:OyyP/ZgXo
希の家 ダイニング

グツグツ…

にこ「うっ…、キッチンの方から何かが煮える音が…。いい匂いもするし…」

グギュルルル…

にこ「…」

ことり「わー、にこちゃんのお腹、凄い音…」

にこ「う、うっさいわね!もうこんな時間なんだから、しょうがないでしょ…」

花陽「でも私たちもお昼から何も食べてないし、運動もしたからお腹ペコペコです…」

真姫「にこちゃんはいっつも夜ご飯を食べるのはこんな時間になるの?」

にこ「いつもじゃないけど、最近はそうね…。最後まで居残りを義務付けられてるから」

花陽「トップから下位へ落ちちゃった人へのペナルティ、ですね…」

ことり「ご飯は買い置きのものを食べてるの?」

にこ「うぅん。ママが作っておいてくれたものを温めてるの。うちのママ、料理上手だからチンしてもすごく美味しいのよ」

真姫「でも、夜ご飯はいつも一人なのよね?」

にこ「ま、まぁね…。うちには下のきょうだいがいるし、ママもそっちの方で手一杯だし…」

にこ「疲れを取るためにはすぐ寝なきゃって思ってるから、すぐ食べてすぐお風呂入って、って感じで、会話もほとんどできないわね…」

希「んー、それはあかんねー。健全な精神はまずコミュニケーションを行うことで形成されるんよ」

希「会話が少ないと引きこもりのオタッキーな人になってまうでー?」

ことり「それは少し言いすぎなんじゃ…」

希「あと、ご飯は楽しく食べることが大切や!なんでも胃に流し込めばいいってものじゃないんよ!」

希「というわけで海未ちゃん?そろそろできた?」

海未「はい!ただいまお持ちします!」グツグツ…

海未「できました!園田海未特性、体の芯まで温まるホカホカ鍋です!」ドスッ

花陽「うわぁぁっ…、すごい、具沢山…」

真姫「これ10人前はあるんじゃないの…」

海未「色々な体に良いものをたっぷり入れてこれでもかというほど煮込みました!熱いので気をつけて食べてくださいね!」

にこ「まだ鍋の季節には少し早いと思うんだけど…」

希「みんなでワイワイ食べるにはこういうのが一番やよ?それに…」

グギュルルルルルルル…

真姫「う…」

花陽「あは…」

ことり「えへへ…」

海未「ぐぅ…」

にこ「…くっ!悔しいけど…、メチャクチャ食欲がそそられるわ…!!」

希「もうみんなのお腹は準備万端ってことやね。それじゃみなさん、手を合わせてー…」

「「「「「「いただきますっ!」」」」」」

338: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:12:02.99 ID:OyyP/ZgXo
花陽「ふーっ…、ふーっ…。はむぅっ…、もぐ、もぐ…」

花陽「はぁぁぁぁ…!美味しいぃぃっ…!」

ことり「疲れた体に染み渡るねぇぇぇ…」

希「お肉がいい味出して…、あ、これも貰い!」

にこ「ちょっ…、それ私が目付けてたのにっ!」

真姫「というか、これ何が入ってるのよ…。牛豚鳥に、魚もたくさん入ってるわよね?」

海未「買い出しの際に美味しそうなものはとにかく買ってきてみました。あ、お肉ばかりでなくお野菜も食べなくてはダメですよ!」ドサッ

ことり「わぁぁっ!海未ちゃん、白菜大量に持ってこないでよぉっ!」

花陽「でも野菜もおダシが染み込んでいてご飯が進みます…!んふーっ、キャベツがうまいっ!」

ことり「はっ…!なんだか懐かしい響き…!私も!」

ことり「うーん、今日も白菜がうまいっ!」モグモグ

にこ「なんなのよそれ…」

真姫「お約束みたいなものよ。はい、にこちゃんも野菜」ポイッ

にこ「ぬあっ…!って!真姫ちゃんのお皿お肉とお魚ばっかりじゃない!野菜押し付けないでよ!」

真姫「あー、今日も鱈がうまい」

にこ「聞いてないしっ!」

希「もー、しゃあないなー。はい、にこっちにも肉厚なコレ」

にこ「あ、ありがとうございま…、ってぇっ!!これしいたけぇぇぇぇぇぇっ!!!」

海未「まぁ確かに肉厚ではありますが…」

にこ「ちょっと!これ私の疲れを取るための食事じゃないの!?どうして私にお肉が回ってこないのよ!」

希「アイドルも鍋も、実力主義の世界なんよ…!周りに遠慮しているようじゃ強くなれんで…!」

にこ「ぐっ…!そうは言ってもあんたら遠慮なさすぎでしょ…!」

にこ「いいわ!いつまでもゲストのつもりじゃ勝ち残れないってわけね…!やってやろうじゃないの!」

にこ「うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

にこ「…うぐっ、結局そんなにお肉食べられなかった…」

海未「お魚はたっぷり食べてたじゃないですか」

ことり「そうそう…げぷっ。うぅ、お腹いっぱいぃ…。もう食べられないよぉ…」

にこ「そりゃお魚も美味しかったけどなんだか物足りないっていうか…」

真姫「仕方ないわね。はい、これ」

にこ「はっ!ぎ、牛肉!いいの?」

真姫「えぇ。たっぷり取り込んでおいたやつだけど」

にこ「お肉食べられなかったのあんたのせいかよっ!なら遠慮なくっ…、はぐっ!」

にこ「んん~っ!やっぱりお鍋はお肉よねぇ…」

花陽「あの!残り汁で雑炊っていうのは…」

ことり「アリ!断然アリだよ!」

海未「もう食べられないとはなんだったんですか…」

希「そう言うと思って…、用意しておいたよ~」

真姫「よしよし…、第二ラウンド開始ね…」

にこ「まだやり合う気なのね…」

339: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:12:55.83 ID:OyyP/ZgXo
希「げふーっ…、さ、さすがにもう入りそうにないね…」

にこ「そうですね…。う、吐きそう…」

花陽「そうかなー?私はまだ行けますよ?」

海未「これ以上食べられるのですか…。どんな胃袋をして…けぷっ」

ことり「やーんっ!海未ちゃんのげっぷなんかかわいい!」

海未「そんな所褒められても何も嬉しくないです」

真姫「さて、じゃあ次はお風呂だけど…、誰から入る?」

にこ「私パス…。今は動ける気がしないわ…」

希「うちも…」

海未「では、私が一番でよろしいでしょうか。鍋で汗もかいてしまいましたし…」

真姫「えぇ、いいんじゃない?花陽はどう?」

花陽「うん、私もいつでもいいかな」

海未「ありがとうございます。では…」

ことり「じゃ、お風呂行こっかー」

海未「そうですね。一緒に…って、えぇっ!?」

ことり「ん?どったの?」

海未「いやいや!一般家庭のお風呂に二人で入るつもりですか?!」

ことり「だってそうしないと後がつっかえちゃうよー?」

海未「ま、まぁ、それはそうですけど…」

ことり「ちっちゃい頃はいっつも一緒だったじゃない。ほら、あの頃をやり直すためにもね?」

海未「どこまで退行するつもりですか…。わ、わかりました。あくまで後の人たちのためですからね?」

花陽「…っ!一緒に、お風呂…!」

花陽「真姫ちゃん…、予約…いいかな」

真姫「…はいはい」

『はーい、じゃあ次は海未ちゃんの番ねー』『わかりました。では背中をこちらに…』

真姫「楽しそうに入ってるわね、二人共」

花陽「一緒にお風呂かぁ…。何年ぶりかなぁ…」

真姫「中学生の時に凛と一緒に入ったりはしなかったの?」

花陽「えっ…?あー、銭湯に行ったことならあった気がするけど、バスタブのお風呂に一緒に入るのは…、小学生以来かな」

真姫「ふーん…、そうなんだ」

希「あ、にこっちー、ぎゅっ」

にこ「ひょわっ!?な、なんですか唐突に…!」

希「お鍋どうやったー?美味しかった?」

にこ「ま、まぁそこそこ…」

希「んふっ、それはよかった。どう?みんなでワイワイいただくんも悪くないでしょ?」

にこ「…そうかもしれないですね」

340: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:13:31.62 ID:OyyP/ZgXo
風呂

海未「ふぅぅ…、あったかいです…」

ことり「あー!海未ちゃん先にずるーい!私も入る!」

海未「そんな穂乃果みたいなこと言わないでくださいよ…」

ことり「うっ…、い、今は穂乃果ちゃんこういうこと言わないもん!」

ことり「一緒に入るよ?せーのっ…、じゃぽんっ!」

海未「わわっ、ホントに…、ことり!」

ザッパーンッ

海未「うぶぅっ…!」

ことり「うわー…、お湯たくさん溢れちゃったねー…」

海未「…希に怒られますよ」

ことり「えへへへ…」

ことり「…ね、海未ちゃん」

海未「なんですか?」

ことり「ちゅーしよっか」

海未「ブッ」

ことり「ほーら、ちゅー…」

海未「どうしてそうなるんですか!?」

ことり「だってなんかこうやって一緒にお風呂入ってると昔のこと思い出してー…」

ことり「昔はふざけてちゅーし合ったりしてたよね、って」

海未「いつの話ですかそれはっ!は、恥ずかしいですよ…」

海未「あなたのあの頃をやり直す、って言葉は、そういう意味だったんですか…?」

ことり「んー…、ま、そういうところも部分的には含まれちゃうのかなー?」

ことり「でも、やっぱり穂乃果ちゃんが欲しいところですねー」

海未「…そう、ですね。穂乃果とも、またこうして湯船に一緒に浸かりたいものです」

海未「…っ、穂乃果…っ」

ことり「海未ちゃん…」

ことり「…大丈夫だよ。絶対、穂乃果ちゃんと仲直りしようね」ナデナデ

海未「も、もちろんですっ…!もちろん、ですとも…」

海未「ひっぱたいてだって、友達になってやるんですから…!」

341: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:14:24.65 ID:OyyP/ZgXo
ことり「お先でしたー!気持ちよかったー」

真姫「あぁ、お疲れ様…海未、なんだか鼻の頭赤くなってない?」

海未「の、のぼせたのです。では次の方、どうぞ」

花陽「じゃ、真姫ちゃん!行こっか!」

真姫「わかったわよ…」

風呂

真姫「…」

真姫「なんかバスタブのお湯少ないんだけど」

花陽「これ入っても胸のあたりまでしかお湯登ってこないよね…」

真姫「仕方ないわね。二人で入れば多少はマシでしょ」

花陽「えぇぇっ!!?!?二人でバスタブに!?」

真姫「なんでバスタブに入るのはそんなに躊躇してるのよ…。一緒に入ろうって誘ったのはそっちでしょ」

花陽「そ、そんなに肌を密着させる予定はなかったから…」

真姫「積極的なのか消極的なのかわかんないわね、あなた…」

花陽「えへへ~、こうやって誰かの背中を流すの、ちょっとやってみたかったんだよね。気持ちいい?」シュリシュリ…

真姫「えぇ、上手。これなら夜でもやっていけ…なんでもない」

花陽「ん?…それにしても真姫ちゃん、痩せて見えるのに脱ぐと意外と筋肉あるよねー…。希さんの言ってた通りだ」

真姫「まぁ、鍛えてたからね」

花陽「ふぅん…。サバゲだったっけ?今度私もやってみたいなぁ」

真姫「き、機会があればね。…でも、今はアイドル活動で忙しくてできそうにないかも」

花陽「あ、そっかぁ…。真姫ちゃんの理想は一ヶ月に一回の新曲リリースなんだっけ…」

花陽「それだと趣味に休んでる時間もないよね…大変だ」

真姫「でも、一度くらいみんなで旅行、とかもいいかもしれないわね。思い出作りに」

花陽「あ!それいい!いつか行こうね、絶対!」

真姫「…うん、行きましょう。必ず」

真姫(私が、この世界にいられるうちにね)

花陽「じゃ、次は真姫ちゃんが背中…」

ジャプンッ

花陽「ふぅー…、二人で入るとちょうどいい感じだね」

真姫「多分あの二人も一緒に入ったんでしょうね。だから水かさが減ってたんでしょ」

花陽「海未ちゃんとことりちゃんがかぁ…。すごく仲いいよね、あの二人」

真姫「幼馴染だからね。それに、ことりは海未が鬱だった頃から海未のことをとても気にかけているみたいだし」

真姫「今でも海未の保護者であり続けてるんじゃないかしら、ことりは」

花陽「保護者かー…、そっかー。やっぱり、リアルじゃそうそうないのかな?」

真姫「何が?」

花陽「女の子が女の子を好きになる、っていうの…。恋愛感情を持つっていう…」

真姫「そりゃ、そうそうあったらもっとマジョリティになってるでしょ」

花陽「まー、そうだけどねー…」

342: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:15:24.37 ID:OyyP/ZgXo
真姫「…花陽。あなたの趣味にとやかく言うつもりはないけど、趣味は趣味のうちに留めておいてね」

花陽「えぇっ!?あ、わ、私がそういうそれってわけじゃなくて、あの…、ていうかそんな趣味ないよ!」

真姫「今更言い逃れもどうなのよ。…わ、私も少しゆ、百合とか嫌いじゃないし…。共感できるけど」

花陽「真姫ちゃんもなの!?あ、も、っていうか…真姫ちゃんそうだったんだ…」

真姫「だけど、あくまで二次元の話!リアルまで持ち込むのはどうかと思うわ」

花陽「わ、わかってるよ。うん…。私も真姫ちゃん好きだけど、友達としての好き、だからね?引かないでね?」

真姫「大丈夫。私も好きよ、花陽」

花陽「ぶっ…!い、イイ…!もう一回言って!」

真姫「…反省してないわね」

希「というわけで最後はうちらやねー」

にこ「どうして希さんと一緒に入らないといけないんですか…」

希「時短よ時短。お風呂のあとは楽しいおしゃべりタイムが待ってるんやからー」

にこ「寝たいんですけど…。もう11時だし…」

希「寝るだけじゃ体力は回復しないんよ!楽しいことを溜め込んで寝ると、それが身体を癒してくれるんやよ」

にこ「説得力ないわね…」

希「じゃ、背中流そっかー」

にこ「え、先輩に先やらせるなんて悪いですよ…」

希「ええのええの。実際はうちとにこっち同い年やねんし」

にこ「そ、それはそうですけど…」

希「浪人してまでUTX入るとか、すごいよねー。そんなに入りたかったん?」

にこ「えぇ…、そうですね。A-RISEが好きだったから、絶対にUTX、って決めてて…」

にこ「正直一年目で落ちた時はすごいショックで、終わったって思いましたけど…」

にこ「両親に浪人したいって伝えたら承諾してくれて…、ホント、感謝してもしきれないくらいです」

希「なんかにこっちの敬語気持ちわるいなー。同い年やしタメ語でいいよ?」

にこ「私の話に反応はナシなのっ!?」

希「あ、そんな感じ。いや、そういえば前も聞いたな、って思い出して」

にこ「…そういえば言ったわね。だから私が浪人してるって知ってるんでしょ」

希「せやったせやった。はー、浪人せんかったらにこっちと同級生やったのにねー。もったいない」

にこ「もったいないってどういう意味よ」

希「もっと早くに知り合えたらよかったな、ってことやん。そしたら仲のいい友達になれたと思うんよ」

希「や、もっと仲のいい友達に、かな?」

にこ「それなら、よかったかもね。…でも私、正直浪人してよかったって思ってる」

希「なんで?」

にこ「…今年のA-RISEには、多分、どうやっても入れなかったと思うから」

にこ「綺羅さんも、統堂さんも、優木さんも…、私とはレベルが違うって感じるわ」

にこ「あぁいうのを天才、っていうんだなって…近くで見てわかったもの」

希「…そっか」

343: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:16:18.16 ID:OyyP/ZgXo
にこ「…そういえば、なんか浴槽のお湯少なくない?」

希「あー、これは多分真姫ちゃんがことりちゃんと海未ちゃんのお出汁が取れたお湯やからって飲んじゃったんかな」

にこ「え、そんな子なの!?」

希「冗談やって」

にこ「…なんだ」

希「そのままやとにこっちじゃお腹くらいまでしかお湯届かんし、ま、一緒に入ろか」

にこ「い、一緒に…」

希「ふー…、狭くてごめんね?」

にこ「この状態でもうちのお風呂とそんな大差ないわ。…それより」

にこ「そのでっかい胸はなにしたらそんなに大きくなるのよ…」

希「んふ、羨ましい?」

にこ「…羨ましくはないけど」

希「にこっちのちっちゃいカラダに大きい胸は似合わんしね。そのつるぺったんがお似合いやよー」

にこ「…っ」

希「あれ?もしかして傷ついた?じ、冗談やよ?」

にこ「な、なにホンキで心配してんのよ!気にしてないわよ!」

希「そ、そっか…。ならいいけど」

希「あ、にこっちは学校では上手くやっていけてる?あれから一度も相談に来てないけど…」

にこ「え…、あ、あぁ…。平気よ。うまくやっていってるつもり」

希「そう、それはよかった」

にこ「…」

希の家 リビング

にこ「う、ちょっとブカブカだけど…着れないことはないわね」

ことり「きゃー!にこちゃんカワイイ!えへへー、これことりのお気に入りなんです」

海未「花陽、その寝間着は…」

花陽「え、ネグリジェですけど…」

海未「そ、そんな格好で寝るんですか…!?せくしーです…!」

真姫「そういう海未は浴衣なのね…。旅館か」

海未「私も…そういったネグリジェとやらを着てみたかったりします…。交換しますか?」

花陽「いやそれは…」

希「お!みんな着替えたねー。じゃ、いっちょ記念撮影といこか!」

にこ「なんで記念撮影…」

希「まーまー理由はいいやん!ささ、並んで並んでー…カメラを置いて…」

花陽「ち、ちょっと急すぎないですか…。えと…」

希「はよはよ!もうタイマーの時間くるよー!せーの、はい、チー…」

パシャッ

希「あ」

真姫「…多分中途半端な顔になってるでしょうね」

344: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:16:54.63 ID:OyyP/ZgXo
海未「それでは、まず布団を敷いておきましょう。いつ眠くなるともわかりませんからね」シキシキ

ことり「わぁ、おふとんふかふかですべすべ~!はぁぁ…、気持ちいい…」グテー

海未「こ、ことり…。まだ敷き終わってないので寝転がるのはやめてください…」

にこ「…」

にこ(なんか真姫ちゃんと希さんに押し切られて流れでお泊りすることになっちゃったけど…)

にこ(私がここにいていいのかな…)

にこ(なんか、場違いな気がする)

にこ(確かに大勢で食べるご飯は美味しかったし、お風呂も気持ち良かったけど…)

にこ(ゆったりしすぎたせいでいつもならもうとっくに寝てる時間を越しちゃってるし…)

にこ(なのにまだなんだか寝る空気じゃなさそうだし…)

にこ(ホントにこれで疲れが取れるのぉ…?いつもよりヘトヘトになるんじゃ…)

希「…にこっち?」

にこ「ふわっ!!?な、なによ…」

希「なーんかボーっとしてるなーって。眠い?」

にこ「眠いかって言われれば…そうでもないけど」

希「そう。眠くなったら素直に言いよ?」

花陽「あの、それでこれから何するんですか?もうご飯もお風呂も済ませちゃったし…」

真姫「あとは寝るだけじゃないの?」

希「いやいやー、これからがお楽しみなんやないの」

ことり「お楽しみ?」

希「こうやって寝る前に円になって枕を抱えながらいつもじゃ出来ないアレやコレやを語り合う…」

希「合宿の一大イベントの一つやん!いわゆるピロートークってやつやね!」

海未「ほう…、これが巷に言うところのピロートークなのですか…」

花陽「違うよ!?枕を抱えるからって意味じゃないからね!?」

真姫「どちらかといえば…女子トークね」

ことり「じ、女子トーク!んふふ、なんだか甘い話も期待できちゃうのかなぁ?」

海未「この5人で甘い話を期待するのは難しいと思いますが…一部を除いては」

花陽「はっ…!視線を感じる…!」

希「海未ちゃん、5人やなくて6人やよ?今日はにこっちも来てるんやから。ね?」

にこ「え?あ、あぁ…。そう、なのかしら」

真姫「…で?結局何を話すのよ」

希「んー…、せやねぇ…」

希「特に決めてないわ」

真姫「おいおい…」

345: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:17:45.37 ID:OyyP/ZgXo
海未「自然に集まるならまだしも、こうして急に何かを話せと言われると…」

ことり「何を話したらいいのかわかんないね」

花陽「そもそもいつもじゃ出来ない会話って…どんな会話?」

真姫「私たち基本的にそんなに隠し事といった隠し事があるわけでもなし…」

海未「企画倒れでは?」

希「ぐぬっ…!そう言われるとキツいかも…」

にこ「…じゃあもう寝たらいいんじゃないの?」

希「そ、それもなんか寂しいやん!くっ…、こうなったら最終兵器…!」

希「じゃじゃん!これからの人生を占う、スピリチュアルなボードゲームも用意してあんねんよ!」ババーン

希「話題が尽きれば出そうと思ってたんやけど、まさかこんな早くに出すことになろうとは…」

花陽「どれだけ夜更かしする予定だったんですか…」

にこ「ていうか、あんたたちも明日朝から練習なんでしょ?こんな遅くまで起きてていいの?」

海未「いいのかと言われるとそうでもないのですが…」

ことり「別に寝てもいいんだけどね」

にこ「でしょ?だったら…」

希「もー、にこっちー!!今日はお泊まり会やねんから、空気感を楽しもよ!」

にこ「って言われても、何か話せって言われても私は…」

にこ「…あなたたちと共通の話題とか、少ないと思うし」

にこ「なんなら私だけ先に寝て、後はあなたたちで…」

真姫「…あ。あるじゃない、共通の話題」

にこ「え?」

真姫「アイドルよ。スクールアイドル」

真姫「ここにいる6人…いえ、希を除いた5人は、偶然にもスクールアイドルなわけじゃない?」

希「ありゃ、今度はうちが除けもん?」

真姫「…アイドル応援部ってことも含めれば、全員がスクールアイドルに何らかの関係があるわけでしょ」

ことり「偶然っていうか、真姫ちゃんが集めたんだけどね。私達を」

真姫「そうでもあるけど、えー…そういうわけだから、何かアイドルにまつわる話なら盛り上がるんじゃないかしら」

花陽「アイドルにまつわる…」

海未「プロのアイドルや他校のスクールアイドルに関しては花陽は詳しいでしょうが、私たちはまだそれほど知っているわけでも…」

真姫「んー…、だったら自分の話。自分がスクールアイドルであることに対して、何か思うことを発露していくとか、ね」

ことり「思うことかぁ…。それならあるかも」

真姫「にこちゃんも、いっぱい言いたいことあるんじゃないの?もしよければ教えて欲しいんだけど」

にこ「私も?」

真姫「ここにいる誰よりも、スクールアイドルを目指している期間は長いんだから。みんなも興味があるでしょう?」

花陽「うんっ!にこにーのアイドル観については日頃から気になっていて…」

真姫「…特にこの子がね。どう?にこちゃん」

にこ「…」

にこ「…はぁ。いいわよ。乗り気ではないけど…寝るのは後にしてあげるわ」

346: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:18:47.28 ID:OyyP/ZgXo
希「じゃあ結局うちはスクールアイドルやないし、ハブられてるんやね…」

真姫「えっと、それは…」

希「いいもん!だったらうちはうちで、女子トークの進行役を務めさせてもらうのだ!」

希「てなわけでー、最初に語るのは誰かな誰かな~?場をあっためてくれる最初の語り部は~?」

一同「…」

希「おや?誰も手が挙がらんね」

花陽「最初と言われると緊張するから…」

ことり「私も…」

海未「私もです…」

にこ「わ、私も」

希「仕方ないなー。じゃあここは司会進行役のうちが独断で決めさせてもらおっかなぁ~ん…」

希「最初の語り部はぁ~…」

真姫「…私、でしょ?」

希「お、なんでわかったん?」

真姫「なんとなくあなたの醸し出す空気でわかるわよ。…ま、私から言い出したことだし」

真姫「じゃ、私からね。えー…、ごほんっ」

真姫「私はこうして、花陽、ことり、海未を集めてC☆cuteを発足した張本人ではあるんだけど…」

真姫「元々、私はそんなことをするつもりなんてなかった」

真姫「この世界…、この学校で、ただ静かに時が過ぎるのを待つ…。そうするつもりだったの」

花陽「それは、出席日数的なこと?」

真姫「え、ま、まぁ…。そんなところね。そろそろアブないと思って」

真姫「でも、そんな私を動かしたのは、花陽の涙だった」

真姫「理想を打ち砕くような現実を目の当たりにして、行く道を失ってしまった花陽のあの顔」

真姫「…きっと一生忘れられないと思う」

ことり「花陽ちゃんの泣き顔かぁ…。この前の凛ちゃん襲撃とはまた別の?」

真姫「まぁね…。あれはパニックだったけど、あの時のは…。見ているこちらも心を締め付けられそうな…」

花陽「や、やめてよ…なんか恥ずかしいよ…」

海未「しかし、事勿れ主義を貫こうとしていた真姫にそこまでさせるほどの泣き顔とは…」

真姫「それだけ悲痛だったのよ。だから私は、花陽に花陽の夢見たスクールアイドルを見せたくて、C☆cuteを結成したの」

真姫「花陽が凛のために、ことりと海未が穂乃果のために、と同じように、私のスクールアイドルとしての行動原理は花陽のため、ってことなのよね。実は」

真姫「体のいい言葉を並び立ててことりや海未を勧誘したけど、本音のところはそういうことだから、っていうのをわかっておいて欲しくて」

ことり「つまり真姫ちゃんはいざとなれば私や海未ちゃんより花陽ちゃんを取るってこと?」

真姫「そう…、なるわね。あまりそんな事態にはなってほしくはないけど」

海未「いえ、それでいいと思います。どちらも取ろうとして捨て鉢になるより、ずっといい選択だと思いますよ」

ことり「…そうだね。うん、そうだよ!もしどちらかを見捨てちゃっても、また後になって取り戻せばいいんだもんね!」

真姫「ありがとう。じゃあ私からはこれくらいね。これで場は温まったかしら?」

希「んー、いい感じいい感じ!じゃあ次は~…」

にこ「…誰かのために、スクールアイドルを…」

347: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:19:38.54 ID:OyyP/ZgXo
希「じゃ、加入順で行こかな。次花陽ちゃん!」

