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カテゴリーに「五等分の花嫁」追加 ٩(๑´0`๑)۶

もしライブ! ~もしもμ’sのみんながUTX学院生だったら~ 前編

ラブライブ!

1: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 22:41:23.52 ID:pMG7Y950o
このスレは『真姫「西木野☆星空シアター!」凛「二本立てにゃ!」(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1420381422/)』及び、
その関連スレで他のSSと同時進行で書いていたSS、『もしライブ! ~もしもμ’sのみんながUTX学院生だったら~』を色々修正してまとめて貼り付けていこうという目的のスレです。

作品内容に「『凛・真姫「西木野☆星空クリニックにようこそ!」(http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1388/13887/1388761108.html)』シリーズの独自設定を多分に含みますが
それらを未見でも極力内容を理解出来るようになっていると思います。 よければこちらも合わせて読んでいただけると内容の理解が早まります。

※とても長いSSです。1話ごとに日をまたいで投稿していきます。

※公式の設定とは違う設定を度々持ち出します。多くのキャラクターの性格も崩壊気味ですが大目に見てください。

2: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 22:42:14.38 ID:pMG7Y950o
1レスでわかるこれまでの西木野☆星空クリニック! 

―――――――――――――――――――――――――――――――――― 

私、西木野真姫!高校1年! 

みんながよく知る世界ととても似ていて、でもほんの少し違う世界。 

そこで私はスクールアイドルをしつつ、星の見える丘の上でクリニックを経営していたの。 

助手兼ナースの相棒、星空凛と共に、悩めるスクールアイドルのお悩みを癒すドクターとして…。 

というのは建前で、本当は凛の作った不思議なお薬を勝手に投与して、私はただただその様子を見るという趣味の悪いことをしていたのだけどね。

そんなハチャメチャでありつつも楽しい凛とのクリニック生活だったんだけど、突如としてそれは終わりを告げられて。

あわやクリニックを取り壊すってところまで話は進んでたんだけれど、穂乃果たちμ’sの協力のおかげもあってクリニックは無事大空に浮かぶことに成功したの!

……うん、何言ってるかわからないと思うけど、とりあえずなんやかんやで空に浮いたってことだけは理解して。

ついでになんやかんやでクリニックには時空を超える力とお薬を対象の体内にワープさせる機械とかも追加されたわ。もうイミワカンナイ。

クリニックは西木野☆星空スターゲイザーと名を変え、過去や未来、はたまた無数に存在するパラレルワールドを行き来してはその世界のμ’sに厄介なお薬を投与してどうなるかを見届けてきたの。

最初はμ’sのみんなを見つけるのも大変だったけれど、うちのなんでも作れちゃう超優秀な凛のおかげで、その世界のμ’sを即座に見つけることのできるモニターとかも作っちゃったりなんかして。

時には恐ろしいバッドエンドを迎える世界もあれば、薬のおかげで光明が開けた世界もまた存在し…たような気もするし。

時空ワープの際には非常に激しい揺れに襲われるけど、その先の世界のことを思えばヘッチャラよ!

そんなことを、時にはまた地上に戻ってクリニックを開いたり、時には再度クリニックを大空に舞わせ時空の旅を楽しんでいたりしていた、ある日のこと。

その日も、なんの変哲もなく始まるはずだった、時空跳躍の旅。

そこから、物語は始まるのだった。
 


    

3: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 22:43:06.94 ID:pMG7Y950o
西木野☆星空スターゲイザー内

真姫「今日もこの時間がやってきたわね!」

凛「じゃ、早速平行世界に行って誰かに薬を投与するにゃ!」

凛「フフフ…、実は今回はみんながあっと驚くようなパラレルワールドを考えてきたんだにゃ…」

真姫「へぇ?どんな世界?」

凛「えっとね、真姫ちゃんのあそこに…」

凛「おっと!これ以上は着いてからのお楽しみだにゃ!」

真姫「嫌な予感しかしないけどどうせそれは別世界の私であってこの私じゃないからオールオッケーね!」

凛「よっしゃー!目的の世界へ向けてー…」

真姫「西木野☆星空スターゲイザー、発進よ!!」

ワープ中 時空の狭間

グラグラ…

真姫「う、うぅっ…、なんか今日揺れ激しくないかしら…」

凛「うーん、なかなか激しい条件の世界を選んじゃったから航路が安定しないのかなー?」

真姫「うぷっ…、やば、吐きそう」

凛「え、あ、ちょっと!ここで吐かないでよ!?」

真姫「わかってる…、うぶっ…、おえっ…」

真姫「ご、ごめ…私トイレ…」

凛「あぁ…、行ってらっしゃい…」

タッタカター

凛「ふぅ、危うくお茶の間に見せられない文章を垂れ流すところだったにゃ」

凛「まー今から行く世界も到底地上波じゃ流せないようなー…って、あれ…」

凛「何か重要なことを忘れてるような気がするにゃ…、なんだったっけ…」

真姫「うー、トイレトイレ…上から漏れそうだわ…」

ガチャッ

真姫「…」

真姫「トイレが、ない…」

真姫「どころか…、個室自体がないんだけど…」

真姫「そして私は急いでいたので何もない空間に足を踏み入れ」

真姫「そのまま時空の狭間にダイブする5秒前」

真姫「というか今その真っ最中ぅぅぅぅっぅぅぅぅっぅぅぅううううわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

ヒュオォォォッ…

凛「あ!トイレぶっ壊れちゃったから部屋ごと分離させたんだった!」

凛「ま、真姫ちゃんなら言わなくても気づくよねーアハハハハ」

真姫「誰か、助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」ヒュオォォォッ…

4: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 22:44:07.49 ID:pMG7Y950o
真姫「ひょわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

真姫(時空の狭間の中で、永遠とも一瞬とも思える時間を漂った末に)

真姫(私はとある世界にはじき出された)

ドサァッ

真姫「い、いたたた…」

真姫「っは!こ、ここは…?」

真姫「…神田明神だわ」

真姫「ということは…、音ノ木坂の近く、かしら」

真姫「…って、またドジ踏んじゃったわ…。まさかスターゲイザーから落ちるなんて…」

真姫「いつ凛が気づいて助けに来てくれるかもわからないし…」

真姫「とりあえずここは行動あるのみね!」

真姫「そうね…、まずすべきは…」

真姫「味方が欲しいわ」

真姫「きっと事情を話せば驚かれるでしょうけど、もしかしたらすんなり受け入れてくれるかもしれないし」

真姫「今の時刻は…、おそらく夕方ごろかしら」

真姫「だったらみんなは音ノ木坂の屋上にいるはずね」

真姫「どんな世界かは知らないけど、それほど異常な世界でもないみたいだし」

真姫「まずはμ’sのみんなと会って話し合いたいわ」

真姫(どんな世界かは知らないけど、それほど異常な世界でもない)

真姫(この時の私はそんなこと言っちゃってるけど)

真姫(でも、結論から言えば、その世界は…)

真姫(まったくもって、異常な世界ではなかった)

真姫(これまで数多く体験した、笑っちゃうほどありえない世界観なんて一切なくて)

真姫(至って普通の世界で)

真姫(そして、その中で唯一、決定的に違っていたのは)

音ノ木坂学院前

真姫「…嘘、でしょ」

真姫「私たちの、学校が…」

真姫「…ない」

真姫(音ノ木坂学院は、既に廃校になっていた、ということだった)

5: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 22:44:56.64 ID:pMG7Y950o
音ノ木坂学院『跡地』前

真姫「い、いや…」

真姫「まだ学校があるなら理解できるんだけど…」

真姫「影も形もないじゃない…」

真姫「おっきな空き地があるだけの、何もない…場所」

真姫「…」

真姫「ま、そんな世界もあるわよね。全然普通普通」

真姫「今まで行った世界に比べれば屁でもないくらい普通だわ」

真姫「…普通なのはいいんだけど」

真姫「じゃあ、μ’sはどこ…?」

真姫(むしろ、μ’sというスクールアイドルが存在しているかも微妙)

真姫(というかこの時代に私たちは高校生なの?)

真姫(もしかしたら私たちが学生をやっていた時代より数年後という可能性だってあるし)

真姫(近くのコンビニによって新聞で日付を確認してみることにした)

真姫(どれだけ嘘しか書いてない新聞でも、日付だけは嘘は書かないでしょうし)

真姫「…ふんふん、年数は私たちの世界と変わらないみたい」

真姫「ただ今はどうやら…9月のようね」

真姫「うぅ、確かにさっきから少し暑いと思ってたのよね。どこかに服を脱ぎ捨てたいくらい」

真姫(でも、そんなことはできない。私にだって乙女として必要最低限くらいの恥じらいは残ってるんだし)

真姫(…というわけで)

西木野邸前

真姫「…どうやら私の家は残っていてくれたみたいね。こっちもなくなってたらどうしようかと思った」

真姫「じゃ、おじゃましまーす…」ガチャリ

真姫(所持していた鍵で私は家の中へと侵入…もとい堂々と入った)

真姫(こういうのって不法侵入になるのかしらね)

6: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 22:45:53.80 ID:pMG7Y950o
西木野邸内

真姫(私の家の中は静かだった)

真姫(まぁ当然と言えば当然だけど)

真姫(事前に街中で確認した時計によれば、今はまだ昼過ぎくらい)

真姫(パパとママは大抵病院にいて遅くまで帰って来れないし。帰ってこない日もある)

真姫(私は多分まだどこかの学校にいるはずで、故に今この家には誰もいないのだから)

真姫「まずは落ち着ける場所でゆっくり対策を考えないと…」

真姫「さてと、久しぶりの我が家だわー。ずっとクリニックで寝泊まりしてたから」

真姫「自分の部屋の有様すら覚えてな」ガチャッ

真姫「えっ」

真姫「えっ」

真姫(静かな私の部屋の中には)

真姫(私がいた)

真姫(だらしない皺だらけのシャツ一枚で、せっかくの美貌が台無しになるほどのクマを目の下に生やして)

真姫(高級そうなヘッドホンをして、PCの前でファーストパーソンシューティング…FPSに勤しんでいた)

真姫(あと私の部屋はこんな生ゴミだらけじゃなかった)

真姫「え、あ…、あぇ?だ、誰…?」

真姫「えっと、えっとー…」

真姫(視界に映るものの分析を終えて目の前の状況を解決するのに頭を使う)

真姫(まず第一に厄介なのはこのままじゃどっちの私が喋ってるのかわかりづらい)

真姫(そして次に面倒なのは…、あっちの私にこの状況を理解されること)

真姫(いきなり同じ顔の人間が部屋に入ってきたらパニックを起こすかもしれない…)

真姫(ここは…)

真姫「くらいなさいっ!星空凛特製…」

真姫「一瞬で夢心地になれる催眠スプレー!」プシュッ

真姫「えぁっ…、ふぉぇ…ぇ…」

真姫「くかー…」

真姫「よ、よし…。私は寝たわね。とりあえず危機は去ったわ…」

真姫「…ふぅ、無駄な汗をかいてしまった」

真姫(流石に9月に白衣+音ノ木坂の制服(冬服)は暑すぎる)

真姫(私服に着替えようとクローゼットに手をかけ、開いた私の目に飛び込んできたもの)

真姫(それは…)

真姫「…え」

7: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 22:46:34.42 ID:pMG7Y950o
クローゼットを開けた私の目に飛び込んできたもの、それは…

新品同様で。

しかしどうしようもなく埃をかぶった。

UTX学院の制服だった。

もしライブ! ~もしもμ’sのみんながUTX学院生だったら~

8: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 22:47:44.51 ID:pMG7Y950o
この世界の真姫「くかー…、すぴー…」

真姫「…なるほどね」

真姫(ここまでの情報を整理してみる)

真姫(この世界は既に音ノ木坂学院が廃校になった世界)

真姫(だから私は音ノ木坂ではなく、UTX高校に入学した、ってわけね)

真姫(でもこの時間にこの姿でゲームをしている…)

真姫(そして制服の夏服、冬服どちらにも使われた形跡が少なく、埃をかぶっていることから鑑みるに…)

真姫「この世界の私は、不登校児…ってことかしら」

真姫「…はぁ、不名誉なことね」

真姫「でも、自分で言うことじゃないけど私の家の家庭環境は複雑だから、何がきっかけで引きこもりになったとしてもおかしくはない、のかな」

真姫「…」

真姫(これは、困った)

真姫(つまり今の私にはおそらく…、外界とのつながりがほとんどない)

真姫(私を知っている人は多分、パパとママくらい)

真姫(これじゃ…、味方を得られない…)

真姫(凛の助けを待つしか道はない、ってこと…かしらね)

真姫「…はぁ。面倒なことしてくれるわね、この私も」

真姫「さて、どうするか…」

真姫「…」

真姫「…UTX、ね」

真姫「実は結構興味があったり…」

真姫(…別に私がUTXに入学したいとか、そういうわけではないんだけど)

真姫(μ’sがラブライブを制覇するまで、最強のスクールアイドルだったA-RISE)

真姫(彼女たちの学園生活が少し気になるのは事実だった)

真姫(あとあの無駄にだだっ広い校舎。一度探検してみたかったりもする)

真姫「…」チラッ

この世界の真姫「くかー…、すぴー…」

真姫「…どうせあの制服、使わないんだったら」

真姫「使わせてもらっても、いいわよね…?」

9: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 22:49:33.91 ID:pMG7Y950o
翌朝

西木野邸 真姫の部屋

この世界の真姫「ん、ん…あれ、私…」

この世界の真姫「…あっ!ね、寝てた…!?」

この世界の真姫「しまったー!深夜にフレと約束してたのにぃ…。すっぽかしちゃったわ…」

UTX学院前

真姫「…よし」

真姫(一晩ネカフェで過ごし、盗ん…借りてきたUTXの制服に袖を通し、同じく借りてきたカバンに借りてきた教材を詰め込んで)

真姫(あの部屋のクローゼットの中の、UTX学院の制服がかけてあったハンガーには、今は音ノ木坂の制服がかけてある)

真姫(今の私は、何処からどう見てもUTX学院生…!)

真姫(さぁ、いざ馳せ参じるわよ!)

UTX学院内 改札前

真姫「…」

女学生A「」ピッ

女学生B「」ピッ

真姫(なんかスマホみたいなのかざして中に入ってる)

真姫(当然私はそんなの持ってない)

真姫(試しに自分のスマホをかざすとどうなるかやってみた)

ビーッ!!

真姫「はわぁっ!!ご、ごめんなさいっ!!」ダッ

真姫(このままじゃ中に入れず終わっちゃうんですけど!?)

真姫(どどど、どうしよう…。一旦部屋に帰って取ってこようかしら…)

真姫(でもこの世界の私はきっともう目が覚めてるし…、また催眠スプレーをぶちまけるのも…)

「ね、キミ!…どうしたん?」

真姫「え、あ!いや…その、えっと…」

真姫(急に背後から声をかけられてキョドる私。慌てて振り向くと、そこにいたのは…)

真姫「の、希…!?」

10: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 22:50:35.55 ID:pMG7Y950o
希「おやおや?先輩を呼び捨て~?ナマイキな一年生やねっ」

真姫「あ、その…」

真姫(希までUTX学院生に…!まぁ、予想はついた事だけど…)

真姫(でもいきなり知った顔に会えたのは幸運…)

真姫(…いえ、そうでもないかも。だって今の私は、UTX学院生の皮をかぶった不審者…)

真姫(もし私が制服だけ盗んで侵入しようとしている他校生(?)と知れたらどうなるか…!)

真姫「え、えーっと…」

真姫(なんて答えようかしら…。怪しまれないように、怪しまれないように…!!)

希「…ん?…あ!!キミ…!」

真姫「ッ!」

真姫(も、もしかして…、バレた…!?)

希「キミ…」

真姫「…っ」ゴクリッ

希「…西木野、真姫ちゃん?」

真姫「えっ…」

希「一年生の、西木野さんよね?春先から来てなかった」

真姫「あ、え…、そ、そうだけど…」

希「だよね!?わ、わー…!学校、来てくれたんや!嬉しいなぁ!」

真姫「え、え…、そ、その…えっと、どういうこと…?」

希「ん…?あぁ、そっか…、急にそんなん言われたらびっくりするよね。さすがにもう…」

真姫「…?」

希「おほんっ。うちはね、問題のある子のことはずっと目をつけてるんよ。何とかしてそれを解決してあげたいから」

希「なにせうちは、この学校の生徒会長サマやからね!」

真姫「えぇっ!!?希が生徒会長!?」

真姫(い、意外…。あの希が、まさかの生徒会のトップ…!補佐ならわかるけどまさか生徒会長だなんて…)

希「なによ、不服ー?…あれ、でもそういえばうちの名前は…?」

真姫「あー、その、えっと…」

真姫(…でも、これはチャンスだわ。これで私が在校生であることの証明ができた。あとは…)

真姫「えっと、その…それは置いておいて」

真姫「私、久しぶりに学校に来て、この学校のことほとんど覚えてなくて…」

真姫「だからその…、みんながピッピッってやってるあれも無くしちゃって…、どうしようかなって考えてたんです…」

希「あー、電子生徒手帳、無くしちゃったんか。だから困ってたんやね」

真姫(電子生徒手帳…!?あれ生徒手帳だったの…?どこのダンガンなんとかよ…)

希「そういうことならうちにお任せ!こういう時のための貸し生徒手帳があるんよ!」デデンッ

希「はい、これ貸したげる!帰る前までに新しい生徒手帳の発行を済ませて、返してね?」

真姫「お、おぉ…!ありがとう…ございます」

希「どういたしまして!他にも困ってることがあったらうちになんでも聞きに来てな!」

希「だってうちは、泣く子も黙る生徒会長サマやねんもん!」

11: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 22:51:23.37 ID:pMG7Y950o
UTX学院 食堂

真姫「…」ピッ ピッ

真姫(希の言う電子生徒手帳…、ほとんどスマートフォンと変わらない性能を持ってた)

真姫(こんなのを生徒全員に配るなんて…さすがの財力ね)

真姫(それもそうか。何せUTXは勉学だけじゃなく、学科に芸能科なんてのを作ってアイドルを育成し、それを全力でバックアップするくらいだもの)

真姫(生徒の才能を開花させるためにお金に糸目はつけないってことね)

真姫「…とまあ、こんなものかしら」

真姫「なるほどね、大体わかった」

真姫(このUTX学院がどんなものであるのか)

真姫(それはこの電子生徒手帳の中に事細かに記されてあった)

真姫(まず先程も言ったように、このUTXにはA-RISEも選択している芸能科って学科があるけれど…)

真姫(それだけじゃなくって、他にもいろいろな学科があるのね…)

真姫(デザイン学科、演劇学科、芸術学科…)

真姫(様々な芸に繋がる学科が用意されていて、生徒はその中から自身にあった学科を選択するわけね…)

真姫(そしてその学科の中もまた、細かく分類されている)

真姫(芸能科であれば、モデル専攻、歌手専攻、ダンサー専攻などなど…)

真姫(そして驚くことにその中には)

真姫(公式には、アイドル専攻というものはなかった)

真姫(スクールアイドルA-RISEは、芸能科の専攻の中から選ばれた珠玉の三人)

真姫(芸能科を選択する少女の憧れであり目標…、それがスクールアイドル)

真姫「…最強と呼ばれる所以がわかるわ」

真姫「私たちのような寄せ集めじゃない、数多くのアイドル候補生をふるいにかけたうちのたった数粒のダイヤモンド」

真姫「それがA-RISEだったのね…」

真姫「大変な世界に生きているのね、彼女たちも…」

真姫(それをポッっと出の私たちが追い抜いちゃうんだから、人生って残酷よね)

真姫(…きっと、ラブライブ予選敗退した彼女たちは、泣きたいほど悔しかったんでしょうね)

真姫「そして、今私も大変な世界に生きている」

真姫「…クラスがどこかわからない」

12: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 22:52:12.23 ID:pMG7Y950o
真姫「大体広すぎるのよこの学校ー!」

真姫「一年生だけでも何クラスあるのってハナシ!」

真姫「希は頼ってくれてもいいって言ったけど、肝心の彼女がどこにいるのかすらわからないし…」

真姫「はぁ、油断して希から離れるんじゃなかった…」

真姫「誰か私のクラスを知ってる人は…いるわけないわよね。不登校児だし」

真姫「あー、どうしよう…ん?」

真姫「あ、あれはっ!」

ダダダダッ…!!

「…ん?あ、足音…?」

真姫「かーよちーんっ!!」ダキィッ

花陽「ひ、ひぃぃぃっ!!い、いきなりなにぃぃぃっ!?」

真姫(つい花陽を見つけたことで反射的にダッシュして抱きついてしまったわ)

真姫(凛みたいな真似して…、恥ずかし真姫ちゃん)

真姫(しかし花陽までUTX…。これはいよいよμ’s全員がUTXに入学している説が濃厚ね…)

花陽「あ、あなた…誰ぇ?」

真姫「あ、えっと…、ごめんなさい。私は…」

女学生C「ちょっと!いきなり小泉さんに抱きつくなんてどういうつもり!?」

女学生D「ズルい…じゃなくて!親衛隊でもないのに小泉さんに近づかないでもらえるかしら!」

真姫「…は?し、親衛隊…?」

女学生E「あなた知らないの!?小泉花陽親衛隊を!」

女学生F「我が芸能科歌手専攻一の癒しキャラこと花陽ちゃんをお守りする小泉花陽のためだけの親衛隊なのよ!」

女学生G「あなたなんかが気安く話しかけていい子じゃないのよ!」

真姫「花陽が、歌手…!?それに、守られてるって…」

真姫(確かに守りたくなるキャラクターをしているのは理解できるけど…そんなファンクラブチックなものまで作られるほどの人気とは…)

真姫「ん?でも、あれ…?」

真姫(そんな親衛隊に真っ先に入りそうな凛がいない…?もしかして凛はUTXじゃない?)

花陽「み、みんな…。いいの、いいから…」

親衛隊ズ「「花陽様は私たちがお守りいたします!」」

真姫「…挙句には『花陽様』ね…」

真姫「…ごめんなさい。急に抱きついてしまって。次からは気をつけるわ」

花陽「あ…」

花陽「…」

13: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 22:52:50.40 ID:pMG7Y950o
UTX学院 職員室

真姫(自分のクラスがわからなかったらやっぱりここに来るべきよね)

先生「西木野、西木野、と…。春先から休学してたんだってな?」

真姫「えぇ、まぁ…」

先生「うん、学校に来てくれただけでも嬉しいよ。もう休まないように頑張れよ!」

真姫「あ、ありがとうございます。頑張ります」

先生「で、西木野の教室は…、E組だな。担任の先生がもうそろそろ教室へ行く頃だから、一緒について行きなさい」

担任「西木野さん、ここがあなたの教室よ」

真姫「は、はぁ」

担任「しばらくはクラスの空気に馴染めないかもしれないけど、西木野さんならすぐにみんなとも仲良くなれるわ。応援してる」

真姫「…ありがとうございます」

真姫(つまり…、面倒は起こすな、ってことかしらね)

1年E組

担任「みなさん、おはようございます」

担任「西木野さんの席はそこの空いている机よ」

真姫(後ろの席か…。目立たなくて済むわね)

ざわ…

「西木野さんって確か…、ねぇ」 「うん、アレのせいで…」

                              ざわ…

真姫「…」

真姫(早速噂されてるわね…。こういうのあんまり慣れないわ)

真姫(私には教室の角にひっそり収まってるのが一番似合ってるわ)

14: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 22:53:25.29 ID:pMG7Y950o
授業中…

先生「…でここがこれでこうがこれのそれがそうで接点tは出なくて…」

真姫(見たところこのクラスには知った顔をいないわね…。花陽も凛も…)

真姫(花陽はいいとして凛…。あの子はこの学校にはいない可能性もありえるわね)

真姫(バカだし)

先生「じゃあこの問題は…西木野、お前」

真姫「3xです」

先生「お、おう…正解だ」

真姫(…この程度の問題、私にとっては楽勝だけどね)

真姫(私天才だから仕方ないけど!)

昼 食堂

真姫「…天才でも友達はそうそう作れないのよね」

真姫(休み時間の間でも私に話しかけてくれる人は皆無だったし)

真姫(どうやらこの世界の私は何かしら問題を起こしたか何かで不登校になったらしいって雰囲気もわかったし…)

真姫(どこまでも面倒を押し付けてくれるわね…この世界の私…)

真姫「とにかく、お昼ご飯は一人で食べるほかないみたいね」

真姫「…考えてみると、久しぶりな気がするわ」

真姫「もぐもぐ…」

真姫(お、美味しい…!!UTXの学食めっちゃ美味しい!!)

真姫(おのれUTX…!!毎日こんなカツ丼を食べていると思うと妬ましいわ…!)

真姫「次は親子丼でも頼もうかしら…、っと。いけないいけない…」

真姫「このままじゃ希みたいな体型に…っは!殺気…!?」

真姫「…なんだ、気のせいか。びっくりさせるわね」

真姫「さてと、お腹もいっぱいだしどこで暇を潰そうかし…」

真姫「…ん?あっ…!あの後ろ姿…!!」

海未「…もぐもぐ」

ことり「でねー…。それから…」

海未「なるほど、そうだったのですか…もぐもぐ…」

真姫(海未とことり!)

15: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 22:54:14.94 ID:pMG7Y950o
真姫(二人で向き合って一緒にご飯を食べているわ)

真姫(やっぱりあの二人も入学していたのね、UTXに…)

海未「はぁ、それではやはり…もぐもぐ…」

ことり「もー海未ちゃん?食べながらしゃべるのはめっ!ですよ?」

海未「うぶっ…む。すみません、気をつけます」

真姫(海未がことりに行儀のことを注意されている…!?)

真姫(滅茶苦茶珍しいものを見てしまったわ。あの厳格な海未が…)

真姫(…そういえば)

真姫(あの二人はいるのに、穂乃果がいない…)

真姫(今日はたまたま一緒じゃないのか、それともやっぱり…)

真姫(…まぁ、穂乃果も筋金入りのおバカさんだし、ありえるわね)

真姫(それとなく話しかけたいけど…、さっきの花陽みたいなこともあったし、ここは放っておきましょうか)

真姫(それに、学校の探索もしたかったところだし。まず音楽室があるか探してみようかしら)

スタスタ…

ことり「最近、気が抜けてるんじゃない?やっぱり…」

海未「…彼女がいないから、かもしれませんね」

ことり「…海未ちゃん。もうやめよ、その話は」

海未「…はい」

16: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 22:54:53.90 ID:pMG7Y950o
6限目 音楽室

真姫(6限は芸能科歌手専攻の人たちを対象とした授業のようね)

真姫(専攻により別の授業、別のクラスに分けられる、という形みたい)

真姫(時間割を見るに1週間にこういった形の授業は結構あるようね…。週一ってわけじゃないんだ)

真姫(ていうか私歌手専攻だったのね…。ということは…)

親衛隊A「ちょっと、聞いたわよ?さっき小泉さんに抱きついたっていうあなた…」

親衛隊B「春先から今日までずっと引きこもってたんですってね!」

親衛隊C「そんな人が小泉さんにちょっかいをかけるなんて許せませんわ…!」

真姫「…」

真姫(あの子達と、そして…)

花陽「も、もーみんな…。気にしてないから、平気だってば…」

真姫(花陽もいるみたいね)

真姫(あの不意に抱きついてしまった出来事のせいで私のことは親衛隊全体に広まっているようね…)

真姫(下手なことはするものじゃないわね…。あまり目立ちたくなかったのに…)

親衛隊ズ「「じー…」」

花陽「はわわぁ…」

真姫(めっちゃガン付けられてるし…こわこわ)

真姫(花陽も言うならもっとはっきり言いなさいよね…。下手に口出ししたら逆効果じゃない…)

真姫(…や、でもそれは酷な話かしら。だってこの花陽は…μ’sじゃない)

真姫(人前で大きな声を出せる勇気は、持っていないのかしらね)

17: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 22:55:38.98 ID:pMG7Y950o
授業中…

先生「えー、確か西木野さんは今日まで休学なさっていたとか」

真姫「はい。すみません…」

先生「勇気を出して学校に来てくれたのは喜ばしいことですが…」

先生「まず、あなたがこの授業についていけるかどうかを測らせてもらいます」

先生「この曲を歌ってみてください。みんなの前で」

先生「正しい音程で歌えていなかった場合、今日は居残りで補習ということになります」

真姫「はぁ…」

親衛隊A「あの子、困ってる困ってる」

親衛隊B「長い間引きこもってた子に人前で歌を歌わせるなんて…先生も人が悪いわね」

親衛隊C「下手な歌で恥をかくといいですわ」

真姫(陰口めちゃくちゃ聞こえてるんですけど…)

真姫(ったく、私を誰だと思っているのかしらね)

真姫(日本一のスクールアイドルμ’sの中でも最も歌の上手な西木野真姫ちゃんよ?)

真姫(日本の高校生で私以上に歌える女子なんているはずもないわ)

真姫「…といってもね」

真姫(かえって本気を出しても目立つだけ…。下手すればあの親衛隊員に目をつけられる口実にもなりかねないし)

真姫(ここは…)

真姫「あ~お~げば~とうとし~わが~しの~おん~…」

先生「…はい、ありがとうございます」

先生「及第点といったところですね。久しぶりに人前で歌ったでしょうに、なかなか声が出ていてよろしい」

先生「あとは音程をもう少し正していけば上手になれると思います」

真姫「はい、ありがとうございます」

親衛隊A「ふーん、なかなかやるじゃない」

親衛隊C「でもあの子の歌…、クスクス…。とっても下手でしたわね」

親衛隊B「もー、言ってあげないでよー。まぁ、ビブラートも何もあったもんじゃなかったけど…、低音も出てなかったし」

親衛隊A「アンタが一番言ってんじゃん!アハハハ!」

真姫「…」イラッ

真姫(ぶん殴りたいあいつら…!私が本気を出せばあんたらの数倍、いや数億倍はうまいっての!)

真姫(…っと、いけないいけない。気を鎮めないと…。目立つことはしない、しない、っと…)

花陽「…」

花陽「…西木野さん、かぁ」

18: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 22:57:08.66 ID:pMG7Y950o
授業中

先生「…えー、それでは小泉さん、ここを…」

花陽「はい」

花陽「らー、らららー…」

親衛隊ズ「「きゃー…!相変わらず透き通るようないい歌声…!」」

真姫「ふぅん…」

真姫(確かに、始めて歌を聞いた時よりもずっと声が出てる…)

真姫(それにとっても…、上手ね)

真姫(アイドルでもない花陽がここまで歌が上手だなんて…少し意外)

真姫(やっぱり歌手専攻なだけあって、一学期で相当歌の練習もしたんでしょうね)

親衛隊員D「やっぱり、花陽ちゃんが最もA-RISEに近いと思うなぁ…!」

親衛隊員E「もったいないよね、あんなに歌上手なのに…」

真姫「ん?」

真姫(気になる言葉が聞こえたわね…。A-RISEっていう言葉も、この学校に来て初めて他の生徒から耳にしたけど…)

真姫(それより、『もったいない』って…どういうことかしら)

真姫(もしかしたら花陽にも私の知らない事情があるのかもしれない…)

19: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 22:57:39.94 ID:pMG7Y950o
「きりーつ、れーい…」

「「ありがとうございました!」」

放課後

1年E組 教室内

真姫「ふぅ…」

真姫(やっと一日の授業が終わった…。新鮮なことが多すぎてかなり一日が長く感じたわ…)

真姫「さてと、じゃあ帰ってクリニックの準備…」

真姫「…じゃなかった」

真姫(今は別世界でUTX学院生だったわ…。忘れてた)

真姫(この世界には、私の知っている凛がいない、のよね…)

真姫(そう思うと心細くなってきたかも…。凛、早く迎えに来てよ…)

真姫「…このモヤモヤした気持ちと、さっきの音楽室でのイライラを解消するためには…」

真姫「…思いっきり歌うしかないわね」

真姫「そうと決まれば…!」

音楽室

真姫「…誰かいますかー?」ガチャッ

真姫「よし、誰もいないわね。ここなら本気で歌える…!」

真姫「ピアノもあることだし、ここは久しぶりに弾き語りでもしてみようかしら」

真姫「よいしょっ、っと…」

真姫「ピアノの調子は…」ポロロロンッ…

真姫「うん、綺麗な音。さすがUTX、いいピアノ使ってるじゃない」

真姫「じゃー…そうね。イライラしてる感情をぶつけるためにもここは激しい曲がいいかしら…」

真姫「…これにしましょう。μ’sのいないこの世界にはぴったりかも」

真姫「…LOVELESS WORLD」

~♪

真姫「さーよならーのキースしてー、かなーしみのーくーにへー…」

真姫「ラブレスワァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」

真姫「…ふぅ。思いっきり叫んでやったわ。気持ちよかっ…」

パチパチパチ…

真姫「ヴぇええええっ!!?は、拍手…!?誰…?聞いてたの…?」

「…歌、上手ね。聞き惚れちゃった」

真姫「あ、あなた…」

真姫(…絵里)

20: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 22:59:13.18 ID:pMG7Y950o
絵里「…1年生?見ない顔ね」

絵里「今日、転校してきた…とか?でもそんな話聞いてないけど」

真姫「あ、えっと…私不登校で…。今日久しぶりに学校に出てきたの…です」

絵里「あぁ…、そうだったの。道理で」

絵里「じゃあ一つ忠告するけど…」

絵里「…あなた、音楽室の使用許可、とった?」

真姫「え、使用許可…?」

絵里「授業に使用する教室を空き時間に利用するためには生徒会の許可が必要なのよ」

絵里「知らなかった?」

真姫「…はい」

絵里「でしょうね。…生徒手帳にも明記されてるんだけどな」

真姫「すみません…」

絵里「別にいいわよ、私に謝らなくても。先生や生徒会の人たちに見つからなくて良かったわね」

真姫(…え?)

真姫「あ、あの…絵里…じゃなかった、あなたは…生徒会役員じゃないん、ですか?」

絵里「私が?生徒会?」

絵里「ふふ…、面白いこと言うわね。私が生徒会に入ったことなんてないわよ」

真姫「あ…、そ、そうだったんだ…」

真姫(希が生徒会長だから、もしかしたら絵里は副生徒会長なのかも、って思ってたけど…)

真姫(カンが外れたわね…。じゃあ絵里は何をやってるのかしら…)

絵里「…そういえば、前にもこんな…」

真姫「へ?」

絵里「っ…?あっ、あなた…!」

真姫「っ!?は、はい…?」

絵里「…いえ、何でもないわ」

真姫「はぁ…」

絵里「それじゃ、またね。今度は許可を取るか…誰にも見つからないようにしなさいよ?」

真姫「あ、はい…。ありがとうございます」

絵里「…さよなら。真姫」

真姫「うん、さよなら…」

真姫「…って、え?なんで私の名前…」

真姫「って、もういないし…」

真姫(見ない顔、って言っておきながら私の名前を知っていた…?)

真姫(この世界の絵里…、今までで一番よくわからないわね…)

21: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 22:59:54.63 ID:pMG7Y950o
音楽室前

真姫「…はぁ、時間潰すつもりだったのに」

真姫「あの家に帰ればまたこの世界の私と鉢合わせになるし…、どこ行こうかな…」

真姫「とりあえず、一旦学校からはもう出ようかしらね…」

タッタッタッ…

「はぁっ…、はぁっ…」

「…ねぇ!今、歌ってたの…」

真姫「あ…、あなた…」

花陽「西木野さん…、やっぱり…」

真姫「聞こえてたの?さっきの…」

花陽「うん、ちょっと、さっきまで…親衛隊の子と近くで話してたから」

真姫「そ、そうだったのね…。恥ずかし」

花陽「そんなことないよ!」

真姫「…っ!?び、びっくりした…」

真姫(急に大きな声出すから…。っていうかそんな大きな声出せたんだ花陽)

花陽「すっごい上手だった!私よりずっとずっと上手!」

真姫「そ、そんなこと…」

花陽「やっぱり音楽の時間はホンキじゃなかったんだよね!?なんとなく気づいてたの!」

花陽「すごいなぁ西木野さん!羨ましい!!ねぇ、A-RISEに入るつもりなの!?それとも…」

真姫「あの…、花陽…!お、落ち着いて…」

花陽「あっ…。ご、ごめんなさい…。私興奮するとつい…」

真姫「え、えぇ…」

花陽「…あっ!そうだ、言いたいことがあるの!」

真姫「言いたいこと?」

花陽「あの、ね…その…」

花陽「…今日の朝、抱きつかれた時はすごくビックリしたんだけど…」

花陽「私、ああいうことされたことなかったから、すごく新鮮で…胸がドキドキして…」

花陽「その、だから…西木野、さん…!」

真姫「は、はい…」

真姫(これは、もしや…)

花陽「わ、私っ…!!」

花陽「西木野さんのこと、す…好きっ…!!」

22: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:00:53.84 ID:pMG7Y950o
真姫「っ!!?ちょっ…!」

真姫(まさかのいきなり告白ゥッ!?)

花陽「…あっ!え、えっと…!」

花陽「違うの!!ごめんなさい、そうじゃなくて…そういう好きじゃなくて…」

花陽「…と、友達になって欲しいって、思ったの」

真姫「友達…?」

花陽「うん、私…気軽に話せる友達がまだ、いなくて…」

真姫「え、でもあなた、親衛隊がいるじゃない」

花陽「あの子達は…ちょっと違うくて。私じゃなくて…きっと私の歌声と、キャラクター性が好きなだけ、なんだと思う」

花陽「私、普段は声も小さくて引っ込み思案だから、よく守りたくなる、母性をくすぐるって言われてて…」

花陽「最初はクラスの子が打ち解けるためにおふざけで始めたことのはずだったのに、それがいつしかホンキになっていっちゃって…」

花陽「そばにいてくれるのは嬉しいんだけど、誰も私と心から向き合ってくれる子はいなくて」

花陽「いつもみんなが作り上げた、私の偶像を見てるだけ、って感じがして…」

花陽「でも、そんなこと言えなくて…ずっと心から話せる友達が欲しくて…」

花陽「西木野さんなら、なってくれるかもって…そう思ったんだ」

真姫「花陽…」

花陽「ダメ、かな…?お友達…」

真姫「…ふふ」

真姫「もちろん、ダメじゃないに決まってるでしょ」

花陽「…!じ、じゃあ…」

真姫「でも一つ、条件があるわ」

花陽「条件…?も、もしかしてパシリになれ、とか…?」

真姫「ノンノン、そういうのじゃなくて」

真姫「私のことは、名前で呼んで」

花陽「えっ…」

真姫「西木野さん、なんて他人行儀な呼び方、好きじゃないのよ」

真姫「友達なら、下の名前で呼び合うものでしょう?…花陽」

花陽「あっ…。…う、うんっ!」

花陽「真姫ちゃんっ!」

23: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:01:49.41 ID:pMG7Y950o
真姫(こうしてこの世界にも一人、仲間が増えた)

真姫(奇しくも、私が音ノ木坂に入って初めて出来た友達と同じ)

真姫(これも、運命なのかもね。…花陽)

花陽「ふふふっ…。真姫ちゃんっ」

真姫「な、なによー…。そんなにくっつかれると歩きにくいじゃない」

花陽「ごめんね、でもなんだか嬉しくって!ふふ、友達かぁ…」

真姫「あっ…」

真姫(…そっか、さっきの話を聞く限りじゃ、幼馴染の凛はこの学校にはいない、みたいね)

真姫(でなければ、気軽に話せる友達がいない、なんてありえないし…)

花陽「…ん?どうしたの?何か私の顔についてるのかな」

真姫「あっ…違っ…」

真姫(どうやら無意識のうちに花陽の顔を見つめていたみたいだわ)

花陽「えぇっ!?ち、血が付いてるの!?どこどこ!?」

真姫「あー、そうじゃなくてっ…!えーっと、そう、花陽はどうしてUTXに入ったのか聞こうって考えてたの!」

花陽「え…?」

真姫「ほ、ほら…。花陽は引っ込み思案じゃない?…そう、私には見えるのよね」

花陽「あ、うん。確かに引っ込み思案だよ。えへへ、恥ずかしい…」

真姫「なのにこの学校になんで入ったのかな、って。それに、芸能科の歌手専攻だなんて」

真姫「明らかに人前で歌わされること確実な学科を選択するなんて、花陽らしくないな、って思って」

花陽「あ、そうかもね…」

真姫「もしかして、誰かに誘われた、とか?」

花陽「うぅん!そんなことないよ!この学校には自分の意志で入ったの」

真姫「へぇ…意外ね」

花陽「私ね、昔から歌、っていうか、アイドルが好きで…」

花陽「だからUTX学院が家の近くにあるのはもう運命だ!って思って…」

花陽「本当はお母さんも通ってた、音ノ木坂学院ってところに通う予定だったんだけど…花陽が小さい頃に廃校になっちゃって」

花陽「UTXは学費も結構したけど、お父さんとお母さんに入学させてもらえるように頼み込んで、なんとか入学できた、ってかんじかな」

真姫「ふぅん…。そうだったのね。アイドルが好きだから、か…」

真姫(確かにアイドル好きなら、花陽がUTXに通うのも頷けるかもね)

花陽「…だから、今のこの状況は…あまりよくないの、かな」

真姫「…え?」

花陽「私、A-RISEに憧れて、私もこの学校に入ったらA-RISEの一員になろうって、そう頑張ってたんだけど…」

花陽「今は、もう…やめちゃったの。アイドル目指すの…」

真姫「えっ…、どうして?」

花陽「それは…」

24: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:02:30.96 ID:pMG7Y950o
『UTX高校へようこそー!!』

真姫「…っ!?な、なに…?」

花陽「あっ、A-RISEのPVが流れる頃なの。この時間」

真姫「アライズ…」

花陽「真姫ちゃんはA-RISE、知ってるかな?芸能科の3年生の人たちで結成されたスクールアイドルで…」

真姫「し、知ってるけど…。学内でも流れるのね、あれ。学校の前のモニターだけかと思ってた」

花陽「よかったら見に行こう!A-RISEの凄さがわかると思うの!」

真姫「う、うん…」

UTX学院 学内モニター前

ガヤガヤ…

真姫「うわ…、すごい人だかり…」

花陽「そっか、今日学内限定で新PVの発表があるんだっけ…」

真姫「それでこんなに…」

花陽「いち早くA-RISEのPVが見れるっていうのも、学院生だけの特権だからね!」

花陽「そのためにこの学校に入ったって人も少なくないかも?」

真姫「へ、へぇ…。そうなんだ」

花陽「あっ!始まったよ!静かにして」

真姫「う、うん…」

~♪

真姫「あ、これ…」

真姫(第二回ラブライブの時の予選に使った曲…)

真姫(確か曲名は…Shocking Partyだったっけ)

真姫(あのキレキレのダンスには圧倒されたわね…。一瞬心奪われそうになったわ)

真姫(でもこの時期にこれが流れるってことは…この世界では第二回ラブライブは行われていない…?)

真姫(多分、μ’sがいないことが世界になんらかの影響を及ぼして、結果、ラブライブは行われなかった、ってことかしら)

真姫(でもPVのクオリティとしては全く遜色ない…。うぅん、むしろ出来が増してるかも)

真姫(それにしても、前見たときよりステージが少し広い…?)

「キャーッ!!来たーっ!!」

真姫「えっ…?何が…?」

真姫(突然の声援に辺りを見回す。人だかりの彼女たちは画面に夢中だった)

真姫(それに倣ってモニターに目を戻した時、私が見たもの)

真姫(それは、予想だにしていなかったもので)

真姫「ん、なぁっ…!!!?」

25: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:03:49.66 ID:pMG7Y950o
真姫(あ、A-RISEに…)

真姫(バックダンサーが付いてる…!?)

「きゃーっ!!きゃーっ!!」

真姫(…いや、ただバックダンサーが付いてるだけなら、こんなに驚きはしないわよ)

真姫(でも、でもでもでもっ…!!)

真姫(こんなの、こんな、ことって…!!)

「きゃーっ!!」

「穂乃果ちゃーんっ!!」 「凛ちゃーんっ!!」 「にこにーっ!!」

真姫(モニターに映る、A-RISEのバックダンサーの3人)

真姫(それはまさしく、私の知っている顔で)

真姫(それは、紛れもなく)

真姫(高坂穂乃果と、星空凛と、矢澤にこ)

真姫(μ’sの3人が、A-RISEと共に、モニターの中で踊っている)

真姫(こんなの、冗談以外のなんだって言うのよ…)

花陽「…凛、ちゃん」

真姫「…」

花陽「…あっ!す、すごいでしょ?ね?A-RISE、カッコイイよね!」

花陽「それにね、あのバックダンサーの人たち!あの人たちは次期A-RISE候補の3人で…」

花陽「…真姫ちゃん?」

真姫(花陽の言葉はほとんど耳を通らず)

真姫(私はそのモニターを、呆けたように見入るしか、出来なかった)

26: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:04:47.14 ID:pMG7Y950o
テク、テク、テク…

花陽「あれが新PVかー…。すごいかっこよかったなぁ…」

花陽「ね?よかったよね?」

真姫「え、あ、あぁ…」

真姫(あの映像を見させられてから数分して、花陽と一緒に学校から出ようとしている途中にやっと意識が戻ってきた)

真姫(いろいろ気になることはあるけど、…一番気になったことを花陽に訪ねてみましょう)

真姫「花陽、質問いい?」

花陽「ん?なにかな、A-RISEのこと?」

真姫「えっと、そうじゃなくて…バックダンサーの方」

真姫「…あの、やざ…ツインテの先輩、って…、3年生じゃないの?次期A-RISE候補って言われてたけど…」

花陽「え?にこにー?…あ、にこにーっていうのは愛称で、本名は矢澤にこ先輩って言うんだけど…」

花陽「あの人は2年生だよ?」

真姫「えっ…、に、2年生…!?それ、確かなの!?」

花陽「うん、そのはずだよ…?」

真姫(どういうこと…!?この世界ではにこちゃんは生まれるのがみんなより1年遅かった、ってこと…?)

真姫(それともまさか、初期の希現象の逆が起きて2年に設定が変更されたとか!?)

花陽「…あっ、そういえば噂で聞いたことある」

花陽「矢澤先輩は一度UTXに入るために浪人したんだって噂。だから今2年生なのかな」

真姫「えっ、浪人…高校入るために…!?」

花陽「う、噂ってだけだよ?でも真姫ちゃんが矢澤先輩をそう勘違いしてるならもしかしたらその噂関係なのかなって」

真姫(…なるほど、高校浪人とは信じがたいけど…どうやらその噂、本当みたいね)

真姫(UTXに入るためににこちゃんは1年浪人して、だから今2年生…それなら計算が合うわね)

花陽「えっと、聞きたいことってそれだけ?」

真姫「…」

真姫「えぇ、それだけ」

真姫(凛のことも、とても気になったけど)

真姫(でもこれは、気軽に聞ける話じゃないってどこかで察して、そのまま質問タイムは終了となった)

27: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:05:33.54 ID:pMG7Y950o
UTX学院 改札前

真姫「あ」

花陽「ん?どうしたの?真姫ちゃん」

真姫「ご、ゴメン!やっぱり先帰ってて!やらなきゃいけないこと思い出した!」

花陽「?…いいけど。じゃあまた明日ね!」

真姫「うん、また明日!」

真姫(…って、明日も来られるかわかんないんだけど)

真姫(それより、今は電子生徒手帳のこと!)

真姫(再発行するの、忘れてた!)