花陽「あ、私…えーっと、私はその…真姫ちゃんみたいになんだか深いことじゃないけど…」

真姫「別になんだっていいわよ。言いたいことなら」

花陽「そう?じゃあ言うね…」

花陽「私、最初真姫ちゃんにスクールアイドルはじめようって言われたときはすごく不安だった…」

花陽「本当にそれで私の目指すスクールアイドルになれるのかな、って…」

花陽「真姫ちゃんに説得されて、それなら…って決意した後も、ほんのちょっぴり」

花陽「でもね!でもっ…、今私、とっても楽しい!」

花陽「みんなで一から何かを作り出していくっていうのが、なんにも縛られずに自由な発想でステージを作り上げていくのが!」

花陽「まだほんの少しだけだけど、真姫ちゃんの言ってくれたとおり、私の夢は叶い始めてるんだと思う…」

花陽「あとは、誰もが憧れるような、そんなすごいアイドルになれれば…私の夢は叶うの」

花陽「えと、だからその…えーっと…」

花陽「ここ、これからもよろしくお願いします!」

真姫「え、よ、よろしくね」

花陽「…い、以上です」

海未「あ、終わりですか…。花陽らしい尻すぼみな語りでしたね」

ことり「でも花陽ちゃんの夢は着々と達成しつつあるんだよね。いいなぁ」

花陽「えへへ…。あ、じゃあ次はことりちゃん?」

ことり「あ、私かぁ…。んーっと、そうだなぁ…」

ことり「私は海未ちゃんの笑顔が見れて、とりあえずすごい幸せだなぁって」

海未「え…」

ことり「誘われたときは必死になって悩んで、ずっと立ち止まったままを選択しそうになってたけど」

ことり「いざ選んでみたらなんてことなくって…、こっちの道のほうがぜーったい楽しい道だったって確信を持って言える!」

ことり「穂乃果ちゃんの顔色を伺わずに済むしね。それは少し寂しくもあるけど」

ことり「だけどいつか、またあの頃と同じ日を取り戻すって決めたんだもん。後悔なんて、一つもないよ」

ことり「あとは衣装!自分で作って自分で着られるのはすごいいい!これは思わぬ楽しみでしたなぁ」

ことり「とまぁ、これくらいかな?はい、海未ちゃんどうぞ」

海未「えっ…、あ、はぁ…。えらくあっさりしてますね…」

海未「えーっと、私は…、なんといえばいいのか…」

海未「その…言いたいことはたくさんあるのですが言葉にすればとても長くなってしまいそうで…」

花陽「が、頑張って…!一番言いたいことをスッて言えばそれでいいんです!」

海未「そうですか…?で、では…っ!」

海未「わ、私はっ…、もっと大きな場所で、大勢のお客さまの前で歌ってみたいですっ!」

海未「この間のA-RISEのように…、たくさんの人々に囲まれて…!」

海未「今は穂乃果より何より…、これを一番の念頭において、スクールアイドルをやっています…!」

希「ほうほう…。海未ちゃんは思ってたより目立ちたがり屋やねんね」

海未「ぐっ…、恥ずかしながら…。メイドの頃の演じていた私は、やはり内なる欲望だったのでしょうか…」

真姫「恥じることなんてないわよ。その気概があれば、どんな壁も乗り越えていけるはずよ。海未」

海未「そ、そうであればよいですね…。うぅぅ…」

希「それじゃ、うちは飛ばして…最後、にこっち。何かある?」

にこ「…」

348: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:20:39.58 ID:OyyP/ZgXo
にこ「…」

ことり「にこちゃん?もしかして何もない?」

花陽「なければ無理して言わなくても…」

にこ「…いえ。そうじゃないの」

にこ「圧倒されて、っていうのかしら…。なんだか…、とても驚いちゃって」

海未「驚く?」

にこ「心の底から楽しいって言えたり、幸せだって言えたり…。まぁ目立ちたいのは私も一緒だけど」

にこ「なにより、誰かのためにスクールアイドルをやっているっていうのが、ビックリよ」

にこ「私は、私のためだけにスクールアイドルをやっているから」

真姫「…私以外は、ただ誰かのためだけってわけでもないんだけどね」

真姫「友達ともう一度友達になりたい、っていう、自分の願いの為でもあるから」

にこ「それでも、スクールアイドルになりたい、ってだけじゃ…ないのよね」

にこ「…なんだか、羨ましいわね」

希「羨ましい?」

にこ「私にはずっとそれしかなかったから」

にこ「嫌なことがあっても、不幸だって思えても、隅に転がってる石ころのような扱いを受けていても」

にこ「私はただスクールアイドルのことだけを考えて、頑張ってきたから」

にこ「あなたたちみたいに思えるのが羨ましくて」

真姫「…やっぱり、アイドル専攻は大変?」

にこ「えぇ、すごく。今までトップを維持できてたのが信じられないくらいね」

にこ「毎日毎日、蹴落とし合い。自分が上に上がるために、他人の心を折ることを一切厭わない」

にこ「正直…嫌気がさしてたまらないわ」

真姫「…」

海未「アイドル専攻…。聞いてはいましたが、やはり壮絶な場所、なのですね」

花陽「あ、だ、だったら…!」

花陽「にこにーも、その…うちに来ませんか!?アイドル専攻やめて、C☆cuteに!」

にこ「ここに?…ふふっ、そうね…」

にこ「…それだけは、絶対にありえないわ」

花陽「えっ…、ど、どうして…。にこにーも目指すところは同じなんですよね!?スクールアイドルの頂点!」

花陽「なら私たちと一緒に目指すのも…」

にこ「今の私は、もうただのスクールアイドルを目指している私じゃない」

にこ「私が目指しているものは一つ…。A-RISEなの」

ことり「A-RISEにそこまで執着してるの?どうして?」

にこ「簡単な話よ。子供が特撮番組見て、アレになりたいって思うのと一緒」

にこ「初めて見たA-RISEが、私にとっては衝撃的で…、私もこうなりたいって思ったの」

にこ「だから親に無理言ってUTXに入学させてもらったし、そばでA-RISEを見ることで、これ以外は考えられないってずっと思ってる」

にこ「A-RISEは私の…憧れなのよ」

349: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:21:15.48 ID:OyyP/ZgXo
花陽「憧れ…」

真姫「それは、ただのスクールアイドルじゃ満足できないほどに、大きいものなの?」

にこ「うん。UTXで過ごしているうちに、どんどん大きくなっていった気持ち」

にこ「ただのアイドルじゃない、トップアイドル」

にこ「圧倒的とも言える、スクールアイドルの頂点としてのシンボル」

にこ「私の中のA-RISEは、最強の代名詞なの」

海未「しかし、私たちもトップアイドルを目指しているのは同じです。それでも加入を嫌がるっていうのは…」

ことり「私たちはその器じゃない、って思ってるってこと?」

にこ「そ、そういうわけじゃなくて…。私は絶対王者としてのA-RISEがカッコイイって思ってるから」

にこ「私もその中に名を連ねたい。この先、生きていく上での勲章にしたいのよ」

真姫「トップアイドルだけでも、A-RISEだけでもなく…、トップアイドルのA-RISEがにこちゃんにとっての憧れなのね」

にこ「そういうこと。それに一度はトップを獲れるところまできたんだし、今更諦めたくないわよ」

にこ「…そう、今更諦められない。どれだけ辛いことがあっても…」

希「…」

花陽「強いんですね。私は、諦めちゃったから…」

にこ「そんなこと、…うぅん、そうよ。私は強いの」

にこ「強いって思わなくちゃ、やっていけない」

にこ「…少しでもダメだと思うと、心が折れてしまうから」

真姫「…」

真姫「ねぇ、にこちゃんは…今のアイドル専攻のやり方でいいと思ってる?」

真姫「他人を踏み台にして頂点を掴もうとする今の体制で」

にこ「それは…、私は、好きじゃない」

にこ「練習が厳しすぎて、アイドルを嫌いになっていった子を何人もこの目で見てきた」

にこ「いつか自分もこうなるかもしれないって恐怖に耐えながら、それでも我慢してここまで登ってきた」

にこ「だけど、こんなことは終わらせるべきよ。他人を蹴落とすより、真に自分を輝かせる人が、最もアイドルに相応しいって私は思ってるから」

にこ「だから尚更、A-RISEを諦めるなんて出来ない!誰かが夢見たアイドルを、嘘のまま終わらせたくない!」

にこ「A-RISEは、私が変える。頂点まで勝ち上がって、内部から」

花陽「内側から…」

花陽「…私と、まるで逆だ…」

真姫「そうね…」

真姫(花陽とにこちゃんは似ている。全てが華やかだと思っていたアイドルの現実に傷ついて)

真姫(その上で諦めた者と、諦めなかった者)

真姫(別の道から夢を叶えようとする花陽と、飽くまで自分の道を突き進み、醜悪な現実を自らの理想で塗り替えようとするにこちゃん)

真姫(どちらも楽な道ではないけれど…)

花陽「傷つくことから一度も逃げなかった…。すごいな…」

花陽「…にこ先輩はやっぱり、すごいアイドルだと思います」

花陽「こんな人がA-RISEになっちゃったら、私たち本当に勝てるのかなぁ…」

真姫「それは私も…不安なところね」

350: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:22:04.42 ID:OyyP/ZgXo
にこ「ふふ、照れること言ってくれるわね。…でも」

にこ「覚悟がどれだけ強くても、今のザマじゃあね…」

にこ「今までだって、穂乃果や凛になんとか付いていってたくらいだったし…」

海未「穂乃果…、やっぱりすごいんですか?」

にこ「えぇ、すごい…。なんていうかオーラが違うわよね…」

にこ「人を惹きつける才能っていうのかしら…。ステージ上でのあの子にはいつも驚かされる」

にこ「そして同時に、普段は人を寄せ付けないオーラを放って…、かなり怖いわね」

ことり「昔は穂乃果ちゃん、誰とでも仲良くなれる子だったのにね…」

にこ「優しくないってわけじゃないんだけど…、むしろ気を遣ってくれるいい子ではあるんだけど」

にこ「言葉の端々から冷徹さを感じるのよね…。感情が凍りついてるような」

にこ「…ステージの上の穂乃果は好きだけど、それ以外は…私はアイドルとしては、好きじゃないわ」

にこ「もっとアイドルは、普段からにこやかであるべきだもの!にこっ!…みたいなね?」

希「うんうんその笑顔その笑顔!にこっちも話せるようになってきたやん!」

にこ「あ、あはは…、まぁね…。で、そう…。凛も…」

にこ「…あの子は、色々と規格外過ぎるわ。あんなハードな練習をほぼ完璧にこなして、全然元気なんだもの」

にこ「弱音も吐かないし、泣いてるところも見たことない…。でも多分、最初からそうじゃなかったんだと思う」

にこ「…どこかで、タガが外れちゃって…、限界以上の力が凛を支えてるんだと思うわ」

にこ「いつか凛は…壊れちゃうんじゃないかって心配」

花陽「えっ…!凛ちゃんが…?」

にこ「わ、わかんないけどね?私の勝手な考えってだけだし…」

にこ「あ、でもあの生意気な性格は直すべきだと思うわ!人を敬わないのはアイドルとして致命的だもの!」

真姫「それには私も同意ね…。あの子には優しい凛に戻ってもらいたいものだけど…」

ことり「だけどにこちゃんもそんなすごい二人についていけるだけの地力はあるんでしょ?全然すごいよ!」

希「せやよ。あとはうまーく身体をリラックスさせれば簡単にまた上へ登っていけるって」

にこ「リラックスって…ホントにあなたを信頼してもいいの?逆に疲れさせようとしてるとか…」

希「おやぁ?うちを信用してない…?元部員ながらこれはちょっと許せませんなぁ~…」

希「おしおきの~…わしわしをくらえっ!」ガバァッ!!

にこ「んぎゃぁぁっ!!ちょっ…ひぃっ!!助けっ…あんっ」

ことり「はっ!甘い声!もしかしてそれ気持ちいい?」

にこ「そんなんじゃ…きゃうんっ!!にゃ、にゃいからぁっ…!ひゃんっ!」

花陽「は、破廉恥です…!」

海未「この程度ならアリじゃないですか?」

真姫「…なんだか色々いつもと違って面白いわね…」

351: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:23:02.69 ID:OyyP/ZgXo
にこ「はぁっ…、はぁっ…!」

希「うんうん、揉み心地も良かったし疲れ取れてきてるん違う?」

にこ「ウソでしょっ!?今のでまた疲れたわよ!」

希「まーまー。さ、お話の続き。みんなにこっちの話を心待ちにしてるよ?」

にこ「えっ、いやそんな…」

一同「じー…」

にこ「な、なんでそんな興味津津なのよ…」

花陽「にこ先輩のお話…、聞いてて飽きないです!」

海未「アイドルの姿勢に関してはとても参考になります」

ことり「声が好きかなぁ」

真姫「まぁ、にこちゃんのお話聞きたいし」

にこ「なんか一人だけ趣向が違う人いたんだけど…いやいいんだけどね」

にこ「でもこれ以上何を語れと…」

希「じゃあ…にこっちの好きなA-RISEについて何かないかな?」

にこ「A-RISEね…。それならたくさんあるわ」

にこ「私が憧れたA-RISEは過去のA-RISE…、今のA-RISEの先輩にあたる人なんだけどね」

にこ「その人たちもすごかったけど…、でも今のA-RISEもそれに劣らずすごいのよ!」

海未「ほ、ほう…、そうなのですか。どのように?」

にこ「きっと私がこの年のアイドル専攻だったら絶望してたってくらいに、みんなレベルが段違いでね…」

にこ「まず歌手専攻の優木あんじゅ…。歌が上手なのもあるけど、何よりそのキャラクター性が抜群!」

にこ「いつもおっとりしてて守ってあげたくなるようなお姫様キャラ…かと思えばそれは計算尽くで…」

にこ「と思いきややっぱり天然?って思わせるような、底の見えない独特の雰囲気に魅了されるファンは多数なの!」

ことり「へぇ…」

にこ「そしてモデル専攻の統堂英玲奈!私の直属の先輩になる彼女だけど…」

にこ「切れ長の瞳と学生とは思えないそのスタイルで他を圧倒する姿はまさに女王の異名にふさわしいと言えるわ…」

にこ「既にスクールアイドルを特集する雑誌のみならず、一流のファッション雑誌のモデルを務めるほどの知名度を持つ、まさにトップアイドルなのよ…!」

花陽「なるほどぉっ…!!」

にこ「そしてなんといっても…ダンサー専攻の綺羅ツバサ!ツバサ様!彼女は最高よ!!」

にこ「その小さい体からはじき出されるバネのような機敏な動き!ダンスの貴公子の称号は伊達じゃないわね!」

にこ「穂乃果以上に人を惹きつけるカリスマ性を持っていて、あらゆるスクールアイドルの中で最たる人気を誇る私が尊敬してやまないお方なの!」

にこ「もうなんていうか何から何までカッコいいのよ…!全部完璧で隙がないっていうか…、それでもファンとの接し方はとっても紳士的で…!」

真姫「…ふぅん、ダンスね…」

にこ「私がこの年にUTXにいられたことを誇りに思うくらい、今のA-RISEを尊敬してるのよ!」

にこ「はぁぁ…!憧れられる身分で良かった…!もし私が浪人してなかったら…」

ことり「え、ロウニン?」

にこ「おっと何でもない!とにかく、私じゃ追いつけないレベルですごい人たちなのよ!」

にこ「世間での評価もこれまでのA-RISEを上回るもので、今じゃグッズの売上は…」

希「…にこっちにこっち」

にこ「なに!?」

希「声、大きい。もう夜やから、もう少し下げて」

にこ「…あ、ご、ごめんなさい…」ショボン

352: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:23:39.22 ID:OyyP/ZgXo
真姫(にこちゃんのA-RISE話はそれからも、声のボリュームを少し下げて続いた)

真姫(花陽との熱いトークにさすがに付いていきづらくなった私たちは…)

希「んー、じゃここらでついに出しますか!ででん!これからの人生を占うスピリチュアルなボードゲーム~!」

ことり「略して人生ゲームだね」

真姫(もう真夜中って時間からボードゲームに勤しむことに)

真姫(でもこれがなかなか盛り上がって…)

海未「1,2,3…あ、子供が生まれました」

にこ「また!?」

花陽「どれだけご祝儀を毟り取れば気が済むんですか!?」

海未「こちらも養育費が大変なんです!さぁ早くお金を!」

ことり「きたっ!転職だよ!」

真姫「まさかここに来て弁護士ですって…!?」

ことり「ふふふ、これからは勝ち組の人生だね…!」

海未「辛すぎます…。早く芸人から脱却したいです…」

にこ「私なんてギャンブラーよ…」

希「無職楽しー」

ことり「物件物件!えへへー、これだけ貯めてれば…」

希「1,2,3,4,5…あ、バブル崩壊。物件の価値が大幅に暴落…」

ことり「あんぎゃああああああああああああああああああああ!!!」

花陽「しー…静かにー…」

にこ「へへん!溜め込んでるからよ!ざまぁみろっての!」

真姫「これでほぼことりは無一文…。人生って怖いわね」

ことり「自殺ってコマはないですかー?」

花陽「つ、ついに息子が独り立ち…!親元を離れる時が来たんですね…!」

ことり「小鳥の翼がついに大きくなって旅立ちの日を迎えるんだよぉっ…!」

にこ「うぅ…!他人の子だけど今まで大変なこともいっぱいあったものね…。なんだか泣けてきたわ…」

海未「わ、私の子供たちが一向に働いてくれないんですが…。もう家計が火の車ですよ…」

希「無職は楽しいからね仕方ないね」

にこ「一着は私か海未ちゃんのどちらかに委ねられたわね…!」

海未「次のにこの出目で全てが決まります…!」

にこ「こ、来いっ!」カラカラカラ…

にこ「来たっ!10だわ!これで…」

希「あ、このゲームゴールするときはぴったり止まらないとその分逆走するから」

にこ「なん、だと…!?」

花陽「逆走する人生ってなんなんですか…」

真姫(結果的になんやかんやあって、株を一番所有してた花陽の優勝だったわ)

真姫(ちなみに最下位は…、私だった)

353: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:24:23.28 ID:OyyP/ZgXo
真姫「な、なんで私が…特に波風なく進んだはずなのに…」

にこ「劇的なドラマがない人生なんてそんなものってことよ!」

花陽「言えてるのかそうでないのか…」

海未「結局私が死ぬまで子供たちには脛を齧られっぱなしでした…。ゴール順位のおかげで資産はそこそこありましたが」

ことり「海未ちゃんはそこが痛かったねー。私は物件がぁ…」

希「逆に株価が大幅に急上昇したからそんときに花陽ちゃんが差をつけたって感じやったね」

花陽「よ、よくわかんなかったけど買っておいて良かったぁ…!」

海未「さて、そろそろ…眠たくなってきましたね」

ことり「ふわぁぁぁあぅ…、うん、そうかも…」

にこ「うげっ!もうこんな時間…!?いつもより何時間も遅いんだけど…」

真姫「私たちも明日は早朝からの練習よ。さすがに寝ましょうか」

希「せやねー。じゃ、お布団に包まれて寝よう!」

モフッ…

花陽「はわぁぁ…、気持ちいい…」

ことり「毛布すべすべぇ…あったかぁい…くかー…」

海未「寝るの早いですね…。こんなところまで以前の穂乃果そっくりになって…」

希「じゃ、電気消すねー」ポチッ

にこ「きゃっ…、真っ暗…」

真姫「そりゃあ電気消したんだからそうでしょ」

にこ「全部暗いのは慣れてないのよぉ…!の、希さん、豆電気だけでも…」

希「ごめーん、うちのそれそういう機能ついてないやつなんよー」

にこ「ぬぁっ…!」

希(嘘やけど)

真姫「まぁいいじゃない。目をつぶれば一緒よ」

にこ「う、うん…。そうね、そう…」

にこ「…」

希「ちゅっ」

にこ「ひぃぃっ!!首筋ぞわっとした!」

希「にひひひひ、にこっち驚き過ぎー」

にこ「ちょっと!?なにして…」

真姫「つつつー…」

にこ「にひゃんっ!!ほっぺ!」

真姫「ふふ、暗いと敏感になるのね」

にこ「もうやめっ…」

希「わしわし」

にこ「だぁっ!!だからやめてって言って…」

海未「明日は早いんですからおとなしく寝てくださいぃっ!!」

のぞにこまき「「「はい」」」

354: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:25:51.65 ID:OyyP/ZgXo
「すー…、すー…」

にこ「…」

にこ(こんな時間に寝て明日、…っていうか今日、大丈夫なのかしら)

にこ(もう随分と夜中…。こんなに遅く起きてたのっていつぶりかな…)

にこ(希さんってば、疲れを取るって言ってたけど、逆に疲れがたまったようにしか思えないんだけど…)

にこ(ご飯をたっぷり食べてお腹膨れて、アイドルのことをいっぱい喋り倒して、ボードゲームで盛り上がって…)

にこ(練習後とは思えないくらい、騒いで…)

にこ(…でも)

希「…にこっち」

にこ「…」

希「にこっち、起きてる?」

にこ「なによ。もう寝なさいって言われたじゃない」

希「んふ…、せやけどね。ま、一つだけ」

希「にこっち…」

希「…楽しかった?」

にこ「…」

にこ「…えぇ。とても、楽しかったわ」

にこ「こんなに楽しかったのは…久しぶり」

希「そっか…。それなら良かった」

希「にこっち連れてきて、正解やった…」

希「明日も、頑張ってな…。にこっち…」

にこ「ふふっ、もう明日じゃなくて今日…」

希「すぴー…くかー…」

にこ「…ったく、こっちが喋ろうとしたらすぐ寝るのね」

にこ「…ばか。聞こえてないから好き放題言ってやるわ。ばか、ばーか、あほー」

にこ「それから…」

にこ「…ありがとう」

希「くかー…」

にこ「…おやすみ」

にこ「んすぅ…」

真姫「…」

355: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:26:22.85 ID:OyyP/ZgXo
翌朝

ピピピピ… ピピピピ…

にこ「ん…んんっ…!ふぅっ…」ピピピ…カチャッ

にこ「ふわぁぁぁぁぁ…やっぱ眠ぅ…」

にこ「早く、着替えて行く準備しなきゃ…」ノッソノッソ…

希「あ、にこっちおはよ」

にこ「あ、希さん…」

希「早いねー、もう出るん?」

にこ「8時集合だからね…。アンタたちはゆっくりでいいわね…」

希「この子たちは10時からスタートらしいから。うちはそのためのサポートやよ」

にこ「…もしかして、お弁当作り?」

希「まぁねー。身体にいいもの、摂ってもらわないとね」

にこ「へぇ、さすがはアイドル応援部部長さんね…」

希「にこっちの分も用意してあるよ」

にこ「え、そこまでしてくれなくてもいいのに…」

希「ダメダメ!ここまでしないと応援部部長の名が廃るってものやん!」

希「さ、朝ごはんもあるから、とっとと顔洗ってきぃね?」

にこ「わかった…わかりました」

にこ「うわ…。これ朝ごはん…?」

希「そ。はちみつとお砂糖たっぷり、フレンチトーストとホットケーキやよ」

にこ「ちょっと多くないかしら…」

希「朝たっぷり栄養を摂ることがスタミナを長持ちする秘訣なんよ!ささ、牛乳もあるし、お食べ」

にこ「じゃあ、いただきます…。もぐっ…」

にこ「…あ、美味しい」

希「せやろ?遠慮せずに、ぜーんぶ食べよ?」

にこ「うんっ。もぐもぐ…ごくんっ…」

にこ「ふぅっ…。お腹いっぱい…。ごちそうさまでした」

希「はい、にこっちの制服と、洗濯しておいた練習着。まだちょっと湿ってるかもやけど」

にこ「いつの間に…。あ、ありがとうございます」

希「何のこれしき。うちのお仕事やから気にせんとって!」

356: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:27:27.27 ID:OyyP/ZgXo
にこ「土曜日に制服っていうのもおかしな話ね…」

希「ま、お泊りやし仕方ないよね。はい、これお弁当」

にこ「本当に…。何もここまでしてくれなくても…」

希「だから、これがうちのお仕事、ひいては部活動やねんし!気にせんといて!」

にこ「わ、わかりました!じゃあ…美味しくいただきます」

希「それでよろしい」

にこ「そ、それじゃ…行ってくるからね!」

希「ん、行ってらっしゃい。…あ、にこっち」

にこ「な、なに?」

希「疲れ、取れたやろ?」

にこ「えっ…、あ…」

にこ「…そうかも」

希「ふふ、良かった」

にこ「なんか不思議ね…。あんなに騒いでたのに…」

希「これがうちのスピリチュアルパワーやよ」

にこ「そ、そうなんだ…」

希「…にこっち。また、大変だな、辛いな、って思ったら、いつでもおいで」

希「それまで、お弁当箱は持ってていいから。今度ウチくるときがあったら、返してね」

にこ「…うん。そうさせてもらうわ。じゃ、そろそろ時間も時間だから…」

にこ「行ってきます」ガチャッ

希「…うん、いってらっしゃい」

真姫「どうやら、元気になったみたいね。…安心したわ」

希「あ、真姫ちゃん。起きてたんや」

真姫「これでにこちゃんも、またバックダンサーに就けるはず。…ありがとう、希」

希「いやいや、これも真姫ちゃんのおかげやよ」

真姫「私の?」

希「うん。…にこっちのこと、よく見てくれたから」

希「この計画を立てる前、真姫ちゃんがここ数日にこっちの動向を見て気づいたこと教えて、ってうちが言った時」

希「『独り言が大きかった』って教えてくれたおかげで、万全な対策ができたから」

希「独り言が大きいっていうのは、日頃から誰かとの会話を欲しているって心のサインなんよ」

希「つまり、にこっちは身体より、ストレス…心の疲れを日々感じてた」

希「だからこうして、無理矢理にでも誰かと話して、遊んで、盛り上がる機会を設けてあげれば元気になれるって思ったの」

希「日々の辛い出来事も、こういう場所があるって知れたら、頼れる場所があるってわかったら、より耐えられるようになれるし、ね」

真姫「…やっぱり、あなたのおかげだわ。私の情報だけで、そこまで的確に解決法を探し出せるんだもの」

希「まぁ、色々勉強したから。ホント、色々ね…」

真姫「ふぅん…。アイドル応援部もなかなかにすごいところだったのね。そこまでのことを…」

希「…でも、もしにこっちにまだ……があれば、その時は…」

真姫「え?なんて…?」

希「…うぅん!何でもない!さ、真姫ちゃんたちもそろそろ朝ごはんの時間やよ!みんなを起こしてきて!」

真姫「はいはい、わかったわよ」

357: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:27:53.72 ID:OyyP/ZgXo

学校 多目的ホール

にこ「ふっ…、ふっ、はっ…」タンタンタタンッ…

絵里「それじゃ、お昼休憩にします。30分後に練習を再開するから、それまでに昼食、水分補給を済ませること」

にこ「ふぅ…」

にこ(不思議ね…。昨日あれだけ騒いでたのに今は疲れを感じない…)

にこ(いつもより身体が軽く感じるわね)

にこ(凝り固まってたものが解きほぐされたっていうのかしら、そんな感じがする)

にこ(さてと、じゃあせっかくもらったものだし、お弁当、いただきますか)

にこ「えっと、ここに…」モソモソ

にこ「あった。ってよく見ると、可愛らしいお弁当箱ね…。あの人らしくない」

にこ「別になんだっていいけど…じゃ、いただきます」カパッ

にこ「中身はバランスの取れた感じの…あむっ、もぐもぐ…」

にこ「…うん、おいしい」

にこ「…」モグモグ…

女生徒A「…」スタスタ…

ガツンッ

にこ「痛っ…」

女生徒「あら矢澤さん、いたのね。そんなところで縮こまってるから見えなかったわ」

にこ「…」

女生徒「元々小さいあなたが座ってたらそれこそ豆粒みたいで目に止まらなくて」

にこ「…」

にこ(この女は私と同じ、モデル専攻からのアイドル専攻)

にこ(スラっとした体型が自慢で、小さい身体のにこをいつもバカにしてる)

にこ(そのくせこいつ自身は一度も上にあがれてないから、私を僻んでいるってことみたい)

女生徒「ぶつかったついでに聞いておきたいんだけど、最近どうなの?調子は」

女生徒「必死で入ったバックダンサーを下ろされて、来年A-RISEになれるか心配で心配で仕方ないのかしら?」

女生徒「安心して。あなたがバックダンサーに戻れることなんて二度とないから」

女生徒「そもそもあなたがトップにいられたことがおかしかったのよ。発育不全の未熟な身体で恥ずかしくないの?」

女生徒「チビはチビらしく一生…」

にこ「おしゃべりは上手なのね。それをもっとアピールしてきたら少しは上にあがれるんじゃないの?」

女生徒「はぁ…?」

にこ「口のキレくらいダンスもキレが良くなるといいわね。ついでに頭の回転もね」

女生徒「なんっ…!」

にこ「…私のことはどうでもいいけど、あなたは背の低いファンに対してもそんな言葉を吐くつもりなのかしら」

にこ「だとしたら、最低。自分が何のためにアイドルになりたいのか、もう一度考えてみなさい」スタスタ…

女生徒「…っ」ピキッ…

358: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:28:31.87 ID:OyyP/ZgXo
にこ(口だけ達者で、自分を磨こうとしない奴が、このアイドル専攻にはたくさんいる)

にこ(辛い練習を乗り切って、自分は努力してるって、それで満足してる奴らが、いっぱい)

にこ(努力は大変だから、他の奴を蹴落として上に昇って)

にこ(アイドルが何かって、A-RISEの名前がどういうものかって理解できてない愚か者が、ほとんど)

にこ(そんなやつに、負けたくない)

にこ(何を言われようと、何をされようと、私は私の夢に向かって突き進むのみ)

にこ(その決意は曲げない。曲がったりしない)

にこ(今までは孤独で、誰にも理解されなかった私のこの思いだけど)

にこ(分かってくれる人がいるって、昨日理解できたから)

にこ(…もう、ひとりじゃない。応援してくれる人がいるし、同じゴールに向かって争い合えるライバルができた)

にこ(彼女たちの思いに応えるためにも、私はやる)

にこ(もう一度、バックダンサーに舞い戻るっ…!!)