真姫(希に帰るまでに、って言われてたのに…)

真姫(正直、明日もUTXに来るのはあまり乗り気ではないのだけど…まぁ、友達も出来てしまったし)

真姫(…でも再発行ってどこでするのかしら)

真姫「…」

真姫「…困ったらいつでも頼れって、言ってたしね」

生徒会室

ガララッ

希「はい。…あ、西木野さんやん!」

真姫「こ、こんにちは。やっぱりここにいたんだ…」

希「どしたん?あ、入り入り!お茶でもどう?」

真姫「ありがと…。それより聞きたいことがあって」

希「ん?なになに?」

オフィス

希「…で、これに記入ね」

真姫「っと、こう…ね。はい」

希「うん、これで申請は完了や!」

希「じゃあ…はいこれ!西木野さんの新しい電子生徒手帳!もう無くしたらあかんよ?」

真姫「え、こんなに早く再発行できるの…?数日かかるとかじゃ…」

希「そんなかかったら学校入れへんやん!生徒のデータさえ入力すればすぐにできるよ」

希「その代わり、どこかに行っちゃった前の生徒手帳のデータは自動的に削除されるんやけどね」

真姫「へ、へー…。そうなのね…」

真姫(この世界の私、なんかごめん。どうせ使ってないんだからいいでしょ)

真姫「ありがとう、忙しいのにこんなことまで付き合わせちゃって」

希「ん?うぅん、ええんよ。うちもそろそろ帰るつもりやったし!」

真姫「そう。じゃあ私これで…」

希「…待った!」

真姫「え…?な、なに…?」

28: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:06:38.46 ID:pMG7Y950o
希「にょにょにょにょにょ…はぁっ!」

真姫「わぁ…なによ」

希「真姫ちゃん、なんか悩んでるでしょ?」

真姫「そ、そりゃ人間生きてれば悩みの一つや二つあるって…」

真姫「なに?エセ占い師の真似?真似が二つかぶってるけど」

希「いやいや、うちスピリチュアルやからね。真姫ちゃんの考えてること、少しわかるんよ」

希「ついさっき…、心臓の飛び出るくらい驚くことがあったでしょ?」

真姫「えっ…!?」

希「おや、図星かな?」

真姫「な、なんでわかるのよ…」

希「んー、スピリチュアルやからかな」

真姫「真面目に答えて!」

希「じゃあ真面目に答えると…匂いやね」

真姫「はぁ?」

希「真姫ちゃんの匂いが変わってる。…汗の匂いかな」

希「緊張というか、驚いたときに発せられる汗の匂いが仄かに漂って…数分は経ってる感じ」

真姫「あ、アンタ何者よ…?」

希「ふふふ…、生徒会長はここまで出来て一人前なんよ?」

真姫(…そんな生徒会長この世界に一人しかいないっての)

希「で、もう一つ…。真姫ちゃん、帰るところなくて悩んでるんやない?」

真姫「それも、汗…?」

希「これはまぁ…表情でね」

真姫「…すごいわね。当たり。…ちょっと家に帰れない事情があって、どうしようかなって悩んでたのよ」

希「ふぅん…」

真姫「な、なによ…。まだ何かあるの?嘘じゃないわよ?」

希「嘘やなんて言ってないよ。…ふむふむ、家に帰れない、か」

希「だったら…」

希「今夜、うちに泊まらない?」

真姫「ハァ!?」

29: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:07:22.95 ID:pMG7Y950o
希の家

真姫「ほわぁ…」

希「ふふ、気にせんであがって?うち一人暮らしやから、どんなに騒いでもお隣さんからしか文句は来ないよ?」

真姫「え、あぁ…じゃあ遠慮なく…」

真姫(希のお家か…。一度行ったことはあったけど)

真姫(こっちの希の家もあまり変わらないわね…)

真姫(っと、今はそれより…)

真姫「…ねぇ、ところで」

真姫「どうして私を家に招待してくれる気になったの?」

真姫「生徒会長サマが家に帰らない不良生徒を匿っていいのかしら?」

希「せやねー。上級生に敬語を使わない悪い子をわざわざ家にあげる生徒会長もそうそうおらんよね」

真姫「…あ、ご、ごめんなさい。つい癖で…。気に障ってたのなら気をつけます…」

希「あはは。なんや意外と素直やん。別に気にしてへんよ?」

希「真姫ちゃんの接したいように接してくれたらええんやよ」

真姫「あ、そうなの。…というか、あなたもいつの間にか西木野さんから真姫ちゃんに…」

希「いいやんいいやん。同じ屋根の下で暮らす仲になったんやし、気にしないで」

希「で、なんやったっけ?あ、どうして家にあげるか、ってことやったっけ?」

希「別に、深い意味はないよ。家に帰れなくて困ってる子がいたから、助けてあげた」

希「それだけ、やん」

真姫「…そう」

希「あ、あと一人暮らししてると人の温もりが恋しくなってくるっていうのもあるね」

希「誰かをお泊りさせるのなんか久しぶりでめっちゃワクワクしてるわ~。うふふ」

真姫「そういうの、あんまりしないの?友達とかで…」

希「ん~、そこまで深い付き合いの友達はいないからねぇ。そういう機会には恵まれなくて」

真姫「好かれそうな性格してるのに…ホントにホント?」

希「…」

希「どう、やろうね。こう見えてもうち結構人見知りなんよ?」

真姫「あ、そう…」

真姫(この世界の絵里もちゃんとUTXに入学してるのに…)

真姫(希と絵里にも、何かのっぴきならない事情があるのかしらね…)

真姫(はぁ、ややこしいわね…。こんな世界に入り込むんじゃなかったと今更後悔してきたわ)

30: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:08:09.90 ID:pMG7Y950o
真姫「…」

真姫(後悔してても始まらない、か)

真姫(…希のおかげで腰の落ち着けるところも確保できたし、今は状況の整理をしましょう)

希の部屋

真姫(まずは、あのA-RISEのバックダンサー…)

真姫(私たちの世界では存在しなかったバックダンサーがいることもびっくりだけど、それ以上に…)

真姫(それがμ’sの3人…穂乃果、凛、にこちゃんのバカ3人組だなんて)

真姫(…でも、今になって考えてみてみれば、さして衝撃的でもないのかも…)

真姫(穂乃果やにこちゃんなら、アイドルになりたい…、A-RISEの一員に加わりたい、って思うのも、UTXに通っていればありうるでしょうし)

真姫(だけど問題は…、言ってしまえば、この世界の『異常』は…)

真姫(…親衛隊が作られるほどの花陽に、凛が関わっていないこと)

真姫(そして、今日の昼…食堂で海未とことりが昼食を食べていた時に、穂乃果の姿がなかったこと…)

真姫(この世界のμ’sのみんながUTXに入学したことで、それまで付き合いのあったもの同士に、亀裂が生じている…のかしら)

真姫(それに、あの花陽が…、アイドルに誰よりも憧れる花陽が)

真姫(アイドルになるために入ったUTXで、アイドルを諦めた、って言っていたのも気になる)

真姫(…はぁ。て言うか、なんで私がこの世界の人間関係に頭をひねらなくちゃならないのよ…)

真姫(どうせこの世界の私は休学中。明日にはいなくなっても誰も不審がらない)

真姫(あとは凛が私を探し出して迎えに来てくれるまで、どこかで身を潜めていればいいだけの話なのに)

真姫(気まぐれに行ってみたUTXでまさかこんなことになっているとはね…)

真姫「…厄介なことに首を突っ込んだものだわ」

真姫「やっぱり、バックレようかしら」

希「…ん?今なんて?」

真姫「わっ!の、希…!いたの?」

希「うん。ノックもしたけど返事なかったから、勝手に入ったよ?」

真姫「あぁ…そうだったの。ごめんなさい」

希「と、そうそう。ご飯できたよ。一緒に食べよ?」

真姫「…いいの?貴重な食費を私に割いて」

希「誰もタダでなんて言ってないやん?」

真姫「…いくらよ」

希「あはは!冗談冗談!お金はいらんよ!」

希「真姫ちゃんとの楽しい食卓を提供してもらえれば、うちにとってはそれが一番の報酬やよ」

31: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:09:26.39 ID:pMG7Y950o
食卓

希「いただきまーす」

真姫「…いただきます」

真姫「…もぐもぐ」

真姫(美味しい。UTXの食堂ほどではないけど、素朴に純朴な味…)

真姫(いわば、おふくろの味っていうのかしら。どこか懐かしくなるような味ね)

希「…どう?お口にあうかな?」

真姫「えぇ、とても美味しいわ。こんなものを頂いちゃって、少し申し訳ない気分よ」

希「うふふ。そう言ってくれると嬉しいわ」

真姫(それから十数分、会話も交えつつ晩ご飯を食べ続ける二人)

真姫(話題も尽きてきたので、気になったことを希に訪ねてみることにした)

真姫「もぐもぐ…、そういえば、A-RISEの事なんだけど…」

希「A-RISE?」

真姫「えぇ、その…私が入学した直後にはバックダンサーなんていなかったと思うんだけど、あれっていつから?」

希「あー、あれね…。あれはー…」

真姫(バックダンサーの件については当てずっぽうだったけど、どうやら本当に今年度の始まりにはいなかったみたいだった)

希「…真姫ちゃんは、A-RISEってどうやって構成されてるか知ってる?」

真姫「うぇ?い、いきなりね…。え、えっと…」

真姫(といっても…他校のアイドルのことなんてそんなに詳しくないから知らないし…)

真姫「…芸能科でアイドル志望の3年生の人が集まってできてる、って聞いているけど」

希「うん。そのとおり」

希「芸能科には専攻がいくつかあるけど…大きく分けると次の三つに分類されるんよね」

希「歌手専攻、モデル専攻、ダンサー専攻」

希「A-RISEは基本的にその三つの専攻の中のアイドルを志望する子のうち、トップの子を専攻ごとに選出して結成される」

希「ただその基点に達するまでの道のりも激しい…。ただでさえ忙しい学業をしつつ、アイドル志望の子達には7限目以降が追加されるんよ」

希「すなわち、アイドル専攻の授業が、ね」

真姫「え、アイドル専攻って存在しないはずじゃ…」

希「あぁ、専攻って言うのは名ばかりで、本当は半分部活みたいな存在なんよ」

希「志望すれば追加の学費も必要なく、誰でも受けられる授業だけど…それだけに厳しい」

希「やる気のないもの、サボろうとするもの、そういう子がいれば即刻二度と授業は受けられんくなる」

希「アイドルの見込みがない、と判断されたものもすぐに落とされる」

希「学業に支障がある、と思われても、それでおしまい」

希「すごい狭い門をくぐり抜けて、A-RISEは作られてるんよ」

真姫「なっ…」

真姫(…スクールアイドルを学校が全力でバックアップしてるとは聞いていたけど…)

真姫(専用の授業が存在して、しかもそんなに競争率が激しいなんて…)

32: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:10:25.71 ID:pMG7Y950o
真姫(でもそう考えると、あのバックダンサーの3人は、それを乗り越えたってこと…?)

真姫(普段からサボり癖のある凛が…?それにあの幼児体型のにこちゃんまで…)

希「そんで、こっからはバックダンサーの話やねんけど」

希「今まではA-RISEのメンバーは1年ごとに交代して行ってたんよ。専攻ごとのトップ、そのうちの3年生が基本的にA-RISEとして選ばれる」

希「せやけどそれじゃ、スクールアイドルとして表舞台で活躍できるのは1年の間だけ」

希「せっかくキツイ門をくぐり抜けた優秀な生徒なのに、それはもったいない。…って、提唱した子がいてね」

希「結果、A-RISE自体は増えなかったけど…その代わり、A-RISEとともに舞台で活躍するバックダンサーとして、メンバーは増えることになった」

真姫「それが、あの3人…」

希「そう。そしてその選出基準は2年次以下で専攻ごとの成績が最も優秀な子が選ばれる」

希「次代のA-RISE…、その最有力候補が、あの3人なんよ」

真姫「…っ!」

真姫(つまり、あの3人は厳しい授業を乗り越えただけじゃなく…)

真姫(その中でトップに位置する3人…!)

真姫(し、しかもそれじゃあ凛は…)

真姫「あの、ショートカットの子って…1年生なんでしょ?なのに…」

希「…うん。有名よね、星空凛ちゃん」

希「UTX始まって以来の…化物や、ってよく言われてる」

真姫「う、嘘…」

希「入学当初は身体が硬かったりダンスの基礎ができてなかったりと、むしろ成績は下の方やったらしいけど…」

希「一度基礎を覚えれば、成長は早かった。圧倒的な速度でダンスを学び、今じゃA-RISEに最も近いダンサーって言われてる」

希「だから特例として、凛ちゃんだけは来年、A-RISEに加入することが許されてる、ってわけやね」

真姫「…それは、ダンサー専攻の2年生は悔しいでしょうね。まぁ彼女、ダンスだけは誰にも負けないだろうし…」

希「…うぅん、ダンスだけやない」

真姫「え…?」

希「専攻ごとのトップって言っても、その専攻ごとのことしかしないわけじゃないから」

希「アイドルになるにあたっては、芸能科の全ての専攻の能力を兼ね備えている必要があるんよ」

希「歌手のような歌唱力。モデルのように自分を美しくみせる能力。ダンサーのように巧みに踊る能力」

希「そのための、アイドル専攻の授業ってわけ。むしろダンサー専攻の人たちはボイストレーニングと自分を美しくみせる術を重点的に教えてるみたいやね」

希「だからバックダンサーの子たちは、その専攻だけじゃない。全ての能力を兼ね備えた、最強の3人やねんよ」

真姫「…」

真姫(もはや、声も出ない)

真姫(私の知っているあの3人が、それを乗り越えられるとは、到底思えなかった)

真姫(彼女たちは、そう思えるほど努力し、勝ち上がり…そして、あのバックダンサーという立ち位置を得ている)

真姫(…だからこそ、なのだろうか)

真姫(彼女らが、私の知らない3人になってしまっているからこそ)

真姫(普通じゃ生まれるはずのない亀裂が、生じてしまっている、ということ、なんだろうか…)

33: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:11:05.38 ID:pMG7Y950o
希の部屋

希「布団しかないけど、いいかな?」

真姫「いいわよ、別に。雑魚寝は慣れてるし」

希「ふぅん…?意外やね、真姫ちゃんお金持ちそうやからベッドでしか寝てないんかと思った」

真姫(胸のモヤモヤを抱えたまま、夜となった)

真姫(UTXの驚きのアイドル育成方針…。確かにこれなら、A-RISEは最強のスクールアイドル足り得るだろう)

真姫(想像以上に、そのふるいの目は小さく険しいものだったけれど)

真姫(…場所さえ違っていれば、スクールアイドルとして才能を開花していた子も弾かれた中にいたかも知れない)

真姫(小さな芽は食いつぶす…、それよりもっと大きな才能を芽生えさせるための糧として)

真姫(私がUTXの方法から得た感想は、そうした残酷なものだった)

希「それじゃ、電気消すね」

真姫「…うん」

パチッ

真姫「…」

真姫(真っ暗の中、考える)

真姫(…UTX学院は、私が足を踏み入れていい場所じゃなかったんじゃないかって)

真姫(あそこは戦場だ)

真姫(日々アイドルを目指す者たちが、互いの才能を踏み台に上へと駆け登る、凄まじいバトルフィールド)

真姫(蹴られた者は二度と立ち上がれず、散っていく…。まさに、死者のように)

真姫(UTX学院生、アイドル志望の少女たちは、そんなことを毎日毎日、繰り返して…アイドルを目指している)

真姫(たった3人しか掴めない、A-RISEという…生存の道を)

真姫(日常が、戦争…か)

真姫「…」

希「…真姫ちゃん、何か、考えてるでしょ」

真姫「…まだ起きてたんだ。よく、わかるのね」

希「うち、スピリチュアルやからね。…誰が何考えてるか、って結構わかるの」

希「だから、言うけどね」

希「…きっと、UTXにも、真姫ちゃんの居場所はあるよ」

希「むしろ、真姫ちゃんにしかできないことがあると思うんよ」

真姫「…私にしか、できないこと」

希「うん。…だから明日も、学校、行こうね」

希「引きこもりからは…おさらば、や…。…くぅ、…すぅ」

真姫「…」

真姫(生徒会長の責務から、引きこもりの私をこれからも学校に行かせるために説得する)

真姫(どうやらそれが…、希が私をここに呼んだ、本当の目的だったみたいね)

真姫「…はぁ」

真姫(正直、もう行きたくなかったけど…。あなたのせいで、明日も行かなきゃいけなくなっちゃったじゃない…)

真姫「…恨むわよ、希…」

34: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:11:51.03 ID:pMG7Y950o
翌朝

希「真ー姫ーちゃんっ」

真姫「…んん…、なによ、もう…」

希「真姫ちゃーん?朝やよー?」

真姫「うるっさいわねぇ…。今日は朝練はナシのはずでしょ…」

希「朝練?…よくわからへんけど、起きぃよ?」ユッサユッサ

真姫「んぁぁ…、鬱陶しい…!」

真姫「なんだっていうのよ!!」ガバッ

希「あ、起きた。おはよ、真姫ちゃん」

真姫「…へぁ?なんで希がここに…?」

希「なんで、って。ここうちの家やし」

真姫「え…?」

真姫「…あ」

真姫(そうだった。昨日は希の家にお泊りしちゃったんだっけ…)

真姫(スターゲイザーから落っこちて別の世界に来て…)

真姫(この世界の私のUTXの制服を盗んだはいいものの、帰る家もなかったからって…)

真姫(…てことは)

真姫「私…、学校行かなきゃいけないの…?」

希「うん。うちは真姫ちゃんが学校に来てくれるととっても嬉しいよ」

真姫「あー…」

真姫(希は私を、この世界の不登校だった私だと思っている)

真姫(だから学校へ行かせて引きこもりを解消させようと思っているのだけど)

真姫(…私が学校へ行きたくない理由はそうじゃないのよね)

真姫「…わかったわ。学校、行くから」

希「ホント?よかったよかった!その調子やよ?」

真姫「…うん」

真姫(私が学校へ行きたくない理由)

真姫(それはもちろん、私がUTX学院生じゃないから)

真姫(昨日お遊びで一日だけUTXの中を冒険する気が、生徒会長サマに捕まって再度学校へ行くことになるなんて)

真姫(…だけど、学院生じゃないって理由以外にも、行きたくない理由はある)

真姫(芸能科全体から感じられるピリピリした空気…。音ノ木坂にはなかったあの感覚…)

真姫(私は、アレが嫌だった)

35: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:12:37.29 ID:pMG7Y950o
真姫(着替えを済ませて出ていこうとすると、希がトーストを差し出してきた)

真姫(朝食、だそう)

希「ホントはもっとちゃんとした朝食を取らないと元気出ないんやけどねー」

希「どこかの誰かさんがずっとオネムやったせいで朝ごはん作る時間なかったしー」

真姫「わ、悪かったわよ…。最近夜ふかしに慣れてたから朝起きられなくて」

真姫(私の朝食も大体トースト1枚だからこれでも全然構わないんだけど)

真姫(だけど…やっぱり学校へ行くのは億劫だった)

真姫(本来なら、あの学校に私の居場所なんてない)

真姫(…希のいう、私にしかできないこと…。そんなもの、あるわけがない)

真姫(私はこの世界の真姫じゃないんだから)

真姫(今から希だけでも事情を話して本来の真姫の引きこもりを矯正してもらおうかしら…)

真姫(いや、ムリよね…。そんな話しても信じてもらえるとも思えないし…)

真姫(だから今は仕方なく、希の言うとおりUTXに向かうしか私に出来ることはなかった)

真姫「…まぁ、この世界でも友達はできたし」

真姫「花陽に会いにいくって目的だけでも、学校へいく価値はあるのかしら、ね…」

希「…ん?なんか言った?」

真姫「別に。独り言よ」

希「んー、そう?」

真姫「それより…、どうして今日はそんなに急いでるのよ」

真姫「まだ出ていくには余裕があるんじゃない?」

真姫(時計の針は7:30を指していて、さほど早すぎるわけでもないが、ここからUTXまで近い希にしてはそこそこに早い時間に出かけようとしている)

真姫(もう少しゆっくりして、朝食を作ってもいいと思うんだけど)

希「んー…、いっつもはそうやねんけどね。今日は…大事な朝礼があるから」

真姫「朝礼?そんなのあるのね。…大事な、ってどういうこと?なんの朝礼?」

希「うん、それはね…」

希「今日からうちが、生徒会長じゃなくなる朝礼やよ」

36: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:13:23.22 ID:pMG7Y950o
UTX学院 講堂

真姫(今日から生徒会長じゃなくなる朝礼)

真姫(つまり今日は、新生徒会長就任のための朝礼というところかしら)

真姫(希とは別れ、私は多くの名も知らぬクラスメイトと共に講堂の椅子に腰掛けていた)

真姫(…確かに、音ノ木坂でもちょうど今日くらい、新生徒会長の就任の挨拶があった、わね)

真姫(あの時はセリフもグダグダでひどい挨拶だったけど…)

真姫(UTXでは誰が生徒会長に就任するのかしら)

真姫(集団の中の孤独な私は、そんなことを一人ずっと考えていた)

真姫(花陽がいてくれたら話し相手もいたんでしょうけどね…。クラス違うから仕方ない)

真姫(ただ時間が過ぎるのを待っていると朝礼が始まった。全校生徒の挨拶やら校長先生の長い話やらが終わったあと…)

真姫(ついに新生徒会長がお目見えになるそうだ)

『…それでは、前生徒会長、東條希さん。新生徒会長について何か一言』

希「うん。えー、うち…私は、この学校の生徒会長として、時に厳しく、でもそれ以上に優しく、生徒のみんなを見守ってきたつもりです」

希「次の生徒会長にも、そういった包容の精神を持って励んで頂きたいですね」

『はい。ありがとうございました』

『それでは新生徒会長。壇上へ』

真姫(そして、舞台奥から登場する新、生徒会長)

真姫(毅然とした態度で舞台の上に立ち、真っ直ぐな背をそそり立たせ、冷たく張るような声で)

真姫(自分の名を、口にした)

「たった今ご紹介にあずかりました」

「新生徒会長の」

「高坂、穂乃果です」

37: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:14:44.15 ID:pMG7Y950o
真姫「…やっぱり、か」

真姫(この世界でも変わらず、穂乃果は生徒会長だった)

真姫(聞くところによると、穂乃果のお母さんが音ノ木坂の元生徒会長だったそう)

真姫(だから彼女も、生徒会長にふさわしい血筋?みたいなものを受け継いでいるのかな、って思った)

真姫(久しぶりに穂乃果の声を聞いたような気がして、とても懐かしい気持ちで彼女の挨拶を聞いていたんだけど)

真姫(…だけど、その穂乃果は)

真姫(私の知っている穂乃果とは、どこか違っていた)

穂乃果「私は、ルールこそが第一だと考えます」

穂乃果「規律規範を守ってこそ、質実剛健とした精神が鍛えられるのです」

穂乃果「故に、生徒の皆さんには、健全かつ堅実な学園生活を送る上で」

穂乃果「常にUTXのルールが自らの身体を縛っている、と考えていただきたい」

穂乃果「息苦しいかもしれません、逃げ出したくなるかもしれない」

穂乃果「しかし、それに耐えそれに従ってこそ、社会の規範の基礎が学生のうちに身に付くのです」

穂乃果「この学院から社会に羽ばたくものが、一人たりとも人生の落伍者であってはならない」

穂乃果「私はこのUTX学院に誇りを持っているから、だから学名に一抹の汚れをも残したくありません」

穂乃果「あなた方は誇り高きUTX学院生という勲章をその胸に掲げている」

穂乃果「そのことを毎時毎分毎秒意識し、自分は選ばれた強き人間であると自覚してください」

穂乃果「最後になりますが皆さん」

穂乃果「完全で完璧な学園生活が、あなた方の人生に彩りを齎さんことを」

真姫「え…」

真姫(…だ、誰?)

真姫(私の知ってる穂乃果は、あんな難しい言葉は使わなかった)

真姫(音ノ木坂での挨拶とは打って変わって、流れる水のような滑らかでキリッっとした挨拶)

真姫(そして…冷たい氷のような、感情を感じさせない喋り口調)

真姫(絵里よりも毅然に、海未よりも厳しいその態度は…)

真姫(あれは本当に、私の知っている高坂穂乃果、なのだろうか)

真姫(あの顔で、あの声で、何処からどう見ても、高坂穂乃果その人であることに、間違いはないのに)

真姫(彼女が喋り終え、朝礼が終わるその時が来ても、私はまだ信じられずにいたのだった)

38: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:15:37.90 ID:pMG7Y950o
廊下

真姫(どこか夢心地で…あまり良くない意味での夢心地で)

真姫(足元が覚束無いまま、教室へ戻っている途中)

真姫「…悪い夢でも、見ているようだわ」

真姫「いえ、実際夢のような世界なんだけど…でも、これって…」

真姫「…はぁ」

真姫「ん?あっ…」

真姫(またもや、知った顔に出くわした)

真姫(昨日の私なら、花陽に出会ったあとからの私だったら、そんなことはしなかっただろうけど)

真姫(先ほどの、別人のような穂乃果を見てしまって、どこか混乱に近い状態になっていた私は)

真姫(つい話しかけてしまった)

真姫(大親友であるところの…星空凛に)

真姫「り、凛っ…」

凛「…はいっ?」

真姫「え、あっ…えーっと…。あの、私同じ学年の西木野真姫って言うんだけど…」

凛「西木野、さん?…が、凛になんのようかな?」

真姫「あー…っと、そうね…」

凛「…もしかして、凛のファンかな?凛のダンスに惚れちゃったカンジ?」

真姫「あ…、え、えぇ!そうなのよ!すごいダンスだなぁ、って昨日のPV見て驚いちゃって!」

真姫「あなた一年生なのにA-RISEの後ろで踊れるなんてカッコイイわよね!私…」

凛「あー…、もういいよ。そんなの聞き飽きてるし」

凛「ていうか、ジャマなんだけど。どいてくれない?」

真姫「えっ…」

凛「あのさ、もしかして、凛にお近づきになりたいって子?」

凛「だとしたらゴメンね。凛は自分と同じレベルの子としか付き合わないの」

凛「君、アイドル志望の子じゃないでしょ?そんな意識低い子と話してたら凛がバカになっちゃうじゃん」

凛「だから凛に近づきたかったらせめてアイドル専攻の授業でトップクラスを取ってもらわないとさぁ」

凛「あ、でも君…、よく見るとすっごいかわいい顔してるね!これは点数高いかも?」

凛「凛のパシリくらいになら、お願いしてくれたらしてあげないこともないよー?アハハハハ!!」

真姫「…」

真姫(そう言い残し去っていく背中を)

真姫(知っているはずの、知らない誰かの背中を)

真姫(滅茶苦茶ムカつく事言われてるはずなのに、私は)

真姫(ただ呆然と見送ることしか出来なかった)

39: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:16:32.14 ID:pMG7Y950o
1年E組 

授業中

真姫「…」

真姫「…なにこれ、意味わかんない…」

真姫(教壇で話す教師の声なんて私の耳には全く届かず)

真姫(私は頭を抱えて机に突っ伏していた)

真姫(誰よ…、あいつら誰なのよ…?)

真姫(今まで会ったこの世界のμ’sのメンバー)

真姫(その中で穂乃果と凛…あの二人だけ…)

真姫(…明らかに性格が変わっていた)

真姫(穂乃果は冷たく厳しい性格に…凛は他人を見下し友人を選ぶようなクズに…)

真姫(海未も、ことりに窘められるような性格に多少は変化していたみたいだったけど、この二人とは性質が全く違う…)

真姫(穂乃果はこの1年半で…凛に至っては半年も経たずに…)

真姫(屈託ない明るい性格から、がらんと歪んでしまった)

真姫(一体何が…UTXでの生活で一体何が彼女たちをあそこまで変えてしまったのか…)

真姫「…どうして、どうして私が…」

真姫「なんでこんなことで悩まないといけないのよ…」

真姫(私はこの世界に無関係の人間なはずなのに)

真姫(希に、半ば強制的にこの世界の歯車に組み込まれてしまった)

真姫(誰とも接点を作らず、ただ遊びのつもりで入ったUTX学院で)

真姫(私はその学院生の一人となってしまったのだ)

真姫(その時点で私は、この世界の住人)

真姫(故に、私の世界との乖離を苦痛に感じてしまう)

真姫(あの穂乃果が、あの凛が)

真姫(私はあんな二人を…見たくなかった)

真姫(この世界で、ただただ私の凛の迎えが来るのを待っていたら、こんな気持ちにならなくて済んだのに)

真姫(私はなんで今、こんな気持ちになっているのだろう。なんでここにいるのだろう)

真姫(なんで、悩まなきゃいけないんだろう…)

真姫(わからない、わからない…)

教師「えー…じゃあここを…西木野」

真姫「…わかりません」

教師「即答…!?」

真姫(今の私には、何もわからなかった)

41: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:17:28.29 ID:pMG7Y950o
昼休み

食堂

真姫(ぼーっとして授業を受けていたら、いつの間にか昼休みになってた)

真姫(私は今お昼ご飯を食べるために食堂に立っているけど…)

真姫(昨日と同じ状況のはずなのに、なぜか昨日より、寂しさが増して感じた)

真姫(無性に、誰かと一緒にご飯が食べたかったけど)

真姫(そういえば私は、花陽が何組であるかすら、まだ聞いていなかった)

真姫「…一人で食べるしかない、か」

真姫「もぐ…」

真姫(美味しい…はず、なのに)

真姫(何を食べているのか、さっぱりわからなかった)

真姫(箸が異様に重く感じて、親子丼のご飯を掴むだけでも大変に重労働だった)

真姫「…はぁ」

真姫「この世界の問題であることはわかるのだけど」

真姫「あの穂乃果が…、あの凛が…ねぇ」

真姫(どちらも、私の人生に大きく影響を与えてくれた人物であるがゆえに)

真姫(たとえ別世界であれどもあんなに性格が捻じ曲がった彼女らを目の当たりにしたのは、相当にショックだった)

真姫(そしてそうなると…)

真姫「あの子達はどちらもA-RISEのバックダンサー…性格の歪みの原因がそこにあるのだとしたら」

真姫「…あのにこちゃんも…」

真姫(にこちゃんも…性格が変わっているのだろうか)

真姫(皮肉屋で猫かぶりでバカなにこちゃんが、一体どうなっているのかなんて想像もつかなかったけど)

真姫(想像したらそれだけで凹んじゃいそうだから、やめておいた)

真姫「…はぁ」

真姫(今日何度目かもわからないため息をついたところで)

真姫(私に声をかける人物が現れた)

「…ねぇ?ここの席、空いてるかな?座らせてもらっていい?」

真姫「…え?あぁ…空いてると思う…あぁっ!!」

「は、はいっ!?な、何?」

真姫「こ…」

真姫「…ことり」

ことり「え…?私のこと、知ってるの…?」

42: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:18:33.74 ID:pMG7Y950o
真姫「あ、え、えーっと…!」

真姫(いきなりことりから私に話しかけてくるものだからつい名前を口走ってしまった)

真姫(でも見知らぬはずの少女が自分の名前を知ってたら気持ちわるいわよねぇ…)

真姫(なんて弁明しようかしら)

真姫「あのー…、そ、そう!」

真姫「あなたいっつも長い髪の人とご飯食べてるじゃない?」

真姫「あなたたちがとっても綺麗だから、いつも気になってたのよ!そ、それで…」

真姫「その長い髪の人…?確か海未ちゃん?ってあなたが呼んでる人が、ことり、ってあなたを呼んでたからそれで…」

真姫(我ながら苦しい言い訳だと思うけど。かなりハッタリも入っているし)

真姫(けれど当のことりはさほど気にも留めず)

ことり「へー、そうなんだ…。変な子だね、あなた」

真姫(『変な子』と私にレッテルを押し付けて、そのまま私の前の席で鶏天丼を食べ始めた)

真姫「あ、あー…」

ことり「…もぐもぐ」

真姫(めっちゃ気まずい)

ことり「…ごくんっ。…あ、ごめんね?一人でご飯食べてたなら邪魔しちゃって」

ことり「この時間混んでて座るところなかったから。少しだけだから、我慢してくれる?」

真姫「あ、うぅん…。気にしてないから…」

真姫(…あっちから話しかけてきてくれた。これはチャンス!)

真姫「ところで…今日はあの…海未、って人は?いないの?」

ことり「もぐもぐ…ごくんっ。…ん?あなた、あー…えっと」

真姫「真姫よ。西木野真姫」

ことり「真姫ちゃんは、海未ちゃんの方が気になっちゃう子?」

真姫「あ、いや…、どっちが、じゃなくって…いっつも二人なのに今日は一人なのはなんでかな、って」

真姫(いつも二人かどうかは完全に私のハッタリだ。一回しか目撃してないんだし)

真姫(でもこのふたりなら…大概二人っきりな気がする。…穂乃果が、あんな調子だったし)

ことり「うん、今日は海未ちゃんが忙しくて…なんでも今日中に専攻の授業で使う脚本を仕上げる必要があるとか」

真姫「あ、そうだったのね…。だから今日は一人…」

真姫「…ん?」

真姫「き、脚本…!?」

真姫(専攻の授業で、使う脚本…?芸能科の授業に脚本を使う授業なんて、あるの…?)

真姫(いえ、それともまさか…私が思い込んでるだけで、海未は…)

ことり「あ、海未ちゃん、演劇学科の脚本家専攻なの」

真姫「…っ!?」

43: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:19:20.07 ID:pMG7Y950o
真姫「え…、脚本家っ…!?げ、芸能科じゃないの…?」

ことり「どうして?芸能科以外を選択している人なんていっぱいいるでしょ?」

真姫「え、えっと…それは」

ことり「私だってデザイン学科の服飾デザイン専攻だし…」

真姫「えっ…!あ、そ、そうなのね…」

真姫(それに関しては納得だった。ことりは元々そっちを目指していたわけだし…)

真姫(だけど海未が…演劇で脚本家、だなんて…)

ことり「海未ちゃん、そんなに芸能科っぽいかなぁ…?あ、でも…」

ことり「海未ちゃんの家ね、日舞の家元だから…、昔から踊りは大の得意らしいし」

真姫「あ、あぁ…そうだったのね。だからダンスやってる人っぽいって印象があって芸能科だと思い込んじゃったのかしら」

真姫(これも苦しい言い訳ね…)

ことり「ふぅん…そう見えるんだぁ…。私にはよくわかんないけど」

ことり「あ!でもね?海未ちゃんすごいんだよー。本当はねー…」

ことり「演劇学科の演劇舞踊ってマイナーな専攻だったんだけど、2年次で習うようなところは全部マスターしちゃってるっていうから…」

ことり「今同時にもう一つの専攻…脚本家の専攻の授業も受けてるんだよ?すごくない?」

真姫「そ、それは本当にすごいわね…」

真姫(演劇舞踊…確かに聞きなれないワードね…。幼い頃から日舞を学んできたらしい海未にとっては学校でのカリキュラムは既に通り過ぎちゃったところなのかしら)

ことり「…っと。あはは、ちょっと喋りすぎちゃったかなぁ?ごめんね?身の上話を延々と…」

真姫「あ、うぅん…。全然気にしてないから…。むしろ仲良くなれたら嬉しいな、って思って…」

真姫「私、友達少ないし…」

ことり「…そうなの?」

真姫「え、えぇ…」

ことり「じゃあ!今日から私たち、友達になろう?」

真姫「へ…?」

ことり「友達になりたい!って思ってそうな子がいたら、すぐに声をかけて誘ってあげる!って、私の友達が…」

ことり「あ…」

真姫「…え?」

ことり「…うぅん!なんでもない!真姫ちゃん、だったよね?携帯電話持ってる?メアド交換しよ!」

真姫「え、あぁ…」

真姫(携帯を取り出し、ことりとメールアドレスの交換をする)

真姫(二人目の友達がまさかのことりとはね…)

真姫(…でも、このことりのアグレッシブな感じ…。私の世界のことりとは少し違う…)

真姫(私の知っている穂乃果に近いような、そんな…)

真姫(だけどそんなに変わらない…むしろ彼女はいい方向に性格が変わっているかも)

真姫(それを知れただけで、さっきまで暗澹としていた気持ちが少し楽になれた)

真姫「…ありがとう、ことり」

ことり「ん?あ、どういたしまして!えへへ…よくわかんないけどー」

44: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:19:53.79 ID:pMG7Y950o
真姫「あっ…」

ことり「ん?」

真姫(彼女たちが、穂乃果と一緒にご飯を食べていない理由)

真姫(友達になったついでに、それも聞いておこうかしら)

真姫(もしかしたら…ただ穂乃果とは学科が違うから、芸能科のアイドル専攻が忙しいからってだけの理由で)

真姫(共に昼食をとっていないだけ、かもしれない)

真姫(今ここにいないだけで、彼女たちの関係が破綻したと考えるのは早計だ)

真姫(壇上ではあんな口調だったけど、もしかしたら素の穂乃果は…)

真姫「えっと、あなたたちと…」

ことり「…あっ!もうこんな時間!早くご飯食べないと次の授業に間に合わなくなっちゃうよぉ!」

真姫「えっ…」

ことり「次体育なの!着替えの時間が必要だから、早く教室戻らないと!…もぐもぐっ!!」

ことり「もぐもぐもぐっ…ごくんっ!ごちそうさま!」

ことり「あ、真姫ちゃんのトレイも一緒に片付けておくね!じゃ!」ドヒューンッ

真姫「あっ…まだ食べてる途中なのに…」

真姫「…忙しい人ね」

真姫(そういうところもまとめて、穂乃果らしくなってる気がする)

真姫(だけど彼女に穂乃果のことを聞けなかったのは…)

真姫「…いえ、逆に良かったのかも」

真姫(もし穂乃果が完全に変わっていた、なんて今の私が聞いたら)

真姫(ちょっと元気になりかけてる私の心が、押しつぶされるかも)

真姫(それを知るのは、もう少し後でもいい)

真姫(今の私には、希望が必要だった)

真姫「私も、そろそろ食べ終えないとね」

真姫(重かった箸は、ちょっとは軽くなったように感じられた)

真姫(冷え切った親子丼も、まぁまぁ美味しかった)

45: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:21:04.74 ID:pMG7Y950o
6限目前休み時間 音楽室

真姫(今日も歌手専攻の授業があるみたいね…)

真姫(花陽と会える数少ないタイミングではあるから嬉しいんだけど…)

親衛隊ズ「「花陽様~!」」

花陽「ひゃぁぁ~…!」

真姫(相変わらず親衛隊が花陽を取り囲んで話ができない)

真姫(…まぁでも)

親衛隊J「花陽ちゃん!こ、今度一緒に秋葉原駅前に新しく出来たカフェ行かない!?」

親衛隊K「キャー!言っちゃった!ねーねー小泉さん?いいでしょ?」

花陽「え、えっとぉ…」

親衛隊L「私たち花陽様とカフェに行きたいの!あそこのケーキ、美味しいのよ!」

花陽「ホント…?あはっ、じゃあ…いいよ」

親衛隊ズ「「「やったぁ!!」」」

真姫(花陽が言ってたより、ずっといい子達じゃない)

真姫(友達がいないなんて嘘ばっかりね)

真姫(あー、でも彼女引っ込み思案だから…、そういう意味では私みたいな押さないタイプの友人は欲しかったのかもね)

真姫(なんであれ、花陽自身は変わってなくて良かったわ)

真姫「…」

真姫「…だけど」

(花陽「…凛、ちゃん」)

真姫(昨日モニターに向かって囁いたあの名前…)

真姫(そして凛の変わりよう…。花陽の『アイドルを目指すのをやめた』って発言…)

真姫(まだ私の知らない、UTXの黒い部分が残されてる…。心労は絶えてくれないようね)

真姫「って、私に何ができるって言うのよ…」

真姫(…そう。考えても私に花陽や凛のことなんてどうしようもないのに)

真姫(こんなに悩んで、私はどうしたいのかな…)

真姫(…やめやめっ!悩みはお肌に悪影響しかないのよ!)

真姫(今はただ目立たず、凛が迎えに来るまで平穏な日々を過ごせばいいだけの話)

真姫(ただ、それだけ)

46: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:21:49.61 ID:pMG7Y950o
6限目 音楽室

授業中

花陽「らー、らーらー、ららら~…」

真姫「…ふぅん」

真姫(この歌声を聴いていると…、親衛隊ができるのもあながちおふざけだけじゃないって思えるかも)

真姫(心安らぐ歌声…。なんだか眠ってしまいそうなほど…)

真姫「…うにゃぁ」コクッ… コクッ…

女生徒A「に、西木野さーん、船漕いでるー…!」ツンツンッ

真姫「…っは!あ、危ない危ない…」

女生徒A「寝てた?」

真姫「い、逝きそうになってたわ。ありがとう…」

女生徒A「どういたしまして。…音楽のセンセー居眠りにうるさいから、気をつけてね?」

真姫「以後気をつけるわ。ご忠告痛み入るわね」

女生徒A「でも、小泉さんの歌声聴いてると眠くなっちゃうってのはなんかわかるなー…。なんていうか…ゆりかごで揺られてる気分になるよね」

真姫「えぇ…、そうね」

真姫(あれほどの歌のセンスは私の世界の花陽も持ってなかった…。それだけUTXの教育は素晴らしいものなのかしら)

女生徒A「それだけに、惜しいよね…。絶対彼女ならA-RISE目指せると思うのに…」

真姫「え?惜しい…?」

真姫(そういえば前ももったいないって言われてたけど…)

女生徒A「あ、そっか。西木野さんは知らないんだっけ。小泉さんのあのこと」

真姫「あのこと…?」

女生徒A「…小泉さん、もうA-RISEになれない、ってこと」

真姫「えっ…」

女生徒A「アイドル専攻の授業から、逃げ出しちゃったんだって。だからもう二度とA-RISEになるための授業は受けられないの」

真姫「逃げ出した…?」

真姫(前、花陽はアイドルを目指すのはやめた、って言ってた)

真姫(でも逃げ出す、って…よっぽどのことがあったのかしら…)

女生徒A「あっ…あんまり話してると先生に目つけられるや。もう、寝ちゃダメだよ?」

真姫「う、うん。ありがとうね」

真姫(誰よりもアイドルが好きな花陽が、アイドルを目指すのをやめるきっかけになるほどのことって…)

真姫(アイドル専攻…どうやらここにUTXの闇がありそうね)

47: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:22:31.38 ID:pMG7Y950o
キーンコーンカーンコーン…

真姫「ふぅ…、今日も長い授業が終わったわね」

真姫「大きな声で全力で歌えないのはちょっとストレスだから…花陽誘ってカラオケでも行こうかしら」

真姫「まだ授業終わったばっかりだし、花陽もまだ音楽室に…あれ」

真姫「もういない…。先に教室に戻ったのかしら?」

真姫「仕方ないわ。放課後に誘ってみましょう」

廊下

真姫「ふんふんふ~ん…。カラオケねー…、久しぶりな気がするわ」

真姫「歌って言ったら基本屋上で歌ってたし」

真姫「個室で誰かと一緒に歌うのとか何週間ぶり…」

「…から…、…しは…!」

「…って!へい…ってば…」

真姫「…ん?声…?」

真姫「あっちの階段奥のほうね…。だけどこの声って…」

真姫「花陽…?」

48: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:23:22.28 ID:pMG7Y950o
階段奥

真姫(こんな早く音楽室出て、こんなところで誰と話し…)

真姫「…あ」

親衛隊A「…だからさー、きっと小泉さんならイケるって!」

親衛隊B「もったいないよー!その歌声なら、ゼッタイA-RISE目指せるよっ!」

親衛隊C「埋もれさせるには惜しい才能だと思いますわ」

花陽「あ、あぅ…」

真姫(あれは…、私の陰口叩きまくってた親衛隊の3人…)

真姫(A-RISE…、の話?でも、花陽はもうA-RISEを目指すためのアイドル専攻は受けられないはずじゃ…)

花陽「も、もう…いいから…。私、アイドルは…」

親衛隊A「一度逃げ出したのは知ってるけどさー…、小泉さんなら許されると思うんだよねー」

親衛隊C「私の友達の知り合いの子も、一回ドロップアウトしても謝ればまた授業受けさせてもらえたって聞きましたわ」

親衛隊B「だってさ、ね?小泉さんも許してもらおうよ。で、もっかいイチからA-RISEのために…」

真姫(あぁ…、花陽にアイドル専攻を受けさせようと説得してるってこと、なのかな)

真姫(だけどわざわざどうしてこんな人気のないところで、花陽囲んで…)

花陽「…も、もうっ…やめてっ!!」

真姫「…っ!?」

49: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:24:01.30 ID:pMG7Y950o
花陽「私ぃっ…!!もう、あそこには戻りたくないのっ…」

花陽「だから、ほっといてよ…。イヤ、なのに…ゼッタイに、嫌…」

真姫(な、涙目で震えてる…!?そんなにアイドル専攻の授業が嫌いなの…!?)

真姫(い、一体何があったっていうのよ…!?)

花陽「もう、何度も言ってるのに…、どうして分かってくれないの…!」

真姫「えっ…」

真姫(…何度も?)

親衛隊A「…」

親衛隊A「…アハ、でもさぁ…」

親衛隊B「うんうん、勿体無いって…クスクス…」

親衛隊C「絶対に戻るべき、ですわ…ウフフ」

真姫「…ッ!あ、あいつらっ…!!」

真姫(よく見てなかったけど、あいつらの顔…!)

真姫(笑ってる…!ただの笑顔じゃない…、弱者をいたぶるときの顔…!)

真姫(あの3人…、花陽がアイドル専攻の授業に戻りたくないってこと知ってて…)

真姫(それなのに、気弱な花陽に、善意のフリして戻るよう説得して…からかってる)

真姫(何が、親衛隊よ…!いじめのターゲットにするための隠れ蓑じゃない…!!)

真姫「このっ…!今すぐ止めないと…」

真姫「っ…」

真姫(…でも、ここで私が出ていけば)

真姫(今まで目立たなかったように歌も全力で歌わないよう猫かぶってたのに)

真姫(あんなやつらと敵対したら、一気に目立ってしまう)

真姫(平穏に暮らそうと計画してたのに、歯車が狂ってしまう)

真姫(どうしよう、ここで…見て見ぬふりすれば、私の静穏な日々はこれからも…)

真姫(なんて考えは)

真姫(全く浮かばず)

真姫(気づけば私は)

真姫(花陽の前に割り込み、腹からの大声で、叫んでいた)

真姫「私の友達にぃっ…何してんのよおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!!!!」

50: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:24:41.84 ID:pMG7Y950o
花陽「ま、真姫…ちゃん?」

真姫(砂煙が舞うほどのスライディングを決めて)

真姫(世界新狙えるほどの加速で短距離走して)

真姫(スーパーモデルもびっくりなほど堂々とした、人差し指を前に突き出したポーズで)

真姫(私は、私の友達を守るために、平穏を捨てた)

真姫「あんたたちぃっ…!何、やってんの」

親衛隊A「なっ…、何よ、アンタ…」

親衛隊B「私たちは小泉さんのために…」

親衛隊C「そうですわ!親衛隊でもないあなたにとやかく言われる筋合いは…」

真姫「黙りなさいぃっ!!」

親衛隊ズ「」ビクッ

真姫「花陽のために…?彼女はこんなに震えて、目に涙も溜めてるのよ!?」

真姫「嫌だって言っている子を無理やり誘って、泣かせるのがアナタたちの親切のつもりなのかしら!?」

真姫「だとすれば…とんだ迷惑!いらないおせっかい!余計なお世話ってやつよ!!」

親衛隊B「なん、ですってぇ…!!」

親衛隊A「アンタねぇ…!言わせておけば言いたい放題…!!」

親衛隊C「ナマイキ、ですわ…!」

真姫「…花陽、行きましょう。こんなやつらに構う必要なんてない」

花陽「えっ…、あっ…、でも…」

真姫「こいつらはね、あなたの親衛隊って名目であなたをいじめてた、最低のクズどもよ」

真姫「こんなやつらと付き合ってたら、花陽が汚れちゃうわ」

花陽「真姫ちゃっ…」

親衛隊C「アナタ…!!」

親衛隊A「うちらを怒らせたらどうなるか…!」

親衛隊B「…チッ。行こ。シラケちゃったよ」

花陽「真姫ちゃん…」

真姫「…はぁ。あーあ…、何やってるのかしらね、私…」

真姫「ホント、バカみたい…。明日が休日で助かったわ…。来週からどんな目に遭うか知れたものじゃないけど」

花陽「…」

真姫「…でも、あなたが泣きそうだったんだもの。そんなの…、駆けつけるしかないじゃない」

真姫「友達、なんだから」

花陽「…っ!」

真姫「ホームルームが始まるわ。…放課後、音楽室の前で待ってて」

花陽「う、うん…」

51: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:25:21.78 ID:pMG7Y950o
放課後

音楽室前

花陽「…」

真姫「…花陽。待った?」

花陽「あ、真姫ちゃん…」

真姫「さ、入りましょう。こんなところで立ち話もアレだし」

花陽「え、でも、許可は…?」

真姫「いいのいいの。別にピアノ使うわけじゃないし。それに」

真姫「いけないことしてるっていう秘密の共有も、友達には必要なものなのよ」

花陽「そ、そうなのかなぁ…」

音楽室

真姫「よいしょっ…っと、やっぱり私はピアノの椅子が落ち着くわね」

花陽「あ、あの…」

真姫「ん?花陽も座っていいのよ?」

花陽「うんっ…、だけどその前に…!」

花陽「ありがとう、真姫ちゃんっ…!!」

花陽「私っ…、怖くて怖くて…、自分で逃げ出すこともできなくて…」

花陽「あの3人は…、時々ああやって無理やり私を呼び出して…」

花陽「才能が勿体無いとか…歌が上手だから認められるって言われて…アイドル専攻の授業を受けさせようと…」

花陽「でも私…もう行きたくなかった…、二度と、あそこには…。でも、言っても分かってくれなくて、ずっと言われてて…」

花陽「だけど、真姫ちゃんが前に出てきて、私を守ってくれたとき…すごく嬉しくて、びっくりして…でも、ホッとして…」

花陽「でもそのせいでもしかしたら真姫ちゃんにヘンなこと起こっちゃったらご、ゴメンナサイって言いたくて…えーっと…」

真姫「あーもうっ!言いたいことはわかるけど…まとまってなさすぎ!無理に喋ろうとしなくてもいいのよ」

花陽「あ…、うん…。でも、やっぱりもう一回、これだけは言わせて」

花陽「…ありがとう」

真姫「どういたしまして。当然のことをしたまでだとは思ってるけど」

花陽「ふふっ…。真姫ちゃんって、カッコイイね」

真姫「そう?…ふふ、まぁ、そうかもね」

花陽「うふふっ…」

52: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:26:21.09 ID:pMG7Y950o
真姫「えと、それでね。わざわざ花陽をこんなところまで連れ出したのは理由があって」

花陽「理由?なに?」

真姫「うん。聞きたいことが…あるの。あなたにとっては辛いことかもしれないんだけど」

花陽「辛いこと…?あ、でもっ…!真姫ちゃんのためなら私、なんでも答えるよ!」

真姫「ありがと。じゃあ、遠慮なく聞かせてもらうけど…」

真姫「…花陽、あなたはどうして…そこまでアイドル専攻の授業を拒むの?」

花陽「…!」

真姫「一度、逃げ出した、とも聞いたわ」

真姫「…もしかしたら、アイドル専攻の授業が、あなたがアイドルを目指すのをやめた理由なのかもしれないって思って」

花陽「うん…、そう、だよ」

真姫「…やっぱり、ね。そんなに…イヤなもの、なの…?アイドル専攻の授業…」

花陽「少なくとも…私にとっては…最悪だった」

花陽「あんなの…私の憧れるアイドルじゃ、ないよ…」

真姫「…じゃあ、聞かせて。アイドル専攻の授業って、どんなのなのか」

真姫「思い出したくもないのかもしれないけど」

花陽「…大丈夫。言うよ…。全部、包み隠さず…」

花陽「私はね、アイドルに…というか、A-RISEに憧れて、この学校に入ったの」

花陽「私もA-RISEみたく…うぅん、A-RISEになりたいって思って」

花陽「でね、A-RISEになるためにはアイドル専攻を通常の授業とは別に取らないといけないって言われて…」

花陽「取っても必ずA-RISEになれるわけじゃない、とか、普通の授業よりしんどいもの、っていうのはわかってた」

花陽「でも、私が想像してるより…その授業は過酷なものだった」

花陽「授業での成績がトップだと認められた人以外は、居残りで追加の練習」

花陽「2番や3番の人でも1時間は残らされるけど…、ダメな人は、夜になっても、身体がボロボロになるまで、喉がカラカラになるまで練習させられる」

花陽「途中で根を上げたり、無断で休憩したりするだけで、即刻授業から追い出されて、大抵はもう受けられなくなるの」

花陽「トップだって喜んで、練習を怠っても…それ以下の人はそれ以上に努力してすぐに抜かされる…」

花陽「でね…トップが一度でも誰かに抜かされると、その日はその人以外のみんなが帰らされるまで、ずっとその人も練習させられるようになるの」

花陽「一度トップに上がれば…、もう二度と落ちることは許されない。落ちれば地獄が待っている…って」

花陽「だけどね…それだけなら、まだ私耐えられた…。アイドルになるため、って考えれば、こんなの全然平気って…そう、思って、努力したんだ」

花陽「でもね…、私以外のみんなは違った…。自分がトップになるためにした行動は自分を磨くことじゃなくて…、他人の邪魔をすることだった」

花陽「心の負担になるようなことしたり、されたり、言ったり、言われたり…。アイドル専攻の子たちはみんな、敵同士なの…」

花陽「いつも一緒に練習していた子がいたんだけどね…、その子、一度歌でトップになったら…」

花陽「それまで話してた他の子たちから無視されて、嫌がらせ受けて…次の日トップから落ちて、ずっと練習させられて…」

花陽「もうその次の日から、アイドルなんて嫌い、って…それまで大好きだったアイドルグッズ、全部、捨てちゃったんだって…」

花陽「…私、そんな風に、なりたくなかった…。大好きなアイドルを、嫌いになってしまうのが怖くて…」

花陽「だから…逃げ出したんだ」

53: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:27:03.35 ID:pMG7Y950o
真姫「…っ」

真姫(花陽から聞いた、UTXのアイドル専攻の授業は)

真姫(想像していた以上に壮絶で…、凄まじいものだった)

真姫(だけど、これなら…)

真姫(穂乃果も、凛も、このアイドル専攻を生き抜き、トップに君臨しているのだとしたら)

真姫(性格が一変するのも頷ける)

真姫(常に周囲から命…アイドル生命を狙われている状態で、頂点に立ち続けるなんて、並の精神じゃやっていけるわけがない)

真姫(完璧で有り続けるために、穂乃果は心を凍らし、凛は自分より上なんて存在しないと思うことで、心の平衡を保ってきていたのね)

真姫(…でも、そんなの)

真姫(そんな、在り方…って)

花陽「…私、私ね…」

花陽「アイドル、って…もっと、楽しいものだって思ってたの…」

花陽「きらびやかな衣装を着て、光り輝くステージの上で、みんなに笑顔を届ける、夢に溢れたお仕事だって…」

花陽「そんなアイドルは、きっと練習も、全部全部、夢に溢れてるんだって…そう、思ってた…」

花陽「でも、でもでも…でもね…」

花陽「この学校に…私の夢見たアイドルは…なかった」

花陽「練習に笑顔なんてなくて、いっつも誰かに狙われてるって…危機感と恐怖だけ…」

花陽「やっぱり…、これって、花陽が間違ってるのか、なぁ…?」

花陽「みんなに笑顔を届けるアイドルになるには…」

花陽「みんなを楽しませるアイドルになるには…」

花陽「自分が楽しんじゃ、ダメ、なのかなぁ…?」

花陽「私が夢見たアイドルは…」

花陽「どこにも、いない、のかなぁ…?」

54: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:29:00.09 ID:pMG7Y950o

真姫(そうやって、私を見つめつつ)

真姫(今にも壊れてしまいそうな笑顔で)

真姫(とめどなく涙を流し続ける花陽を目の前にして私は)

真姫(ただひたすらに、考えていた)

真姫(そして、ただひたすらに、頭の中で否定した)

真姫(そんなことはない!そんなはずはない!!)