夕方

にこ「ふっ…!だぁっ…!!」タタンッ!キッ!!

にこ「はいっ!」ダンッ!!

絵里「…」

にこ「…ふぅ。どう、ですか…」

絵里「どうって?」

にこ「前より良くなったと、私は思うんですが」

絵里「えぇ、すごく良くなったわ。かなりキレが出たわね、以前と比べて」

にこ「バックダンサーに追いつけたと思うんですけど!」

絵里「それは思い上がりよ。凛にも穂乃果にも追いついたとは言い難いわ」

にこ「…そう、ですか」

絵里「…けれど、再考の余地は大いにありね」

にこ「え?」

絵里「A-RISEの新曲のダンス、明後日までに完璧にしてきなさい」

絵里「明後日、一度で完璧に踊りきれたら、…もう一度バックダンサーに戻してあげる」

にこ「…!本当ですか!?」

絵里「えぇ、本当よ。ただしチャンスは一度きり。それを逃せば…もう次はないと思いなさい」

にこ「わ、わかりましたっ!ありがとうございます!!」

にこ(やった…!チャンスを与えられたっ…!)

にこ(以前ならどれだけ手を伸ばしても届かなかったチャンスが…!)

にこ(まさか本当に、一晩でこんなに変わるなんて…!)

にこ(真姫ちゃんと希さんには、感謝してもしきれないわねっ…!)

359: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:28:58.81 ID:OyyP/ZgXo
絵里「それじゃあ、今日はここまでね。自分に足りていないと思うところがあるなら、自主練習を欠かさずに」

絵里「最後の人は戸締りをきちんとすること。私は帰るから、用事がある人はそれまでにね」

ロッカールーム

にこ「よいしょっ…と、じゃ、お疲れ様でした」

凛「あれ?にこ先輩もう帰るの?今日は居残り練習じゃないんだねー」

にこ「凛…、そうね。あなたと一緒なのは久しぶりね」

凛「聞いたよー?明後日ダンスの試験を通れば戻ってこられるんだってね!」

にこ「…なんで知ってるのよ」

凛「乙女の噂はすぐ響き渡るものなんだよー。で、それなのに残らないんだ。バカ?」

にこ「バカって…。…今日は夕方に帰れるから、妹たちと一緒にご飯を食べるの」

凛「おぉ!家族思いだね!油断して足を掬われたらいいのに!」

にこ「キツいこと言うわねあんたも…。平気よ」

にこ「新曲のダンスならもう完璧に頭に入ってるから」

にこ「…あとは、身体が持つかどうか。それだけよ」

凛「ふーん。えらく自信満々だね。面白くないにゃー」

凛「ま、せいぜい頑張ってね!応援してるにゃ!バイバーイ!」ポンッ

にこ「あいたっ…この、一応先輩…って早っ…、もういないし」

にこ「…でもこれも、凛なりの励ましだと思いましょう」

帰り道

スタスタ…

にこ「あ、そういえば…」

にこ「希さんにお弁当箱、返さないと…」

にこ「…でも確か…」

(希「…にこっち。また、大変だな、辛いな、って思ったら、いつでもおいで」)

(希「それまで、お弁当箱は持ってていいから。今度ウチくるときがあったら、返してね」)

にこ「…」

にこ「そうね。まだ…持っておきましょう。それに、ちゃんと洗って返さないとね」

にこ「あ、そうだ!…」ポチポチ プルルル…

にこ「…ママ?あのね、今日の晩ご飯なんだけど…」

360: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:30:17.86 ID:OyyP/ZgXo
ロッカールーム

絵里「…」ヌギヌギ…

穂乃果「先輩」

絵里「…なに?ていうか、着替え中なんだけど」

穂乃果「用事があるなら帰るまでと仰られてましたので」

絵里「そうだったわね。…でも少し待って、せめてスカートを履き終えてからにして」ハキハキ…

絵里「…で、何か?」

穂乃果「聞きました。にこちゃん…、矢澤さんの件」

絵里「あら、もう伝わってるのね」

穂乃果「…特例過ぎませんか。そんなすぐに、バックダンサーへの復帰試験だなんて」

穂乃果「本来ならもう少し、ちゃんとした手順を踏んで、きちんとするべきです」

絵里「何?矢澤さんが復帰するのが不満なの?」

穂乃果「そうじゃなくて…、何事にも特例を作りたくないだけです」

絵里「融通の効かない性格ね。いいじゃない、少しくらい」

穂乃果「何事にも厳格であれと、そう言ったのは先輩でしょう!?」

絵里「実直すぎるのもつまらないわよ」

穂乃果「…話になりません」

絵里「あぁん、…わかったわよ。もうふざけないから」

絵里「矢澤さんは元々バックダンサーだったのだし、それなりの実力は既に折り紙つきでしょう?」

絵里「なら多少の試験の省略は効率を考える上でも有効だわ。それに…」

絵里「見込みなし、と判断したのは私の間違いだったのかもしれないしね。挽回のチャンスを与えてあげるくらいは許される範囲内でしょう」

穂乃果「…」

絵里「納得した?」

穂乃果「…理解はしました。納得はできないですけど、あなたがそうするというのなら…私はそれでいいです」

穂乃果「お着替え中、失礼しました。…では」ガチャリッ バタンッ

絵里「…」

絵里「なんて、これが建前だなんていうのは…あなたも気が付いているんでしょう?」

絵里「確かに、にこのダンスには目を見張るものがあった。…ああは言ったけど、本当はバックダンサーのレベルに十分に近づけてると言えるわ」

絵里「でもそれが、あの子本来の力なのか、それとも…」

絵里「風前の灯火の、最後の輝きなのか…。ふふっ…、それをこの目で確かめたいだけよ」

361: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:31:12.08 ID:OyyP/ZgXo
矢澤家

こころ「…」ポカーン…

ここあ「…」ポカーン…

にこママ「…」ポカーン…

こたろう「…」モグモグ…

にこ「はふはふ…、あぐっ…もぐもぐ…!ごくんっ…がつがつっ…!」

ここあ「おねーちゃん、めっちゃ勢いよく食べてる…」

こころ「お姉さま、もっと落ち着いて食べないと…」

にこ「んぐっ!?うぐぐぐ…」

こころ「ほらぁっ!!?ここあ!お水お水!」

ここあ「はい!」

にこ「ごくっ…ごくっ…ぷはーっ…、あ、危なかった…」

こころ「どうしたんですかお姉さま…?そんなにたっぷり食べて…いつもは疲れてそれほど召し上がらないのに…」

にこママ「急に今日の晩御飯はお野菜たっぷりのお鍋にしてって言うし…明日の朝はフレンチトーストとホットケーキだって」

ここあ「おねーちゃんお泊りしてから変!」

こたろう「なにかあったー…?」

にこ「ん?…ま、まぁね!たくさん食べないと元気出ないのよ?ほら、こころたちも!」

こころ「わ、わかってます!ここあ、お姉さまに負けないくらい、たくさん頂くのよ!」

ここあ「うん!負けないかんな!」

にこ「えぇ、…もぐっ、もぐもぐ…」

こたろう「…バックダンサー」

にこ「ん?」

こたろう「バックダンサー…、どう?」

ここあ「こたろーはバカだなー。おねーちゃんはもうバックダンサーじゃないって前…」

こころ「こ、こらここあ!」パシンッ

ここあ「いたっ!なにすんだよー!」

こころ「ごご、ごめんなさいお姉さま!ここあが気のきかない発言を…」

にこ「…ごくんっ。うぅん、いいの。お姉ちゃんね、また…バックダンサーになれるかもしれないから」

こころ「えっ…」

ここあ「本当!?」

にこ「うん!試験に合格すればだけどね。それで体力つけるためにお鍋をね!」

こころ「そうだったのですか…!お、お姉さま!お気をつけて!」

ここあ「負けるなー!」

こたろう「がんばれー…」

にこ「…うん。お姉ちゃん、頑張るからね。絶対に…負けない」

362: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:32:17.84 ID:OyyP/ZgXo
希の家

海未『あははははは!も、もう一回…!もう一回お願いします…!!』

真姫「だ、だからぁ…。咄嗟に忘れ薬を飲んだ振りをしたナースにドクターは騙されて…」

海未『そしてめ、眼鏡爆発薬を…あっははははは!!そ、そんな…!あははははは!!』

真姫「笑いすぎでしょ…。逆に引くわ…」

海未『いえ、その…ぷふっ、あまりに真姫の話が面白くてつい…』

真姫「ことりが見たら感涙して気絶しそうね…」

海未『そうですね…。いやぁ、真姫は作り話がお上手だったんですね。驚きです』

真姫「…えぇ、まぁ」

真姫(実際にあったことだなんて言えまい)

真姫「というか、いつの間にそんな話になってるのよ!?次の曲の作詞の話だったでしょ!?」

海未『あぁそういえば…。えっと…か、考えておきます!では!』ピッ

真姫「あっおい…、切りやがったわね…。まぁ、海未ならなんとかするとは思うけど…」

希「真姫ちゃーん、お風呂空いたよー?」

真姫「あ、うん。入るわ」

希「はいはーい。…海未ちゃんと話してたん?」

真姫「えぇ、作詞の話でね。いつの間にか笑い話になってたけど」

真姫「あ、そうだ…にこちゃん、大丈夫だったかしら」

希「ん、にこっち?せやね…、どうなってるか…」

希「でも考えてても仕方ないやん。にこっちも頼れるものができたってわかってくれたやろうし、もし何かあったらこっち来てくれるって」

真姫「そうね。一番は、もう二度と私達を頼ってくれないこと、なんだけどね」

希「うんうん、吉報が届くのを待とう」

真姫「それが一番ね。…頼ってる、といえば、私もいつまでもこうして希に頼りっぱなしはいけないわよね…」

真姫「もう既に2ヶ月経ってるし…。いつかお家に帰る勇気が出れば…」

希「えぇよえぇよ。真姫ちゃんは心ゆくまでうちにいてくれたらいいから!」

真姫「って言っても…」

希「だって真姫ちゃん」

希「帰る家なんて、ホントはないんでしょ?」

363: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:33:25.44 ID:OyyP/ZgXo
真姫「…え?」

希「真姫ちゃんがうちにおるホントの理由は、家に帰りたくないからじゃない。…だよね?」

真姫「希…?」

希「多分サバゲーをやってたってのも嘘やね。筋肉が全身に均等に付きすぎてる。身体全体を激しく動かすようなこと、やってた証拠」

希「例えば…アイドルとか」

真姫「…」

希「他の子に比べて習得速度が早かったり、理解力があったり…どう見ても経験者のそれなんよね。真姫ちゃんは」

希「しかも、半年やそこらやないね。少なくとも…一年近くはやってる」

希「でもそれじゃおかしい。夏休み前からどころか、UTXに来る前から真姫ちゃんはアイドルをやってるってことになる」

希「ってなると、必然的にね」

真姫「あなた…、一体…」

希「うちはただのアイドル応援部部長やよ。一体なんなのか、それは…真姫ちゃんの方やないかな?」

真姫「ぅ…」

希「…なんて、別にうちは真姫ちゃんをどうこうしようなんて思ってるわけやないけどね!」

希「さっき言ったように、真姫ちゃんがうちを必要としなくなるまでいてくれていいから」

真姫「…怪しまないの?私が…、何者だ、とか…」

希「うちが怪しんだら、真姫ちゃんは喜ぶん?」

真姫「そうじゃ、ないけど…」

希「だったらそれでいいやん!うちは誰かが困ることしたくないし、うちを頼ってくれる人がいるなら、それに応えてあげたいんよ」

希「うちができることならなんでも。…ね」

真姫「…ありがとう。いつか…いつか本当のこと、話せる時が来るといいけど」

希「うん、気長に待ってる」

364: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:33:51.52 ID:OyyP/ZgXo
明後日 放課後

多目的ホール

にこ「それで、ダンスはいつから…」

絵里「練習終わりよ」

にこ「うぇ…」

絵里「当然でしょう。ノルマを達成してから与えられるものよ、チャンスっていうのはね」

にこ「…わ、わかってます」

絵里「あなたは元々体力不足で落とされたんだから、ヘトヘトになった状態でも踊れないと意味がないんだし」

絵里「理解したなら、準備運動を始めなさい」

にこ「…はい」

絵里「ワンツースリーフォー…」

にこ「ふっ…、はっ…」タンタンッ

女生徒A「…」

にこ「はぁっ…、はぁっ…!」

絵里「では今日はここまで。…矢澤さん、来なさい」

にこ「…っ。はいっ…!」

絵里「…本来のライブは息をつく暇もなく続けられることだってしばしばあるわ」

絵里「呼吸の整わない今の状態で、完璧なパフォーマンスを見せられるか、それが合格の条件よ」

にこ「はいっ!!」

絵里「それでは始めます。…音楽が鳴り始めたらスタートしなさい」

にこ「…」ゴクリッ

~♪

にこ「はぁっ…!」タンタタンッ…

絵里「…」

にこ「ふっ…、んんっ…!」タタタンッ…

365: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:34:20.13 ID:OyyP/ZgXo
デーン…

にこ「…ふっ!」ビシッ!!

絵里「はい、終わり」

にこ「はぁー…っ、はぁー…っ」

にこ「どう、でしたか…」

絵里「…」

絵里「…ふふっ」

絵里「どうやら…見込み違いだったようね」

にこ「なっ…」

にこ「それじゃあ…」

絵里「…あなたは」

絵里「あなたはもっと、弱い人間だと思ってたけど」

絵里「考えを改めないといけないみたい」

にこ「…え」

絵里「あなたの実力は本物よ」

絵里「素晴らしいわ、矢澤さん」

絵里「…明日からあなたは、バックダンサーに復帰よ」

にこ「…っ!!」

にこ「あ、ありがとうございますっ!!ありがとうございますっ!!」

にこ(やった…!!やったぁぁっ!!)

にこ(戻れたっ…!私の夢に、また片腕が近づいたんだ!)

にこ(よくやったわにこっ!!あなたはっ…あなたは最高よ!)

にこ(そして、ありがとうっ…!本当にありがとう!)

にこ(真姫ちゃんっ…!希さんっ…!!私を応援してくれた、みんな…!)

にこ「うぅっ…!」

絵里「ほら、なんて顔してるのよ。着替えてきなさい」

にこ「はいぃっ…!!ぐしゅんっ…ずずっ…」スタスタ…

絵里「…」

絵里「さぁ、本題はこれから。…私のA-RISEにとって、プラスに働いてね。にこ…」

366: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:35:01.75 ID:OyyP/ZgXo
翌日

1年E組

花陽「ねぇ真姫ちゃん!聞いた!?」

真姫「ど、どうしたのよ…。朝から教室まで来て…」

花陽「にこ先輩が、にこ先輩がっ…!」

花陽「バックダンサー、復帰するんだって!」

真姫「なっ…、そうなの?それどこで…にこちゃんから直接?」

花陽「うぅん。直接本人に聞いたわけじゃないけど、なんだか噂になってるみたい」

花陽「昨日の放課後にダンスの試験があって、それに合格したから、とかなんとか…」

真姫「へぇ…でも所詮は噂だし、本当かどうか…」

希「本当やよ」ヌッ

真姫「うわぁっ!?!急に出てこないでよ!」

花陽「希さん?本当って…」

希「今日の朝、にこっちから直接聞いたんよ。真姫ちゃんや花陽ちゃんにも礼を言っておいてって言われて」

真姫「ということは…」

花陽「本当ににこ先輩、バックダンサーに戻れたってことですよね?!」

希「そういうことになるね」

花陽「よかった…!あの作戦がうまくいったのかなぁ?」

真姫「ふふ、そうだといいわね。でも、私たちにとってはあまりよくないかも知れないわよ?」

真姫「なんて言ったって、強力なライバルを復活させちゃったんだから、ね」

花陽「そんなこと言って、真姫ちゃん声が喜んでるよ!相当嬉しいんだよね?」

真姫「えぇ。にこちゃんのような人がアイドルになってくれるのはUTXにとってもいいことだし」

真姫「何より、私も彼女のファンであることには変わりないからね」

花陽「うんうん!あぁ、でもバックダンサーに戻っちゃったらまた前みたいに気軽に話しかけられなくなっちゃうのかな?」

花陽「それは少し残念だね。そうだ、海未さんとことりちゃんにも伝えてあげよう!協力してくれたんだし!」

真姫「はいはい、そうね。もう…花陽、少し落ち着きなさいよ」

花陽「落ち着いてらんないよ!行こ!」タッタカター

真姫「あぁ…希も、ことりたちににこちゃんからのお礼、伝えに行くんでしょ?行きましょ」

希「ん?あぁ…せやね」

希「…うん、行こか!」

367: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:35:30.06 ID:OyyP/ZgXo
にこ「でゅふふふ…!」

にこ「…っは、いけないいけない」

にこ(昨日の夜からニヤケ面が止まらない)

にこ(当然よね。まさかこんなに早くバックダンサーに復帰できるなんて、考えもしてなかったから)

にこ(まさかあの絵里…先輩が、こんな機会を与えてくれるなんて)

にこ(アイツのやり方はキライだけど、従わないとA-RISEになれないのが癪よね)

にこ(でもいいの!実力さえしっかり見てくれるなら、私はずっとトップで有り続けられれば!)

にこ(そうすれば、半年後には私は…A-RISEになれるの!)

にこ(長い間、夢にまで見た私の最高のアイドル…、一年浪人までして入学したUTXでしか得られない名誉…!)

にこ(この私が、ついに…!)

にこ「ぬふふふ…」

教師「…あの、矢澤さん。私の授業、そんなに面白い…?」

昼休み

にこ「また穂乃果や凛と一緒に練習することになるんだし…」

にこ「たっぷり食べて栄養取らないと!」

にこ「ということで、今日は少し奮発してAランチ特盛にしちゃったわ…!」

にこ「ふふっ、いただきまーす!」

にこ「もぐもぐもぐ…んんー!おいしー!」

にこ(やっぱアレねー。いっぱい食べないと元気が出ないんだわ!)

にこ(もう今はどんなものも美味しく感じる!)

にこ(この上なく、幸せって感じがする!)

にこ「もぐもぐもぐっ…ごくんっ!」

にこ「ごちそうさま!」

にこ「るんるんるるーんっ♪」タッタカター

「い、今の人って…」

「確か…、矢澤にこさん、だったっけ?あのAランチ特盛を一瞬で…」

「やけに楽しそうだったねー…。やっぱりあの噂は本当だったのかな?」

「それもそうだけど、お昼ご飯一人って…友達いないのかな?」

「一人でも本人が楽しそうならいいんじゃないの?」

368: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:36:30.22 ID:OyyP/ZgXo
モデル専攻授業

教師「…以前行った実技のテストの結果を発表します」

教師「出席番号順に並んで取りに来てください」

ゾロゾロ…

にこ(実技のテスト…。実際の撮影を行ってポージングなどのモデルとしての技術を図るものだけど)

にこ(写真写りや表情も見られて、結構高得点を取るのは難しい)

にこ(テストが行われた頃のにこはA-RISEの新曲ダンスに必死だったから、尚更かも)

にこ(それに関しては平均点程度を取れていればアイドル専攻の方には影響ないからいいんだけど…)

にこ「こうやって並ぶとねぇ…」

にこ(モデル専攻はほとんどが高身長の生徒)

にこ(その中に私が紛れるとなんていうか…)

にこ「…チビ」

にこ(…もうさんざん聴き慣れた言葉)

にこ(アイドル専攻の子が私を罵倒するときに必ず耳にする単語)

にこ(今更、何の感慨も起きない)

教師「はい、矢澤さん」

にこ「…どうも」

教師「はい、渡部さん」

にこ「あ…思ってたよりかはマシね」

にこ「ふふ、腐ってもアイドル専攻だもの。そうそう負けるわけには…」

「うっわー…、ヤバいよウチの点数。見てコレ!」

「えー!全然いいじゃん!私なんかこれだよー?」

「いやそれヤバすぎじゃない?だってほら…矢澤より下じゃん?」

「うわそれキツ…!ちょっとサボりすぎたかなー…」

にこ「…」

にこ(モデル専攻じゃ当然、私は浮いた存在)

にこ(侮られたり、見くびられたり、見下されたりはしょっちゅう)

にこ(だけど私だって…成績が悪いわけじゃない。テストで見るのは技術であって、身長じゃないし)

にこ(小柄なモデルだって、世の中にはたくさんいるし)

にこ(…にこほど小さい人は、そんなにいないかもだけど)

にこ「…フン」

にこ(いいの。そんなことはどうだって)

にこ(私にとってモデル専攻は二の次。本専攻であるアイドル専攻でなら、私はトップなんだから!)

にこ(モデル専攻の誰も私に追いつけない。にこはすごいのよ!)

369: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:37:01.11 ID:OyyP/ZgXo
放課後

廊下

スタスタ…

にこ(あー、ドキドキする)

にこ(こんなにドキドキするのは、バックダンサーに選ばれて初めて練習に向かう日以来)

にこ(A-RISEになれる第一歩を踏みしめた日)

にこ(一度は下ろされて、逸れてしまった夢への道だけど)

にこ(今日再び、私は夢に向かって歩みを進めるの)

にこ(これまではずっと一人で歩いてきた道にも)

にこ(私以外の誰かがいるんだって、わかったんだし)

にこ「このロッカールームの扉もなんだかいつもとは違って見えるわね…」

にこ「…ぅよし、入ろう」

ガチャッ

にこ「おはようございまーす…」ソソッ…

にこ(…ってなんで人目を避けるような入り方…。もっと堂々と入ればいいのに!)

にこ(バックダンサーに戻ったっていうのにまだ…)

ザワッ…

にこ「ん?」

にこ(…なんか、私が入ってきてから空気が変わった?)

にこ(何かしら。まさかみんな私に気圧されてるとか?)

にこ(なーんて、そんな…)

にこ「…」

にこ「…ぇ」

にこ(私がロッカールームに入ってきてざわめいた理由)

にこ(それは、自分のロッカーの前まで来てすぐに理解した)

にこ「なによ、これ…」

にこ(私のロッカーに、…酷い落書きが)

にこ(私を罵る汚い言葉が、つらつらと。その中には、嫌というほど見慣れた『あの言葉』も、当然のように)

にこ「…っは!まさかっ…!!」ガタンッ

にこ(嫌な予感がしてロッカーを開けたら…)

にこ「や、やっぱり…!」

にこ(予備の練習着やタオルが、全部ズタボロに…)

にこ「…っ!誰が…」

にこ「誰がやったの!?これっ!!」

370: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:37:51.75 ID:OyyP/ZgXo
にこ(私の問いに、答える人なんて誰もおらず)

にこ(厄介事から目を背けるように、一人、また一人とロッカールームを抜け、練習場へと出て行った)

にこ(そして最後に、私だけがロッカールームに取り残された)

にこ(…と、思ってたら)

「それやったの、私」

にこ「っ!」

にこ(私の後ろから、話しかける声)

にこ(振り向いて、そこに立っていたのは)

女生徒「…やぁ。バックダンサー復帰おめでとう」

にこ「あんたっ…!」

女生徒「どう?汚らしいロッカーが少しは見栄え良くなったんじゃない?」

にこ「ふざけないでっ…!!こんなことしてただで済むとでも…!」

にこ「私の心に負担かけてトップから引きずり下ろすつもりかなんだかしんないけど、こんなことしたらあんたの方が…」

女生徒「あぁ私?…いいのいいの、もう」

女生徒「アイドル専攻、やめたから」

にこ「…え」

にこ(そういうそいつの服は、確かに練習着ではなく制服のままだった)

にこ「どうして…」

女生徒「私ね、あなたに言われて自分がどうしてアイドルになりたいのか考え直したの」

女生徒「私の小さい頃の夢でね。よく公園でアイドルごっことかやってたなぁって思い出したの」

女生徒「この学校に来たのもすごいアイドルになれるかもって考えて、練習も辛いながらも頑張ってきたんだけど」

女生徒「いざ考え直したら、もうどうでも良くなってきちゃった。だって二年生のこの時期に、私は一度も上にあがれていないんだし」

女生徒「例えいくら頑張って上に行ったところで、あなたには絶対に敵わない」

女生徒「じゃあもうやる意味ないじゃんって思って。だからやめた」

にこ「なっ…」

にこ「ゆ、夢なんでしょっ!?どうして諦めようとするのよっ…」

女生徒「…夢だった、ってだけ。もう疲れたし、しんどいし、そもそもアイドルとかバカバカしいじゃん」

女生徒「ていうわけでー、やめることとなったわけですよ」

女生徒「でもさー、ただ辞めるだけじゃつまんないでしょー?だから最後になんか残そうと思ってさぁ」

女生徒「一番ムカつくヤツのロッカーにカワイイお絵かきしてオサラバしようって」

女生徒「じゃあそういうことだから。気に入らなかったら消しといていいよ」スタスタ…

にこ「っ…!待っ…」

女生徒「あ、最後にもう一つ」

女生徒「…すぅっ」

女生徒「ずっと目障りだったんだよクソチビがぁっ!!!アンタのせいで私の夢は台無しだよボケがっ!!」

女生徒「消えろ消えろ消えろ消えろ!!死ね死ね死ね死ねチビィっ!!ウザいしキモいしっ!!」

女生徒「アンタみたいなチビがアイドルになれるわけねぇだろバーカッ!!せいぜい束の間のアイドルごっこをお楽しみにね!!」

ガチャッ バダンッ!!

にこ「…」

371: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:38:24.04 ID:OyyP/ZgXo
にこ「…」

にこ「なにがッ…!」

にこ「私のせいで、よっ…!!」

にこ「アンタが努力しないのが悪いんじゃないっ!!!勝手に人のせいにしないでよっ!!!」

にこ「私よりずっと恵まれた身体してるくせにっ…!!このっ…」

にこ「くあぁぁっ!!!」ドゴォッ!!