真姫(私のっ…!)

真姫(私が知っている…最高のアイドルってやつは!)

真姫(みんなが楽しくて…みんなが笑顔になれる…!!)

真姫(あなたの夢見た通りの、何一つ間違っていないアイドルなんだ!!って)

真姫(…けれど、私にはそれを伝える術がない)

真姫(この溢れ出る気持ちを、目で見て、耳で聴き、肌で感じた情景を花陽に伝えることは)

真姫(今いかなる技術を使っても、伝えられそうになかった)

真姫(だとするならば私は)

真姫(私は今、何をするべきか)

真姫(私は今、何をしたいのか)

真姫(私のやりたいこと)

真姫(そんなのもう、決まりきっている)

55: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:30:02.70 ID:pMG7Y950o
真姫「…ねぇ、花陽」

花陽「ぐずっ…、ん?な、なにかな…真姫ちゃん。まだ聞きたいこと…」

真姫「スクールアイドルって…、A-RISEだけじゃないって知ってるよね?」

花陽「ん?うん、そうだね…。東京にもいくつかあるし…有名なところだと福岡のDreamっていう…」

真姫「そのスクールアイドルたちはね」

真姫「A-RISEよりずっとずっと、恵まれない環境でやっているの」

真姫「全部自分たちで作って、自分たちの考えた練習をしているらしいのよ」

花陽「うん、それで…?」

真姫「つまりね」

真姫「スクールアイドルなんてものは、学校からのバックアップなんて必要ないってこと」

真姫「1から、自分たちだけでなせるものなのよ」

花陽「…真姫、ちゃん…。もしか、して…」

真姫「花陽」

(希「むしろ、真姫ちゃんにしかできないことがあると思うんよ」)

真姫(あなたの言うとおりだった、希)

真姫(これは私にしかできないこと)

真姫(この世界の人間じゃない私にしか、成し得ないことよ)

真姫「なければ、作ればいいのよ」

真姫「貴女の夢見た、貴女のスクールアイドル」

真姫「私は、それをやってのけた人を知ってる」

真姫「だからっ…」

真姫(私は…!)

真姫「新しいスクールアイドルを、このUTXで作りましょう」

真姫「A-RISEを…、いえ、UTXの闇…その元凶を倒し、この学院に笑顔を取り戻すために」

もしライブ! 第一話

おわり

56: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/23(月) 23:34:32.10 ID:pMG7Y950o
今日はここまでです どうです、長いでしょう
これの10倍以上の量があるのでどうぞよろしくお願いします もう読んだことあるよって人もちょっとだけ変わってたりするのでまた読んでくださると喜びます
真姫ちゃんの設定は最初の西木野☆星空クリニック独自の設定以外はだいたいアニメ時空と同じものと思っていただければ
次回、2話は明日のこの時間くらいを予定しています それではまた次回 ほなな
60: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 22:35:50.76 ID:QB/mHo9Jo
じゃあ2話やっていきまーす
61: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 22:36:37.55 ID:QB/mHo9Jo
前回のもしライブ!(声:西木野真姫)

西木野☆星空スターゲイザーに乗って別の世界へとワープしている途中、不慮の事故により時空の狭間へと身をダイブさせちゃった私!

時と空間の中を流されたどり着いた世界、そこは音ノ木坂学院が既に廃校になってしまった世界だったの!

真姫「じゃあ、μ’sはどこ…?」

そしてその世界では、μ’sのみんなはUTX高校へと通っていた!

私の世界とは微妙に変わってしまったμ’sのみんなと遭遇しつつ、さらに私は衝撃の事実を知る!

なんとこの世界のA-RISEにはバックダンサーが存在し、しかもそれが穂乃果、凛、そしてにこちゃんだったということ!

真姫(こんなの、冗談以外のなんだって言うのよ…)

A-RISEという、アイドルを目指すもの達にとっての頂点を目指す中で、次第に荒れ果てていく少女たちの心。

それは穂乃果たちも例外じゃなくって…。

そしてアイドルの在り方の理想と現実の違いに涙する花陽に私が投げかけてしまった言葉…!

真姫「新しいスクールアイドルを、このUTXで作りましょう」

真姫「A-RISEを…、いえ、UTXの闇…その元凶を倒し、この学院に笑顔を取り戻すために」

って!勢いで言っちゃったはいいものの…。

本当にできるの?新しいスクールアイドルを、UTXで、なんて…。

あーもうっ!こうなったら仕方ないわ!やるしかないでしょっ!

62: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 22:37:24.49 ID:QB/mHo9Jo
翌朝

神田明神

真姫「…」

真姫「…」

真姫「…あー」

真姫「遅いっ!!いつになったらくるのよーっ!!」

~回想~

音楽室

花陽「新しい、スクールアイドル…!?」

真姫「えぇ」

花陽「それって…えと、つまり…A-RISEじゃない、別のスクールアイドルってこと…!?」

真姫「そうよ。別に、一つの学校につき一つしかスクールアイドルを作っちゃいけないなんて決まりはないでしょ?」

真姫「花陽がA-RISEの在り方に幻滅しちゃったなら、それとは違う、希望に満ち溢れたアイドルだって、あっていいはず」

真姫「それを、私たちで結成しよう、ってことよ」

花陽「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!?!?!?!」

真姫「…無理にとは言わないわ。判断はあなたに任せる」

真姫「よく考えて、自分の納得する答えを出してくれて構わないわ」

花陽「う、うぅ…」

真姫「そーれーに。私たちで勝手にやるスクールアイドルだからね」

真姫「A-RISEのように厳しい練習や争いなんかも起こらない平和で楽しいアイドルになれるはずよ」

花陽「ほ、ホント?」

真姫「ただし、限界ギリギリまで練習はしないと、A-RISEに打ち勝つなんてできないわよ」

真姫「やることはしっかりやる。それも忘れないで?」

花陽「う、うぎゅっ…。そう、だよね…。うぅん…」

真姫「…」

真姫「…悩んでるなら、一度体験してみるのはどう?」

花陽「体験?」

真姫「私の考えるアイドルの練習を一度やってみる。それから本当にやるか、考える」

真姫「今ここで決めるのが難しいなら、そうした方が花陽のためでもあると思うの」

花陽「体験、かぁ…。…うん」

花陽「それなら、一度やってみたい、かも。やってみてもいいかな?」

真姫「もちろんよ。じゃあ、早速明日の朝、場所は神田明神で。正確な時間は追って知らせるわ」

真姫「遅刻は、厳禁だからね」

花陽「う…、うんっ!」

~回想おわり~

63: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 22:39:14.07 ID:QB/mHo9Jo
真姫「…って、言っておいたはずなのに」

真姫「もう30分も遅刻してるじゃなーいっ!バカ…」

「ま、真姫ちゃーんっ…!」

真姫「あ、花陽の声…。もう花陽!遅刻はダメだって…げっ」

花陽「ご、ごめんなさい…!でも緊張して、全然寝られなくて…」

真姫「それはいいけど…、その荷物はなに?」

花陽「え?これ?えっと…、練習のために使ういろんな器具とか…あとは教本がたっぷり…」

真姫「そんなのいらないわよ!」

花陽「ふぇぇぇっ!!?そ、そうなの!?でもアイドル専攻の授業では色んな練習の仕方を教本で…」

真姫「あなたはそのアイドル専攻のやり方が嫌になって逃げ出したんでしょ!どうして今更それに従おうとするのよ!」

花陽「あ、そっか…。えっと、じゃあ何するの?」

真姫「簡単なことよ。今あなたが登ってきた階段、これをひたすらに往復するの!」

花陽「えっ…。そ、そんなことでいいの…?」

真姫「いいのよ。まずは基礎的な体力を身につけることからアイドルというものは始まるの!さぁ、動きやすい服装に着替えたら早速やってみるわよ!」

花陽「うん…」

真姫「返事が小さい!もっと元気よく!アイドルだったら笑顔で!」

花陽「う、うんっ!!」

階段ダッシュ中…

花陽「はぁっ…、はぁっ…!」

真姫「ふっ、ふっ…!さぁ花陽!ラスト5往復!」

花陽「もう、ダメぇ…。足が動かないよぉ…」

真姫「何弱音吐いてるのよ!こんなの初歩の初歩!体力作りには欠かせないことなんだから!」

花陽「でもぉ…」

真姫「でもじゃない!アイドル専攻だったら今のであなた失格なのよ!見捨てられないだけよしと思って、さぁ、立って!ゆっくりでもいいから!」

花陽「う、うんっ…」

花陽「ひぃっ…、ひぃっ…!!」

真姫「いける!いけるわよ花陽!あと数歩!あと数歩歩けばオッケーだから!」

花陽「ふひぃぃっ…、はひぃぃぃぃっ…」

真姫「ファイトーっ!!ラブリーかよちーんっ!!レッツゴー!!」

花陽「ごひゅっ…、くひゅぅぅっ…」

花陽「つ、ついた…。やっと…終わり…。ふへぇぇ…」バタリッ

真姫「あぁっ…。倒れちゃったわ…」

真姫「…思ってたより運動不足みたいね。いつもの花陽と同じ運動量じゃこの子にはちょっと辛いのかも…」

真姫「っと、その前に、水を取りに行きましょう」

64: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 22:40:46.39 ID:QB/mHo9Jo
花陽「ごくっ…、ごくっ…、ごくっ…」

花陽「ぷはぁっ!はぁっ…、し、死ぬかと思ったよ…」

真姫「でもアイドル専攻の授業はもっと辛いんでしょう?これくらい…」

花陽「う、うん…。でもあっちはこんなに体力をすり減らせることはしなかったなぁ」

花陽「どちらかといえば、精神的に来るような…そんな練習ばっかりしてた」

真姫「精神的に、ねぇ…」

真姫(アイドルといえば体力が資本なのに…なんのつもりでそんな練習を…)

「ふーん…、朝からいなくなってたと思ったら…」

真姫「っ!」ビクッ

希「こんなこと、してたんやねぇ…。真姫ちゃんっ」

真姫「の、希っ!!驚かせないでよっ!う、後ろからいきなり…」

希「えへへー。どっきり大成功!」

花陽「って、生徒会長!?どうしてここに…!」

希「うふふー。元、生徒会長な。いやね、うちここでバイトしてるんよ」

真姫「あぁ…」

真姫(そういえばそうだったわね…。この世界の希も神田明神で巫女さんをやってるのね…)

花陽「え、でも…。学生のバイトは校則で禁じられてるはずじゃ…」

希「だから、こっそり。ね?誰かに言うたら怖い目にあうよ~?」

花陽「ひぃっ!?」

真姫「生徒の規範となるべき生徒会長が校則破ってどうするのよ…。それじゃ今の生徒会長に叱られちゃうんじゃない?」

希「あー…。そうかもね。でもうち…、あの子のこと…好きやないから」

真姫「えっ…」

希「…あぁ!ごめんごめん。正確には…、あの子の考え方が好きじゃない、かな」

希「ルールでガチガチに縛る、なんて…、うちには認められへん考え方やから」

希「逆に言えば向こうも、うちのこと嫌ってると思う。うぅん、絶対に嫌ってるやろうね」

希「生徒会長解任の際も、結構キツい言葉かけられたし…」

真姫「…」

花陽「東條先輩…」

希「でも…、でもうちが生徒会長になったのは…、みんなを…」

真姫「みんなを…?」

希「…っわ!あ、あかんあかん。なんか暗い空気作っちゃったね!まーうちのことはいいやん!」

希「それより真姫ちゃん…。それっ!わしわし!!」

真姫「ひゃんっ!!?い、いきなり何っ!!?」

花陽「ひゃぁぁっ!真姫ちゃんが破廉恥に巻き込まれてるっ!」

真姫「あなたも言い回しが古いわね…」

65: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 22:41:47.35 ID:QB/mHo9Jo
希「ふんふん…、やっぱり」

真姫「な、何がやっぱりなのよ…。いいからその手を離しなさいよっ」

希「うん。…真姫ちゃん、何かスポーツやってた?」

真姫「え…?」

花陽「真姫ちゃんがスポーツ…?イメージないなぁ…」

希「うちもそんなイメージやねんけど…。筋肉のつき方が普通の子とは全然違うなぁ、って思って」

希「全身にしっかりした筋肉が張ってる。華奢に見えるけどこれは何かスポーツやってる子の身体や」

花陽「確かに、真姫ちゃんさっきの階段ダッシュでも全然疲れてなかったし…」

希「真姫ちゃん、本当に引きこもり?」

真姫「あ…、え、えっと…」

真姫(な、なんでさっきの触診でそこまでわかるのよ…!?一瞬しか触られてないはずなのに…)

真姫(でも…、どう説明しようかしら…。まさかアイドルやってました、なんて言えるわけもないし…)

真姫(引きこもりでもやってそうなスポーツで誤魔化す?でも引きこもりがスポーツやってるとか意味わかんないし…)

真姫(この世界の私でもやってそうなスポーツ、スポーツ…)

真姫(あっ!)

真姫「じ、実はね…」

真姫「学校を休んでいる間、サバゲーに興じていたのよ!」

花陽「さばげー…?鯖を使った遊び…?」

真姫「違うわ!サバイバルゲーム、略してサバゲーよ!」

真姫「木々の生い茂ったフィールドを縦横無尽に駆け回り、銃器で敵を撃つスポーツのこと!」

花陽「銃で人を撃つの!?それって殺人…」

真姫「もちろん、競技用の銃で、よ。弾丸を使ったりはしないわ」

真姫「重い銃器を持ったまま歩きづらい道を神経張り巡らせつつ闘うスポーツだからね。それで体力も自然と身に付いたってわけ!」

花陽「へぇ…」

真姫(この世界の私がFPSに興じていた、ってことで咄嗟に思いついた嘘だけど…。これで納得させられるかしら)

希「ふーん、そうやってんね。なるほど、それなら体力があるのも頷けるね」

真姫「で、でしょー?」

希「それにしても、思ってたよりアクティブな子やってんね真姫ちゃん…。意外やわ」

花陽「うん…。真姫ちゃんが銃撃ってるところなんて想像つかないよ」

真姫「ひ、人は誰しも想像し得ない部分を持っているものよ!」

希「…せやね。あ、じゃあうちはそろそろバイトに戻らんと…」

希「迷惑にならん程度になら、ここの階段や向こうの空いてるところなら使ってもらって構わないって神主さんが言ってたよ」

真姫「そう。良かったわ」

希「神主さん女子高生に弱いからねー。ほな、練習頑張ってなー」

花陽「あ、ありがとうございますっ!」

66: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 22:42:30.37 ID:QB/mHo9Jo
花陽「生徒会長さん…あ、元だったっけ。優しそうな人だったねー」

真姫「そうね。とても優しいわ。昨日も家に泊めてくれたし」

花陽「えっ!?ま、真姫ちゃんあの人の家に泊まってるの!?」

真姫「う、うん。ちょっと事情があって…」

花陽「じ、じゃああの人のパジャマ姿とかも見てるってことだよね!?え、そ、そんな…!」

真姫「何よ…。そのくらい別にいいでしょ?」

花陽「は、破廉恥すぎるよっ!年頃の女子が同じ部屋で衣食を共にするなんてぇぇぇ…!」

真姫「花陽…?」

花陽「う、うぶっ…!鼻血出そう…」

真姫(…この世界の花陽、かなりウブみたいね…。しかも女子同士で、って…)

真姫「今は、そんなことどうでもいいでしょう!さ、十分に休んだんだから、練習再開するわよ!」

花陽「えぇっ!ま、まだやるの…?もうクタクタ…」

真姫「次はリズム感の練習!手拍子に合わせてステップを踏み続けるだけよ!」

真姫「これならさっきより体力を使う必要もないでしょ?」

花陽「あ…、そうかも」

真姫「ただしっ!一つ条件があるわ」

花陽「条件?」

真姫「笑顔を崩しちゃダメ。アイドルっていうのはステージの上では常に笑顔だからね」

真姫「笑いながら、ずーっとステップ。できる?」

花陽「う、うんっ!さっきよりは楽そう!やってみるね!」

真姫「うん、その意気よ!さ、始めるわよ!」

67: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 22:43:39.50 ID:QB/mHo9Jo
真姫「ワンツースリーフォー…」パンパンッ

花陽「は、はは…」

真姫「足遅れてきてるっ!」

花陽「ひぇっ…!こ、こうっ…?」

真姫「次は笑顔忘れてる!笑って!」

花陽「ひやぁっ…!!に、にっこり!」

真姫「リズム忘れない!」

花陽「ふ、ふぇっ…!?あだっ!」

ズテーンッ

花陽「いたたた…!足引っ掛けちゃった…」

真姫「全然ダメ。なってないわ」

花陽「ご、ごめんなさい…。意外と難しいんだね…」

真姫「そうよ。簡単そうに見えて難しいものなの。笑顔を崩さないっていうのは」

花陽「うぅ…。やっぱり花陽じゃ無理なのかなぁ…」

真姫「何言ってるのよ。こんなこと、スクールアイドルなら誰だってやってるし、誰だって最初は出来なかったの」

真姫「諦めずに練習したからやれたことなのよ。あなたも、なりたいんでしょう?スクールアイドルに」

花陽「う、うん…」

真姫「だったら続ける!継続こそが力になるの!さぁ、立って!」

花陽「…わ、わかったよ」

真姫「今日は土曜日なんだし、夕方まで続けるわよ!」

花陽「えぇっ!?お、お昼までとかじゃなくて…?」

真姫「当然!休日は毎週このくらいやらないと!」

花陽「う、うぅぅぅ…じゃあ明日も…?」

真姫「もちろんよ!」

花陽「ううぇえええ…」

真姫「…アイドルになりたいんじゃないの?あなたのアイドルへの気持ちはその程度なの?」

花陽「ち、違う、よ…。なりたいけど…」

花陽「…うぅん。が、頑張る…」

真姫「そう、その調子!続き、行くわよ!ワンツースリーフォー…」パンパン…

68: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 22:44:15.12 ID:QB/mHo9Jo
夕方

花陽「はぁっ…、もう、ダメ…」バタリッ

真姫「…うん、もういいでしょ。お疲れ様、花陽」

花陽「はぁっ…、はぁっ…。疲れたぁ…」

真姫「音程の取り方は文句なしに上手いから…あとはやっぱり体力ね」

真姫「明日も体力作りを重点的に頑張りましょう!」

花陽「ゔっ…!そっかぁ…。明日も、かぁ…」

真姫「そう。ここでめげてちゃ本物のスクールアイドルなんか、どれだけ手を伸ばしたってたどり着けないわ」

花陽「…」

真姫「毎日の継続が大事。忘れないでね」

花陽「…うん」

真姫「…どうしても続けられないって思ったら、諦めてもいいけど」

花陽「諦めっ…う、うぅん!まだ、頑張ってみるよ…」

真姫「そう。じゃ、明日も今日と同じ時間に同じ場所で。それじゃ、また明日」

花陽「ま、また明日…」

真姫(これで花陽がやる気になってくれるといいんだけど…)

真姫(でも反応を見る限りだと…あまりよろしくないのかしら)

真姫(練習量の多さにかなり消耗しちゃってる。やっぱりもう少し抑え目の方が…)

真姫(…いえ。それは彼女に対する甘やかしでしかない)

真姫(まだμ’sが名前すらなかった頃でも、穂乃果たちはそのくらいやっていたのだから)

真姫(A-RISEに負けないくらい強いスクールアイドルになるには、こんなところで躓いてちゃいけない)

真姫(楽しいアイドルを目指しながら、現実は誤魔化しちゃダメ)

真姫(そうよ。穂乃果たちだってこうしてやってきたんだもの。花陽にだってできるはず)

真姫(私も、穂乃果のように…)

69: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 22:45:04.32 ID:QB/mHo9Jo
希の家

ガチャッ

真姫「ただいま」

希「んー。おかえりー。ご飯作ってるからもう少し待っててなー」

真姫「うん、ありがとう。って、私いつまでも居候してていいのかしら…」

希「気にせんでいいんよー。うちも一人より二人の方が賑やかで楽しいし」

真姫「そういうなら…。じゃあ遠慮なく、くつろがせてもらうわね」

希「自分のお家やと思ってくつろいでなー」

寝室

真姫「ふぅ…」

真姫「…そういえば、私希の家にいる、のよね…」

真姫「あの時はこうして部屋に一人、なんてそうそうなかったけど…」

真姫「なんか、花陽のせいで少し意識しちゃうじゃない…」

真姫「…」ゴクリッ

真姫「希の枕って…希の匂いがするのかしら…」

真姫「ち、ちょっとだけ…ちょっとだけ…!」

真姫「…くんかくんか」

真姫「…すー、はーっ…」

希「いい匂いする?」

真姫「うん仄かにシャンプーの香りがうっわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」

希「なにその幽霊見たみたいな反応。心外やわー」

真姫「の、のぞっ…い、いつから…!」

希「真姫ちゃんが枕に顔近づけてるところくらい」

真姫「嗅いでるとこ全部見られてんじゃないのよ!え、えっと…!これは、違うの!私が変態とかそういうんじゃなくて!」

希「んー?別にいいんと違う?うちもよく嗅いでるし」

真姫「えっ」

希「真姫ちゃんの」

真姫「マジ?」

希「うん。汗の匂いとか気にして…」

真姫「…うわぁ」

希「なんで引かれてんのかな。同じことしただけやのに」

真姫「いや、だって汗って…。なんか変態っぽくない?」

希「汗の匂いや発汗量でストレスの有無とかが判断できるからやってるんよ。別にセクシャルな意味はないから」

真姫「あ…そうなの。っていうかそんなのわかるんだ…」

希「色々勉強したからねー…っと。あ、ご飯できたよ。おいで」

真姫「あ、うん。…まぁ、何はともあれなかなか恥ずかしいところを目撃されてしまったのには変わりないのよね…」

70: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 22:45:45.09 ID:QB/mHo9Jo
食卓

真姫「いただきまーす」

希「いただきます」

真姫「もぐもぐ…、そういえば希、神田明神でバイトしてるみたいだけど」

希「ん?うん、それが?」

真姫「…ごくん。UTX生に見つかるとヤバイんじゃないの?特に生徒会の面々とか…」

希「せやねー。ま、言うても早朝だけのバイトやし。そうそう誰かに見つかることもないよ」

真姫「あー、まぁ、そうね。いつからやってるの?」

希「えーっと…、2年生の秋頃…かな?」

真姫「それってちょうど生徒会長に任命された頃じゃないの…?」

希「せやね。自分から立候補したんよ」

真姫「それなのにいきなり校則破ってバイトって…。どんな神経してんのよ…」

希「んー、まぁ一種の反抗みたいなもんかな?学校に対する?」

真姫「えらく健全な不良ね…」

希「それより、真姫ちゃんの方も…面白そうなことやってるやん?」

真姫「あぁ…、あれ?」

希「そ。アイドルの練習なんでしょ?」

真姫「な、なんで知ってるのよ」

希「真姫ちゃん通る声してるから。境内の方にもよぉ届いてたよ?小泉さんへの激励の声」

真姫「そ、そうなんだ…。って、どうして花陽の苗字まで…」

希「そらうち生徒会長やもの!」

真姫「便利ね、その文句…」

希「でもまぁ…小泉さんも大変やね。いきなり階段ダッシュやなんて」

真姫「そう?アイドルを目指すなら当然だと思うわ」

希「アイドルを目指すなら、か…」

希「…でもね、真姫ちゃん」

真姫「ん?」

希「きっと小泉さんは、今のままやと真姫ちゃんについてこれなくなると思う」

希「アイドルを、諦めてしまうと思う」

真姫「えっ…?」

71: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 22:48:09.07 ID:QB/mHo9Jo
真姫「ど、どうしてよ…。どうしてそんなこと希にわかるのよ」

希「それは、真姫ちゃんのやり方が少し乱暴やから、かな」

真姫「乱暴な訳ないわ!これで正しいはずよ!」

希「なにを根拠に?」

真姫「それはっ…!その…」

真姫「…こんな感じで成功した知人を、知ってるからよ」

希「そっか…。ならその子はとても強い子、なんやろうね」

真姫「え…」

希「考えてみて、真姫ちゃん」

希「小泉さんは練習してる時、楽しそうやった?」

真姫「それは…」

希「きっと、辛そうやったんと違うかな」

真姫「…それはそうでしょう。練習なんて辛いものよ」

希「そう。辛いものや」

希「普通ならみんな、そこで折れてしまう。辛いことは誰しもやりたくないから」

希「なら、どうして、どうして真姫ちゃんの知人の子は、それで成功出来たんやろう?」

希「辛いことをどうして続けられたか、どうして続けようと思えたか、考えたことある?」

真姫「えっ…。その、それは…」

真姫(穂乃果たちが、練習を続けられた理由…?)

真姫(厳しい海未と、優しいことりがいた、から…?)

真姫(…それもそうかもしれないけど)

真姫(でも本当にそれだけ?…確かにそれは『続けられる理由』にはなるかもしれない)

真姫(だけど自分から『続ける理由』には、ならない…)

真姫(穂乃果が、自らの意思で練習を続けようとしたのは…それは…)

希「それは、目標があったから」

真姫「…あ」

希「しないといけない目標。成し遂げなければならない、はっきりとした指標」

希「それがあれば、どんな辛いことだって人は乗り越えて行ける」

真姫「で、でもっ…!花陽にだってスクールアイドルになるって目標が…」

希「それは目標じゃなくて、夢やよ」

希「まだふわふわして、掴めるかどうかも分かっていない、曖昧なもの」

希「夢だけでも、頑張れる人はいる。でも…頑張れない人だっているんよ」

希「今の小泉さんは、一度夢に破れて、夢を信じられずにいる。そんな子が、もう一度夢にすがって努力をしようとする」

希「それは、酷な話なんじゃ、ないかな」

真姫「…っ!」

希「夢、みたいな遠く果てしないものを求めて走り続けられるほど強い人はひと握りだけ」

希「普通はその度々で目標を見つけて、一休みしながら夢に向かって、ゆっくりと走っていくものよ」

真姫「…だったら、私はどうすれば」

希「それは、真姫ちゃんが考えること。うちにはどうしようもできないこと、やからね」

真姫「…」

72: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 22:49:16.70 ID:QB/mHo9Jo
シャワールーム

真姫「…」シャー…

真姫(穂乃果たちには、廃校を阻止する、って大きな目標があった)

真姫(そのために、アイドルという手段を用いて、学校を盛り上げようとしたんだ)

真姫(でも、今回は違う)

真姫(何かを成し遂げるためにアイドルになるんじゃなくて…、ただアイドルになるために、頑張ろうとしている…)

真姫(まだ影も形もない、私の言葉だけでしかない、架空のスクールアイドルになるために)

真姫(…考えてみれば、私の世界の花陽も、最初は弱い子だった)

真姫(彼女がμ’sに入れたのは、凛と、私と、そして穂乃果たちからもらった勇気があったから)

真姫(今、花陽の背中を押してあげられるのは、私一人の手、だけ)

真姫(これじゃ、全然足りない…。私の世界の花陽より心に深い傷を負った花陽に、勇気を与えるには、全然…)

真姫(だとすれば…)

寝室

希「それじゃ、電気消すね」

真姫「…うん」

パチッ

真姫(…どうすればいい)

真姫(ただ穂乃果の後をなぞるだけじゃ、花陽に勇気を与えることはできない)

真姫(私は、穂乃果以上のことをしないといけない)

真姫(笑えるくらい無謀で、無茶なミッション)

真姫(あの穂乃果を、私にとって大きな壁の一つである穂乃果を、越える)

真姫(でも、だからこそ)

真姫「…ふふ」

真姫「燃えるじゃない…!」

真姫(今は何も思いつかないけど、でもこんなこと…、そうそう体験できない)

真姫(穂乃果以上の無茶を、この私がやる)

真姫(μ’sのみんなが聞いたら、全力で止めそうなこと、だからこそ)

真姫(さぁ考えなさい、西木野真姫。花陽に勇気を、目標を、そしてもっと大きな、はっきりした夢を与える方法を)

真姫(あなたが今まで勉強してきたのはテストでいい点を取るためじゃない!)

真姫(こういう時に頭をひねり続けるため、なのよ!!)

真姫(考え、考え、考え続け)

真姫(外が明るくなり、小鳥の囀る声が聞こえ始めたころ)

真姫(ようやく私は)

真姫「…これ、よっ…!!」

73: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 22:49:51.09 ID:QB/mHo9Jo
早朝

神田明神

真姫「…」

花陽「あ、真姫ちゃん…。ごめんなさい、また遅れちゃって…」

真姫「…」

花陽「お、怒ってる…?怒ってるよね…。二度も遅刻するなんて…」

花陽「でも昨日疲れちゃって…、帰ったらすぐ寝ちゃって起きたらこの時間だったから晩ご飯も食べてなくて…」

花陽「あぁ!でも言い訳なんてダメだよね本気でスクールアイドル目指すんならそのくらいの気合入れないと話にならないんだよね…」

真姫「…」

花陽「…真姫ちゃん?」

真姫「…」

真姫「…ぐぅ」

花陽「立ったまま寝てる!?」

真姫「…ごめんなさい、ちょっと訳あって今日寝られなかったの…」

花陽「あ、あんなに練習した後なのに寝てないの…?疲労は大丈夫…?」

真姫「平気。さっきのでだいぶ良くなったわ」

花陽「立ちながら寝るので体調って回復するものなのかな…」

花陽「あ、そうだ…。今日も練習なんだよね…。まずは昨日みたいに階段の往復から?」

真姫「それなんだけど…」

真姫「今日は練習はパス!」

花陽「えっ!?」

真姫「嫌なの?」

花陽「そうじゃなくて…、真姫ちゃん昨日はあんなに練習しないと、って言ってたのに」

花陽「もしかしてやっぱり真姫ちゃんも疲れててぶっ続けで練習は勘弁して欲しい、とか…?」

真姫「そんなことはないわ!ライブ本番数日前なんか追い込みでこれ以上に…」

花陽「え?」

真姫「…なんでもない。とにかく!今日は神田明神で練習はナシ!その代わり…」

花陽「その代わり…?」

花陽「え、えぇぇぇぇっ!!!?」

花陽「な、な、な…!」

花陽「なんでアキバに来てるのぉ~~~!!!?」

74: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 22:50:57.20 ID:QB/mHo9Jo
秋葉原

花陽「え、えっと…」

真姫「さ、花陽。アキバ観光と行きましょう」

花陽「観光…!?んー…っと…」

花陽「もしかして、ここでトレーニング…!?この溢れかえる人ごみの中を駆け抜けて体力をつける的な…」

真姫「違うわよ…。観光、って言ってるでしょ」

真姫「今日は練習はおやすみ。だから代わりに盛大に秋葉原をエンジョイしましょ」

花陽「い、いいの…?」

真姫「いいの。アイドルには休暇も必要よ」

花陽「はぁ…。でも私…秋葉原は結構通ってるから、今更観光って言われても…」

真姫「そう?ふふ、いいじゃない。きっと花陽もあんまり経験したことないと思うけど」

真姫「友達と二人で、秋葉原なんて」

花陽「あっ…」

真姫「私は秋葉原のこと、あんまり詳しくないから」

真姫「花陽が案内してくれると嬉しいな」

花陽「う、うんっ!す、する!するね!!」

真姫「よかった。乗り気になってくれたみたいね。今日は花陽のどんなマニアックな話にでもついていくわよ」

花陽「ホント!?じ、じゃあね、私ずっと二人で行きたかったところがあってぇ…!」

真姫「うんうん…」

真姫(昨日徹夜で考えた、花陽に勇気と目標を与える作戦)

真姫(うまくいけばいいけど…)

花陽「でそれからそれから~…、あそこでしょ、それにあのお店も~…!むふふふふふふふ…!!」

真姫「あぁ…」

真姫(…私の体力も持ってくれるとありがたいんだけどね)

75: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 22:51:31.75 ID:QB/mHo9Jo
花陽「まずはねぇ~…、ここ!」

真姫「えっ…」

「「おかえりなさいませ、お嬢様!」」

真姫「ここって…」

花陽「メイドカフェだよ!」

真姫「うん、知ってる…」

真姫(ことりがバイトしてたところじゃない…)

真姫「えっと…、花陽はこういうところに来てみたかったの…?」

花陽「うんうんっ!一人じゃ怖くて行けなかったの!真姫ちゃんと一緒なら少しは安心かなって!!」

真姫(どうしよう、早くも予定と少しズレが)

真姫「…まぁいいわ。花陽のしたいようにしましょ」

花陽「うんっ!」

メイドカフェ店内

真姫「う…」

花陽「うー、どんな感じなのかな?楽しみ~…!」

真姫「…そ、そうね」

花陽「あれ…?真姫ちゃん、ひょっとして…」

真姫「ナ、ナニヨ」

花陽「緊張してる?」

真姫「ぐぅっ…!」

真姫(そういえば知り合いの一人もいないここに来たのは初めてだわ…)

真姫(全く知らない人に…メイド特有のアレやコレやをやられると考えると小っ恥ずかしいものがあるわね…)

真姫「し、してないし!平気よ!」

花陽「へぇ~…、真姫ちゃんでも緊張することってあるんだね」

真姫「あるわ!私をなんだと…、って!だから緊張なんてしてないと…」

花陽「あ、メイドさん来た!ほらほら、大声出してると他のお客さんの迷惑になっちゃうよ?」

真姫「おのれ…」

メイドカフェ店員「それではごゆっくりとお楽しみくださいませ」

真姫「…意外とあっさりだったわね」

花陽「ここのメイドさんはあざとくないって有名だからね。ただメイドさんの格好をしてるだけのカフェに近いかな」

真姫(そういえばことりの時もそんな感じだった気がする)

真姫「…緊張して損したわ」

花陽「ほーら、気にしてないで一緒に食べよ?」

真姫「はいはい…」

76: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 22:52:10.61 ID:QB/mHo9Jo
真姫「へぇ…、いろいろなアニメや企画とのコラボメニューなんていうのもあるのね…」ペラペラ

花陽「そうそう!有名なお店だから、そういうところとのタイアップも豊富なんだ!」

真姫「ふむふむ…。来たことはあったけど、こういう細かいところまでは気にかけたことなかったわね…」

花陽「え?真姫ちゃん、ここ来たことあるの?」

真姫「あっ…!そ、そうなの。実はね。…サバゲー仲間と一緒に、一度だけ」

花陽「へー!サバゲーやってる人でもこういうところきたりするんだね!今度一緒に話し合いたいなぁ…」

真姫「…えぇ、機会があればね」

花陽「うん!あ、それとね…」

花陽「今日ここに来たのは、一人じゃ来れなかったっていうのもあるんだけど…」

花陽「なんとメイドさんのライブまで見れちゃうんだよ!」

真姫「あぁ…、カラオケ的な?」

花陽「そう!うふふ…、メイドさんのライブ、すごく楽しみ~!」

真姫「そうね…」

真姫(まさかここでもことりが出てくるってことはないと思うけど…UTXはバイト禁止らしいし)

花陽「あ!始まったよ!メイドさんのライブ!」

真姫「どんな人がやってるのかしらね」

謎のメイド「みなさ~ん!!今日は当店にお越しいただき、ありがとうございま~す!」

謎のメイド「さぁて、お楽しみのところ申し訳ありませんが、少々お時間をいただきます!」

謎のメイド「今日も謎のメイドこと、私のワンマンライブが開催されま~す!いえいっ!」

謎のメイド「さぁさぁみなさん!いつものやつ、行きますよ~!せーのっ…」

謎のメイド「みんなのハート、撃ち抜くぞ!」

客ども「「ラブアローシュート!!」」

謎のメイド「ありがとー!ではまず一曲目は~…」

花陽「わぁ…、ちゃんとコールアンドレスポンスまであるんだね。すごいな~…」

真姫「あ、あがぁ…」

花陽「あの人、私たちと同年代くらいかな?誰なんだろう…サングラスしてて素顔はわかんないけど…」

真姫「が、ぉがぁ…」

花陽「…真姫ちゃん?口あんぐりして、どうしたの…?」

真姫(う、海未ィィィッ!!?)

77: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 22:53:29.96 ID:QB/mHo9Jo
謎のメイド「ヒーメヒメ!!ヒメ!!スキスキダイスキ!ヒメ!!ヒメ!!キラキラリン☆大きくなあれ魔法かけても~…」

真姫(どうして…、どうして海未がメイドカフェに…!?)

真姫(クハッ…、ビックリしてアゴが外れちまったっショ…)

真姫(とか言ってる場合じゃないわ…ていうかバイト禁止はどうなったのよもうUTX生で二人目よバイトしてる生徒…!)

真姫(それより…、あのかなりの引っ込み思案な海未が、まさか自分から人前で歌う、なんて…!しかもコールまでつけて…)

真姫(メイドカフェでバイトしてるのも驚きだけど、そっちのほうが驚天動地よ…)

真姫(この世界に来て一番のびっくりかも…。バックダンサーズ超えたわ…)

真姫(ことりにたしなめられるほどのドジっ娘だったり、脚本専攻だったり…)

真姫(思いのほか海未も、かなり変わっちゃってるみたいね…)

真姫(何はともあれ、ここはとりあえず…)

真姫(こっそり写メっておきましょう。サイレントで)ポチッ

花陽「はわぁぁぁ~…!ひ、ヒメ!ヒメ!」

真姫「ふふ、楽しそうね。花陽」

花陽「うんっ!わ、私こういうの…大好き!みんなで歌って、ダンスして、盛り上がって…」

花陽「それで、明日からまた頑張ろうって気持ちになれる…」

花陽「これが私の大好きなアイドルなの!」

真姫「そう…」

花陽「な、なんて…。あの人はアイドルじゃないけどね…」

花陽「メイドかぁ…。アリかも…?あ、でもバイトはダメなんだっけ…はぁ…」

真姫「…」

謎のメイド「今日はみんなも盛り上がって、私も楽しかったでーす!それでは、また来週、この時間も~…?せーのっ…」

謎のメイド「みんなのハート、撃ち抜くぞ?」

花陽・真姫&客ども「「ラブアローシュートっ!」」

謎のメイド「はいっ!ありがとうございます!!では私は厨房の方へ戻りますので、これで~…」

78: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 22:55:00.94 ID:QB/mHo9Jo
街道

花陽「うふふふ…、楽しかったぁ~…!」

真姫「私も楽しかったわ」

真姫(海未のあんな姿を見られて)

花陽「真姫ちゃんも?よかったぁ…。退屈じゃないかってちょっと心配だったんだー」

真姫「そんなことないわ。ホントよ?」

花陽「うんっ!ありがと!じゃあ…次はどこ行こうか?」

真姫「花陽の好きなところ。今日は花陽が全部エスコートして。私のことはいいから」

花陽「えっ…、それでいいの?」

真姫「いいのよ。どのみち私秋葉原のことほとんど知らないんだし」

花陽「うーん…、真姫ちゃんがそれでいいなら!じゃあ次に行きたかったのはねぇ…えへへへへ…」

真姫「その緩んだ顔はどうにかしなさいよ…」

とらのあな

真姫「なんで!?」

花陽「にゅふふふふ…!このサークルの新刊が欲しかったの…!」

真姫「ゆ、百合本…」

花陽「…っは!ち、違うの!この人の絵が好きってだけで!あのね、花陽も絵を描くから、それの参考にってだけで!」

花陽「べべべ、別に花陽がそ、そういう百合とかそんなのが好きってわけじゃなくてね!?大体百合なんて破廉恥だよ破廉恥すぎるよ!」

花陽「女の子同士がすきすきだったりちゅーしちゃったり…そんなのよくないこと!だから本当はこの本もダメなんだけど仕方ないの!」

花陽「だって絵がすきだから!好きになっちゃった絵を描く人が偶然百合好きだったってだけで花陽はそういうことに対して一切興味は」

真姫「はいはい…、わかったから…。慌てると一人称自分の名前になるっていうこともよーくね」

花陽「…!そ、そうなの…!?」

真姫「気づいてなかったんだ…。まぁ、私はいいから、好きな本があったら好きなだけ買っちゃいなさい。待ってるわ」

花陽「う、うんっ!ごめんね、こんなの本当は一人でするべきだと思うんだけど最近全然行けてなくて…」

真姫「いいから早くしろっ」

花陽「はい」

真姫「…この世界の花陽は百合好きか…。…趣味が合うわね」

79: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 22:55:42.28 ID:QB/mHo9Jo
真姫「ここは…」

花陽「うん、ここはねー…」

スクールアイドルショップ前

花陽「ちょっと前にオープンした、スクールアイドル専門のショップなの!」

真姫「うん…。知ってるわ」

花陽「えっ…、やっぱり知ってるんだ。真姫ちゃんなんでも知ってるんだね~」

真姫「なんでもは知らないわ、知ってることだけよ」

真姫(花陽の行動範囲は私の世界の彼女とほとんど変わってないし、花陽が行きたいところに行ったことあるのは必然よね)

花陽「ひょっとして…、前々から思ってたけど、真姫ちゃん結構アイドルに詳しい?」

真姫「えっ…」

花陽「スクールアイドルの練習方法とか知ってたし、自分でスクールアイドルを立ち上げようっていうくらいだから…」

花陽「真姫ちゃんは隠れアイドルファンなのかな、って!」

真姫「あー…、どうかしら。花陽ほど詳しいわけじゃないけど…ま、多少はね」

花陽「へぇぇぇ~…。でも少しはわかる、ってことだよね!?だったら嬉しいなぁ…」

花陽「今までアイドルのこと一緒に語れる友達はいなかったから」

真姫「親衛隊の子達は?あの子達はアイドルのこと好きじゃないの?」

花陽「うーん…。そう、だね…。もちろん大人気のアイドルなら知ってるくらいではあるんだけど…」

花陽「スクールアイドルだったり、少しコアなアイドルグループの話をすると、わからないって言われちゃうなぁ」

真姫「ふーん、意外ね…。A-RISEを抱えるUTXの生徒なら少なからずスクールアイドルに興味があるものだと思ってたけど」

花陽「それは…、もちろん、A-RISEはUTX生全員の憧れであり誇りではあるとは思うけど、必ずしもスクールアイドルに興味がある子ばっかりってわけでもないよ」

花陽「特に歌手専攻の子たちはそう。私たちのクラスじゃ、アイドルの曲は軽いもの、って考えが定着してるかな」

真姫「あー…。確かに、そうかもね」

真姫(私自身、そういうふうに考えていた時期もあったし。歌に本気な子はアイドルにはあまり関心がないのかも)

花陽「…だから!こうやって二人でアイドルショップに来るのは初めてなの!一人なら何度もあったけど!」

花陽「さぁ真姫ちゃん!きっと真姫ちゃんの知らないようなアイドルもいっぱいいるよ!私がオススメしてあげるねぇぇっ!!」グイグイ

真姫「わ、わかったから…、引っ張らないでよーっ!」

80: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 22:57:05.28 ID:QB/mHo9Jo
スクールアイドルショップ店内

花陽「はわわぁぁぁぁぁぁ~~~…!!」

真姫「こ、これは…」

真姫(前来たときより豪華になってる…)

真姫(μ’sってアイドルグループが存在しないにも関わらず、スクールアイドル文化が以前よりも発展している、ってことよね…)

真姫(確かにA-RISEのダンスパフォーマンスのクオリティは私の世界よりもアップしていた…)

真姫(μ’sの一部がA-RISEに加わったことでただでさえ人気の高いA-RISEがさらに強力なものになって…)

真姫(μ’sという対立分子のいない、一強の存在として栄えたことで、結果的にスクールアイドル全体の人気も上がった、ってこと…、なのかしら)

真姫(…自分で言ってて訳わかんなくなってきたけど、でも何かしら理由がないと私の世界と差がつくことはないでしょうし…)

真姫(となると、この世界のA-RISEはやっぱり想像以上の強敵になってくる、ってわけね…)

花陽「…真姫ちゃーんっ!何コナンくんみたいな顔して考えてるの?」

真姫「えっ…、そんな顔してた?」

花陽「後編のCM前の何か思いつきそうな時の顔っぽかったよ!もー、せっかく来たんだから、今はアイドルグッズに集中だよ!」

真姫「そ、そうね…」

花陽「まず最初はねー…」

花陽「ふぉぉぉぉぉっ!や、やっぱりA-RISEのグッズ、だよねぇ~~…!!」

真姫「うわ…!これ全部…?」

花陽「うんっ!ここからあっちの棚まで、ぜーんぶA-RISEのグッズなんだよ!」

真姫「へぇ…。これってA-RISEは知ってるの?」

花陽「うん。最初は非公式で、同人作品として売ってたって話だけど…」

花陽「ここのお店が有名になってきたあたりでUTX学院が直接公式のグッズを取り扱うように提携を交わしたんだって」

花陽「だからここに売ってるのは全部公式のA-RISEのグッズなの!他のメディアじゃ一切見せないようなA-RISEの表情も見れるんだよーっ!」

花陽「ほらこれ!このDVDはね、A-RISEの三人の水着グラビアの様子を映した、世界でここしか取り扱ってない一枚なんだよ!」

花陽「特典映像に水着でのライブもついてくるし…、ここに来たら絶対にゲットしておきたいグッズの一つだね!」

真姫「へ、へぇ…」

花陽「あとこれ!見て見てこれーっ!!実際にライブの時に使った衣装!こんなのまで飾ってあって…」

花陽「それに、こっち!先着300名限定のチケットに付いてくる特典のメッセージボイスCD!な、なんと恋の告白シチュエーションなセリフも収録されてるとか…!」

花陽「しかも3種類あって、それぞれに一人分のボイスしか入ってなくて、それに直筆のサインまで入ってるからかなりのプレミア価格で手が出せなくて…」

花陽「んーと、で、こっちは初心者にオススメ!A-RISEのピンバッヂにA-RISEのうちわ、A-RISEがデザインした専用のサイリウムまで…」

花陽「あれ、真姫ちゃん?真姫ちゃん、どこいったのー?」

真姫「…花陽には悪いけど、このまま付き合い続けたらこっちの頭がパンクしてしまうわ…」

真姫「彼女の興奮の熱が冷めるまで、ちょっと離れたところにいましょう…」

81: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 22:58:51.21 ID:QB/mHo9Jo
真姫「ふーん…、こうして見ると、結構な数のスクールアイドルのグッズを取り揃えてるのね…」

真姫「見たことないところのグッズまで…。これは同人作品なんでしょうけど」

真姫(そしてその中に…μ’sがいない、っていうのは、少し新鮮で…少し寂しい光景でもあるわね)

真姫「あっ…。これ…」

真姫「A-RISEのバックダンサーズのグッズ…。これもちゃんとあるのね…」

真姫「当たり前と言えば当たり前、か…。なんせ彼女達は次世代のA-RISE候補でもあるんだもの」

真姫「注目されない訳ないわよね…」

真姫(それにしても…。こうしてダンスしているところの表情だけ見れば…)

真姫(…すごく楽しそう。心の底から笑っているような、笑顔)

真姫(でもそれは違う。凛も、穂乃果も…、本当の意味では笑えていない…)

真姫(辛く厳しい試練を耐え培った、お客さんを喜ばせるための偽りの笑顔なんだ)

真姫(それは、アイドルとしては正しいのかもしれない、けど…。でも…)

真姫「…」

真姫(その笑顔に夢を見た少女たちを、裏切る行為とも、言える…)

真姫(夢なき夢を与える、罪深き笑み…)

真姫(アイドルに憧れ続け、そして今トップアイドルの一端を掴んでいる彼女…)

真姫(このブロマイドに写るにこちゃんも、そんな誰かを傷つける笑顔に…)

「あ、あった…!これを探してたのよねー…」

真姫「…ん?」

真姫(どこかで聞いたことのある声がした、ような…)

真姫(その声は、私の目の前で、棚の下の方のグッズを漁るためにしゃがんでいる…)

真姫(サングラスをかけて、厚いダッフルコートを羽織った…ちんちくりんな少女から発せられていた)

謎のグラサン少女「先週は持ち合わせが無くて買えなかったけど、まだ残っててくれてありがとー…!」

謎のグラサン少女「えっと、じゃあ次は熊本のOTEMO-YANと大阪のTiger-Tのグッズを…」

真姫「にこちゃん?」

謎のグラサン少女「…え」

真姫「矢澤…にこちゃん、よね…?」

謎のグラサン少女「…」

謎のグラサン少女「…ちょっとアンタ!こっちに来なさい!!」グイグイ

真姫「えっ、えぇっ…!?な、何…!?また引っ張られるの私!?」

82: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 23:00:42.95 ID:QB/mHo9Jo
ショップ裏

にこ「はぁぁ…」

真姫「えっと…、こんなところまで連れて来てなにを…」

にこ「…別に、なにをするつもりでもないんだけどね」

にこ「なんでバレちゃったのかなぁ…。結構な変装しているつもりだったんだけど」

真姫(その変装がワンパターンすぎて逆にわかりやすかったわ)

にこ「あ、えーっと…、ごめんね。こんなところに引っ張ってきちゃって」

にこ「いきなり声をかけられたから、少し驚いちゃって…」

にこ「前にね、変装ナシで歩いてたら大騒ぎになっちゃったことがあったから…」

にこ「念の為に誰もいないところまで連れて来ちゃったってわけ」

真姫「あ、あぁ…。そうなのね」

真姫(やっぱりそこそこに人気なのね)

にこ「あなたもにこを知ってる、ってことは…A-RISEのファン?」

真姫「え、私…?うーん、私は…」

真姫(…どちらかといえば)

真姫「あなたたち、バックダンサーの方が好きよ。特に、にこちゃんが」

にこ「えっ…!?」

真姫(私の世界では仲間だし)

にこ「に、にこたちの、ファンっ…!?それ、ホント…!?」

真姫「えっ…、う、うん。A-RISEはそんなに興味ない、かしら…」

にこ「A-RISEに興味ない…!?のに、にこのファン…!!!!!!?!?」

にこ「う、う、うぅぅ…!!」

真姫「えっ…。ど、どうしたのよ…」

にこ「嬉しいいいぃぃぃぃぃぃっ!!!つまり…私たちだけの固定ファンが、ついに実在したってわけなのよねぇぇっ!!」

真姫「い、今まではそんなことなかったの…?」

にこ「当たり前よっ!みんなA-RISEから知りました、とか、A-RISEの次に応援してます、とか、何か言えばA-RISEが一緒についてきてた…!」

にこ「それでも嬉しかったけど、私たちの方が好きって言ってくれたのはあなたが初めて!いわば私たちのファン第一号と言っても過言じゃないわ!」

にこ「ありがと!ありがとっ!!あなた、名前は?名前はなんていうの?」

真姫「私…?西木野、真姫…」

にこ「真姫…真姫ちゃんね!見ててよね真姫ちゃん!にこ、絶対に来年のA-RISEになってみせるから!」

にこ「真姫ちゃんがにこのファンでいてくれたこと、絶対に後悔させないから!」

真姫「ど、どうも…」

真姫(にこちゃん…。相変わらず熱いわね…)

真姫(でもこれも…、お客さんに合わせるための営業トーク、なのかしら…?)