にこ(苛立ちを拳に乗せて、ロッカーに思い切りぶつける)

にこ(硬いロッカーがほんの少し凹んで、代わりに私のげんこつから血が)

にこ(…こんなことしたって何も変わんないってこと、わかってる)

にこ(こういう嫌がらせや罵倒を受けるのだって、今年に入ってからもう何度も体験した)

にこ(それらの全てが、夢に敗れていった人の憂いが怨恨へと姿を変えたものだってことも、わかりきってる)

にこ(みんな、最初は私と一緒だったって…知ってる)

にこ(だから、今更何も感じない。こんなのは当然なんだ、って)

にこ(そう決めつけて、心を雁字搦めにして…)

にこ(…うん。今はそれより、練習が第一だから)

にこ(あんなことに付き合ったせいで、かなり時間を取られた)

にこ(早く着替えて、練習場へ行かないと…)

にこ「…」キガエキガエ…

にこ「…えっ?」

にこ「気の、せい…?」

にこ「…そうよね。もうロッカールームには私以外誰もいないんだから」

にこ「声がするわけ、ない…」

372: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:39:11.49 ID:OyyP/ZgXo
多目的ホール

にこ「すみません、遅れましたっ!」

にこ(とはいえギリギリ授業前ではあるけど)

にこ(もちろんそんな理屈は、このアイドル専攻では通用しない)

絵里「…矢澤さん。バックダンサーに戻った途端これ?」

にこ「ごめんなさいっ!急いで準備運動に入ります!」

絵里「はぁ…。いいわ、早くなさい」

にこ「はいっ!!」

にこ(テキトーに空いてる場所で、一人で柔軟体操を始める)

にこ(あとは発声も)

にこ「ふっ…、ふぅっ…!!よいしょっ…!」

凛「あー、にこ先輩遅刻かにゃー?ダメなんだー」

にこ「凛。…ちょっとワケがあって、ね…」

凛「うん知ってるー。ロッカーでしょ?酷いねー」

にこ「…えぇ、そうよ」

凛「ま、あんなの気にしてたら話になんないにゃ。下駄箱に虫入れられるくらいじゃなきゃ」

にこ「…はは。そうね」

にこ(凛も、そしてもちろん穂乃果も、私と同じ、もしくはそれ以上の嫌がらせを受けてる)

にこ(凛が今言ったのだって、多分体験談なんでしょう)

にこ(それが日々続けば、一々そんなものにショックを受けていられないから)

にこ(心が捻じ曲がってしまうことも、当たり前…なんでしょうね)

にこ(そして、それに耐え切れなくてって例も、今まで何度も見てきた)

にこ(…あれを見てしまうと、相当覚悟を強いられる。覚悟をした上で、こうしてアイドルを目指している)

にこ(そうやって凛も穂乃果も…、私も、強いスクールアイドルへと成長していく、…のかな)

凛「準備体操も一人でやるより二人でやったほうが効率いいよ!ほらほら、うり~!」グイグイ

にこ「痛い痛い!やめなさいよ凛っ…!!」

凛「えへへ!あ、にこ先輩復帰おめでと!本当に戻ってくるとは思わなかったよ、にこ先輩のくせに!」

にこ「い、祝ってるのかバカにしてるのかどっちなのよ…!いちちち…」

凛「もっちろんバカに…じゃなくて!祝ってるって!にこ先輩は頑張る人だからねー」

凛「実を言うと凛はどっちかって言えば、穂乃果先輩よりにこ先輩のこと尊敬してるんだよ?…なんてね!」グイグイ!!

にこ「うぎゃぁぁぁっ!!痛いからぁぁぁぁっ!!」

にこ(…でも、そうやって強いスクールアイドルになっても)

にこ(そこに夢が溢れてるなんて、私には思えそうになかった)

373: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:39:46.00 ID:OyyP/ZgXo
にこ(準備体操が終わり授業が始まると、まずはじめに基礎練習を行う)

にこ(これはA-RISE以外のアイドル専攻全員が行うことだけど)

にこ(それが終わると次はバックダンサーのみの練習が始まる。他のアイドル専攻生は絵里先輩の代理の後輩が指導している)

にこ(私たちがするのは、鏡の前に立って、ダンス全般からフォーメーションの動きの確認など)

にこ(ここに戻ってくるのは、実に2週間とちょっとぶり…かしら)

穂乃果「…」

にこ「こ、こんにちは、穂乃果。…戻ってきたわよ」

穂乃果「…ん。こんにちは、にこちゃん。おめでとう」

にこ「ど、どうも…」

凛「穂乃果先輩はにこ先輩の復帰に不本意だから今日はあんまり話しかけない方がいいと思うにゃ」

にこ「え、そうなの…!?」

穂乃果「…別に、不本意って訳じゃないから。無駄話は好きじゃないってだけ」

凛「んー、穂乃果先輩はいつもクールだねー」

穂乃果「…はいはい」

絵里「はい、おしゃべりはそこまでにしなさい」

絵里「久しぶりの三人での練習だけど…矢澤さん、ついてこられるわよね?」

にこ「は、はいっ!そのためにやってきたので!」

絵里「よろしい。では今日の練習だけど、そろそろバックダンサーも前面に押し出して…」

にこ(今回の練習の趣旨が伝えられる)

にこ(バックダンサーを次期A-RISEとして宣伝していく、というものだった)

にこ(ハロウィンライブが新曲のお披露目となったものの、まだライブをする機会はいくらでもある)

にこ(だからその時は、ダンサーが目立つ場面も取り入れていこう、ってことみたい)

にこ(つまり私たちが次のA-RISEになるって話が、いよいよ現実味を帯びてきたってこと…!)

にこ(復帰第一発目でこれはかなりのプレッシャーだけど、その分期待もされてる…!)

にこ(なんとしてもこのチャンスをモノに…)

キィィン…

にこ「…えっ?」クルッ

絵里「どうしたの?矢澤さん。まだ話の途中なんだけど」

にこ「…あ、ごめんなさい。なんでも、ないです」

穂乃果「しっかりして、にこちゃん。集中力ないよ」

凛「またバックダンサー下ろされちゃうよー?」

にこ「え、えぇ…、気をつけるわ」

にこ(また、声が聞こえた気がして)

にこ(咄嗟に振り向いたけど、誰もいなかった)

374: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:40:27.85 ID:OyyP/ZgXo
絵里「…というわけで、従来のダンスにアレンジを加える形となるわ」

絵里「それぞれのダンスにソロパートを追加。場合によってはA-RISEと一緒に歌うことも視野に入れてね」

凛「歌っ…!やっと歌える…!?」

絵里「えぇ。けどソロパートは今までよりもかなり激しいものとなるから、浮き足立たないで」

絵里「歌いながら踊る大変さはこれまでに練習を重ねてきたあなたたちなら理解できると思うけど」

絵里「実際のライブでこなすとなると、想像以上の重圧が降り注ぐわ。気合を入れなさい」

にこ「は、はいっ!!」

穂乃果「…はい」

凛「はーい!」

絵里「じゃあまず、今までのダンスのおさらいを。これができなければ話にならないわ」

絵里「3人が完璧に息を合わせられるまで、ノンストップでこなしていくわよ」

にこ(そうして3人でのダンスレッスンが始まった)

にこ(もちろん私単体では完璧に踊れるんだけど)

にこ(3人で合わせるとなると、これが上手くいかない)

にこ(歩幅やわずかなテンポのズレ…。それを修正しようとすれば他が崩れ出す)

にこ(完璧に合わせようとなると、かなりのレッスンを継続する羽目になる)

にこ(それをノンストップ…休憩一切なしで行う…)

にこ(体力的にも精神的にもかなりの負担だけど…、これをクリアしないと本番は望めない)

にこ(弱音なんて吐いてる場合じゃないの!二人に負けないようにちゃんと息を合わせないと…!)

穂乃果「ふっ…、はっ…!」

絵里「穂乃果、顔が笑えてない。…もう一周」

凛「よっ、たぁっ…!」

絵里「星空さん、動きすぎ。二人に合わせるよう抑えて。…もう一周」

にこ「くぅ…、ふっ…!」

絵里「矢澤さん、ワンテンポ遅い。…もう一周」

穂乃果「ふぅっ…、はぁっ…はぁっ…」

絵里「穂乃果、休んでいいとは言ってないわよ。音楽が鳴り始めたら姿勢を整えなさい」

穂乃果「はいっ…!」

にこ(あの穂乃果でさえ肩で息をしてる…。私も、かなり疲れてきてる)

にこ(…凛は驚く程平静だけど、疲労は多少溜まってるでしょう)

にこ(だけどこんなところで倒れるわけにはいかないっ…!)

にこ(意地でも、着いてい…)

キィィィンッ…

にこ「…っ!!」

375: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:41:04.67 ID:OyyP/ZgXo
にこ「ぅ、ぁ…っ!?」

絵里「…矢澤さん、何に気を取られてるの?集中しなさい。…もう一周ね」

にこ「は、はいっ…。すみません!」

穂乃果「はぁっ…、くっ、いい加減に、してよっ…!」

にこ「ごめ、ん…」

にこ(また、聞こえた)

にこ(今度は更に、大きく)

にこ(でも私の後ろには誰もいない)

にこ(目の前の鏡には、私たちしか映ってない)

にこ(でも確かに聞こえたの)

にこ(…なんて聞こえたのか)

にこ(か細い、消えるような声だったけど、私にはなんとなくわかった気がする)

にこ「だぁっ…!あぁっ…!」

ダンッ…タタンッ…!!

絵里「矢澤さん、遅れてる。…もう一周」

にこ(聞こえないように、気にしないように心がけて、ダンスに集中する)

にこ(でも、聞こえてしまう)

にこ(だんだん近づいて来る)

にこ(か細く消えるような声は、次第に大きくなっていって)

にこ(四方八方から、私に語りかけてくる)

にこ(だからどうしても、それに気を取られて)

にこ(身体が一瞬、遅れてしまう)

にこ(何度も何度もやり直して、もう何十分も踊り通して)

にこ(それが続くうちに、声は強くはっきりとしたものとなっていった)

にこ(耳元で叫ばれている。もう周りの雑踏も、音楽すら聞こえないほどに、その幻聴は大きく)

にこ(大きく、大きく、大きく)

にこ(うるさくてうるさくてうるさくてうるさくてうるさくて)

にこ(何度も黙れと頭の中で叫んでも誰もその声を聞いてくれなくて黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ)

にこ(黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ)

にこ(黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ)

にこ(黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ)

にこ(黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ)

にこ(黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れもうその言葉は聴き飽きたから黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ)

にこ(なんて言われてるか?)

『チビ』

376: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:41:39.38 ID:OyyP/ZgXo
『チビ』『チビ』『チビ』

にこ「う、あ、ぁ…」

にこ(鳴り止まない声)

にこ(私を端的に表した言葉を繰り返す声)

にこ(耳をふさいでも、目に張り付いたようにへばり付く声)

にこ(声が、聞こえる)

穂乃果「はぁっ…、はぁっ…。もう、一周…、ぅ…っ!」

絵里「…ふふっ」

穂乃果「…へぁ?」

絵里「いいわ、一旦休憩。今のうちに水分補給を済ませなさい」

穂乃果「え…、はい…」

絵里「思ったより、早かったわね」

『チビ』『チビ』『チビ』『チビ』『チビ』『チビ』

にこ(その言葉以外、聞こえない)

にこ(今まで私にその言葉を投げかけてきた人の声が、頭の中で鳴り響く)

にこ(これは、今までの恨み)

にこ(夢が形にならなかった恨みを、私に投げかけた時の、声)

にこ(声が、聞こえる)

にこ(声が、聞こえる)

にこ「はぁっ…!はぁぁぁっ…!!」ダンッ…ダンッ…

穂乃果「…にこ、ちゃん?休憩、だよ…?」

凛「にこセンパーイ!いくら必死だからって休憩するときはしないといけないにゃー」

にこ「うぁぁっ…!あ、あぁぁぁっ…!!」タン、タタンッ…

穂乃果「にこちゃん…?」

にこ(聞こえない)

にこ(声だけが、耳を食べて)

にこ(耳の中で声が巣を作って)

にこ(話しかけた声も、何も)

にこ(気づくと視界すらも声が埋め尽くす)

にこ(『チビ』『チビ』『チビ』『チビ』『チビ』『チビ』『チビ』『チビ』『チビ』)

にこ(見えない、見えない)

にこ(唯一見えるのは、鏡の中の自分だけ)

にこ(鏡の中の、にこ)

にこ(そのにこが、私に話しかけてくるの)

377: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:43:00.35 ID:OyyP/ZgXo
『小さくて無様なにこ。どうして踊っているの?』

どうしてって、私は…私はアイドルになりたいから…!

『小さくて哀れなにこ。どうしてアイドルになりたいなんて思っちゃったの?』

思っちゃった…?

『小さくて不憫なにこ。あなたにアイドルなんて無理よ』

なんで…。

『小さくて愚かなにこ。だって弱いんだもの。だって弱いんだもの』

『小さくて弱いにこ。だってチビだもの。だってクソチビだもの』

『小さくて浅ましいにこ。叶わぬ夢を夢見たにこ』

『あなたはバカな子。テレビの中の世界が本物だと思った脳無し』

『夢の世界なんて実在しない、そんなの今時小学生だって知ってる』

『不思議の国のアリスからは卒業しましょう。もう大人なんだから』

『頭は大人でも身体は子供のままのにこ。卒業しましょう』

『アイドルはもう、やめましょう』

嫌っ…!いやぁっ…!!

私は、アイドルに…!

A-RISEに、なるのっ…!!

『小さくて我が儘なにこ。叶わぬ夢と分かっても尚夢見る無様で哀れで不憫で愚かしいにこ』

『小さいあなたに、夢なんてない』

『小さい私に、未来なんてない』

『小さいものは、踏まれて潰されてぺしゃんこにされて』

『それで、死ぬの』

そこまで語った鏡の中のにこは、

上から降りてきた、大きな足に踏まれて、

踏まれて、潰されて、ぺしゃんこになって、血が飛び散って内臓が破裂して脳みそががががががががががggggggggggggggggggggg

「いっ…」

「いやあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!」

378: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:43:35.53 ID:OyyP/ZgXo
にこ「いやあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!」

穂乃果「っ…!?」

凛「に、にこセンパっ…!?どうしたの急に…」

にこ「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!嫌ぁぁぁっ!!いやぁぁぁぁぁぁあぁっ!!!!」

にこ「あぐ、ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

にこ「やだぁぁぁぁぁぁぁっ!!!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

凛「に、にこせんぱい…?あの…ち、ちょっと…」

穂乃果「に、にこちゃんっ!!しっかりして!」

にこ「うあぁぁぁああぁぁぁぁぁぁっ…!!あ、あぁぁぁぁ…!!」

穂乃果「凛ちゃん!にこちゃんの手を押さえて!」

凛「えっ…な…」

穂乃果「早く!!」

凛「は、はいっ…!」グッ

にこ「ああぁぁぁああぁぁぁぁあぁあぁぁっ!!ひいいぃぃいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」

凛「ち、力強っ…!なんでこんなっ…」

穂乃果「にこちゃんっ!自分を傷つけちゃダメっ…!!ダメだよっ…!!」

穂乃果「落ち着いてぇぇっ…!」

絵里「…にこ。やはりあなたは私の思ったとおりの人間だったわ」

絵里「弱い、人間」

379: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/28(土) 23:45:52.45 ID:OyyP/ZgXo
今日はここまで 残り半分は安定の明日
読んでくれてる人がどれくらいいるかそろそろ不安になってきたけど頑張る ほなな
380: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:02:27.25 ID:xRF8bJp/o
じゃあ続きやっていくよ!
381: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:03:14.88 ID:xRF8bJp/o
穂乃果「はぁっ…、はぁっ…、はぁっ…!」

にこ「ぅ、あ、ぁ…」

凛「お、収まった…?」

穂乃果「みたい、だね…」

凛「よ、よかったにゃぁ…。にこ先輩になにが…」

絵里「…きっと昨日の試験に力を使いすぎたのね」

絵里「だから、疲労が彼女を追い込んでしまったのよ」

穂乃果「…ぇ?」

凛「でもにこ先輩、この前ダンスは完璧だって言って…」

絵里「精神をすり減らしていたのよ。仕方ないわ」

絵里「今日のところは大目に見てあげましょう。医務室で寝かせて、起きたら家に帰してあげましょう」

絵里「それが彼女のためだから」

凛「わ、わかりました…」

穂乃果「…」

医務室

にこ「…」

にこ「…ん、ぅ…」

「あ、起きましたか?」

にこ「…あれ、私…。ここは…」

「ここは医務室です。矢澤先輩は倒れられて、ここで休まれていたんです」

にこ「倒れ…?って、あなたは?」

生徒会A「私は生徒会長の補佐をしてます。穂乃果さんに矢澤先輩を診ていて、と頼まれて」

生徒会A「アイドル専攻の方は練習でお忙しいということなんで、穂乃果さんが、頼れるのは生徒会しかない、と」

にこ「そう…」

にこ(…私、どうして倒れたの?覚えてない…)

にこ(覚えているのは、必死に着いていこうと踊っていたところまでで…)

生徒会A「あの、それで…穂乃果さんが絵里先輩から、今日はもう帰して構わないと言われた、と」

にこ「え、わ、私のことを…?」

生徒会A「はい。大事が無いよう、今日はゆっくり休まれた方が良いとのことで…」

にこ「そ、そんなっ…!休めるわけないでしょっ!」

生徒会A「し、しかし…、病み上がりですし急に動かれるのは…」

にこ「もう私は元気よっ!なんと言われたって行くからねっ!」

382: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:03:54.80 ID:xRF8bJp/o
にこ(そう言って医務室のベッドから立ち上がって、部屋から出ようとしたとき)

にこ(医務室に置いてある、姿見の中から)

にこ(血まみれのにこが、こっちを覗いていた)

『小さくて可哀想なにこ。私は痛くて痛くて怖いの』

『死んじゃう。私は潰れて死んじゃうから』

『あなたも、死んじゃうの』

にこ「ひっ…!!」

にこ「きゃああぁぁぁぁぁっ!!!」

生徒会A「ど、どうされました!?」

にこ「かがみぃ…!鏡からぁぁぁっ…!にこが、にこがぁぁっ!!」

生徒会A「鏡…?鏡がどうかされましたか…?」

にこ「嫌っ…!やだぁぁっ…!!こないでぇぇっ!!こっち来ないでぇっ!!」

生徒会A「何も来てないですけど…」

にこ「いやぁ…!嫌なの…!!鏡…!嫌…!!」

生徒会A「か、鏡がダメなんですか?わかりました、では…」

にこ(そう言って生徒会の子は姿見を私からは見えないところに隠した)

にこ(私を恨めしそうに睨んでいた血まみれのにこは、もういなくなった)

にこ「はぁっ…!はぁっ…!」

生徒会A「大丈夫ですか…?やはりお帰りになられた方が…」

にこ「…だ、ダメ…!ダメよ…!!これ以上遅れを取るわけには…!」

にこ「お願い、行かせて…!どうしても行かなきゃならないのよ…!」

生徒会A「しかし…」

にこ「お願いぃっ!」

生徒会A「…わ、わかりました。でも、さっきのようなことが起こっては困りますので…」

生徒会A「私も同行します。そして、先ほどのような事態に再びなった場合、…次こそ、お帰り願います」

にこ「わかったわ…、それで、いい…」

383: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:04:20.45 ID:xRF8bJp/o
多目的ホール前

にこ「…っ」ゴクリッ

にこ「い、行くわ…」

生徒会A「…はい」

にこ「…」

ガチャッ

穂乃果「…あ」

凛「にこ先輩…!?大丈夫なの…?」

にこ「穂乃果、凛…」

にこ「ごめんなさい、迷惑かけ…」

にこ「う…っ!!」

にこ(…そうだ、ここには…)

にこ(自分のダンスを確認するための、大きな鏡が…)

にこ「う、うあああぁぁぁっ!!」

穂乃果「にこちゃんっ!?」

にこ(鏡からはまた、血まみれのにこと…そして)

にこ(今まで私に嫌がらせをしてきた人たちが、こちらを見ていた)

にこ(皆一様に、にこに向かって呟く)

『チビ』『チビ』『チビ』『チビ』『チビ』『チビ』『チビ』『チビ』

にこ「う、うるさいっ…!うるさいぃいっ!!」

生徒会A「い、いけない!またっ…!」

『痛い、痛いよ…。にこ、死にたくない…!』

『死ぬのは、あなただからぁぁぁぁぁぁ…!!!!』

にこ「嫌だぁっ!私はし、死にたくなんか…!」

穂乃果「に、にこちゃんをここから連れ出して!」

生徒会A「は、はいっ…!!」

にこ「あ、あぁぁぁ…っ!!来るなぁぁっ…!!うわぁぁぁぁっ…!」

384: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:04:52.62 ID:xRF8bJp/o
多目的ホール前

にこ「はぁっ…、はぁっ…!」

生徒会A「矢澤先輩、やはり、取り乱してしまいましたね」

穂乃果「…帰して、って言ったのに」

生徒会A「本人がどうしてもと言われたので…すみません」

穂乃果「うぅん、あなたのせいじゃないよ。…にこちゃん」

にこ「はぁっ…、え?な、何…」

穂乃果「…今日は、帰って。みんなの練習の妨げになるから」

穂乃果「今もこうして、凛ちゃんや私に心配をかけて、練習時間を削ってる」

にこ「う…」

凛「り、凛は…心配なんかしてない、し…」

穂乃果「なら練習に戻ろう。にこちゃんは放っておいて」

凛「それは…ぅ」

にこ「…」

にこ「…わかったわ。帰る…」

穂乃果「うん、そうして」

にこ「で、でも…明日からは…?」

穂乃果「絵里先輩は、体調が良くなれば来てもいい、って」

にこ「本当…?」

穂乃果「でも、…数日経ってもダメなようなら、容赦なく…って」

にこ「…う」

穂乃果「とりあえず、今日はもう帰って安静にしてたほうがいい。わかった?」

にこ「…うん」

穂乃果「…あとは、よろしくね。それじゃ凛ちゃん、戻ろう」スタスタ…

凛「にゃぁ…、に、にこ先輩…」

にこ「…」

凛「…げ、元気になってよね。いじけたまんまだと、張り合いがない、にゃ…」

にこ「…」

凛「…ば、ばーかばーか!そのままドロップアウトしろにゃ!ふーんだ!」プイッ

ガチャッ… バタンッ

にこ「…」

生徒会A「…帰りましょう。家まで送ります」

にこ「…お願い、するわ」

385: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:05:34.65 ID:xRF8bJp/o
矢澤家

ガチャッ…

にこ「…ただいま」

こころ「お、お姉さま!?今日はどうしてこんなにお早い…」

ここあ「おねーちゃん!今日も早いの!?やったー!ねーねー遊ぼー」

こたろう「遊ぶー…」

にこ「…ゴメン、今日は…ダメなの。部屋でゆっくり休めって言われたから」

こころ「そうなのですか?それなら仕方ありませんね…」

ここあ「残念だなー」

こたろう「ぶー…」

にこ「…」スタスタ…

にこ「…」ガチャッ…

にこ「…あ」ピタッ

にこ「駄目だ…」

こころ「お姉さま?どうされたのですか?部屋の前で立ち止まって…」

にこ「…こころ、お願いがあるんだけど…」

にこ「お姉ちゃんの部屋の鏡…片付けてくれない?」

にこの部屋

にこ「…」

にこ(黄昏に染まる部屋の中、膝を抱えて一人蹲る私)

にこ(鏡はもうないけれど、時々彼方から幻聴えてくる、あの言葉に)

にこ(心臓が締め付けられるような、緊張が走る)

にこ(…どうして、こんなことになっちゃったの?)

にこ(なんで…せっかく掴んだと思った、夢の端っこだったのに…)

にこ(神様は、そんなに私のことが嫌いなの…?)

にこ(意味分かんないわよ…。どうしてよ、どうして…)

にこ(誰か…、助けて…)

にこ「…」ギュゥッ…!!

にこ(…誰か?)

にこ(あ…、そうだ…)

386: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:06:07.84 ID:xRF8bJp/o
ロッカールーム

絵里「ふふふ…」キガエキガエ…

穂乃果「…どうしてそんなに楽しそうなんですか」

絵里「…穂乃果。なに、いきなり。お着替えを鼻歌まじりにすることが行けなかったかしら」

穂乃果「にこちゃ…矢澤さんが、メンバーの一人があんなことになったのに鼻歌を歌っていられる考えが理解できません」

絵里「いいじゃない。彼女はもう…ダメよ」

穂乃果「…っ!どういうことですか…!」

絵里「もうおしまい、ってこと。あなたもあぁなった人たちは何度も見てきたでしょう?」

絵里「彼女たちと、同じよ。にこも、ね」

穂乃果「ならどうしてっ!どうして明日もまた来ていい、だなんて言ったんですか!?」

穂乃果「もう希望がないなら素直に切り捨てればいい話じゃないですか!」

穂乃果「それはにこちゃんにまだ希望があるからじゃ…ないんですかっ!?」

絵里「いえ、にこに希望なんて、もう一雫も残されてない」

絵里「…あとは、ただその身を削り生まれる絶望だけ」

穂乃果「っ…!」

絵里「でもそれが…それがあなたたちの養分となるのよ。類まれな才能が枯れゆく、その様が」

絵里「あなたも彼女がじわじわと絶望に身を焦がす様子を観察しておきなさい」

絵里「そうすればきっと、私の言いたいことがよくわかるはずだから」

穂乃果「…くっ!あなたはっ…!」

穂乃果「…失礼します!」

ガチャッ バタンッ!!