83: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 23:01:51.48 ID:QB/mHo9Jo
にこ「う、うぅっ…!ヤバ、涙出そう…」

にこ「…い、いけない!ファンの子の前では常に笑顔!それがアイドル、だものね!」

にこ「そうだわ真姫ちゃん!ここなら誰もいないし…今ならなんだってしてあげられるわよ!」

にこ「サインがいい?それともにっこにっこにーかしら?あ、ダンスの振りの指導だってできちゃうわよ!」

真姫「あ、ありがとう…。じゃあ、えっと…楽譜を入れるファイルのここにサイン、お願いできる…?」

にこ「お安い御用だわ!真姫ちゃん、よね?えっと…えぬあいしーおー…」ササッ

真姫(でも…私にはこの笑顔、ホンキに見える…)

真姫(いつもの…、本当にいつものにこちゃん)

真姫(バカみたいに喜んで、バカみたいに張り切ってる…私のよく知っているにこちゃんにそっくり)

真姫(そんな『バカ』が接頭語につくくらい直情的で、そして、それでいて…)

真姫(アイドルに対しての姿勢は曲げない、不屈の信念を持つ、彼女そのもの…)

真姫(…もしかしたら、彼女は…)

にこ「真姫、ちゃん、へ…っと。はい、これでいいかしら?あ、名前書かないほうがよかった?そのほうが後で売れる…なんて」

真姫「…」

にこ「あっ、じ、冗談よ!もし仮ににこが売れても、サインは売ったらダメだから!ヤフオクに流れてたら泣くわよ!?」

真姫「…ねぇ」

にこ「ん?なに?」

真姫「…にこちゃんは…、どうしてアイドルになろう、って思っているの?」

にこ「えっ…?」

真姫「きっかけ、じゃなくて…、友達から聞いたんだけど、アイドルになるための練習って、とっても辛いって…」

真姫「それなのに…にこちゃんは辛い練習を経験して、それでもまだアイドルを目指している理由が、知りたいな、って思ったの」

にこ「…アイドルを目指す理由、か…。面白いこと、聞くのね」

真姫「こ、答えづらかったら別に…」

にこ「やりたいから」

真姫「え…」

にこ「ずっとやりたかった。子供の頃からの、今も変わらないただ一つの夢」

にこ「どれだけ練習が辛くても、どれだけ他の人に憎まれても、その夢は裏切れない」

にこ「アイドルをやりたいっていう、その夢のためだけで、にこは頑張れるの」

にこ「何があっても、笑顔と夢は忘れない、って決めてるから」

真姫「…」

にこ「えっと、これでいいかしら?いきなりだったからちゃんとした答えになってるかはわかんないけど…」

真姫「…えぇ、大丈夫。ありがとう…答えてくれて」

真姫(ある意味では最も聞きたくて、最も聞きたくなかった答えを、聞かせてくれて…)

84: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 23:03:13.55 ID:QB/mHo9Jo
スクールアイドルショップ店内

真姫「…」

花陽「あっ!真姫ちゃん!もー、どこ行ってたの?探したんだよ?」

真姫「あ、花陽…。ごめんなさい、少し外の空気を、ね?」

花陽「そう?でも何か言ってくれても良かったのに…」

真姫「ご、ごめんなさい…」

真姫「…あ」

謎のグラサン少女「…」チラッ

謎のグラサン少女「…にこっ」ボソッ

真姫「…」コクリ

(にこ「じゃあとりあえずここまでにして…私はまた店内に戻るから」)

(にこ「にこと鉢合わせても知らないふり、してよね?それじゃ!」)

真姫(にこちゃんは、何も変わっていなかった)

真姫(果てしない戦禍に巻き込まれながらも、自分の在り方を、夢を決して忘れなかった)

(希「夢、みたいな遠く果てしないものを求めて走り続けられるほど強い人はひと握りだけ」)

真姫(夢を目指し努力するひと握りの強い人間…、それがにこちゃん)

真姫(それゆえに彼女は)

真姫(A-RISEを越える上において、凛より、穂乃果より、A-RISEのメンバーの誰よりも、私たちを阻む大きな壁となるかもしれない)

真姫(また、いつか無茶をするハメになりそうで、少し憂鬱)

真姫(だけど…それ以上に、彼女が変わってなかったことが嬉しかった)

真姫(そして今は、いつか迫り来る脅威のことを考えるよりも…)

花陽「…ん?今誰かと挨拶してた?知り合い?」

真姫「いえ、なんでもない。それより花陽」

真姫「勝手にどこか行っちゃってたお詫びに、いっぱいオススメのスクールアイドル、教えてよね」

花陽「あっ…!う、うんっ!!わかった!嫌って言ってもやめないくらい、たっくさんオススメしちゃうね!」

真姫(目の前の彼女に、決意してもらうしかない)

真姫(自分の夢見たアイドルになるための、決意を)

85: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 23:03:59.72 ID:QB/mHo9Jo
コスプレショップ

花陽「ここはね!アニメやゲームキャラのコスプレを扱っている他にも…」

花陽「全国津々浦々のアイドルの衣装のレプリカも置いてあるんだよ!」

花陽「しかもしかも、それを着て記念撮影だって出来ちゃうの!」

真姫「へー…、スゴいのね。こんな店あったんだ…」

花陽「はわわぁぁ…、いいなぁ…。私もこんな服、着てみたいなぁ…」

真姫「着せてもらえるんでしょ?好きに選べばいいじゃない」

花陽「うん、そうするね。真姫ちゃんはどれがいい?」

真姫「え、なんで私に聞くの…?花陽が着るんだから花陽の好みで…」

花陽「真姫ちゃんも着るんだよ?」

真姫「ええぇっ!!?わ、私も…?」

花陽「うんうんっ!真姫ちゃんならなんでも似合うと思うなぁ!」

真姫「べ、別にいいけど…。心の準備ができないとこういうのって少し抵抗あるっていうか…」

真姫(テンション高まってない時に屋外で衣装に着替えるのはまだ慣れてないわ…)

花陽「私も一緒だから!ほら!これとか…、このちょっと前のA-RISEの衣装もいいんじゃない?」

真姫「…はぁ。仕方ないわね」

店員「はーい、それじゃあ笑ってー!何か好きなポーズがあればご自由に!」

花陽「す、好きなポーズ…!こう!」

真姫「違うわ花陽!腰が甘い!もっと伸ばす!」

花陽「こ、こう…!?」

真姫「いいわ、その調子!準備オッケーです!」

店員「はいそれじゃ撮りますねー…。はい、チーズ…」

パシャッ

花陽「うふふふー…」

真姫「さっきから自分の写真見つめすぎ。ちょっと気持ちわるいわよ」

花陽「だってー…、真姫ちゃんと一緒にアイドルの衣装…!嬉しいんだもん…」

真姫「…そう」

花陽「真姫ちゃんのポーズへの執着というか…厳しさには驚いちゃったけどね」

花陽「ああいうのこだわっちゃうタイプ?」

真姫「そ、それはもちろん…そうよ!いつなんどきでも自分を美しく見せることを忘れてはいけないわ!」

花陽「意識高いんだねぇ」

86: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 23:04:55.92 ID:QB/mHo9Jo
CDショップ

花陽「ここはねー、昔のアイドルのCDもたくさん売っててー…」

花陽「あっ、このグループとか懐かしいなぁ…。小学生のころよく聴いてたの」

真姫「へぇ…、昔のアイドルのことについては本当に知らないから、こういうのは逆に新鮮ね」

花陽「CDを借りて視聴もできるの。聴いてみてよ!真姫ちゃん絶対に気にいると思う!」

真姫「そうなんだ。じゃあ…聴いてみようかしら」

~♪

真姫「ふんふん…。あー、昔の曲って感じ、するわね」

花陽「なんとなく曲調で年代ってわかっちゃうよねー」

真姫「でもこの感じ…、嫌いじゃないわね」

真姫「こうやって聴いてると、どことなく思い出される過去の思い出…」

真姫「音楽ってこうやって時代を感じさせてくれる、一種のアルバムのようなもの、よね」

花陽「そうだねぇ…。人生を歩んでいれば誰だってその中に自ずと音楽が入ってくる」

花陽「CMソングだったり、街のスピーカーから流れる音だったり…」

花陽「その曲は自分の中の思い出と結ばれて、心の中に保存されて…」

花陽「ずっとずっと未来、ふと何かの拍子にその曲を聴くとその時の情景がぱっと頭の中に蘇る」

花陽「それまではほとんど覚えてなかったことなのに、ちょっと前の出来事かのように一瞬で、鮮明に」

花陽「ふふ、そう考えると不思議だよね、音楽って」

真姫「えぇ。そして…素晴らしいものだと思うわ」

花陽「…うん。きっとこうして、真姫ちゃんと一緒にこの曲を聴いたこの思い出も」

花陽「心の中のアルバムに保存されて、ずっと遠くの未来にまた、開かれるのかな」

真姫「…かも、しれないわね」

87: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 23:05:32.91 ID:QB/mHo9Jo
真姫(それからも私と花陽は、いろいろなお店へ行った)

真姫(花陽のマニアックな知識が炸裂して、私が少しついていけないところもあったけど)

真姫(それでも、花陽がアイドルを好きだって気持ちは、余すところなく伝わってきた)

真姫(そうして気がつけば、もう日も沈み始めて)

真姫(秋葉原も赤く染まってきた)

街道

花陽「はぁぁ~~~…!今日は楽しかったぁぁ…!」

真姫「そう?ふふ、良かったわ」

花陽「真姫ちゃん、付き合ってくれてありがとう!こんなに楽しい一日は久しぶりだったよ…」

真姫「身体の疲れはすっかり取れちゃった?それとも…また疲れちゃったかしら」

花陽「あぅっ…、そ、そっか…。明日からまた練習、なんだよね…」

真姫「まぁ、そうなるわね」

花陽「…が、頑張ります」

真姫「…」

花陽「じ、じゃあ今日はもう日も暮れてきちゃったことだし、そろそろ帰って…」

真姫「まだよ」

花陽「え?」

真姫「最後に一つ、私が行きたかったところがあるの」

真姫「そこに行きましょう」

花陽「いいけど…どこへ?」

真姫「すぐそこよ」

88: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 23:06:31.91 ID:QB/mHo9Jo
花陽「ここ、って…」

真姫「うん、思ったより綺麗ね」

真姫(私たちが最後に訪れた場所)

真姫(そこは、名も知らぬビルの屋上)

真姫(夕日に染まる秋葉原が見渡せる場所)

真姫(私も適当な目星を付けて選んだところだったから、どんな風景を見られるかは今までわからなかったけど)

真姫(想像以上に絶景ね)

花陽「…で、こんなところに連れてきて、真姫ちゃんは何がしたいの?」

真姫「うん、まぁ…お話」

花陽「話…?」

真姫(…まぁ、景色なんてどうでもいい)

真姫(彼女と『こういう話』をするなら…)

真姫(きっと夕日の屋上が相応しい)

真姫(ただそう思っただけだから)

真姫「ねぇ、花陽」

花陽「ん…?」

真姫「今日、楽しかった?」

花陽「え…、うん。さっきも言ったでしょ?とっても楽しかったって」

真姫「えぇ、そうよね。花陽はアイドルに関すること、たくさん出来て楽しかったでしょう」

真姫「私も、とても楽しかったわ。花陽の喜びがたくさん伝わってきて」

花陽「うん…?」

真姫「…でも花陽は」

真姫「アイドルには、なりたくない、のよね…?」

花陽「えぇっ…!?」

89: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 23:07:11.40 ID:QB/mHo9Jo
花陽「ど、どど…どうしてそうなるの!?私…やりたいよ!すごく、アイドル!」

真姫「だけど…、練習嫌そうだったじゃない」

花陽「う、そんなこと…」

真姫「…そんなこと、ない?いえ、そんなことないことないわ」

真姫「花陽は練習を嫌がっているはず。だって疲れるから。厳しいから」

花陽「き、厳しいってことは、ないよ…。真姫ちゃん、花陽が疲れた時にはきちんと休ませてくれるし…」

花陽「でも…」

真姫「でも?でも、何?」

花陽「…っ!え、えと…」

真姫「きっと続きはこう。でも、真姫ちゃんの言うとおり練習しても、アイドルになれるかなんて分からない」

真姫「アイドル専攻より不確かで、先の見えない曖昧な道」

真姫「花陽はそう、思っているんでしょう?」

花陽「…え、う…」

真姫「答えて。イエスか、ノーかで」

花陽「…うん」

真姫「…ありがとう。私もね、昨日気づいたの」

真姫「私一人ができると思っていても仕方がない。ちゃんとあなたにも、アイドルができるって思ってもらわないと意味がない」

真姫「そして私には…そう思わせるだけの、ただ引っ張っていけるだけの力も、度胸もないわ」

花陽「…」

真姫「だから、今日こうして練習やめて、秋葉原に二人で遊びに来たのは」

真姫「あなたに分かってもらいたかった。花陽はアイドルになれる、ってこと」

真姫「あなたの夢見る、アイドルになれるってこと」

花陽「…」

真姫「うん、そもそもアイドルになるなんて簡単なこと」

真姫「勝手に歌って踊って、曲作って歌詞作って衣装作って、ネットにアップすればスクールアイドルを名乗れる」

真姫「…けど、花陽がなりたいのは、違うのよね」

真姫「確固とした意志を持った、輝かしいアイドル」

真姫「あなたが憧れ、夢見て、なりたいと思ったのは…そんなアイドルだったんでしょう?」

花陽「…っ」

90: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 23:07:54.12 ID:QB/mHo9Jo
真姫(この世界の花陽が憧れたA-RISEには、『頂点を目指す』という意志が)

真姫(私の世界の花陽が憧れたμ’sには、『廃校を阻止する』という意志が)

真姫(それぞれ根幹を成していた。それが”強さ”だった)

真姫(けれど…私の作ろうとしているアイドルにはそれがない。設立してないんだから、あるはずもない)

真姫(一応私にはA-RISEを越える、って目標はあるけど…花陽にはまだそれが実感できない。意志として持つことができない)

真姫(ならば花陽の意思を、彼女の想いを主軸に、アイドルという存在を作り上げる)

真姫(一日過ごして確信した。花陽には、A-RISEにもμ’sにも負けない、確固たる意志があること)

真姫(まだ彼女はそれを自覚していないけど…だったら)

真姫(私が気づかせてあげる。彼女の意志、目標、夢…、そして勇気を!)

真姫「花陽、今日一日秋葉原を過ごして、どう感じた?」

花陽「どう、って…」

真姫「あの街には、あなたの夢見たアイドルで満ち溢れていたかしら?」

花陽「私の夢見た、アイドル…」

花陽「舞台上で楽しそうに歌う、夢に満ちたアイドル…」

花陽「…」

花陽「…うん。いっぱい、いっぱい私の夢見たアイドルが、ここにはあるよ」

花陽「メイドカフェの歌うメイドさんも、ショップで見た色んなアイドルの映像も…」

花陽「一緒に撮ったアイドルのコスプレも、昔のアイドルのCDも…」

花陽「どれも私が夢見る、最高のアイドルだよ!」

真姫「…あなたはそれに憧れ、UTXに入り、アイドルを目指した」

真姫「けれどそこに、あなたの目指したアイドルは、…なかった」

真姫「血の滲むような練習と、憎み合い、争い合うアイドル候補生たち」

真姫「全てが輝かしい夢で作られていると考えていた花陽にとっては、その光景はまさに悪夢だった」

真姫「夢のようなアイドルは外側だけ作られたハリボテ、中身はドロドロの世界」

真姫「あなたはそんな現実を突きつけられて、夢を否定されて…一度は絶望に塗れた」

花陽「…でも、真姫ちゃんは」

真姫「私は、あなたの夢見たアイドルを知っている。全てが夢にあふれた、素晴らしいアイドルを」

花陽「だけどっ!…わかんないよ。花陽には」

花陽「本当に、それがあるのかどうか、なんて…。真姫ちゃんの言葉だけじゃ…」

花陽「信じられないの…。信じようとしても、心のどこかで疑ってしまう」

花陽「一度は信じた夢に、裏切られた、から…」

91: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 23:08:44.61 ID:QB/mHo9Jo
真姫「私だって、見せてあげたい。でも…今はできない」

真姫「だから…信じて欲しいの」

花陽「でもっ…!」

真姫「私じゃなくていい!…出会ってからたった数日の、他人のことなんて、そう信じられるものじゃないわ」

真姫「だけど…、何年も一緒に連れ添ってきた、自分の夢は、もう一度信じてあげて」

花陽「私の…、夢?」

真姫「あなただって想い続けて来たはずでしょう?輝かしいアイドル」

真姫「それをたった一度、否定されただけで諦めないで」

真姫「誰が否定しようと、自分だけは信じ続けて」

花陽「私…が…」

真姫「それにね、あなたの夢は…決してあなただけのものじゃない」

真姫「この広がる秋葉原の景色。この中にもきっと…あなたと同じ、夢見る女の子がたくさんいる」

真姫「そして、あなたと同じように現実を突きつけられて、絶望していく子だって、いる」

花陽「あ…」

花陽「…私の、友達みたいに…」

真姫「そんな彼女たちに教えてあげるのよ!」

真姫「あなたたちの夢は、偽物なんかじゃないんだって!」

真姫「あなたが私の言葉を信じられなかったように、存在しなければ誰だって何も信じることはできない」

真姫「じゃあ、だったら!私たちが彼女たちの夢の拠り所になるのよ!」

真姫「あなたたちの夢見た、すべてが輝かしいアイドルはここにあるんだって!もう、誰も二度と絶望しないように!」

真姫「私たちが、世界に知らしめるの!」

花陽「そんな、こと…」

真姫「できないかもしれない。…でも!ずっとそれを想い続けるの」

真姫「もう無理かもしれない、って思っても、それを成し遂げるって、絶対やらなくちゃって」

真姫「そう思えばできないことなんて、何一つないの」

真姫「あなたの信じた夢を、みんなの信じた夢を」

真姫「…あなたが、私たちが叶える。それが…」

花陽「真姫ちゃんの作る、アイドル…」

真姫「えぇ」

花陽「もう誰も…アイドルの現実に傷つくことのないような、そんなアイドル…」

花陽「それ、なら…私…」

92: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 23:09:16.62 ID:QB/mHo9Jo
真姫(…目標は、出来た)

真姫(もう誰も、夢と現実のギャップに苦しまないような)

真姫(誰もが望んだ、理想のアイドルを目指すという、目標)

真姫(けれど彼女にはまだ、そこにたどり着こうと思う意志が、足りない)

真姫(だから、それを私が…示す)

真姫(あなたが何よりも大切に思っているもの、それは――)

真姫「…まだわかんないけどね。理想論よ」

花陽「うん、そう…だね」

真姫「だけど、考えてみて」

真姫「そんな楽しそうにアイドルやっている私たちには、きっとみんなが注目するはずよ」

真姫「心の底から楽しそうに歌い、踊るアイドル」

真姫「人気もうなぎのぼりで、いつかA-RISEを追い抜かそうとするかも」

花陽「さ、流石にそこまでは…」

真姫「…仮に、そうなったとしたら、もう無視はできないわよね」

花陽「…無視?」

真姫「否が応にも、あなたに反応せざるを得ない」

花陽「え…」

真姫「そして、もし私たちがA-RISEを超えれば」

花陽「もし、かして…」

真姫「彼女は、戻ってくるかも知れない」

花陽「真姫ちゃん、なんでっ…!!」

真姫(花陽が何よりも大切に思っているもの)

真姫(それは、友達)

真姫(彼女はこうして友達を、休日をともに過ごせる友人を欲していた)

真姫(私は知っている。彼女には…そんな友人がいたことを)

真姫(いたはずだった、ということを)

真姫(覚えている。あのバックダンサーズを最初に見たとき)

真姫(私は茫然自失ながら、彼女の発した言葉を、聞き逃さなかった)

(花陽「…凛、ちゃん」)

真姫「A-RISEよりも強くなる」

真姫「そうすれば、星空凛を…、取り戻せるわ」

花陽「…っ!!!!」

花陽「どう、して…!」

93: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 23:10:30.03 ID:QB/mHo9Jo

「ねぇ、凛ちゃん」

「どしたのかよちん?」

「一緒に…UTX高校に入らない?」

「やった!やったよかよちん!お父さんとお母さんからオッケーもらったよ!」

「ホント!?やったぁ!これで同じ学校に通えるね!」

「うんうんっ!離れ離れにならなくていいんだね!」

「入学おめでとう!制服すごく似合ってるよーっ!」

「えへへ、かよちんもっ!あ、かよちん?どこの専攻に入るかってもう決めた?凛はダンサーだにゃ!」

「うん!私は歌が好きだから、歌手専攻かな。…凛ちゃんとは別々のクラスになっちゃうね」

「大丈夫だよ!それ以外はずっと一緒だよ!」

「ねぇねぇ、かよちんなら行けるよー。きっとアイドルになれるよ!ほら、凛も付いてってあげるからさ」

「や、やっぱりいざとなったら緊張してきたよ…。もうちょっと待って…」

「かよちん可愛いんだから楽勝だにゃー!ほーら、勇気出して!」

「…ねぇ、凛ちゃん。私…」

「かよちんかよちーんっ!今日ね、またアイドル専攻で褒められちゃった!」

「え…」

「凛にはダンスの才能あるんだって!UTXでナンバー1かも、なんて言われちゃったよーえへへー…」

「そう、なんだ…」

「このまま一緒に、A-RISE入れるように頑張ろー!おー!」

「…」

94: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 23:10:58.99 ID:QB/mHo9Jo

「…かよちん。アイドル専攻、逃げ出しちゃったんだって?」

「う、うん…。とっても、辛くて…」

「よく、ないよ。先生に謝ったの?かよちんもうアイドル専攻できなくなっちゃうよ」

「まだ、だけど…。ねぇ、凛ちゃん…、お願い、一緒に…」

「…凛は、先生や先輩の心象悪くしたくないから。ゴメン、かよちんだけで行ってきて」

「ぁ…」

(結局、行けなかった)

(また怒鳴られるのが怖くて、それを想像しただけで震えが止まらなくて)

(私は、アイドル専攻から、本当の意味で逃げ出して)

(それから…)

「あ、おはよう、凛ちゃん…」

「…」

「ねぇ、凛ちゃ…」

「…」

「凛ちゃんっ…!!」

「うるさいなぁっ!!」

「…っ!!」

「もう…近寄らないでよ」

「アイドルから逃げ出した…弱虫の癖に」

「ぅ、え…?」

「凛は…あなたみたいな弱虫じゃない」

「絶対に、A-RISEになるって決めたの」

「…もう関わらないで。あなたみたいな人と関わると、弱くなるって」

「先輩が言ってたから」

「あ、あぁ…」

「じゃあね、さよなら」

「小泉さん」

「ああああああぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

花陽「凛、ちゃんっ…!!」

95: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 23:11:36.53 ID:QB/mHo9Jo
真姫「…A-RISEのやり方じゃ、一番になれないってわかれば」

真姫「星空凛は、きっとあなたのもとへ戻ってくる」

真姫「幼馴染なんでしょう?あの子とは」

花陽「…なんで、真姫ちゃんが…?」

真姫「ど、どうでもいいじゃない、そんなこと」

真姫「大切なのは、あの子の心を取り戻すこと」

真姫「あなたが秘めてる最も強い意志は、それのはず」

真姫「でしょう?」

花陽「凛、ちゃんを…、取り、戻す…」

花陽「アイドルで、A-RISEを越えれば…、凛ちゃんは…」

花陽「凛ちゃんはもう一度、花陽と友達になってくれるの、かなぁ…?」

真姫「…分からない。確証はないけど、でも」

真姫「このまま何もしなければ、凛との関係は途切れたまま」

真姫「二度と、仲直りなんてできやしない」

真姫「だったら彼女と同じ場所に立って」

真姫「今の凛の心を支えているものを粉々にへし折るしかない」

真姫「あの高慢な性格を治すには、それくらいしなきゃダメよ」

花陽「…今の凛ちゃんを…、倒す」

花陽「昔の凛ちゃんを、取り戻すため…に…!」

花陽「…だったら」

花陽「だったら私、やるっ…!!」

花陽「アイドルやって、みんなを笑顔にして、みんなに夢を与えて、それで…!」

花陽「凛ちゃんともう一度、友達になるっ!!」

花陽「それで、次こそ…」

花陽「次こそ一緒に、アイドルがしたいのっ!!」

花陽「それが、私のっ…!」

真姫(花陽の、意志…!)