絵里「…」

絵里「…ふふ、自分で言うのもなんだけど」

絵里「私って…最低ね」

絵里「でも、それが私の…最強のA-RISEのために、必要なことだから」

387: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:06:42.22 ID:xRF8bJp/o
希の家

ガチャッ…

真姫「ふぅ、ただいま」

希「うん、おかえり」

真姫「いや一緒に帰ってきてるんだからあなたもただいまでしょう」

希「今のは我が家の気持ちを代弁して言ってあげたことやん。あー、マイホームただいまー」

真姫「…はぁ、疲れるわ。ただでさえ身体を酷使して疲れてるってのに」

希「そうやね。じゃ、真姫ちゃん先お風呂、どうぞ?うちお料理作っとくから」

真姫「そうさせてもらうわ。…ふぅ、今月中に新曲、作れるかしらね」

希「んー、ちゃんと部費は入ってきてるし、先月ほど無茶なステージ作りはせんでいいとは思うけどね」

希「手伝ってくれる子もいることやし」

真姫「あとはアイデアのみってとこね。…ま、そこはシャワー浴びながら考えるとしましょう」

希「うちも考えとくからねー」

真姫「お願いするわ」

シャー…

真姫「ふー…」

希「さてと…、真姫ちゃんもお風呂中やし、晩ご飯の支度っと…」

希「うーん、今日は何にしよっかなー…。昨日はお肉たっぷりのカレーライスやったから…」

希「あ、そうそう、カレー残ってるやん。これ使わないと」

希「じゃあカツを揚げて昨日とは一味違うカツカレーってことに…」

ピンポーン

希「…ん?」

真姫『誰か来た?』

希「そうみたーい。誰やろ、こんな時間に…」

ピンポーン

希「はいはーい、今出まーす…と」

ガチャッ

希「…あ」

にこ「…」

希「にこっち…、どうして…」

にこ「…お弁当箱、返しに来たわよ」

388: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:07:16.34 ID:xRF8bJp/o
リビング

ガチャッ

真姫「ふー…、いいお湯だったわ。希、ご飯できて…」

にこ「あ、真姫ちゃん…」

真姫「…に、にこちゃっ…!?」

にこ「どうも、お邪魔してま…ってなんて格好してるのよ!?」

真姫「あぁごめん!もう希の前ではタオル一枚でも平気になっちゃって…」

にこ「女性としてそれはどうなのよ…」

希「はい、真姫ちゃん着替え」

真姫「あ、ありがと…、向こうで着替えてくるわね」

真姫「…で、どうしてにこちゃんがまた希の家に?」

にこ「…」

真姫「やっぱり、また何か悩み事?」

にこ「…えぇ、そんな、感じかな」

真姫「そう…。ま、まぁでも!私に任せてくれればなんとかなるわ!ね?」

にこ「う、うん…」

希「…とりあえず、今はにこっちも来てくれたことやし、ご飯にしよか」

希「おうちの人には言ったん?出てくるって」

にこ「えぇ…。今日も、泊まらせてもらう、って」

真姫「へぇ…」

希「じゃあやっぱり、晩御飯は必要やね。大丈夫!今日はたっぷりあるから安心して!」

真姫「昨日の残りでしょ。作りすぎたって言ってたし」

希「…プラスカツもつけるよ!」

にこ「た、食べられるものならなんでもいいけどね…」

389: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:07:53.25 ID:xRF8bJp/o
希「はい。うち特性スピリチュアルカツカレーやよー。さ、遠慮なくお食べ!」

にこ「いただきます。…もぐ」

にこ「うん、おいしい」

真姫「ホント、希は万能よね…。カレーもこんな美味しく作るなんて」

希「カレーなんて誰が作ってもおいしいものやん。うちの実力違うよ?」

真姫「…ふ、私の前でそれは言わないことね」

希「あー…、察したわ」

にこ「ふふふ…」

真姫「な、なによ!?料理出来ないのがそんなに可笑しい!?いいじゃない私は料理作れる人と結婚…」

にこ「うぅん、そうじゃなくて…」

にこ「あなたたちのところに来て良かった、って。こうしてる時間もすごく楽しいから」

にこ「…嫌なことを、少しの間でも忘れられる」

真姫「…」

真姫「にこちゃん、そんなに…重いことなの?今日ここに来たのは…」

希「真姫ちゃん。その話は…後にしよ」

希「今は楽しく!ご飯の時間やよ」

真姫「あぁ…そ、そうね!食べる時間くらい楽しくしないと!」

にこ「…うん、ありがとう」

真姫「えー、あ、ところで希。あなた、お昼ご飯はいつも部室で一人なのよね」

希「ん?うん。お弁当だし、食堂に行くこともないかなって」

真姫「花陽は親衛隊に囲まれて無理だけど、いつも私とことりと海未でお昼食べてるから来ればいいのに」

真姫「一人じゃ寂しいでしょ?」

希「んー、それもいいんやけど…うち、周りが騒がしい場所でご飯食べるのは苦手だから」

希「静かな場所で、わいわい食べるのは好きなんだけどね。だから部室で」

希「それに、一人でのご飯も別段、寂しいものでもないよ。…ね?にこっち」

にこ「え、私…?そ、そうだけど…なんで私が一人でご飯食べてるって知ってるのよ…」

希「にこっちに友達がいないのは把握済みだからね」

にこ「相変わらず痛いとこ突いてくるのね…。確かに一人でも寂しくはないけど…」

にこ「…私は好きで一人なわけじゃないし」

真姫「…な」

真姫「なんだかまた暗い方向に行っちゃいそうなんだけど」

希「あかんあかん…。よーし!テレビでも付けよか!」

にこ「なんかゴメン…」

真姫「いやにこちゃんのせいじゃないけど…」

390: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:08:21.43 ID:xRF8bJp/o
数十分後

にこ「…ごちそうさま」

真姫「ふぅ…、二日続けても飽きないわね。希のカレーは」

希「ふふ、それは光栄やね」

真姫「あ、にこちゃん…まだお風呂入ってないわよね?練習で汗かいてるだろうから、お風呂入ってきたら?」

にこ「え?あぁ、そうね。そうさせてもら…」

希「待って」

真姫「え?」

希「…鏡、あるから。なんかダンボール紙か何かで隠してくるわ」

にこ「あ…、そっか。ありがと、希さん…」

真姫「え、え?どういうこと…?なんで鏡が…」

希「…あとで話すから」

にこ「…」

真姫「あ、あぁ…。わかったわ」

数分後

バスルーム

希「はい。脱衣所と、お風呂の中の鏡、塞いでおいたから」

希「不便かもしれないけど…仕方ないんよね」

にこ「…えぇ。汗が流せれば、それでいいわ」

リビング

希「…お待たせ。塞いできたわ」

真姫「えぇ、お疲れ様。それで、話してくれるのよね?…鏡の件について」

真姫「どうして塞ぐ必要があるのか」

希「うん。…真姫ちゃんがお風呂に入ってる間に、にこっちから聞いた話やねんけど」

希「今日の放課後にあったこと、全部教えてくれた」

真姫「今日の放課後…?一体なにがあったのよ…」

希「それはね…」

391: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:08:48.31 ID:xRF8bJp/o
真姫「な…!」

真姫「なによ、それ…!」

希「…」

真姫「本当のことなの?それ…」

真姫「幻聴が聞こえたり、鏡の中の自分が血まみれだったり、って…」

真姫「それで発狂して穂乃果と凛に抑えられたって…」

希「うちが実際に見たわけじゃないから、本当か定かではないけど」

希「ここに来てからにこっちは、異様なまでに鏡を恐れてた」

希「机の上にあった手鏡を見ただけで、飛び退いたくらいやったし」

真姫「じゃあ…戯言でもなんでもなく…事実なのね。それは…」

希「そう、やろね…」

真姫「…どういうことなの、一体…」

真姫「もしかして、何かの病気?そういう、幻覚が見えるっていう…」

希「…」

希「いや、違う」

真姫「え…」

希「病気やないよ」

真姫「だ、断言するってことは…希はわかるの?」

真姫「にこちゃんを苦しめているものについて…」

希「…うん」

真姫「なんなの?それは…」

希「それは…」

希「…にこっちの、心」

真姫「こころ?…にこちゃんの妹の話?」

希「そうじゃなくて、にこっちの精神…メンタルが、他人の声や鏡の自分の姿となって現れてるんよ」

真姫「えっ…」

希「今まで押さえ込んでいたものが、耐え切れなくなって…暴れだした」

真姫「待って、それじゃあ…!」

希「にこっちの心は…」

真姫「それって…っ!!」

希「…もう、折れてしまった」

真姫「…っ!!」

392: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:11:01.87 ID:xRF8bJp/o
真姫「お、折れた、って…どうして…」

希「今のアイドル専攻のことは、真姫ちゃんもよく知ってるよね」

希「誰しもがトップに行くために、他人の妨害をして這い上がろうとしているってこと」

真姫「え、えぇ…。花陽の話で聞いたくらいだけど」

希「そういうのは特にトップ…、A-RISE候補生が一番受けやすい。まぁ、当たり前やけどね」

希「もちろんにこっちも例外じゃなく、そして歌手とダンサーのトップである、穂乃果ちゃんと凛ちゃんも当然、受けてたやろう」

希「その結果穂乃果ちゃんも凛ちゃんも、信頼できる者以外に心を開かなくなった」

希「自分が身を置くアイドル専攻と言う状況、その厳しさを理解できている人たちにしか、ね」

真姫「だから穂乃果は、アイドルを理解できなかった海未を否定し…凛は一度諦めた花陽を見下した、ってことよね」

希「うん。寛容な心…豊かな心を無くして、冷たい心へと変えてしまった。心を閉ざした、って言ってもいいかな」

希「そうしなければ、嫌がらせの横行するアイドル専攻の中で、正気を保つことなんて出来はしないから」

希「…そしてそれは、にこっちも同じだった」

真姫「え…?同じ、って…」

希「にこっちは、心を閉ざしてたんよ」

真姫「つまりそれは、穂乃果や凛と同じように…心が変貌していた、ってこと?」

希「せやね」

真姫「お、おかしいわよ!だってにこちゃんは…」

真姫「…にこちゃんは、変わってなかった。優しいにこちゃんだったわ。一度街で話したときも、アイドル然として純粋な」

希「傍目から見たらそうかもしれない」

希「…でも、普通の心を持ってる人間が、アイドル専攻でずっと生き残れるとは思えないんよ」

真姫「う…確かに」

希「本当のにこっちは、誰も彼もを見下して、自分は特別だと思っている人間だった」

希「一人も信頼できる人間がいない、自分を孤独って檻に閉じ込めて、それで正気を保っていた」

希「でも、表で純粋なアイドルを目指す少女を演じすぎたせいで、そのことすら、忘れてしまった」

希「自分で追い込んだ孤独の檻にストレスを感じ、そのストレスが肉体を縛り…」

希「…体力不足に陥らせた」

真姫「そして、そのせいでバックダンサーを下ろされて…」

真姫「それを見た私が…」

希「…うん。なんとかしてあげたいって思ったんやね」

希「にこっちの体力不足の原因が孤独によるストレスにあるって見抜いたうちは、C☆cuteのみんなでパジャマパーティを開催した」

希「みんなで騒ぐことで孤独感を払拭し、信頼できる人間がいるって理解させることで、ストレスから解放させた」

希「おかげで体力不足問題からはあっという間に解決」

真姫「…ねぇ、希…。つまり、つまりさ…それ…」

希「…でも、にこっちのストレスの原因…孤独の檻は」

希「元々は、にこっちの正気を保つために存在していたものだった」

真姫「ねぇっ!!希!それじゃあ、私たちのしたことって…!!」

希「…その檻から解放され、アイドル専攻の激しい嫌がらせという、更に大きなストレスに晒されたにこっちは…」

真姫「にこちゃんを…!!」

希「…あっけなく、壊れてしまったんよ」

393: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:11:55.27 ID:xRF8bJp/o
真姫「私たちが…にこちゃんを壊してしまった…?」

希「…結果的には、そういうことになるね」

真姫「嘘、でしょ…?嘘って言ってよ希!!」

希「これは、うちの推論やから、本当にそうとは言えないけど…」

希「…でも、にこっちの今の精神状態は、うちが今まで散々見てきたものにとてもよく似ているから」

真姫「なに…、なにに似ているの…?」

希「…夢に敗れて、アイドル専攻をやめていった人」

希「大好きだったアイドルを、大嫌いになってしまった人に」

希「…似ているんよ」

真姫「っ!!」

(花陽「もうその次の日から、アイドルなんて嫌い、って…」)

(にこ「練習が厳しすぎて、アイドルを嫌いになっていった子を何人もこの目で見てきた」)

真姫「にこちゃんが…そうなってしまった…?」

希「…うちも、危惧はしてたんよ」

希「解きほぐされた心には、必ず隙ができる」

希「にこっちにもしまだ、何かストレスを抱える要因があれば…こうなってしまうんやないかって予想は、できてた…」

真姫「だ、だったら…っ!ならどうして…!!」

希「うちは、にこっちは強い子やって思ってたんよ!どんなストレスにも耐えられる、強靭な心の持ち主だって…」

希「そんなん、ありえないのに…でも、にこっちなら…大丈夫やって思ってた…」

真姫「う…」

真姫(…私も、彼女なら大丈夫だって思っていた)

真姫(何事にも屈せず、今のアイドル専攻を内側から変えられる…誰よりも強い心を持っているって)

真姫(だけど、それは…折れそうな心を支えるための…演技でしかなかった…)

希「…どちらにしろ、ストレスを解消しなければ体力の消耗からは避けられない」

希「いずれにこっちは、アイドル専攻全体から遅れを取るはめになってたやろうね。…あのままだったら」

真姫「ぐ、ぅっ…!」

394: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:12:29.90 ID:xRF8bJp/o
真姫「…あの時あぁしていたら、なんて…もう起こってしまったことに対してくよくよしても、どうしようもないわ」

真姫「私たちが良かれと思ってしたことが、結果的ににこちゃんを壊してしまったのだとしたら…」

真姫「…なら、次はそのにこちゃんを助ける手を考えればいいだけよ!でしょう?」

希「…」

真姫「希っ!!答えてよ!」

真姫「今度もあなたの提案で、にこちゃんを助け出せるんでしょう…!ねぇ!?」

希「…うちには」

希「ゴメン、真姫ちゃん…」

真姫「っ…!!どう、して…」

希「今までそうやって心を崩壊させてしまった子と、長く触れ合っては来たけど」

希「その一度もうちは、どうにかしてあげることができなかった」

希「『気が楽になりました』って言って…、でも、それだけで」

希「根本的に解決できたことなんて、…一切なかったんよ」

真姫「…そんな」

希「心を縛っているものをどうにかすることはできるけど」

希「壊れてしまった心を治すのは、一筋縄ではいかない」

希「長い時間をかけてゆっくりと、それでも治るのはほんの少しだけ」

希「すぐに心を元に戻すなんて…無理、やよ」

真姫「ど、どうにかならないのっ!?今の状態のにこちゃんじゃ、バックダンサーなんて明日にでも下ろされて…」

希「諦めるつもりはないけど、…でも」

希「あ、だけど…明日に下ろされる、ってことはないと思うよ」

真姫「え…?」

希「…多分だけどえりちは、こうなった人にはもう何も言わない」

希「ひたすら悩みに悩ませて、自ら壊れていく様をただ眺めるだけ」

真姫「な、なんで…?彼女は役に立たないものは切り捨てるとか…そういう主義じゃないの?」

希「普段はそう、なんだけどね…」

希「彼女曰く…これが『才能を糧とする方法』、らしいよ」

真姫「糧…」

395: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:12:59.39 ID:xRF8bJp/o
希「才能を持つものは、散り際も大きく燃え上がる」

希「己が才能故に、力なき自分を呪い、徐々に崩れてゆく」

希「絶望の炎に身を焦がすその様は、見るものに恐怖と焦燥を与える」

希「強い才能を持つものにとってはそれは未来の自分が成りうる姿でもあるから」

希「こうはなりたくない、ある意味では死よりも恐ろしい、その恐怖こそが、心を、そして肉体を強くすると」

希「…まだアイドル応援部に身を窶していた頃のえりちが、語ってくれたことがあったよ」

真姫「にこちゃんは…穂乃果と凛を育てるための…餌」

真姫「そういう、こと…?」

希「うん。…多分そういうこと」

希「壊れてしまった心でなんとかやり直そうと立ち上がって」

希「でも当然のように倒れてゆく」

希「それをただ何もせず、見せつけることで…」

希「穂乃果ちゃんと凛ちゃんを、強くさせる」

希「えりちはそれを目的として、壊れちゃったにこっちを放置しておくやろうね」

希「結果、渇望する夢から伸ばす手を引き下げ、自ら最も欲するものに背を向ける、その時まで」

希「…今までも、ずっとそうやってA-RISE候補生を育ててきたから」

真姫「…ッ!」ギリッ…!!

真姫「え、りィッ…!!」

真姫(…いくらなんでも、酷すぎる)

真姫(人間を、その人の才能を、餌としてしか見ていないなんて)

真姫(絶対に…許せないっ…!!)

真姫(この手を汚してでも、彼女を止め…)

希「…真姫ちゃん、人には見せられないよ。その顔は」

真姫「…っ」

希「前、真姫ちゃんがえりちを、殺すから、って脅したことがあったけど」

希「…今の真姫ちゃんなら、本当にやりかねないかもしれないね」

真姫「…そう、でしょうね」

希「うちは、真姫ちゃんを人殺しにはさせたくない」

希「…えりちにも、死んで欲しくない。願うなら、優しいえりちに戻って欲しい」

真姫「…」

真姫「…えぇ。そうね」

真姫「私も…それが一番だと、思うわ」

396: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:13:30.47 ID:xRF8bJp/o
希「にこっちを餌にさせない方法。それはもう、ひとつしかない」

希「…なんとかして、にこっちの壊れた心を元に戻す」

希「しかも、遅くても数日以内に」

希「でなければ、もう二度とバックダンサーに戻ることはできなくなるから」

真姫「…それが、できるの?」

希「…うち一人だけなら、断言できるけど」

希「絶対にできないと思う」

希「でも、もうアイドル応援部はうちだけやない」

希「真姫ちゃんも、花陽ちゃんも、ことりちゃんも、海未ちゃんもいる」

希「…これだけいれば、出来ないことなんてないってうちは信じてる」

真姫「なら、できるってことね」

希「…うん」

真姫「…ありがとう。じゃあやるしかないわね」

真姫「アイドル応援部…、新たな活動は」

真姫「にこちゃんの心を取り戻す」

希「…やろう。絶対に」

希「うちができなかったことを、みんなで…!!」

リビング越しのドア前

にこ「…」

にこ「…私の、心」

『チビ』

にこ「…ぅ」

にこ「うるさい…!うるさいっ…!!」

にこ「もう、やめてよっ…!」

397: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:13:59.55 ID:xRF8bJp/o
ガチャッ…

にこ「上がったわよ」

希「あ、あぁにこっち」

にこ「希さんはまだ入ってないんでしょ?お皿の片付けとかは私がやっておくから入ってきたら?」

希「え、別にいいよ、そんなの」

にこ「この前もお世話になりっぱなしだったし、今日も何もしないってんじゃ私の気が引けちゃうわ」

希「んー…、じゃあ、そこまで言うならお願いしちゃおう。言うてそんなにないしね」

にこ「うん」

真姫「…あの、にこちゃん…」

にこ「なぁに?どうしたのよ、そんな怖い顔して」

真姫「え、っと…」

真姫(…本人の前であまり気の重くなるような話はやめたほうがいいかしら)

真姫(そうよね、にこちゃんがここに来てるのは気を楽にしたいからなんだし)

真姫(少しでもにこちゃんを楽しませてあげないと)

真姫「…に、にこちゃん!」

にこ「な、なに…?」

真姫「か、かか…」

にこ「か?」

真姫「…肩、揉んであげる」

にこ「…は?」

真姫「練習で疲れてるでしょ!?皿洗いしてある間にもみもみしてあげるから!」

にこ「いや意味わかんないんだけど!?そんな凝ってないし別に…」

希「おー、なになに?お熱いねー。んもー、じゃああとはお若い二人にお任せしてうちは退散しますかなー」

にこ「え、ちょっ…希さん放置しないで!お風呂に入るのはちょっと待ってあー…行っちゃった」

真姫「さ、さぁ…肩を…肩を出すのよ…!」

にこ「ひぃっ!?さっきとは別ベクトルの顔の怖さ!ていうか肩もみは服の上からでもできるでしょうが!」

真姫「生でやったほうが気持ちいいのよ!さぁ、生でしましょう!」

にこ「なんだか卑猥な意味に聞こえなくもな…ってわぁ!無理やり脱がさないできゃあぁぁぁぁやられるうぅぅぅうぅぅぅぅぅぅ…」

にこ「…あっすごい気持ちいい」

真姫「でっしょー?」

398: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:14:26.87 ID:xRF8bJp/o
ジャー…

モミモミ…

にこ「…なにこの状況。お皿洗いしながら肩もみされてるって意味わかんないわよ」

真姫「イミワカンナイ!!」

にこ「い、いきなり変な声あげないでよ、びっくりするじゃない」

真姫「…ごめんなさい。つい反応しちゃって」

にこ「は、はぁ…。何に反応しているのやら…」

にこ「…ふぅ。本当に大した量なかったわね。皿洗い終わり、っと」

真姫「じゃあ肩もみも終わりね」

にこ「うっ…、いざされなくなると肩が寂しい…」

真姫「じゃあまだする?」

にこ「うーん…、でもやっぱりもういいかな」

真姫「もう、どっちなのよ」

にこ「…ふふっ」

真姫「ん?どうしたの」

にこ「うぅん…、何でもない。ただ…やっぱり真姫ちゃんと一緒にいると楽しいって思って」

にこ「ユーモラスよね、あなたって」

真姫「そ、そうかしら…」

にこ「えぇ、学校でも人気者でしょう?」

真姫(一学期上旬はぼっちだったなんて言えない)

真姫「そうね、大スターだわ。大スター西木野として音ノ木坂では…」

にこ「オトノキ?」

真姫「オーソーリー、ナンデモナーイ。とにかく人気者よ!…休学してたけど」

にこ「え、そうだったの?なにがあって…」

真姫「…わ、忘れたわ。過去のことは振り返らない主義なのよ」

にこ「そうなのね…。でもそんなに明るい性格なのに休学って…それとも休んでる間に何か劇的なことがあってそうなったとか?」

真姫「も、もうなんか色々あったのよ!いいでしょ、私のことは」

にこ「私は、もっと真姫ちゃんのこと、知りたいんだけど」

真姫「って言われても…あ、そうだわ!」

真姫「過去のことは言いたくないけど代わりに…」

真姫「とっておきの作り話、聞かせてあげる」

にこ「作り話…?」

399: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:15:17.09 ID:xRF8bJp/o
寝室

真姫(今日は希の寝室で、布団を二つ並べてる)

真姫(私とにこちゃんはそこに潜って、私が作り話、という名の実体験を話す)

真姫「…でね、その患者さんは風邪で声が出なくなったんだけど、ナースはすごい薬で解決を図ろうとしたの」

にこ「それって?」

真姫「なんとね…、口の代わりに、お尻で喋れるようになる薬なの!」

にこ「ぷふっ…えぇ、なによそれ」

真姫「しかも、喋ろうとすると必ずおならが出ちゃう薬で、実質おならが声みたいな?」

にこ「そんなの可哀想すぎでしょ…」

真姫「でも声を出すためには仕方ないし、嫌々そのお薬を飲んだ患者さんだったんだけど…」

真姫「いざ喋ったら…ぷふふ…お、おならっ…!あはははっ!!」

にこ「もー真姫ちゃーん!話してる方が笑ってどうするのよ!」

真姫「だ、だってぇ…、面白くて…お、思い出し笑い…くふふふっ…」

真姫「と、とにかく…なんとなく予想はつくでしょう?」

にこ「ま、まぁね…」

真姫「もうそれでナースもドクターも大爆笑!怒った患者さんは二人にキツいゲンコツを食らわせて帰っちゃいましたとさ」

にこ「えー、それでおしまい?」

真姫「まだこの先にも続きはあるけど…、汚いオチだから割愛。どう?面白かったかしら」

にこ「うん、面白かったわ。まるで本当にあった話みたいで。話の内容はありえないはずなんだけどね」

真姫「えぇそうでしょう。なぜか現実味を帯びていてそれが面白いって海未にも言われたわ」

にこ「そうね…、作り話のはずなのに既に続きに汚いオチしか用意されてないのもなんだかリアルよね」

真姫「痛いとこつくわね…。まぁそこも一つのお話として完成されてるってことで」

にこ「ふふ、完成されてるのに未完成を話したの?なんだか変な話ね」

真姫「あー…、そうね。じゃあ次はそうね…。今度はそのドクターとナースが異世界に行っちゃうお話を…」

にこ「…ねぇ、真姫ちゃん」

真姫「ん、なに?もしかしてリクエストかしら?結構なんでもあるからどんなリクエストでも…」

にこ「…私、もう、無理だと思う」

真姫「…え?」

にこ「私がずっとアイドル専攻で見てきた、幾人の人たちみたいに…私の心も壊れちゃったんでしょ?」

にこ「…だったらもう、無理よ。真姫ちゃんが私のために頑張ってくれるっていうのは、嬉しいけど」

真姫「聞いて、たの?希との会話…」

にこ「うん、途中からだけど」

真姫「…無理なんかじゃないわ。心が壊れようとも、私が、私たちが治してあげるから」

にこ「治るかもしれないけど…それは膨大な時間をかけて、でないと不可能よ」

にこ「壊れた心の治癒なんて…一朝一夕でできることじゃないわ」

真姫「するのよ!しないと…そうでないと、にこちゃんは…」

真姫「…夢を、諦めることになっちゃうじゃない…!」

にこ「…」

400: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:16:16.99 ID:xRF8bJp/o
真姫「この前この家で話してくれたアイドルへの憧れはどうしたのよ…!」

真姫「A-RISEを変えるんじゃなかったの!?絶対に諦めないんじゃなかったの!?」

真姫「そんなこと言うなんて…にこちゃんらしくないわよ…」

にこ「…」

真姫「安心して。私が必ず、にこちゃんの心を取り戻して…」

にこ「じゃあ、真姫ちゃん」

にこ「もし私の心が、数日どころか、数週間…うぅん、数ヶ月、数年経っても治らなかったら?」

真姫「ぇ…」

にこ「それでも真姫ちゃんは、私の心が治るまで、私のために尽くしてくれるの?」

真姫「っそ…」

真姫「…それは」

にこ「うん、そうよね。…できない、わよね」

にこ「真姫ちゃんにも、真姫ちゃんの人生があるんだもの」

にこ「私程度に、その一生を捧げたくなんか、ないわよね」

真姫「そ、そんなことっ…!」

にこ「やめてよっ!!」

真姫「っ…!」

にこ「軽々しく同情したような口利かないでよ!!真姫ちゃんにとっては安い人助けのつもりかもしれないけどっ…!!」

にこ「もし解決しなかったら…私はどうなるのよ…?」

にこ「ダメだったね、で終わって…それからの人生、鏡すら、見れないのよ…?」

にこ「ずっとこの耳障りな…声を聞いていなきゃいけないのよ」

真姫「だからって…最初から諦めたら…」

にこ「…治るかもって希望を抱いて、もしダメってなったら…」

にこ「その時の傷は今より、もっと大きくなるわ」

にこ「淡い期待なんかするくらいなら…諦めた方がマシよ…」

真姫「…にこ、ちゃん…」

にこ「だからね、真姫ちゃんは…自分のスクールアイドルのことを一番に考えて」

にこ「私ができなかったことを、真姫ちゃんたちがやってくれれば…私はそれで…」

にこ「それで…」

真姫「…それでいいって、本当に言える?」

真姫「諦めた方がマシって、本当に…思ってる…?」

にこ「…」

にこ「本当に…思ってるわけ…」

にこ「ない…、じゃないぃっ…!!」

にこ「でも、でも私ぃっ…!!わたしぃぃぃぃっ…!!」

にこ「こわくて…これ以上壊れるのなんて…耐えられない…!」

にこ「だからっ…だけどぉっ…!!う、うぅっ…!」

にこ「うあああぁぁぁああぁぁぁぁあっ…!!うわぁぁぁぁぁんっ!!」

真姫「…っ」

にこ「嫌だぁっ…!!諦めたくないっ!絶対に…アイドルになりたいのにっ…!なりたぃ…の、に…!」

にこ「うああぁぁぁぁぁぁぁぁ……!ぁぁ…!!」

真姫「…にこちゃんっ」ギュッ…

401: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:17:10.53 ID:xRF8bJp/o
真姫(切望と恐怖に挟まれて泣きじゃくるにこちゃんを、私は強く抱きしめた)

真姫(アイドルへの憧れと、自分の心がおかしくなってしまう恐怖を、私の胸の中でにこちゃんは、延々と吐露し続けた)

真姫(その言葉はとても重く、私の心にも、深く響いて)

真姫(こちらまで、折れそうになるほどの悲痛さを帯びていて)

真姫(彼女の苦しさが、望みが、痛いほど伝わってきた)

真姫(そうして何分かが経過した頃)

真姫(にこちゃんは泣き疲れたのか、静かな寝息を立てた)

真姫(最後に言った、唯一、私に対しての言葉)

真姫(『助けて、真姫ちゃん』…の一言を、残して)

にこ「…すぅ、…すぅ」

真姫「助けて、…ね」

真姫「安心して、にこちゃん」

真姫「…あなたは、私が必ず」

真姫「助けてみせるから」

真姫「だからにこちゃんも…少しの間だけ」

真姫「少しの間だけ…我慢しててね」

真姫「…」スッ

ポチポチ…

真姫「…私、うん、夜遅くにごめんなさい。…明日の放課後なんだけど」

リビング

ガチャッ

真姫「…あ」

希「話は終わった?」

真姫「…ごめんなさい。あんな状態じゃ部屋入りづらいわよね」

希「うん、それと誰かと電話してたみたいやけど」

真姫「えぇ、C☆cute…アイドル応援部のみんなにね」

真姫「…明日の放課後は、にこちゃんを助けるために力を貸して欲しいって」

希「ついに、アイドル活動を犠牲にしても、ってことかな」

真姫「…ほんの少しの間だけよ。否定意見も、もちろんあるでしょうけど」

真姫「それでも私は、今持てる全てで、彼女を救いたいから」

真姫「なりふり構ってられないの」

希「まぁ…うちはなんも言わへんけど…。それも含めて、真姫ちゃんの覚悟、やねんね」

希「…なら、今日は明日に備えて寝ようか。真姫ちゃんの心も相当お疲れやろうし」

真姫「えぇ…、そうね。お休みなさい、希」

希「ん、おやすみ。うちも…寝るわ」

402: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:17:56.26 ID:xRF8bJp/o
翌日

放課後 アイドル応援部部室

真姫「…」

花陽「あ、あのぅ…」

海未「…」

ことり「えっとぉ…」

希「…さてと、いつもどおり皆部室に集まってくれたわけやけど」

希「これから何する話だったんだったかな?」

真姫「…昨日、電話で話したとおりよ」

真姫「この放課後を使って、にこちゃんの心を立て直すための作戦会議を行いたいの」

希「…とのことやけど、これに関しての意見は?」

海未「…あります」

花陽「う、海未さん…」

海未「以前、私はあなたのやりたいことなら正しいことだと、そう言いましたが…」

海未「…しかし、今回ばかりはそうは行きません」

海未「夜中ならばいざ知らず、放課後のこの時間は私たちが練習することのできる数少ない時間なのですよ」

海未「それを消費してまで…他人を助けるのは、あまり気が乗りません」

海未「取材のように私たちに利得があるならばまだしも、そういうわけではないのですから」

花陽「で、でも…これも立派なアイドル応援部の活動で…」

海未「私たちは確かに応援部ではありますが、それはC☆cuteとして活動するための必要だったというだけです」

海未「部活動にうつつをぬかし、アイドル活動が疎かになってしまうのでは本末転倒と言えるでしょう」

花陽「うぅ…正論です…」

ことり「…そもそも、夜中にまた誰かの家に集まって、じゃダメなのかな?もしくはアプリ通話で、とか」

真姫「にこちゃんは私にあまり関わって欲しくないみたい。話し合いをするところを見せることはできないわ」

ことり「うぅん…、そっかぁ…」

希「ここまでの会話から花陽ちゃんは賛成派、海未ちゃんは反対派として…」

希「ことりちゃんはどっち派なん?」

ことり「私は…どちらかといえば反対、かなぁ」

ことり「助けることはいいことだと思うけど、貴重な時間を削られるのはあんまり…」

ことり「それに、心の病を短時間でどうこうしようなんて、私は無謀だと思う…」

ことり「…海未ちゃんを助けるのにだって、一学期分かかったんだし」

海未「私も、自身の体験を基に主張させていただきます」

海未「一度壊れてしまった心を元に戻すには少なからず時間が必要であると」

海未「…私たちは、そこまで付き合うことはできません」

海未「スクールアイドルで頂点を取り、各々の夢を叶えることが、我々にとっての第一目標なのですから」

海未「あなた一人に付き合って、それを逃すのは愚行だと、私は考えます」

真姫「…」

403: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:18:42.74 ID:xRF8bJp/o
希「それに関して真姫ちゃん、何か言いたいことは」

真姫「…時間は、かけない」

真姫「だからほんの少しだけでいいからっ…!あなたたちの知恵と時間を貸して欲しいの!」

真姫「にこちゃんが夢を諦めないための、手助けを…!」

海未「時間はかけない、といいますが、では何日でこなすつもりですか」

真姫「…それは」

海未「にこの心が癒えるまで、なぁなぁで日を先延ばしにするつもりではないのですか」

真姫「それは…っ、ない…」

真姫「…と、思う」

海未「…話になりません」

海未「あなたの心は揺らぎきっています。それではにこを助けるどころか、逆に大きく傷つけてしまいますよ」

真姫「…ぅ」

ことり「あの、そもそも真姫ちゃんはどうしてそんなににこちゃんに固執するの?」

ことり「…ファン、って言っても、真姫ちゃんはにこちゃんのことを知ったのは少なくとも復学してから、なんだよね?」

ことり「だとしたらそこまで思い入れがあるのはどうしてなのかな…って」

真姫「思い入れ…」

海未「そうですね。それも気になります」

海未「A-RISEに衝撃を受けてファンになる方は多いでしょうが、バックダンサーの一人であるにこに対してそこまで必死になれるのは不思議です」

海未「…彼女に、何かあるのですか?」

真姫「にこちゃんに…」

真姫(…私は、にこちゃんに憧れている)

真姫(スクールアイドルとしての彼女は、私にとっての理想像だと思う)

真姫(でも…それは私の世界の彼女)

真姫(この世界のにこちゃんを、私はまだほとんど知らない)

真姫(彼女が中学卒業からの3年間、どんな思いで、どんなことをして過ごしてきたかなんて)

真姫(…なのに彼女を、貴重な時間を犠牲にしてまで救いたがるのは何故か)

真姫(にこちゃんだから…?)

真姫(…)

真姫「…ッ!」

真姫(いえ、違う…!)

真姫(私は見たのよ…!あの日、花陽との秋葉原巡りの日…)

真姫(彼女の中に宿る、確かな煌きを…!!)

404: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:19:33.56 ID:xRF8bJp/o
(にこ「ずっとやりたかった。子供の頃からの、今も変わらないただ一つの夢」)

(にこ「どれだけ練習が辛くても、どれだけ他の人に憎まれても、その夢は裏切れない」)

(にこ「アイドルをやりたいっていう、その夢のためだけで、にこは頑張れるの」)

(にこ「何があっても、笑顔と夢は忘れない、って決めてるから」)

真姫(…彼女は、忘れてしまっていた)

真姫(自分の孤独が、自分自身が陥れた、心を守るための牢獄だったということに)

真姫(健気な少女を演じすぎたせいで、歪に変質した心すら、忘れて)

真姫(けど彼女は…)

真姫(…何があっても、笑顔と夢は忘れないって、そう言ったのよ)

真姫(己の心すら忘れてしまっても、決して忘れなかった…その二つを)

真姫(今度こそ彼女は、失おうとしている)

真姫(なら、私は…)

真姫「…私は、にこちゃんのことに詳しいわけじゃない」

真姫「もしかしたら、私は彼女に、別の誰かを重ねて見ていたのかも、しれない」

真姫「…けれど」

真姫「私の目の前で、私の知ってる人がっ…!」

真姫「笑顔で夢を語ってくれた人が!」

真姫「それを、諦めようとしているのよっ!!」

真姫「諦めなきゃ、いけない状況に追い込まれているのっ…!」

真姫「なら理由なんかいらない!私は彼女に手を伸ばしたい!」

真姫「孤独のまま深淵に飲み込まれていくなんて、そんなの悲しすぎるからっ!!」

真姫「この感情は理屈でどうこう言えるものじゃないっ…!わかってもらえるとも思ってない…!」

真姫「私の、ワガママだからっ…!!」

真姫「だから、お願いっ!あなたたちに得なんてない、ただ無駄に時間を浪費するだけのこと…」

真姫「それを承知の上で、私に力を貸してっ!」

真姫「彼女を助けたいって…心が疼くからっ…!」

真姫「お願いします…!お願いします…っ!!」

405: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:20:27.00 ID:xRF8bJp/o
海未「…」

花陽「ま、真姫ちゃん…」

海未「…ふぅ」

海未「結局は、感情論ですか」

真姫「…」

海未「理屈で丸め込むのは難しいから、我が儘を押し通すと」

海未「結果私たちに不利益が被ろうと、それは知ったことではない、と」

ことり「海未ちゃん…さすがに言い過ぎじゃ…」

海未「それをあなたも理解した上で、そうやって机に額を押し付けて、私たちに助けを乞うているのですね」

真姫「…えぇ」

海未「…厚顔無恥、ですね。こちらのことを考えず、ただ自らの思うままに行動する」

海未「実に愚かしい行為です」

真姫「…」

海未「…しかし」

海未「本当にやりたいこと、というものは得てして、そういうものなのかもしれませんね」

ことり「え?」

海未「顔を上げてください、真姫」

海未「生半可な気持ちなら断るつもりでしたが、そこまでされてはいいえとは言えませんよ」

真姫「え、じゃあ…」

海未「あなたにも、覚悟があってのことだと理解しました」

海未「でしたら、ほんの少しだけなら、お力添えさせていただきます」

花陽「ほ、本当ですか?!」

ことり「いいの?さっきまで反対だったのに…」

海未「えぇ。…迷惑を顧みず、自分のやりたいことをやる、だなんて」

海未「どこかの誰かを思い出して、少し懐かしい気分にさせてもらいましたし、その見返りと思えば」

真姫「あ…」

海未「…しかし、やはり日数をだらだらと引き伸ばすことはできません」

海未「しかも、引き伸ばす猶予すらほとんどない。ならばいっそ極端に目標を定めたほうが効果的と判断します」

海未「ですので、にこの心を治癒するための期限は…明日までとします!」

花陽「あ、明日!?」

真姫「活動時間で言えば、もう24時間も残されてないってことね…」

海未「彼女はもうまともにアイドル専攻を受けることすら出来ない体なのでしょう?」

海未「それならば、3日4日放置していれば確実に彼女はバックダンサーから再び下ろされてしまうでしょう」

海未「やるならば、速攻で。でなければ意味がありません。…ことりも、これならばいいでしょう?」

ことり「う、うん…。でも、明日までに心を治す、なんて…本当にできるの?」

真姫「…やるのよ。海未の言う通り、それ以上時間をかけることは、私たちにとっても向こうにとっても難しいことでしょうし」

ことり「そっかぁ…。明日…、厳しいね」

花陽「そもそもにこ先輩は大丈夫なの…?今日もアイドル専攻の授業を受けてるんだよね?でも…」

希「きっとにこっちも必死に耐えてるはず…。襲い来る恐怖と戦ってるんよ」

406: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:20:55.13 ID:xRF8bJp/o
同時刻 多目的ホール

にこ「…ッ」ブルブル…

絵里「さぁ、矢澤さん。落ち着いて」

絵里「大丈夫、あなたなら出来るわ。ほら、鏡をよく見て」

絵里「ちゃんと自分がどうやって踊っているか…」

にこ(絵里の声はもう聞こえない…)

にこ(私の耳には、誰かの声が延々と響き続ける)

『チビ』『チビ』『チビ』『チビ』『チビ』『チビ』『チビ』『チビ』『チビ』『チビ』

にこ(目の前の私は、昨日と同じく血まみれで)

にこ(呪詛を込めた瞳で私を睨んでくる)

『小さくて惨めなにこおぉぉぉぉお…!』

『あなたが代わりに死んでぇぇぇぇえぇぇ…!!』

にこ(震えが止まらない…!)

にこ(幻聴が、幻覚が、私を押し潰そうとしてくる…!)

にこ(怖くて、怖くて、今すぐ逃げ出したい…!!)

にこ「…ぅ、が、ぁっ…!」

絵里「どうしたの矢澤さん?出来ないのかしら」

絵里「ねぇ…できないのなら…」

にこ「…やり、ますっ…!!」

絵里「…あら、そう」

にこ(…でも、逃げ出すなんて、出来ないっ…!)

にこ(私の夢だから…!でも、でもっ…)

にこ「…」ガクガク…ブルブル…

にこ(踊ろうとしても足が震えて、上手く踊れない)

にこ(今少しでも動けば、すっ転ぶ自信がある)

にこ(でも踊らないと…!動け、動け…動けぇぇぇぇっ…!!)

穂乃果「…にこちゃん。今日も休んだほうがいいよ」

にこ「…っ」

穂乃果「絵里さんも、それでいいですよね?」

絵里「…」

絵里「…仕方ないわね。でも、こんなことが続くと…」

絵里「もう、後がないわよ?」

407: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:22:11.86 ID:xRF8bJp/o
にこ「う…、っはぁぁっ…。あ、ぅ…!」

穂乃果「…」

にこ「…ごめん、なさい…。また、心配かけさせて…」

穂乃果「そうだよ」

穂乃果「私は、これが最後。…もうこれ以上、あなたには何もしてあげられない」

穂乃果「弱い人間と付き合うと、私まで弱くなっちゃうから」

にこ「…よわい…にんげん…」

穂乃果「あなたがここで終わるような人なら、私は容赦なくあなたを見捨てる。踏み付ける」

穂乃果「あなたに構って、私まで立ち止まるわけにはいかないから」

にこ「…わかって、る…」

にこ「私だって…こんなところで終わり、たくない…!」

穂乃果「なら早く立ち上がって。そして追いついてきて」

穂乃果「私は、少しだって待つつもりはないから」

穂乃果「じゃあね。…明日は自分ひとりで、なんとかしてね」

にこ「…えぇ」

ロッカールーム

にこ「…」キガエキガエ

凛「…にこ先輩」

にこ「凛…」

凛「もう、帰っちゃうんだ」

にこ「…」

凛「…歌うの、楽しいよ」

凛「ほんのワンコーラスだけでも、本当のアイドルになれたって気がして」

にこ「…」

凛「羨ましいでしょ。にこ先輩、まだ歌えてないもんね」

凛「ダンスは穂乃果先輩とはもう完璧に合わせられるようになったからあとは…」

凛「…」

にこ「…ごめんなさい。足、引っ張っちゃったわね」

凛「…ほんとそれ。ふざけないでよ。バカ。大嫌い。しね」

凛「二度と、そんなしょぼくれた顔見たくない」

凛「どっか、行ってよ…」

にこ「…えぇ。さよなら」スタスタ…

ガチャッ バタンッ

凛「…」

凛「大っ嫌い…!弱い人なんて…!」

408: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:22:56.57 ID:xRF8bJp/o
アイドル応援部 部室

希「それじゃまあ、話もまとまったところでにこっち救出?作戦を立てようと思うけど…」

希「真姫ちゃんはなんか得策とか考えてないん?」

真姫「ないわ」

ことり「即答!?」

真姫「少しは考えてみたけど、得策ってほどいいものは思いつかなかったわね」

花陽「例えばどんな…?」

真姫「とにかく応援しまくるとか」

海未「明らかに逆効果ですね…」

希「本人は頑張ってるのにガンバレはねー」

真姫「わ、私の足りない頭じゃこれが限界だったの!だからみんなの力を貸して欲しくて…」

ことり「うーん、でもねぇ…」

花陽「ことりちゃんはその…海未さんの時はどんなことをしてたんですか?」

ことり「海未ちゃんの時?えっとねー…」

海未「う、じろじろと見ないでください…。知られたとはいえあまり思い出したくない過去ではありますし…」

ことり「何もしなかったかなぁ…」

花陽「何も?」

ことり「うん…。私じゃ無理だ、って思って…」

ことり「とにかく海未ちゃんのところへ行って穂乃果ちゃんのことを報告するだけ」

ことり「海未ちゃんにとって穂乃果ちゃんはかけがえのないものだったから、その喪失を埋めるためには穂乃果ちゃんしかないのかな、って思うとね」

ことり「だから、そうやって時間が解決してくれるって信じて私は海未ちゃんの回復を待ったかなぁ」

真姫「時間…ね。今回最も使えないもの、ね」

ことり「うん。だから私の体験はアテにしないほうがいいかも…」

希「じゃあじゃあ、海未ちゃんはどうなん?自分が鬱から回復した時、どんな感じだったとか」

海未「ぐぅっ…!触れられたくないと言っているのにズカズカと入り込んでくるとは…さすが容赦がないですね」

海未「私は…そうですね…。えー…」

海未「…覚えていません」

花陽「え…」

海未「ほ、本当なんです。どうして自分が立ち直れたとか、気にしていなくて」

海未「やはり、時間が心を癒してくれたのだと…おそらくですが」

真姫「あぁ…そう」

海未「ガッカリしないでください…」

ことり「海未ちゃん立ち直ってからどこかおまぬけさんだからねー。覚えてなくても仕方がない!」

海未「そういうあなたはおちゃらけさんではないですか」

ことり「それは海未ちゃんを笑わせたいがためでー…あ!それがあった!」

ことり「笑わせるようなことをすれば心も癒されるんじゃないかな!?」

真姫「…それは昨日やった。そもそもにこちゃんは普通に笑えてたわ」

ことり「あ、なんだ…」

409: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:23:38.76 ID:xRF8bJp/o
海未「そもそも私とにこでは症状が違いすぎて比較対象にならないのでは…」

花陽「心の病って言っても色々と種類があるもんね…」

希「海未ちゃんは笑うことすらできなくて常に錯乱状態、だったんだっけ」

ことり「うん。…あれは見てて辛かったなぁ…」

真姫「対してにこちゃんは、日常生活は普通に送れているけど…時折幻覚や幻聴が、だったわね」

花陽「幻聴?ってどんな?」

真姫「え、どんなって言われても…希、聞いてない?」

希「え、あー…せやね…。幻聴としか聞いてないわ」

海未「ど、どうして先に具体的に聞いておかないんですか…」

真姫「だって本人が触れて欲しくなさそうだったし…」

海未「治癒に本気ならそういうところを甘くしてはいけません!きちんと細部まで聞いておいてください!」

真姫「…ごめんなさい。帰ったら聞いておくわ」

ことり「海未ちゃんきびしー」

希「あ、でも幻覚の内容と幻覚が見える条件なら聞いたわ」

真姫「それはどんな?」

希「なんでも…血まみれのにこっちが鏡の中から睨んでくるんやって。死んで~…とか言われるらしいわ」

希「で、見える条件が鏡を見たとき、だったかな。伏せてある手鏡にも過剰反応してたわ」

真姫「あぁ…、そうだったわね。脱衣所やお風呂の鏡すらダンボールで封をして見るのを拒否してたわね」

ことり「うわぁ…怖いね、それは」

花陽「え…!?でもアイドル専攻で使ってるホールには…」

希「うん。大きな鏡がある。にこっちはあそこに入ると否応なしに幻覚に苛まれることになるね」

海未「それではやはりアイドルの練習などままならないのでは…。彼女を救い出すためには一刻も早く解決法を見つけ出さねばなりません」

海未「ともすれば、明日を待たずとも、彼女の心の方が先に壊れてしまう可能性も…」

真姫「それは避けたいところね…」

ことり「じゃあ、まずは鏡を見ることを克服すればいいんじゃない!?」

ことり「幻覚を見ないで済むようになれば、バックダンサーから下ろされる可能性も少なくなるだろうし」

ことり「とにかく、ちょっとでも我慢できるようになれば。根本的な解決とは行かないだろうけど…」

希「そっか、それはアリやね。病的に鏡を避けてばかりじゃそれに対する免疫もつかないし」

真姫「鏡を見させて免疫を…。わかった、帰ったらやってみるわ」

海未「先程から帰ったら、と言っていますが、そもそもにこは今日も部長のお家へ来るのですか?」

真姫「え…」

花陽「え、確信してないの?」

真姫「…帰ってくる前提で話してたわ。ど、どうしよう!もし来なかったらこの会議が結構無駄なことに…」

希「大丈夫や。にこっちは今日も帰ってくるよ」

ことり「え、どうして言い切れるんですか?」

希「ふふ、お弁当渡すときに言っておいたんよ」

希「ちゃんと今日、お弁当箱返してね、ってね」

真姫「…根回しが早いにも程があるわね。うちの部長さんは」

410: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:24:10.41 ID:xRF8bJp/o
真姫「んーっと…、とりあえずそれはそれとして…他に何かないかしら。対策」

ことり「う~ん…そうだなぁ…」

花陽「あ、あの…」

希「はい花陽ちゃん!」

花陽「そもそも、どうしてにこ先輩の心は壊れちゃったんだっけ…」

真姫「え」

海未「あぁ、そういえば詳しく聞いていなかったような気が…。まさかそれも知らないとかいうのでは…」

真姫「え、えっとぉ…希の推理によればね…」

真姫「私たちが先日行ったパジャマパーティ。あれによってにこちゃんは一人きりで頑張ることから解放された」

真姫「孤独によって感じていたストレスは解消され、ストレスで減少していた体力も元通り、…までは良かったんだけど」

真姫「実はその孤独、っていうのはにこちゃんがアイドル専攻の嫌がらせによるストレスから心を守るために、自らに課した牢獄、だったっけ?」

希「うん。誰も彼もを見下して、この世界には自分ひとりしかいない。そう思えば他人の声なんて心には響かないんと違うかなって」

ことり「え…?にこちゃんが他人を見下してる…?そんな子じゃないふうに見えたんだけど…」

真姫「えぇ、私も。でも希が言うには、それは演技なんですって。多分スーパーアイドルはプライベートも完璧にしたかったんでしょう」

海未「ファンにも笑顔を届けるため、ですか…」

真姫「…うん。あぁ、でも、あなたたちが見たにこちゃんはもうすでにそうじゃなかったのかも」

海未「はい?」

真姫「おそらく、彼女は完璧なアイドルを演じすぎたせいで、歪んだ心を忘れてしまっていた」

真姫「プライベートを完璧にスーパーアイドルとして過ごしていくうちに、浄化された、って言ってもいいのかもね」

真姫「でもそのせいで孤独がストレスと感じ始めた。それは自分を守るための檻だったのに」

海未「…なるほど。そしてそれが解消されたゆえに…」

真姫「えぇ、それ以上のストレス…、アイドル専攻の嫌がらせのストレスが彼女を襲った、のかしらね」

花陽「うぅ…、嫌がらせで、かぁ…。まさかにこ先輩も、そうなっちゃうなんて…」

真姫「あ、そっか…。花陽の友達も嫌がらせでアイドルが嫌いになっちゃったんだっけ」

花陽「…うん。それと、厳しい練習量に耐え切れず、かな」

ことり「私もよく見たよ。服飾でホールに出入りしてたときに、泣きながらホールを出て行った人とか…」

希「そういう人は、諦めた弱い人、としてあっけなく切り捨てられるのが今のアイドル専攻の現状やね」

真姫「何度聞いてもゾッとしないわね…。それでも人が集まるんだから恐ろしいわ」

海未「…あの、少しいいでしょうか」

希「はい海未ちゃん!」

海未「先ほどのにこが心を病んだ理由ですが…」

海未「…結局のところ全て部長の推測なのですよね?」

真姫「あー…そうね。本人には聞いてないんだし」

海未「だからそれも聞いてくださいと…」

真姫「ご、ゴメン…。踏み込んだ話は難しくて…。これも聞いておくから…」

花陽「あ、でもそうすると…もしかしたら今の話の中で、間違ってるところもあるかもしれないってことだよね?」

ことり「間違ってるところ?」

花陽「うん。例えば、にこ先輩は嫌がらせで心を病んじゃった、って言ってたけど、私の友達はそれに加えて練習量の多さでくじけちゃってたし…」

花陽「もしかしたらにこ先輩は嫌がらせ以外にも、心を病む理由があったのかも…」

希「うちの推理との相違点もあるかもしれない、か…。せやね、それもあるかもしれない」

真姫「しかしそうなると…やはり本人との会話が重要になってくるわね…」

411: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:25:27.34 ID:xRF8bJp/o
海未「もう一つの課題は、短時間で心を癒す、ですね」

ことり「…私、それが一番無理なんじゃないかって思ってるよ」

ことり「明日まで、だよ!?心を癒すのにそんな短時間でどうこうできるとは思えないよ…」

花陽「骨折を明日以内に完治させよう、って言ってるようなものですしね…」

真姫「か、簡単よ!骨が折れたなら新しい骨と交換すればいいの!それなら一日で治るでしょう!」

海未「そんな馬鹿な…」

希「…いや、一番現実的なのがそれかもね」

海未「えっ」

真姫「えっ」

花陽「なんで真姫ちゃんまで驚いてるの…」

真姫「まさか採用されるとは」

ことり「もしかして…折れた心を入れ替える、ってことですか?」

希「心を入れ替える…とはまたちょっと違うかもしれへんけど」

希「今のにこっちの心は守ってくれるものを無くしてバラバラの状態」

希「だからもし一度組み立て直しても、その支柱がなければ再び崩れてしまう」

希「うちが入れ替える、って言ってるのは、にこっちの心を支えてくれるもの」

真姫「今で言うところの…孤独ってことかしら」

希「そう。孤独に守られていたにこっちは孤独を失った。そのせいで外部からのストレスで揺らいでしまったけど」

希「一度、ガタガタでもいい、もっかい心をひとつにまとめて、それをガチガチに縛ってくれる何かさえ見つかれば…」

花陽「心が治るまで、ギプスの役割をしてくれる…ってこと…?」

希「うん、いい喩え!そういうことやね」

真姫「心を縛ってくれる、心を支えてくれる何か…?孤独の代わりになるような…」

真姫「あぁぁっ!!そんなの言われてもどうすればいいのよっ…!」

希「焦らない焦らない。焦れば全てを逃してまうよ」

真姫「…わかってるわ。急いで、心は冷静に、ね」

ことり「んーと、それじゃあそのことについて議論していこっか」

真姫「そうね、えっと…」

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

412: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:26:07.80 ID:xRF8bJp/o
真姫(結局下校時間まで話し合ったけど)

真姫(それ以降は特にこれといった成果もなく)

真姫(私たちは解散することとなった)

下校中

真姫「…はぁ。こんなので本当に大丈夫なのかしら」

希「真姫ちゃんが自分を信じないでどうすんの。にこっちも真姫ちゃんのこと信じてくれなくなるよ?」

真姫「そ、そうね…。よし、にこちゃんを助けるわよ!ファイト!」

希「うんうん、その意気や」

希の家前

真姫「…あ」

にこ「…あ」

希「んー、どうしたんにこっち。お弁当箱ドアノブに引っ掛けて」

希「まーさーかー、それで返したつもりやったんかなー?」

希「そしてそのまま帰っちゃうなんてこと、ないよねー?」

にこ「し、しまったわ…!もう少し早く来るべきだった…!」

真姫「今日は、泊まるつもりはないの?」

にこ「…」

真姫「にこちゃん、お願い。今日も泊まっていって」

真姫「…あなたを助ける、手助けがしたいの」

にこ「ま、まだそんなこと言って…!」

真姫「助けて、って言ったのは、あなたでしょ!」

にこ「私が…?」

真姫「泣きつかれて覚えてないのかもしれないけど、寝る寸前に私に言ってくれた」

真姫「助けて、って。にこちゃん、心の底では確かに助けを求めているんでしょ」

にこ「…」

真姫「…そうでなくても、一緒の部屋で寝るのは楽しいものよ」

真姫「今日が最後でいいから。…ね?」

にこ「…はぁ」

にこ「わかった。…パジャマと制服、取りに帰るから待ってて」

希「おっと、そんなこといって二度と帰ってこないつもりじゃ?」

にこ「そんなことない。本当よ」

にこ「…ど、同年代の子と同じ部屋で寝るのが気に入っちゃっただけだから」

希「んふふー、その返答もどうかと思うわー」

413: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:26:45.16 ID:xRF8bJp/o
希の家

真姫「…ごちそうさまでした」

にこ「ごちそうさま」

希「はい、お粗末さま~。どう?美味しかった?」

真姫「えぇ~、美味しかったわ。『カレーうどん』」

希「…まだルー余ってるんやもん仕方ないやん」

真姫「3人で三日食べてそれでもまだ尽きないってどれだけ作ってんのよ!?明日もカレーなにかになるのね…」

にこ「ふふ、でも普通に美味しかったわよ。真姫ちゃんの言ったとおり、二日続けて食べても飽きないわね」

希「せやろせやろ~?」

真姫「…4日目はさすがに飽きそうだわ」

希「じゃ、今日こそうちが洗い物してるから、にこっち、お風呂入ってき」

にこ「え…。あ、わ、わかったわ。汗、かいちゃったしね。今日も」

にこ(脂汗だけど)

にこ「…あ。その…鏡は…」

希「昨日のままやよ。大丈夫」

にこ「そ、そう…よかった」

真姫「そんなに鏡を怖がって…もしかして朝から一切鏡を見てない、とか?」

にこ「えぇ…。実は」

真姫「え、本当に!?髪のセットとか化粧とかどうしたの…?」

にこ「髪は感覚でやって、ちゃんとできてるか妹たちに確認してもらって。…化粧は、今日はしてないわ」

真姫「それを、毎日続けるつもり…?」

にこ「う、うっさいわね…。怖いんだから仕方ないでしょ!」

にこ「潰されて血まみれの私が、こっちを覗いてくるのよ…!?体験してないあなただから言えるのよ!」

真姫「…うぐ」

にこ「…い、いつか…いつか克服するつもりだけど…。ゴメン、今はまだ、怖くて」

真姫「…」

にこ「お、お風呂行ってくるわね!」スッタカター

真姫「にこちゃん…」

希「いつか、じゃ真姫ちゃんには遅すぎるんよね」

希「…にこっちの心を癒すピースを本人から集められるのは、この夜が最初で最後」

希「悔いのないように、過ごすんやよ」

真姫「…はは、死刑前日みたいだわ。笑えない」

414: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:28:29.50 ID:xRF8bJp/o
寝室

真姫「…ふぅ、いいお湯だったわ」

にこ「そ。じゃあ真姫ちゃん、一緒に寝ましょう。はい、ぽんぽん」ポンポン

真姫「そうやって布団をぽんぽんするジェスチャーはやめて。興奮するから」

にこ「予想外の反応でビックリだわ…」

真姫「…あと、私はまだ寝るわけには行かないの。にこちゃんの心を癒すために色々しないといけないから」

にこ「えぇ…いいって言ってるのに…」

真姫「助けて欲しがってる人をみすみす見過ごせないわ。お人好しだからね」

にこ「ホント、お人好しすぎるわよね…。おせっかいとも言うわ」

真姫「それでもいいから。あなただって助かりたいんでしょ」

にこ「…わかったわよ。で、どうすればいいの?」

真姫「色々聞かせて欲しいの。その幻聴や幻覚の症状について、詳しく」

真姫「まずは幻聴。…具体的にどんなことが聞こえるの?」

にこ「…今まで私に嫌がらせをしてきた奴らの声が聞こえるのよ」

にこ「私を罵倒する声」

真姫「罵倒…」

にこ「これは一日中、ってわけじゃないけど、気を抜いたらすぐに聞こえてくる」

にこ「何も考えてないときとか、特にね」

にこ「酷い時は周りの音を全てかき消すくらいの大きな声が耳元でするのよ」

にこ「…気が狂いそうになるわ」

真姫「おもってたより、キツそうね…」

真姫「じゃあ次は幻覚…たしか血まみれのにこちゃん自身が見えるのよね?」

にこ「えぇ…決まって鏡の前で、ね」

にこ「私に死ねとかなんとか、呟いてくるのよ」

真姫「死ね、って言われるの?他には?」

にこ「他には…、えっと…」

にこ「そう、私に向かって喋る時に一々こういってくるのよ」

にこ「『小さくてなんとかなにこ』って感じで。なんとかには寂しい、とか哀れな、みたいなネイティブな形容動詞入れてきて」

真姫「…………」

真姫「…ネガティブ、かしら」

にこ「あ、そ、そうそう、それよ」

真姫「あとそれは形容詞ね」

にこ「ど、どうでもいいでしょそんなこと!私の頭が悪いことくらい重々承知よ!」

真姫「それは鏡を見てる時は必ず?」

にこ「え、えぇ…。ホールに行けば大きい鏡があって、見たら絶対に出てくるの…」

にこ「それが脳みそを引っかき回されるような不快感と恐怖で…ホント、最悪よ」

真姫「…やっぱり、アイドルとして鏡を見ることができないっていうのは致命的ね」

真姫「だから…こうするしかないと思うわ」スッ

にこ「え、何っ…ってぎょわぁぁぁっ!!なに出してんのよ!?」

真姫「…手鏡よ」

にこ「こ、怖いって言ってるでしょ!やめてよ!」

真姫「いつまでも怖がってられないでしょ!克服するための練習も必要よ!」

415: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:29:04.46 ID:xRF8bJp/o
にこ「そんなこと言ったってぇぇ…!夜は安らかな気持ちでいさせてよ!」

真姫「そうやって逃げてたらいつまで経っても改善なんか見込めないわよ!」

にこ「昼なら…昼にやるから!」

真姫「今私が居る前でやって!そうでないと信用できないわ!」

にこ「ちょっ…、自分を信じてとか言っておいて私のことは信用できないのね!?」

真姫「にこちゃんはそういうところはぐらかす…ような気がするから!」

にこ「私の何を知ってるって言うのよ!?と、とにかくっ…鏡はナシっ!」

真姫「ダメぇぇっ!!」

にこ「そ、そんなに大きな声で叫ばなくても…」

真姫「このままずっと鏡を見なかったら…にこちゃんは笑顔を忘れちゃう…!」

にこ「えっ…」

真姫「自分の笑った顔を見れないなんて、寂しいでしょ!?」

真姫「にこちゃんは自分の笑った顔、好きなんじゃないの!?」

にこ「それは…」

真姫「毎日鏡の前で、笑顔を作ってにこにこにー、って」

真姫「そうやって妹さんたちも、笑顔になれているんでしょ」

にこ「ど、どうして真姫ちゃんが私の妹のこと、知ってるのよ…」

真姫「ずっと笑顔を見なければ、いつか笑顔の作り方すら忘れてしまう」

真姫「自分では笑ってるつもりでも、笑えてないかもしれなくなる」

真姫「そんなのっ…、嫌じゃない!」

にこ「…っ」

真姫「…せめて、自分の顔だけでもわかるようになりましょう」

真姫「妹さんたちにとって、あなたはもう最高のアイドルなんだから」

真姫「笑顔をなくすなんて、しちゃいけないわよ」

にこ「…」

にこ「こころ…、ここあ…、こたろう…」

にこ「…こうしてる間にも、あの子達は私のこと、心配してるのよね…」

にこ「そう…。ならせめて、笑顔でいないと…」

にこ「少しでも心配かけないように、にこにこにーで笑顔にならないと…!!」

にこ「真姫ちゃん…、それ、貸して」

真姫「手鏡?…はい」スッ

にこ「…!目をつぶって、集中…」

にこ「怖くない、怖くない、怖くないぃぃ…!!」

にこ「血まみれの私なんか笑顔で…に、にっ…!!」

にこ「にっこにっこにー!!」

真姫(つ、ついに鏡を、見たっ…!!)

にこ「…あれ」

真姫「へ?」

にこ「普通…だわ」

にこ「普通の私が…普通に笑顔で映ってる…」

416: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:29:48.29 ID:xRF8bJp/o
真姫「え…?どういう、こと…?」

にこ「あれー?おかしい…」

にこ「あ!もしかしてもう私治った…?」

真姫「いやいやいや…、そんな簡単に治ったら私のこれまでの苦労は一体…」

にこ「っ…!!」

にこ「クッソ…、治ったと思ったけど…、ダメだったわね」

真姫「え?もしかして幻覚が…?」

にこ「ち、違うの…。幻聴の方よ。…また耳元で声が…」

にこ「ったく、うるさいのよ…。『チビ』『チビ』って…」

真姫「…チビ?」

真姫「にこちゃんへの罵倒って…チビなの?」

にこ「そうよ!私が幼い頃から幾度も投げかけられた罵倒!」

にこ「脳みそに染み付いて、離れない…言葉よ」

真姫「…」

(にこ「潰されて血まみれの私が、こっちを覗いてくるのよ…!?」)

(にこ「『小さくてなんとかなにこ』って感じで」)

真姫(潰される…。小さい…)

真姫(そして…チビ…)

にこ「でもどうしてかしら…。今まで鏡はダメだったのに、急に見れるようになって…」

真姫「にこちゃんっ!」

にこ「は、はいっ!?なにかしら…」

真姫「その幻覚の症状が出てから、今までホールの鏡しか見てこなかったの!?」

にこ「え、そんなことないけど…」

真姫「じゃあ家の鏡とかは…」

にこ「それは怖くて見れなかったわ…。自分の部屋の鏡もこころに片付けてもらったし…」

にこ「そういえばホール以外で鏡を見たのはほとんどないかも…唯一見たのが…」

にこ「…医務室の、姿見…」

真姫「…っ!!やっぱり…!」

にこ「え、やっぱり…?」

真姫「繋がったわ…!花陽の言ってたとおり…!」

真姫「原因は、嫌がらせだけじゃなかった…!!」

にこ「ど、どういうことよ…?私にもわかるように説明して?」

真姫「…おそらくだけど、にこちゃん、あなたは…」

真姫「身長に、コンプレックスを抱えているのね」

417: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:30:28.46 ID:xRF8bJp/o
にこ「え…」

真姫「自分が小さいってことを気にしている。そうでしょ?」

にこ「そ、そうでしょ、って…。そんなの昔から気にしてるけど…」

にこ「今更だわ。もう慣れたわよ、身長の差なんて…」

真姫「…いえ、違う。あなたは今も気にしているのよ。自分の身長の低さを」

真姫「今まであなたが見てきた幻聴、幻覚、その全てがそれを指し示している」

にこ「え…?」

真姫「今まで多くの嫌がらせを受けてきて、様々な罵倒を投げかけられたことでしょうけど」

真姫「その中でも最も心に残ってるのが、『チビ』って言葉」

真姫「そしてあなたの頭に響く幻聴は、全てその『チビ』で埋め尽くされているわ」

真姫「他にも多々、嫌な言葉はあったのに、そればっかり」

にこ「それは…、今まで一番多く投げかけられた言葉だからであって…」

真姫「そして幻覚で生み出される血まみれのにこちゃん。あなたは彼女を『潰された』といったわね」

にこ「え、えぇ。一番最初に見た幻覚で、大きな足に潰されて…」

真姫「それは自分が踏み潰されるほど小さい存在であることを自覚している象徴」

真姫「鏡の中のあなた自身も、あなたに対して『小さい』と呟いている」

真姫「それほどまでににこちゃん、あなたは小さい自分に対して敏感なのよ」

にこ「…」

真姫「そして、何より」

真姫「今見た手鏡で、血まみれのあなたが見えなかったこと」

にこ「そ、そうよ、それよ…。どうしてこれだけ…」

真姫「答えは簡単よ」

真姫「あなたは、鏡そのものを恐れていたわけじゃない」

真姫「『全身が映る鏡』を恐れていた」

真姫「『鏡に映った小さな身体の自分』に、恐怖を抱いていた」

真姫「だから顔だけ映る鏡には、血まみれのあなたは映し出されなかった」

真姫「血まみれのにこちゃんは」

真姫「あなたの、身長に対するコンプレックスの象徴よ」

にこ「…っ!」

418: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:31:03.37 ID:xRF8bJp/o
『矢澤さんって、いっつも一番前なのね』

『前ならえの時、楽そうで羨ましい』

私からすれば、あなたたちが羨ましかった。

ずっと、腰に手を当ててばかりで。

一度くらい、手を前に出したかった。

『あら、1年生?』

『おつかい上手ね。はい、どうぞ』

私はもう、6年生だ。

妹の面倒だって見れる、立派なおとな、なのに…。

『え、黒板の文字見れない?』

『先生に言って前に席移動してもらえば?』

うるさい、あんたがデカイから悪いのよ。

もう前の席なんか、行きたくない。

『あなた、モデル専攻なの?』

『あははははは!!無理無理!やめといたほうがいいよー?』

『せめて歌手とかさ~。他にも色々あったでしょ?』

『どうしてモデル選んじゃったの?』

私はモデルなんか目指してない。

ただ、アイドルになりたいから。

そのために一番敵の少ない、ここを選んだだけ。

そう、それだけ。

たったそれだけ。

別に…

身長が高くなるかもしれないから、なんて。

考えて、ないんだから。

『あなたには無理だよ』

『だって』

『チビなんだから』

419: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:31:37.52 ID:xRF8bJp/o
にこ「…!」

にこ「…そう、だった」

にこ「私は…小さい自分が、嫌で嫌で仕方なかったんだ…」

にこ「だから…モデル専攻に入って…、大きくなれればって思って…」

にこ「でも…そんなの叶わぬ夢で…」

にこ「それをごまかすために、モデルは私にとっては二の次、なんて…」

にこ「私…私…、そっか…。そう、だったんだ…」

真姫(…にこちゃんは小さい自分が嫌いだった)

真姫(どうやらそれは間違いないらしい)

真姫(にこちゃんの心が崩れた原因、コンプレックス)

真姫(それを見つけることはできた…)

真姫(…けれど)

にこ「…でも、だったらどうすればいいのよ」

にこ「この身長をどうにかすることなんて今更出来ない!」

にこ「小さい私はどうやったって、もう私でしかない…!」

にこ「逃れることなんてできないのよ!!」

真姫「にこちゃん…、だったら今から、好きになればいいじゃない」

真姫「小さい身体も自分の個性だと思えば…」

にこ「思ってきた!小さい私だからこそ、愛されるキャラクターでいようって!」

にこ「ずっと思ってきた結果が、これよ…!?」

にこ「心にしこりが残り続けたせいで、私は自分の姿を見ることが出来ないくらい、自分が嫌いになってる…!」

にこ「じゃあどうしろって言うのよ!?どうすれば私は私を好きになれるの!?」

にこ「教えてよっ!!私は…私はどうしたらいいのよぉっ!!」

にこ「おしえなさいよぉおぉぉぉおぉっ!!!!」

真姫「うっ…」

にこ「あなたにはわからないっ!私の痛みがっ!苦しみが!!」

にこ「ずっと小さいって虐げられてきた辛さが!」

にこ「あなたにはその経験がないからぁっ!!」

にこ「わかるわけないのよっ!!」

真姫「…」

にこ「…結局、真姫ちゃんじゃ、私を癒すことはできなかった」

にこ「でもありがとう。おかげで…鏡を見るくらいはできるようになったわ」

にこ「これで妹たちに、心配かけずに済みそう」

にこ「…笑顔のまま、アイドルをやめられるわ」

真姫「っ…!待って…!まだっ…!!」

にこ「おやすみ、真姫ちゃん」

にこ「…さよなら」

真姫「に、こ、ちゃ…ぁ…」

420: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:32:08.87 ID:xRF8bJp/o
真姫(私の持てる全てを以て、にこちゃんの心のピースを探して)

真姫(彼女を苛む原因は突き止められたけど、結局そこまでだった)

真姫(私には、彼女を救う手段が、ない)

真姫(私には彼女の痛みが、共有できない)

真姫(おそらく、C☆cuteの誰も)

真姫(仮ににこちゃんと同じ経験をした人がいたとして)

真姫(その人ににこちゃんを説得してもらったとして)

真姫(その言葉がどれだけ彼女に伝わる?)

真姫(ただ、虚しいだけ)

真姫(傷の舐め合いにしかなりはしない)

真姫(彼女の心を、ガチガチに縛ってくれるもの)

真姫(そんなもの…どこにあるって言うの?)

翌日

1年E組

真姫「…」

真姫(机に突っ伏して、ひたすら考える)

真姫(昨日の晩から、寝ずに頭を働かす)

真姫(にこちゃんを救えるものを、私は持っていないかと)

真姫(私だけじゃない。花陽、ことり、海未、希…)

真姫(彼女たちににこちゃんを救える何かは、ないか)

真姫(考えて考えて考えて)

真姫(そして未だ、何も浮かばず)

真姫(タイムリミットは、今日まで)

真姫(正確には、にこちゃんと話せる、今日の放課後まで)

真姫(それまでに、私は…)

「…どうしたの?眠たい?」

真姫「…ん?」

真姫(声をかけられ、顔を上げると…)

親衛隊A「うわ、すごいクマ出来てるよ…?寝不足?」

親衛隊C「アイドルがそんな不摂生では支障が出ますわよ?」

親衛隊E「じ、授業中に寝るのも、あまりよくない、…ですよ」

真姫「わかってるわよ…。…って、あんたたち別の教室でしょ。どうしてここに…」

親衛隊C「ん?あぁ、それは彼女が西木野さんを心配…」

親衛隊A「わぁぁっ!!言わなくていいって…ひ、秘密だよ、秘密」

親衛隊E「そそ、そうそう!ひ、秘密、です!」

真姫「…?あっそ、秘密…ね」

真姫「秘密…」

421: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:33:04.80 ID:xRF8bJp/o
真姫「っ!!」

真姫(コンプレックス…)

真姫(彼女の心を支えるもの…)

真姫(そして、『秘密』…)

真姫(私の脳内を電流が駆け巡る)

真姫(心臓が昂ぶり、血液が全身を震え立たせる)

真姫(忘れていたものが、瞬時に掘り起こされる)

真姫(あった…)

真姫(あった)

真姫「あったぁぁぁっ!!!!」

親衛隊ズ「「「!?」」」

真姫「これ、これだわっ!!これなら、彼女の心を埋めてくれるかもしれないっ…!!」

真姫「私にはまだ、残っていた…!」

真姫「最強にして最大の、私の持てる力!」

親衛隊A「ど、どうしたの…?」

真姫「こうなったらじっとしてなんていられないわ!」

真姫「今のうちに、できるだけ早く!早くっ!!」ダダッ

親衛隊C「え、ちょっ…!どこへ行くんですの!?」

親衛隊E「い、行っちゃいましたね…」

親衛隊A「なんだったんだアイツ…。元気ないと思ったら急にピンピンして」

親衛隊C「きっとあなたの応援が彼女にも伝わったんですわ」

親衛隊A「私なんもしてないんだけど…」

親衛隊E「と、とりあえず西木野さんもいなくなっちゃったし…教室戻ろっか…」

親衛隊A「う、うん…」

422: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:34:01.53 ID:xRF8bJp/o
放課後

多目的ホール前

にこ「…」

真姫「にこちゃんっ!!」

にこ「…真姫ちゃん?」

真姫「に、にこちゃんっ!!」ガシッ

にこ「きゃっ…!?な、なによいきなり…肩掴まないでよ…」

真姫「やめちゃダメっ!」

にこ「えっ…」

真姫「わ、私っ…!見つけたの!にこちゃんを助けられる方法!」

真姫「にこちゃんの心を支えてくれるもの…!」

真姫「だから、アイドルを諦めちゃ…ダメなのよ!」

真姫「お願い、だから…」

にこ「…離してよ」

真姫「にこちゃんっ!」

にこ「離してって!」

にこ「…別に!やめるつもりなんてないってば!」

真姫「…え?」

にこ「今日も、ちゃんとこうしてアイドル専攻受けに来てるの見ればわかるでしょ」

真姫「で、でも…昨日の夜、これで笑顔でアイドルをやめられる、って…」

にこ「本当にどうしようもない時になったら、ってことよ。…言葉足らずだったかしら?」

にこ「私はまだ諦めるつもりは、ないわ」

真姫「…よ、よかった…。私はてっきり絵里に専攻をやめることを伝えるためにここまで来たのかと…」

にこ「…私は自分がどうであろうと、心がどうなろうと突き進むつもりよ。で、さっき気になること言ってたけど」

にこ「私を助けられる方法…って」

真姫「あ…、そう、それよ!一番重要なこと!」

真姫「にこちゃんの支えになるかもしれないもの、用意したから」

真姫「練習が終わったら希の家への下校道にあるベンチに来て」

にこ「え、なにがある…」

真姫「そういうわけだから!ちゃんと最後まで専攻を受けて来てね!居残りもナシだから!」ダッ

にこ「あ、ちょっと!…なんなのよ…」

にこ「心の支え…?ずっと自分の体型を好きになれなかった私に、今更何を…」

にこ「…」

にこ「…でも、何もやらないよりかは…マシ、ってことかしら」

にこ「仕方ないわね。…行ってやるわ」

423: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:34:31.76 ID:xRF8bJp/o
にこ(だけどまずは…今日のこの時間を乗り切ることが先決…!)

にこ(ここでまた倒れでもしちゃったら…再び下位落ち…)

にこ(居残りで夜中までいることになっちゃう上に、もう戻れる可能性は絶望的…!)

にこ(とにかく根性見せろ、矢澤にこ!ここじゃもう、誰も助けてくれないんだから!!)

にこ(死ぬ気で、頑張るの…!)

多目的ホール内

絵里「ではまず、準備体操から。それが終わったら各自発声を」

にこ「…ふ、ぅっ…!」

にこ(準備体操ではとにかく鏡は見ない…!幻聴にもひたすら耐える…!!)

にこ(凛でも来て背中押してくれればちょっとは気が紛れるのに…)

にこ「こんな時に来ないって…くぅっ…!」

にこ(…うぅん!もう誰の手も借りないって決めたんだから…!)

絵里「…3人、揃ってるわね」

絵里「それでは、今日こそダンスを完璧に合わせるためのレッスンを始めるわ」

絵里「矢澤さん。…今日合わせられなかったら…、わかってるわね?」

にこ「…わかってます」

絵里「よろしい。じゃあ始めます」

絵里「ちゃんと、自分の動きを確認しながら踊ること」

穂乃果「はい!」

凛「にゃ!」

にこ「はいっ!」

絵里「…音楽、スタート」

にこ(私の前には、大きな鏡)

にこ(話しかけてくる、潰されたにこ)

『小さくて愚鈍なにこ。まだ運命に抗おうとするの?』

『小さくていじましいにこ。そんな努力はただ無駄なだけ』

『終わりなさい。消えなさい』

『あなたに大きな舞台は似合わない』

『だって、小さいんだもの』

にこ「う、うぅっ…!」

にこ(…聞くな。私には鏡に映る自分しか見えない。幻覚なんて…ない)

にこ(そう言い聞かせても、私に見えるのは血まみれの私)

にこ(こんな状態じゃ、まともに踊るなんて、無理…)

にこ(…だけど!)

絵里「…おや?」

424: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:35:12.85 ID:xRF8bJp/o
にこ「ふっ…!はぁっ…!!」タン、タタンッ…!!

絵里「…ついていけてるわね。急にどうしたのかしら」

にこ(無我夢中でダンスを踊る。鏡の自分すら見ないようにして)

にこ(でも、ただムチャクチャに踊ってるわけじゃない)

にこ(今日、休み時間、ひとりの時間をフルに活用して)

にこ(携帯に保存してあるA-RISEのダンスをすり切れるほど頭に叩き込んだ)

にこ(これを脳内で自分に変換する…!)

にこ(記憶の動きを一つ一つトレースするように身体をなぞらせる…!)

にこ(他人の動きも自分の動きも見ず、ひたすら集中して妄想する…)

にこ(私が考えついた、幻覚への対策…!)

にこ「ふぅっ…!た、あぁぁっ…!!」

絵里「矢澤さん、テンポ遅い。顔も笑えてないわ。もう一周」

にこ「はぁっ…!」

にこ(神経をすり減らして踊るから燃費は最悪…毎日こうやって踊ってれば、いつか限界はくる)

にこ(継続してこんなことやっていても、私の目指すアイドルに届くとも、思えない)

にこ(…けど、せめて今日だけ)

にこ(今日だけでも、耐えて。私の身体、精神…!)

にこ(どんなものかは知らないけど、真姫ちゃんが私のために用意してくれた希望)

にこ(それを見ずに終わってしまうなんて…)

にこ(…ファンに対して、失礼だからね!)

にこ(さぁ、動いて!精確に、優雅に、けれど笑顔で!)

にこ(頭の中の私は、まごうことなくスーパーアイドルなんだから!)

にこ(行くわよっ…!)

にこ(にっこにっこにー!!)

にこ「はぁぁぁっ…!!」タタタンッ…

にこ「はっ!」タタンッ!!

425: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:35:43.91 ID:xRF8bJp/o
音楽室

海未「…真姫、動きが鈍くなっていますよ」

真姫「え、あぁ…ごめんなさい」

花陽「やっぱり心配?にこ先輩のこと」

真姫「…うん、そりゃあね」

ことり「聞いた話だと、昨日も専攻を途中退場だったって」

希「それでも専攻をやめずに済んでるのは、えりちのいたぶりによるものやろうけど…」

海未「…さすがに二日続けて、となってしまえば…どうなることか」

真姫「でも、その絵里の腐った教育のおかげで、まだなんとか繋げてる…!」

真姫「私の用意した最後の切り札…。今日を乗り切り、それが有効に決まってくれれば…」

真姫「にこちゃんは復活できる…、はず!」

ことり「…だと、いいね」

花陽「うんっ…!」

海未「信じているならこちらも集中しましょう。心配はにこに失礼ですよ」

真姫「…そうね。彼女ならきっと…やってくれるもの」

多目的ホール

にこ「はっ!」タタンッ!!

絵里「…よろしい。完璧に揃っていたわ」

絵里「よくやったわね。矢澤さん」

にこ「は、い…」

絵里「それじゃ、長いこと踊り続けただろうし一度休憩ね」

絵里「…私も一度、失礼させてもらうわ」スタスタ…

にこ「はぁっ…、はぁっ…!」

凛「やっ…やったねにこ先輩!あんなにキリキリ踊れるなんて昨日の醜態からじゃ想像できないよ!」

凛「やればできるんじゃん!よかったー…、これで一緒に歌え…おっとっと!別に凛は喜んでなんか…」

にこ「絵里は…行った、わね…」

凛「えっ…、うん…」

にこ「うっ…」フラッ

バターンッ!!

凛「にっ…!にこ先輩!」

にこ「ぐ、うぅっ…!!」

にこ(思ってたより、キツい…!)

にこ(あと1周多く踊ってたら…途中で倒れてたかもしれない…!)

にこ(でも、これで今日のメインのダンスレッスンはこなした…!)

にこ(なんとか…、耐え切った…!!)

426: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:36:13.77 ID:xRF8bJp/o
多目的ホール前

絵里「…」

穂乃果「…何か嫌なことでもあったんですか?」

絵里「っ…、あら、穂乃果…いたのね。どうしたのよ、わざわざ外まで出てきて」

穂乃果「中だと熱気がこもって暑いので。それよりも先輩、随分と苛立っているようですけど」

絵里「そう見えるかしら?そんなつもりじゃないんだけど」

穂乃果「…そうですか。なら、いいんですが」

穂乃果「綺麗な爪なのに、そんなに噛んだら傷が付いちゃいますよ」

絵里「…」

穂乃果「…クールダウンが済んだので中に戻ります」

絵里「…えぇ、そうしてちょうだい」

穂乃果「…あぁ、もう一つ」

絵里「なに?」

穂乃果「…私、あなたの教育方針には賛同してきました」

穂乃果「強くあるには弱いものを踏み台に育っていくことが必要だと」

穂乃果「頂点に輝くために、犠牲はつきものだって」

穂乃果「…でも初めて、あなたに賛同できないことがあります」

穂乃果「にこちゃんは…強い子だと私は思います」

穂乃果「彼女を踏み台にするのは…間違ってる」

絵里「…」

絵里「…言いたいことは、それだけ?」

穂乃果「…はい。生意気なことを言ってしまってすみません。…失礼します」スタスタ…

絵里「…」

絵里「…ッ!!」ダンッ!!

絵里「あなたに、なにがぁっ…!!私は、間違って…!ぎぃぃっ…!!」

絵里「…く、はっ…」

絵里「…はぁー…。そう、間違ってなんか、ないわ…。私は、私の目的のために…!」

絵里「ふふっ…、にこ…。今はなんとか耐えとどまっているようだけど…」

絵里「そう遠からず彼女は崩壊する…!そして穂乃果、凛…!あなたたちは強くなるのよ…」

絵里「私の理想とする、最強のスクールアイドル…。それを達成するための駒として」

絵里「『強くあれ。それ以外に価値はない』…そうでしょう?」

絵里「…おばあさま」

427: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:36:44.33 ID:xRF8bJp/o
数時間後

絵里「…では、今日はここまでとします。明日は朝からなので遅れずに来るように」

絵里「じゃ、解散ね。目標に達していないと感じている人は居残って練習するように。戸締りは最後の人がきちんとしておいてね」

にこ「くっ…、はぁっ…!」

凛「だ、大丈夫…?」

にこ「平気…。ダンスのあとは歌の練習だったおかげで、体力は持ってくれたわ…」

凛「でもそんな調子じゃ、明日は…」

にこ「そうね…。明日は今日よりずっと長いから…、このままだと…」

穂乃果「凛ちゃん。無駄話はそこまで」

穂乃果「にこちゃんも、帰って身体を休めないと。待ってる人もいるんでしょ?」

にこ「えっ…どうして真姫ちゃんが待ってるって…」

穂乃果「え?家族が待ってるって言いたかったんだけど…」

にこ「え、あ、あぁっそうね!早く帰ってこころたちに元気な顔見せてあげないと!」

にこ「じゃあ私着替えてくるわ!」

穂乃果「…」

凛「ホントに大丈夫なのかなー…ま、まぁ凛には関係ないことですけどー」

穂乃果「…どうして」

凛「へ?」

穂乃果「どうしてそこで、西木野さんの名前が出るの…?」

穂乃果「…まさか」

凛「どったのー?」

穂乃果「…うぅん、何でもない。私たちも着替えて帰ろっか。凛ちゃん」

凛「うん!」

428: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:37:10.70 ID:xRF8bJp/o
下校道

テクテク…

にこ「…うぅっ、さぶっ…」

にこ「そろそろ冬も近づいてきちゃったし…練習後だと身体が冷えるわね…」

にこ(…なんとか耐え切ったとは言え、疲労はいつも以上に溜まっている)

にこ(明日もこの調子だと…どうなるかわからない)

にこ(となるとやっぱり…)

にこ「真姫ちゃんの助けに頼るハメになっちゃう、のかしら…」

にこ「…なんだか悔しいけど。けどあの子も私のためにやってくれてるのよね…」

にこ「こんな、私のために…」

にこ「…っと、いけないいけない。また思考がネイティ…ネガティブに走るところだったわ」

にこ「さて、そろそろ言ってたベンチが見える頃だけど…真姫ちゃんが待っててくれるのかしら」

にこ「…ん?あ、ベンチに座ってる人影が…。暗くてよく見えないけど、真姫ちゃんかしら…?」

にこ「真姫ちゃーん?」

にこ(私が呼ぶと、人影は立ち上がってこちらに腕を振った)

にこ(どうやら真姫ちゃんのようだわ)

にこ(確認も取れたので小走りで彼女の元へと近づいた)

にこ「もう、なによ。わざわざこんなところまで…」タッタッタッ…

にこ「…え?」

429: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:37:37.43 ID:xRF8bJp/o
希の家

ガチャッ

真姫「ただいまー!」

希「はい、おかえりー。んで、我が家、ただいまー」

真姫「はいはい…。ふぅ…、今日も疲れたわね」

希「そんな疲れた身体を癒す今日の晩御飯はー?」

真姫「うっ…、またカレーだった…。嫌なこと思い出してしまったわ」

希「美味しいものは何日食べても飽きんものやよ。と、そういえば…」

希「思い出すといえば、にこっち…、今頃例の『切り札』とご対面中なんかな?」

真姫「…あぁ、そうね…」

希「いいの?二人きりで」

希「あっちも急に頼まれてびっくりしてると思うし、状況説明に真姫ちゃんもおったほうがよかったん違う?」

真姫「いいのよ。きっと彼女なら、やってくれるはず」

真姫「彼女には、にこちゃんの気持ちが私たち以上に理解できているはずだから」

真姫「公に明かしたくない『秘密』を持ちながら、それでも頂点へと輝いた」

真姫「…ダンスの貴公子サマ、ならね」

ベンチ前

にこ「…な、な…!!」

にこ「なんで…!」

「…ごめんなさい。真姫さんでなくて」

「でも彼女に頼まれちゃって。ここであなたを待っていて、って」

にこ「なんで、あなたが…!?」

にこ「綺羅、ツバサ…、さん…っ!」

ツバサ「こんにちは、矢澤にこさん」

430: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:38:27.85 ID:xRF8bJp/o
にこ(意味がわからなかった)

にこ(真姫ちゃんに呼ばれて行った場所に、まさか…)

にこ(私の憧れの…ツバサ様がいるなんて!)

にこ(アイドル専攻、しかも私のようなA-RISE候補生ですらまともに一対一で会話なんてしたことない…!)

にこ(それほどA-RISEっていうのは特別な存在だと位置づけられているのに!)

ツバサ「…まぁ、突然で驚いてるかもしれないけど、とりあえず座ってお話しましょう」

にこ「は、はい…」スワリ

にこ「あの、真姫ちゃんに頼まれて…ってどういう…?」

ツバサ「ん?あぁ…、以前ちょっとした用事で彼女のアイドルグループ…C☆cuteさん、だったかしら」

ツバサ「あの子たちへ共演の依頼をしに行ったんだけど、断られちゃって」

ツバサ「だけどその時に親睦を深めて、困ったことがあったら頼ってね、って言ってたから」

ツバサ「まさか、こういう形で頼られるなんて思ってなかったけど。あはは…」

にこ「ま、真姫ちゃんにそんな特権がぁっ…!?う、羨ましすぎ…!」

ツバサ「私としてはもっと下級生たちと仲良くなりたいんだけど、A-RISEという立場上難しいから」

ツバサ「逆にこうやって触れ合える場を設けてくれることは嬉しいことよ」

にこ「で、でも私ごときにっ…!あ、えと…、というか私どうしたら…」

ツバサ「ふふふ、楽にしてくれていいから。今日はA-RISEのツバサ様、じゃなくて、一生徒としての綺羅ツバサ…」

ツバサ「…うぅん、一人のアイドルを目指す少女としての、ツバサとして話し合いたいから」

にこ「あ…、わ、わかりました…」

ツバサ「…で、たしか…真姫さんから聞いた話によると、アイドルが続けられなくなるかどうかの瀬戸際、って聞いたんだけど」

ツバサ「それを助けるために力を貸して欲しい、って言われて。詳しい事情も一応聞いたけど」

ツバサ「確認したいから、あなたの口で今、自分はどういう状況か、教えてもらえるかしら?」

にこ「は、はい…」

にこ(私は自分の置かれている状況を逐一ツバサさんに報告した)

にこ(幻覚、幻聴のこと。その原因が身長へのコンプレックスにあること)

にこ(自らのことだけじゃなく、アイドル専攻全体に渡っても)

にこ(厳しい練習量に耐え切れず辞めていく者、嫌がらせをしてのし上がろうとする者)

にこ(そういう人たちが今のアイドル専攻に蔓延っていると、伝えた)

431: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:39:09.71 ID:xRF8bJp/o
ツバサ「…そっか。今、アイドル専攻はそんなことになってるのね…」

にこ「知らなかった、んですか…」

ツバサ「知らない、ってことはないわ。でも、思ってたより深刻なのね」

ツバサ「私がアイドル専攻でA-RISEを目指していたときはそんなに殺伐としてなかったんだけど」

ツバサ「いつからそんなふうになっちゃったのかな…」

にこ「…それは多分…絵里が関わってきてから…」

ツバサ「…そうね。彼女の影響が強いところもあるわね」

ツバサ「けど、彼女が育て上げた穂乃果さんや凛さんは私たちA-RISEに匹敵するほどの力を秘めている」

ツバサ「しかも、まだ成長してる…。このまま行けば、来年には私達をゆうに超える…」

ツバサ「…あ、もちろん矢澤さん。あなたもね」

にこ「お、お気遣いありがとうございます…」

ツバサ「あははっ、本音だってば。…うん、バックダンサーのあなたたちはとても強い子だと思う」

ツバサ「でも、争いあって心を傷つけて…アイドルを嫌いになってしまうような環境は…嫌だな」

にこ「…」

ツバサ「アイドルっていうのはもーっと、プライベートまで華やかなものであってほしいと思わない?」

にこ「えっ…」

ツバサ「朝はピンク色の馬車に乗って登校してきて、ごきげんよう、ってみんなに挨拶して…」

ツバサ「お昼はシェフの方が作ってくれた豪華なイタリアン!放課後にはお洒落なカフェでお友達と一緒に紅茶にケーキ…」

ツバサ「…ってこれじゃ、アイドルっていうよりお姫さまだけど。でも私、小さい頃はアイドルってリアルもそんなものだって思ってたの」

ツバサ「ふふふふ…、バカみたいでしょ?私にもそんな頃があったんだけ…」

にこ「そ、そんなことないっ!」

ツバサ「わっ」

にこ「私もっ!私もそう思ってたの!」

にこ「華やかなドレスに身を包んだ現代のプリンセス!それがアイドルだって!」

にこ「毎日笑顔で周りの人を幸せにして、歩いたところからは七色のお花が咲き乱れ…」

にこ「…あ」

にこ(わ、私ってばツバサ様の前で何言ってるの!?共感できることがあるとつい…)

にこ「ご、ごめんなさい…変なこと言っちゃって」

ツバサ「ふふ…いえ、やっぱりそうよね。アイドルってそんなものだって思っちゃうわよね」

ツバサ「けど、現実は違う。厳しく辛い世界を勝ち抜いて、そしてみんなを笑顔にする仕事」

ツバサ「たとえリアルがどれだけ悲哀に満ち溢れていても、楽しく幸せいっぱいに振舞う」

ツバサ「そんな…極端に表せば、みんなを騙すお仕事。それが、アイドルなのよ」

にこ「騙す…仕事…」

ツバサ「言い方が悪いけどね。…でも私は、そんなアイドルが好き」

ツバサ「正しく、夢を与えられる仕事だと私は思うから」

ツバサ「辛いことなんて何もない、いいことだらけの世界を夢見させてくれる…トリックスターっていうのかしら」

ツバサ「私の思うアイドルの本質は、そういうものなの」

にこ「…」

432: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:40:25.64 ID:xRF8bJp/o
にこ(その考えは、私とは少し違う)

にこ(私はやっぱり、アイドルとは全て楽しいものだって、そう思ってるから)

にこ(辛いことがあっても、楽しさで上書きできる…それがアイドル)

にこ(私はA-RISEとして上に立って、アイドル専攻を楽しいものに塗り替えたい)

にこ(それが私の理想)

にこ(…けど、ツバサさんの考え方も、私にとっては新鮮で)

にこ(辛い現実から欺いて、人を楽しませるトリックスター…)

にこ(無視することのできないコンプレックスを持つ私には、もしかしたらこっちの方があっているのかもしれない)

にこ(…でも)

ツバサ「あなたは…自分の身体にコンプレックスを抱いている、のよね?にこさん」

にこ「えっ…、あ、はい」

ツバサ「小さい身体の自分が嫌いで、ずっとストレスに感じていた」

ツバサ「好きになろうと努力してみたけど、でもそうはならず、結局積り積もったストレスで、心が崩壊してしまった…」

ツバサ「あなたのコンプレックスが、実態を持って自身を襲うようになった…のよね」

にこ「…はい」

にこ(そう…。好きになろうとした)

にこ(小さくて可愛いにこ。マスコットのように愛されるにこを好きになろうって)

にこ(…でも、できなかった。ずっと心の奥底で嫌悪しつづけ、小さい自分から逃げ続けた)

にこ(自分すら騙すことのできない自分…。そんな私に、人を騙すことなんて…)

ツバサ「…嫌いなら」

ツバサ「ずっと嫌いでいいと思う」

にこ「はい…?」

ツバサ「自分の気持ちって自分が一番よくわかってるでしょ?」

ツバサ「そんな自分を騙すことは、誰かを騙すよりずっと難しいこと」

ツバサ「なら小さい自分は嫌いでいいじゃない」

にこ「え、それはつまり…コンプレックスは無視して、他の技術に誇りを持つ…みたいなことですか?」

にこ「小さい身体って不利があるなら歌やダンスで…」

ツバサ「…うぅん。そうじゃないわ。その逆」

ツバサ「嫌いな部分を、見せつけていく」

ツバサ「そう、あたかもそれが自分の強みであるかのように」

ツバサ「そうやってみんなを『騙す』。自分の嫌いな部分が高評価されると、それは自信になっていく」

にこ「騙す…で、でもそんなに上手くいく…?嫌いを嫌いのまま、得意に見せる、なんて…」

ツバサ「うん」

にこ「どうして、そう言い切れるの…?」

ツバサ「だって、私がそうだから」

にこ「へ?」

ツバサ「私ね」

ツバサ「ダンス、大嫌いなの」

433: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:41:39.45 ID:xRF8bJp/o
にこ「はぁっ…!?」

にこ(綺羅ツバサから語られた一言)

にこ(それは私にとって…うぅん、全A-RISEファンにとって、衝撃すぎる言葉で)

にこ(だって…だってツバサは…)

ツバサ「ダンサー専攻トップの私がこんなこというとおかしいって思われるかもしれないけど」

にこ(そう…、彼女はダンサー専攻なのに)

にこ(しかも、そのダンスも高く評価されて、『ダンスの貴公子』なんて異名がつくほど)

にこ(そんな彼女が…ダンスが、大嫌い…?)

にこ「じ、冗談でしょう…?」

ツバサ「いえ。本音よ」

ツバサ「昔っから、ダンスが苦手でね。振り付けを覚えても身体が言うとおりに動いてくれなくて」

ツバサ「何度やってもカクカクした動きで、自分でも相当センスないんだなって、自分に幻滅して」

ツバサ「一度は本気でアイドルをやめて、歌手を目指そうかって考えもした」

ツバサ「…でも、それじゃいけないんだって思い直した」

ツバサ「嫌いなものから逃げ出しても、何も得られない」

ツバサ「進化を求めるなら、立ち向かわないといけない」

ツバサ「ダンスから逃げようとする、嫌いな自分と」

にこ「嫌いな、自分…」

ツバサ「認められるまで、人並みに…うぅん、人並み以上に踊れるようになるまで、私は必死にダンスの練習を続けた」

ツバサ「これで習得も上手になれば、好きになれたかもしれないけど」

ツバサ「私の身体はいつまで経ってもすんなりダンスを踊らせてくれなかったの」

ツバサ「でもそのおかげで、いつまでもダンスを嫌いでいられた」

ツバサ「今回の曲のダンスだって、必死になって覚えて、血反吐を吐いて二人に合わせた」

ツバサ「ふふ、そう…私、英玲奈やあんじゅより、ダンス下手っぴなのよ。ダンサー専攻なのにね」

ツバサ「だけど、そうやって努力を続けて、周りから私のダンスが評価されたとき…」

ツバサ「世間が、私に『騙された』とき、最高に気持ちいいって感じるの」

ツバサ「私の嫌いな私を、みんなが好きと言ってくれる」

ツバサ「それは表現者として、夢を魅せられるものとして、この上ない喜びだから」

ツバサ「…これが、私の『秘密』」

ツバサ「ほんの少しの人しか知らない、私の…ちょっぴり、恥ずかしいこと」

434: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:42:32.42 ID:xRF8bJp/o
にこ「…」ポカーン…

ツバサ「いきなりこんな話して、ごめんなさいね。驚いちゃったかな?」

にこ「そ…、そりゃあ驚く…っていうか…」

にこ「その話を私に、どうして…」

ツバサ「あなたにも、嫌いな自分がいるのなら」

ツバサ「それは弱さじゃない、誰にも負けない、とっておきの強さになれる」

ツバサ「あなたを責める影じゃなくて、ともに競い合えるライバルになれる」

ツバサ「私も、同じだから」

ツバサ「私の思いが、あなたの心を支える柱になれるなら、って思って」

にこ「…!」

ツバサ「ふふっ…、私のこの秘密は、別に絶対に知られたくないってことじゃないの」

ツバサ「だから、少し前に真姫さんたちにも同じことを話しててね」

ツバサ「つい今日の朝…このことをあなたに話してくれないか、って真姫さんから直々に頼まれて」

ツバサ「あなたの心を癒す一因になれるはずだから、って」

にこ「ま、真姫ちゃん…、私のために、そこまで…」

ツバサ「そうね。あなたのために、ここまでしてくれる人なんてそうそういないわ」

ツバサ「これは多分、あなたのアイドルへの思いが、彼女を動かしてくれてるのだと思う」

ツバサ「だからやっぱり、あなたはアイドルにふさわしい人間なんじゃないかしら」

ツバサ「こんなに愛されるなんて、羨ましいくらいだもの」

にこ「…」

ツバサ「誰にも話しちゃいけない、って言ってたから、真姫さんも私に頼むしかなかったんでしょうね」

ツバサ「あなたも、このこと誰かに話すのは御法度よ?」

にこ「は、はぁ…」

ツバサ「…さてと、こんなに誰かと二人きりで話をしたのは久しぶりだったわ」

ツバサ「でも、そろそろ時間も時間だから。…矢澤にこさん」

にこ「は、はいっ…!」

ツバサ「私のこの考え方が、あなたを進化させてくれますように」

ツバサ「そして、もし登ってこられたのなら…A-RISEの名に恥じないよう、みんなを笑顔にさせてあげてね」

にこ「っ…!!わ、わかりましたっ!!」

ツバサ「うん、いい返事だわ。それじゃ私はこれで…」

にこ「あ、あのっ…!最後に一つだけ、いいですか…?」

ツバサ「ん?なぁに?」

にこ「さっき、そんなに知られたくないことじゃないって言ってたのに、誰にも話しちゃいけないって…どういうことなんですか?」

ツバサ「あぁ、そのこと。ふふ、簡単よ」

ツバサ「知られたくないことじゃない、っていうのは、自分から話すときだけってこと」

ツバサ「だって、私のことダンスが好きだって思い込んでる誰かに、このこと明かしたときの…」

ツバサ「驚いた顔を見るのが、楽しくてしょうがないから!」

にこ(そう言って笑う彼女の顔は、無邪気ないたずらっ子のようで)

にこ(けれど、見たものすべてを喜ばせることのできる、そんな、優しい笑顔だった)

435: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:42:58.91 ID:xRF8bJp/o
翌日

神田明神

海未「あと10往復ー!」

花陽「は、はいぃぃっ~~…!!」タッタッタッ…

ことり「ふぅっ…、ふぅっ…!!」タッタッタッ…

真姫「よっとっはっ…」タッタッタッ…

花陽「はぁ…はぁ…。ぜ、全然スタミナ増えてる感じしないよぉ~~…」

海未「そんなことありませんよ。みんなが同じようにタフになってきているので、差を感じられないだけでしょう」

真姫「そうね…。私も結構追いつかれている感じあるもの」

ことり「そっかー!じゃあいつか追い越しちゃうぞー!」

花陽「こ、ことりちゃん元気だなぁ…」ヘトヘト…

希「お、やってるやってる」

ことり「あ、希ちゃん先輩。バイト終わりですかー?」

希「うん。午前中だけだったからね」

花陽「はっ!もう正午…!意外と走ってたんですね…!それなら思ってたより疲れてないかも?」

海未「ほら、言ったでしょう?」

真姫「…そういえばアイドル専攻のほうも休憩に入ってる頃だろうけど」

真姫「にこちゃん…」

希「…やっぱり心配?」

真姫「そりゃ、少しはね。私の切り札が上手く働いてくれたかどうか…」

希「せっかくの協力者をそういう風に呼ぶんはどうかと思うよ~?にしし」

真姫「う…、まぁそうかもだけど」

希「まぁうちも多少気になるのは確かやけど…」ブルルルル…

希「あ、メール来た。…なになに」

希「あ…」

真姫「ん?誰から?」

希「…どうやら、心配しなくても良さそうやね」

真姫「え?」

436: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:44:05.00 ID:xRF8bJp/o
その日の早朝

学校 多目的ホール

絵里「…じゃあ昨日のおさらいよ。一度完璧に踊れても、翌日も踊れないと意味がないからね」

にこ「…」ブルブル…

凛「にこ先輩…」

にこ(私の前には、大きな鏡。そこに映るのは、やはり血まみれのにこだった)

『小さくて鬱陶しいにこ。まだ諦めないの?』

『小さくて小賢しいにこ。どうして諦めないの?』

にこ(呪詛の念を私に向けて吐き出す、鏡の中の私)

にこ(周りでは私を一色の嘲る声、チビ、チビ…)

にこ(今日もまた、見ないように、聞こえないようにすれば、踊ることは可能なのかもしれない)

にこ(…けど)

にこ(進化を望むなら、逃げちゃいけない。鏡の中の私は、私の嫌いな私の象徴なんだから)

にこ(立ち向かって、あなたに打ち勝つ。そして…)

にこ「…大嫌い」

『えっ?』

にこ「私の心の弱さが生んだ、血まみれの私…。小さい小さいって、一々言わなくてもわかってるのよ」

にこ「私はちっちゃいの!わかりきってること言うなこのバカ!」

にこ「アンタがどんだけ私をバカにしようと、アイドルをやめさせようとしたって、私は…!」

にこ「…にこはっ!アイドルになってやるの!!」

にこ「そんでもって…あなたを」

にこ「小さくて可愛いにこ!私の嫌いなあなたを…世界中のみんなが大好きって言ってくれる、そんなスーパーアイドルにしてみせる!」

『私が…アイドル?』

にこ「…そう。そんなところで血まみれで倒れてるなんて、勿体ないでしょ」

にこ「あなたは小さくて、最高に可愛らしいんだから。…私は嫌いだけどね」

にこ「だから立って。そして一緒に競争しましょう」

にこ「にこと、にこ。どちらが早くスーパーアイドルになれるか」

『…』

『…そんなの、どっちが勝ったってあなたが喜ぶだけじゃない』

にこ「そうよ!」

『…ぷっ』

『あははは…』

にこ「あはははははっ!!」

にこ(そして、にこの嫌いな、にこと)

にこ(唯一無二のライバルに、かけがえのない友達に、なるんだから)

437: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:44:41.98 ID:xRF8bJp/o
にこ(ひとしきり笑って、笑い合って)

にこ(そして、目を開けて)

絵里「…どうしたの、矢澤さん。さっきからボーッとして」

絵里「やる気がないなら出て行ってもいいのよ?」

にこ「…いえ、やります」

にこ(目を開けた、そこには)

にこ「…私だ」

にこ(練習着を着た、にこがいた)

にこ(鏡に映った、ちっちゃい私)

にこ(嫌いな、私)

にこ「…うん、行ける。やれる。できる」

にこ「声ももう、聞こえないから」

にこ(音楽と共に、私は踊り始める)

にこ(穂乃果と、凛と…そして、鏡の中の私と一緒に)

にこ(今のにこは絶好調よ?あなたに追いつけるかしら?)

にこ(向こうの私に、問いかける)

にこ(彼女は心なしか、挑戦的に笑ったような気がした)

絵里「…じゃあ、お昼になったので一旦休憩ね。水分補給と昼食を済ませるように」

にこ「…ふぅ」

凛「す、すっごいにゃー!!にこ先輩昨日より断然身体のキレが良くなってる!」

にこ「…そう?」

凛「うんうん!凛にも追いつく勢いだよー!ねぇねぇ、どんな魔法を使ったの?」

にこ「魔法なんて…ただ考え方を変えただけよ」

凛「えー嘘ー!ドーピングでもしてるんじゃないのー?」

にこ「あはは、そんなまさか…」

凛「信用できないにゃー。あ、じゃあ凛はお友達とご飯食べてくるねー」スタスタ…

にこ「あっ…、け、結局ボッチなのね…。あの野郎…」

穂乃果「…お疲れさま、にこちゃん」カタポン

にこ「あ、ほ、穂乃果…!あなたまさか…」

穂乃果「じゃあ私も昼食食べるから。バイバイ」スタスタ

にこ「あなたもかっ!くおぉぉっ…!」

穂乃果「…ふふっ」

438: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:45:12.96 ID:xRF8bJp/o
にこ(今日もホールの隅でお弁当を一人、黙々と食べる)

にこ(いつもどおりの光景で、いつもどおりの習慣だけど)

にこ(けれど、頼ることのできる人たちができた)

にこ(負けられない人たちでもあるけれど)

にこ「ふふっ…。よし、これで送信…っと」ポチッ

にこ「ここまでしてもらって、ダメでしたなんて言えないわ」

にこ「もう誰にも、負けられないんだから」

にこ「もちろん、あなたにもね。…小さくて可愛げのない、可愛いにこ」

神田明神

希「どうやら心配しなくても良さそうやね」

真姫「え?」

希「にこっちからメール。…はい」

真姫「にこちゃんから…?えーっと、なんて…」

件名 ありがと

本文

でも絶対後悔させてやるんだから!

P.S.

真姫ちゃんたちにもヨロシク言っておいてください

希「…どう?」

真姫「…ふふっ、にこちゃんったら」

真姫「人を散々心配させておいて…でもこのふてぶてしさが彼女なのかも、ね」

希「うん。…これがいつもどおりの、にこっちや」

真姫「…色々波乱もあったけど、これで一件落着ってとこかしら」

希「まだまだこれからやよー?なんせアイドルで一番目指す言うんやからね!」

真姫「…そうね!よーし!みんなー、次はこれまでの曲のおさらいよ!!」

花陽「えっ、休憩はっ!?」

真姫(後悔なんて、するわけない)

真姫(私たちも、負けるわけにはいかないんだから)

真姫(全力のあなたたちを打ち破ってこそ、笑顔のスクールアイドルが証明できる)

真姫(いつか必ず、C☆cuteは頂点を獲ってみせるわ)

真姫(だからひとまずは…どういたしまして、ってところかしらね)

439: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:45:51.51 ID:xRF8bJp/o
ガチャッ…

真姫(これでひとまずは、波乱は去ったって)

真姫(そう思っていたけれど)

真姫(今までの出来事なんて比べようもないような波乱が近づいていることに)

真姫(まだ、私たちは気がつく余地もなかった)

バタンッ…

真姫(そして、私)

真姫(既にこの世界に組み込まれた歯車の一つの、私)

真姫(だから、忘れていたのかもしれない)

真姫(私は、『いつか』なんて考えられるような身分では、ないということを)

真姫(私がこの世界からはじき出されるタイムリミットは)

真姫(刻一刻と、足音もなく近づいていた)

「いってきます」

もしライブ! 第六話

おわり

440: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/29(日) 23:50:01.45 ID:xRF8bJp/o
はい、6話でした
…この話を書き終えたあとににことツバサの身長が同じという事実に気づいたのですが
まぁ…バストのサイズも詐称していたくらいなので身長も詐称してましたという設定でおねがい

それで、この話で一応前編はここまでの予定なんだけど、まだスレの残りにはものっそい余裕があるので
新たにもしライブ!の設定でお話を書いていこうと思います 予定では海未ちゃん視点のお話を
まだ何も考えてないのでどうなるかは未定ですがお楽しみに…してくれる人がいるといいよな!
それではまた次回 ほなな

もしライブ!前編は終了ですが、あとひとつ続きますm(__)m

     

元スレ
タイトル:もしライブ! ~もしもμ’sのみんながUTX学院生だったら~ 前編
URL:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1464010883/
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