真姫(UTXの闇に染まった、凛を助け出す)

真姫(これが花陽と、そして…私の作るアイドルの、確固たる意志の一つとなる…!)

真姫「…決意は決まったみたいね」

花陽「うん…!私…、頑張るから!」

真姫「えぇ。それで、凛ともう一度友達になったら…」

真姫「今度は凛と二人で、秋葉原に遊びに行きましょう」

真姫「きっとそのほうが何倍も楽しいわよ」

花陽「…うぅん。違うよ」

真姫「え?」

花陽「遊びに行くなら…、3人で。真姫ちゃんも、一緒、だよ」

花陽「そのほうが、何百倍も楽しいから」

真姫「…そうね」

96: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 23:12:13.71 ID:QB/mHo9Jo
真姫「じゃあ、最後に花陽。背中、こっち向けて」

花陽「え?背中…こう?」

真姫「えいっ」ペタンッ

花陽「な、何…?今なにしたの?」

真姫「私の勇気をあげたの。片手分だけ、ね」

花陽「うん…?」

真姫「もう片手分は、きっと花陽が必要とした時にもらえるわ」

花陽「そうなの?」

真姫「えぇ。おまじない、みたいなものよ」

花陽「…そっか。ありがと、真姫ちゃん。勇気、くれて」

真姫「どういたしまして。じゃ、帰るわよ。もう真っ暗」

花陽「わ、ホントだ…。あ、でも街の灯りが綺麗だね」

真姫「そうね…。今度は3人で、ここの景色を見ましょう」

花陽「…うんっ!」

真姫(そうして私たちは秋葉原を後にした)

真姫(花陽が決意してくれたことで、ついに誕生した、私の作る新しいスクールアイドル)

真姫(最初は勢いで考えたことが、実現してしまうなんてね)

真姫(でも私には、UTXの闇を取り払うという意志が)

真姫(アイドルの闇に涙する少女を、これ以上増やしたくないって意志がある)

真姫(まだまだ乗り越えるべき壁は多いけど…でも)

真姫(まずはただ、今この瞬間を喜びましょう)

真姫(居場所なんかないって思ってた世界で、私にもできることがあるんだってわかったんだから)

もしライブ! 第二話

おわり

97: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/24(火) 23:15:24.44 ID:QB/mHo9Jo
二話は短いですがここまで 次回以降はもっと長くなりますがお付き合いください
海未ちゃんのコールがみもりんのそれとは異なりますがそういうものだと思っていてくれれば幸いです
では次回も明日のこの時間に 多分 ほなな
100: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 22:44:32.85 ID:/pQaLYhzo
修正部分は誤字脱字や個人的に気になったところとか後のストーリーへの辻褄合わせやら解説不足だったところを付け足したりしてるだけで
ストーリーを大幅に変えたりってことはやってません あと少々削っている部分もあります
初見でも理解はできるつもりで書いているけれどついてこられているか心配だ… とりあえず3話、今日も始めます
101: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 22:45:35.85 ID:/pQaLYhzo
前回のもしライブ!(声:小泉花陽)デン

別のクラスで同じ歌手先行の不思議な子、西木野真姫ちゃん。

彼女の前で私の気持ちを伝えたら、なんと…!

花陽「新しい、スクールアイドル…!?」

真姫「えぇ」

真姫「それを、私たちで結成しよう、ってことよ」

花陽「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!?!?!?!」

スクールアイドルに誘われちゃった!

いきなりの誘いは嬉しかったけど、まだ心の準備が出来てない私には決断する勇気がなくて…。

お試しで真姫ちゃん指導のもと、スクールアイドルの練習をやってみたんだけど…。

花陽「う、うぅぅぅ…じゃあ明日も…?」

真姫「もちろんよ!」

花陽「ううぇえええ…」

スクールアイドルになるための具体的な目標。

私が練習に必死になれないのはそれが足りないと見抜いた元生徒会長の東條先輩は真姫ちゃんに進言する。

必死に考え抜いたすえたどり着いた解決策、それは二人で秋葉原に行くことだった!

真姫「あなたたちの夢見た、すべてが輝かしいアイドルはここにあるんだって!もう、誰も二度と絶望しないように!」

真姫「私たちが、世界に知らしめるの!」

みんなの夢見たスクールアイドル、それが現実にあるものだって示す…。それが私の目標となった。

そして、そこまでたどり着けたなら、きっと凛ちゃんも…。

凛ちゃんも戻ってきてくれるよね?

102: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 22:46:59.36 ID:/pQaLYhzo
翌日 月曜日

UTX学院 ロッカー前

真姫「…」

真姫「…っよし」

真姫「はぁぁぁっ!!」

ガチャリッ

真姫「…」

真姫「…とりあえず、何もナシ、か…。ふぅ…」

真姫(先週末に花陽親衛隊の3人を敵に回しちゃったからロッカーに虫でも入ってないかと不安だったけど…)

真姫(どうやらそれは回避できたようでなによりだわ。…まだいじめがないと決まったわけじゃないけれどね)

1年E組

ガチャッ

真姫「…っようございまーす…」

真姫(目立たないように小声で挨拶しながら空気のように席に着く)

真姫(…つもりだったのに)

真姫「げっ…!」

花陽「あっ!真姫ちゃーんっ!!おはよー!」

真姫「んなっ…!!」

真姫(何故か花陽が私の席に座ってる!何してんのよあの子!)

花陽「おっはよー!」

真姫「お、おはよ…」

真姫(うぅ…、周りの視線が痛い…。あなた1年生ではそこそこ有名人だって自覚しなさいよ…)

真姫(『あの子、小泉さんだよね…』『西木野さん知り合いなのかな…』みたいな声に耐え切れずいたたまれなくなって私たちは一旦廊下に逃げ出した)

廊下

花陽「…どうしたの?いきなり廊下に連れ出したりなんかして…」

真姫「あなたねぇ…。はぁ…」

真姫「…どうして私の教室が分かったの?」

花陽「ん?あー、それはね」

花陽「ひたすら別の教室の人に訪ねて回ったの!西木野さんってこの教室ですか?って」

花陽「そしたらE組が真姫ちゃんの教室だって分かって、ついでに席も教えてくれたしまだ来てないみたいだから座って待ってようかなって」

真姫「私の席に座る必要はないでしょ…。教室の外で待っててくれたらいいのに…」

真姫(おかげでまた少し目立ってしまった…。この子は時々引っ込み思案なのかそうじゃないのかわからなくなるわね)

103: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 22:48:00.17 ID:/pQaLYhzo
真姫「…それで?わざわざ私の教室まで来てなにを伝えたかったの?」

花陽「え…?別に伝えたいこととかは特に…」

真姫「え」

花陽「こうやって朝から真姫ちゃんとお話したかったの。アイドルの話できる友人は貴重でね…えへへ」

花陽「ほら!昨日真姫ちゃんと一緒に買ったお揃いのストラップ!ケータイにつけてきたの!」

真姫「あ、あぁ…そうなのね」

花陽「それでねぇ…ほら!二人でアイドル衣装で撮った写真!財布に貼ってあるんだぁ…」

花陽「むふふ…もうこれ一生の宝物にするね…。でへへへへ…」

真姫(…よっぽど気兼ねなくアイドルの話ができる友人が欲しかったらしい)

真姫(中学生までの彼女にとってそれは星空凛であったわけだから、今のこの子にとっては私が凛の代わりみたいなもの…)

真姫(そりゃここまでデレデレになるのもわからなくはないけどね…)

真姫「…ちょっと恥ずかしいわね…。凛と二人でいるときの花陽ってこんな感じなんだ…」

花陽「ふぇ?何か言った?」

真姫「なんでもない。それより、花陽。ちゃんとスクールアイドルになる決心は固まったのよね?」

花陽「あっ…。…うん。私、やってみたい。どんな結果になるかはわからないけど、でも私の夢見たスクールアイドルが本当に出来るなら…」

花陽「アイドルに絶望しちゃったUTXの人たちだけじゃなくて、日本中のみんなに知ってもらいたいの!」

花陽「あなたの夢見たアイドルは、嘘じゃないんだよって!」

真姫「…えぇ。そのとおりよ」

花陽「だから私…、頑張る!少しくらいしんどくてもめげないから!そ、それに…」

花陽「今なら真姫ちゃんもいるし…ふふ…」

真姫(花陽、あなたのその表情は恋する乙女しかしちゃダメなやつよ。ちょっと怖いからやめて)

真姫(…とは言えず)

真姫「え、えぇ…。一人より二人よね!団結してやっていきましょう!」

花陽「うんっ!ふぁいおー!」

真姫「お、おー…」

キーンコーンカーンコーン…

花陽「あ、チャイム鳴っちゃった。じゃあ私クラス戻るね」

真姫「あっ、その前に…。二人きりで話すためにこうしてわざわざ会うのも非効率だし…」

真姫「トークアプリのIDを交換しておきましょう。これでいつでも会話できるわ」

花陽「あ、そだね!…でも私はこうして二人きりで話すのも…」

真姫「…何か?」

花陽「うぅん!はいこれ私のID…」

真姫「はい、完了っと」

花陽「そろそろ戻らないとホームルーム始まっちゃうよぉ…」

真姫「そうね、それじゃぁ…」

真姫(その時だった)

ゾクゥッ…!!

真姫「…っ!!!?」

104: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 22:49:43.98 ID:/pQaLYhzo
真姫(背後から怖気が…!)

真姫(少し気を許したら一瞬で心臓を突かれそうな、そんな冷たさ…!!)

真姫(瞬間的に私は、花陽を庇うように振り向いた)

真姫「…っ!!」バッ

花陽「きゃっ!!な、何…?真姫ちゃ…」

真姫(そこに立っていたのは…)

穂乃果「…」

真姫「ぁ…」

真姫(穂乃果…)

穂乃果「…えっと」

穂乃果「ごめんなさい。声をかけようとは思ったけど、そこまで驚かれると正直ビックリ…」

真姫(今のは、穂乃果…?)

真姫(先ほど感じた冷たさは今はなりを潜めて、何も感じなかった)

真姫「あ…、ご、ごめんなさいこちらこそ…」

穂乃果「あ、うぅん!いいの。急に話しかけようとした私が悪いから」

穂乃果「もうチャイムなってるから教室戻らないとダメだよーってね」

真姫「あ、あぁ…。そうね…。ありがとうござ…」

花陽「きゃぁあぁぁぁっ!!!」

真姫「っい!?!」

真姫(今度は一体何!?)

花陽「ほ、ほ…」

花陽「穂乃果さまぁっ!!!高坂穂乃果さんですよね!!歌手専攻の先輩で現生徒会長の!!」

穂乃果「え、あ…。うん…」

花陽「そして今はA-RISEバックダンサーのセンター!時期A-RISE候補No.1!!」

花陽「こ、こんな一年生の教室の前でお会いできるなんて光栄ですっ!!握手してください!!」

穂乃果「…もうチャイム鳴ってるって言ってるよね?」

花陽「あ…。そ、そうでした…。非常識ですよね…、ルール違反もだし…。ごめんなさい…」

穂乃果「あは…。なんて、いいよ握手ぐらい。これからもよろしくね?」サッ

花陽「…っ!あ、ありがとうございますっ!!」ギュッ

真姫(…ルールを厳しく守る…。彼女の生徒会長演説ではそんなことを言っていたけれど…)

真姫(こうしてファンの子にはちゃんと応えてあげるのね…。いいのかしら)

花陽「真姫ちゃんもしてもらいなよ!握手!面と向かって話せる機会なんてそうそうないんだよ!」

真姫「え、あ、あぁ…。そうなんだ…。じゃあお願いします…」

穂乃果「ふふ、はい、よろしくね」ギュッ

真姫(彼女の手はほんのり暖かく、両手で私の手を包み込むように握手してくれた)

真姫(…もしかしたら彼女も、生徒会長のときはあんなでも、本質はそれほど変わってないのかも…)

105: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 22:50:25.69 ID:/pQaLYhzo
穂乃果「…あなた、真姫ちゃん、って言うんだね」

真姫「え…」

穂乃果「そっちの子がそう言ってたでしょ?」

真姫「あ、あぁ…。はい、そうです…。私は西木野真姫。彼女は小泉花陽」

花陽「あっ、花陽といいますっ!これからもファンでいたいと思ってます!」

穂乃果「花陽ちゃん、と…真姫ちゃんね。うん、これからもA-RISE共々、応援よろしくね」

穂乃果「それじゃ、私はこれで」スタスタ

花陽「はいっ!ありがとうございますっ!!」

花陽「…あはぁー…。まさか穂乃果さまに会えるなんて…」

真姫「同じ学校の上級生なんだから簡単に会えるものじゃないの?」

花陽「そ、そんなことないよ!バックダンサーの人たちにもファンはいっぱいいるんだもん!」

花陽「そんな人たちが一斉に会いに行くとパニックになるでしょ!だから原則こっちから会いにいくのは禁止されてるんだ」

真姫「そうなのね…」

花陽「もちろん顔見知りの人がアイドル関係なく話したり、生徒会の件を伝えたりは自由だけど、私たち1年生にはそんな接点はないから…」

花陽「あぁやって話しかけてもらえるのはすごく珍しいんだよ!ホントは握手を求めるのもダメなんだけど…むふふ…レアな体験しちゃったなぁ…。もう手洗わない…!」

真姫「それは汚いからやめなさい。…それにしても、学内でも自由に会うこと禁止、なんてね…」

真姫(やっぱり、A-RISEやその周りに対する憧れ、それに関しては徹底して管理をしている)

真姫(自由に会えるより、ああして偶然話しかけられたりする方が希少性が高くて嬉しくなるものだし)

真姫(近くにいながらも、会えないアイドル、ね…)

花陽「むふふふふ~…」

真姫「…それより花陽。もうとっくにホームルーム始まってるんじゃない?」

花陽「えっ…あぁっ!!ホントだ…!!真姫ちゃんも急いだほうがいいよ!じゃあね!」タッタッタッ…

真姫「はいはい…」

2年教室前 手洗い場

ジャー…

穂乃果「…」ゴシゴシ…

穂乃果「…ふぅ」フキフキ…

穂乃果「…」

穂乃果「西木野真姫ちゃん、か」

穂乃果「…あの子、なんだか少し目障り、かな」

106: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 22:51:21.76 ID:/pQaLYhzo
昼休み 食堂

真姫「…」モグモグ

真姫(今日も私は独り寂しく親子丼をつつく)

真姫(お昼休みは花陽は親衛隊に囲まれて私の元へは来られないらしい…)

真姫(今のうちにトークアプリに今日の予定を書き込んでおきましょうか…)

真姫「…」モグモグスマスマ

「ここ、空いてる?」

真姫「…え、あ、どうぞ…あ!」

ことり「ふふ、こんにちは」

真姫「ことり…」

ことり「いつもここで食べてるの?」

真姫「えーっと…、そうね。大体このあたりの席かしら」

ことり「一人で?」

真姫「…友達が少なくて」

ことり「ふぅん…、そうなんだ。言ってくれたら一緒に食べてあげるのに」

真姫「べ、別に…一人でお昼ご飯食べることに抵抗はないからいいわよ」

真姫(寂しいとは思っているけど)

ことり「そっかー、私はちょっと抵抗あるかなー」

真姫「人それぞれでしょ」

ことり「そうね。で、今日は私一人じゃないんだよー」

真姫「えっ…」

ことり「もう少しで来るかも…」

海未「…ことり?いつもの場所ではないんですか?」

ことり「あ!海未ちゃん!」

海未「…誰ですか、その方は…」

ことり「紹介するね。一年生の西木野真姫ちゃん。で、真姫ちゃんは知ってるよね?海未ちゃんです」

真姫「え、えぇ…。どうも、初めまして…」

海未「…なんで知ってるんですか。お互い初対面のはずですよね?」

真姫「ま、まぁ…そうだけど」

ことり「私たちのこといっつも見てたんだってー。変だよねー」

真姫(変とか言われると傷つく…)

真姫(あ、そういえば…海未はあのメイドカフェでバイトをしていたんだっけ…)

真姫(ま、マズ…!思い出しただけで、わ、笑いが…!!)

真姫「ぶっ…ふひゅっ…!!」

海未「…なんで笑ってるんですかこの子」

ことり「ね、変な子でしょー?」

107: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 22:52:51.43 ID:/pQaLYhzo
真姫(こうして、私の世界でも奇妙な三人で、共にお昼ご飯を食べることとなった)

真姫「…」モグモグ

ことり「それでねー…」

海未「…もぐもぐ、なるほどぉ…。もぐもぐ…」

ことり「こら!食べ物お口に含みながらしゃべるのダメ!」

海未「…おっと、そうでした。失礼しました…」

真姫「…」モグモグ

真姫(ことりが海未を叱ってる…。食事のマナーに関して…)

真姫(前も見たけどこれは…、何度見ても慣れそうにないわね)

海未「…そ、そんなに見つめないでください。上品でないのは承知してます…」

真姫「えっ、あー…。見つめてたつもりじゃないんだけど」

ことり「ふふ、海未ちゃんこれでも甘えんぼさんだから。こうして注意してあげないとね」

海未「こ、ことりっ!そんなこと言わないでください!!」

真姫「へぇ…。意外ね。もっとしっかりした人だと思ってたわ」

海未「…お恥ずかしい限りです」

ことり「うーん、前まではしっかりした子だったんだけど…。あの日以来ね…」

真姫「あの日…?」

海未「…ことり、その事は」

ことり「あっ…。うん、ごめんね。海未ちゃん…」

真姫「…」

真姫(…やっぱり、この二人にも並々ならぬ事情が見え隠れしている)

真姫(かなり気にはなるけど…、あまり突っ込まないほうがいいかしら。少なくとも、今は)

真姫「…えっと、話変わるけど…。二人は部活とか、してないの?」

海未「…下級生ですよね?」

真姫「あ、ごめんなさい…」

ことり「いいの!お友達なんだから付き合いはフランクに行こう!フランクフルト~」ツンツン

海未「いつ友達に…。って、ほっぺたつんつんするのはやめてください」

海未「っと、部活ですか。私は弓道部に所属しています」

真姫「この学校に弓道部なんてあったんだ…」

海未「えぇ。UTXの室内弓道場は設備も万全ですよ。あなたもどうですか?弓道部」

真姫「わ、私は遠慮しておくわ…。放課後は忙しいし」

海未「…そうですか、残念です」

真姫「ことりは?」

ことり「ん?私もー…放課後は忙しくて。帰宅部、ってわけでもないんだけど」

真姫「…へぇ」

108: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 22:53:34.66 ID:/pQaLYhzo
海未「なぜいきなり部活を?西木野さんは無所属なのですか?」

真姫「真姫でいいわ。うん、部活はやってないんだけど…趣味に近いことを少し、放課後にね」

海未「ではどこに入るか決めかねているというわけでもなく…。どうして部活を聞く必要があったのですか」

真姫「い、いいじゃない。話のネタがなかったからよ」

真姫(本当は明確な理由があるのだけど、それを言うわけにもいかない)

ことり「海未ちゃん、察してあげて。真姫ちゃんはコミュ障なんだよ」

真姫「怒るわよ」

ことり「えへへ、冗談だよー」

海未「コミュ障ってなんですか…」

真姫「その冗談が通じてないんだけど」

ことり「コズミックミュータント障子の略だよ」

海未「…意味がわかりません」

真姫「私もわけわかんないわ…」

ことり「渾身のボケなのに…」

真姫(あとは実りのないアホな会話をしつつ親子丼を平らげて)

真姫(やることもなく食堂で3人で駄弁って、無為に時間を消費し、やがて5時間目の始まりを告げるチャイムが鳴った)

海未「それでは、またいずれ」

真姫「えぇ。バイバイ」

ことり「えへへ、友達が増えてよかったね。海未ちゃん」

海未「…はい。そうですね」

真姫(これで、この世界での3人目の友達ができた)

真姫(それが海未だっていうのは、少し可笑しくて、でもとても嬉しかった)

109: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 22:55:35.00 ID:/pQaLYhzo
放課後

1年E組

真姫(今日は歌手専攻の授業もあったけど、トークアプリで花陽には授業中私に絡まないように言っておいた)

真姫(花陽は少し不服そうだったけど、これ以上揉め事は起こしたくないし、目立つこともはばかられたし)

真姫(結果あの3人も特に私に何か仕掛けてくるわけでもなく、私はひたすら空気に徹した)

真姫(平穏無事に授業は終了。ついに放課後がやってきた…)

真姫「…さてと、行きますか」

真姫(今日は練習するだけじゃない。もっと大事なことがあるのだから)

真姫(さぁ、花陽との待ち合わせ場所へ行きましょう)

音楽室前

花陽「あ、真姫ちゃん」

真姫「ごめんなさい、待ったかしら」

花陽「うぅん、私も今来たとこ。それで…今日はどうするの?」

真姫「ケータイに予定を送っておいたでしょ。見てないの?」

花陽「み、見たけど…。ホントにやるの…?」

真姫「もちろんよ。これがないと始まらないわ」

真姫「勧誘よ!」

真姫(当たり前ながら、私たち二人ではできることが少なすぎる)

真姫(アイドル活動だけなら二人でもできるけど、歌う歌も着る服もないアイドルというのは寂しすぎるでしょう)

真姫(私の世界の歌をそのまま流用すれば作詞に関しては大丈夫かもしれない、けど…)

真姫(それは根本的な解決にならない。なにより、この世界のアイドルとしての歌でなければ、意味がないのだから)

真姫(だから、作詞係と衣装係を勧誘しに行く。アイドルを一緒にやってもらおうとまでは考えてない)

真姫(もちろん、本人らが良ければ、それ以上のことはないんだけど)

真姫(とりあえずまずは、作詞家から勧誘しに行きましょう)

真姫(都合のいいことに、彼女のいる場所はわかりきっているのだし)

真姫「さ、行くわよ!」

花陽「う、うぅ…。いいのかなぁ…?」

110: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 22:56:10.47 ID:/pQaLYhzo
室内弓道場

海未「…」キリキリキリキリ…

海未「…ふっ」シュッ

パシッ

海未「…ふぅ」

弓道部の先輩「…園田さん。いいかしら」

海未「はい、なんでしょう」

弓道部の先輩「お客さんが来てるわよ?」

海未「お客さん…?」

海未「あなたは…」

真姫「久しぶりね」

海未「さっき会ったばかりじゃないですか…。彼女は?」

花陽「ふ、ふぇぇ…」

真姫「…この子は私の同級生の花陽。人見知りなのよ」

海未「花陽…。あぁ、小泉花陽さん」

真姫「知ってるの?」

海未「えぇ。芸能科歌手専攻の方でしょう?結構有名ですよ」

花陽「あ、ありがとうございます…」

真姫「演劇学科の人にまで名前が知れ渡ってるなんて、あなた想像以上に有名人なのね…」

海未「いえ、私の場合は…。…それより、なんでしょうか。用事があってわざわざ呼び出したのでしょう?」

真姫「あぁ、そうなのよ。ちょっと聞いて欲しいことがあるんだけど」

海未「あ、アイドルっ!!?!?」

真姫「し、シーッ!あんまり大きな声出さないでよ…」

海未「いや…大きな声も出ますよ流石に…。まさか、A-RISEがいるこの学院でスクールアイドルを別に始めるなどと…」

花陽「わ、私もそう思います…」

海未「ですが確かに…、盲点ではありました。A-RISE以外にスクールアイドルをしてはならないという決まりはありませんものね」

真姫「でしょう?ナイスアイデアだと思うわ」

海未「…それで、それを私に伝えてどうするのですか?」

真姫「…私たちのアイドルが歌う曲の作詞をお願いしたいんだけど」

海未「嫌です」

花陽「回答早っ!」

111: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 22:57:36.22 ID:/pQaLYhzo
真姫「ど、どうしてよ」

海未「そっくりそのままお返しします!どうして私に頼むのですか!?」

海未「作詞なんて誰でも出来るでしょう!それをなぜ今日出会ったばかりの私に!?」

真姫「あなた、演劇学科で脚本家専攻なんでしょう?キャッチーなフレーズには慣れ親しんでるから…」

海未「それだけの理由で!?り、理解できません…」

花陽「ま、真姫ちゃん…。やっぱりやめようよ…。ほぼ初対面の人なんでしょ…?」

真姫「いえ、私たちには海未が必要なの!海未でなきゃダメなのよ!」

真姫(少なくとも、私たちの世界のアイドル、μ’sと同等かそれ以上の能力を持とうとするなら、海未の作詞能力は必須だ)

真姫(彼女はμ’sの曲の中核を担う存在なのだから。彼女以外を勧誘して同じ結果を出せるとは限らない)

真姫(もしかしたら海未以外でも行けるかもしれないけど…、私はそこまで無謀な挑戦は出来ない)

真姫(短期間で結果を出すなら、転がってる金の卵を拾えばいいのよ!)

真姫「ね、海未ちゃん…、お願ぁい!!」

海未「猫撫で声でお願いされても気持ち悪いだけです」

真姫(くっ、ことり戦法が通じないなんて…。何がいけないの…!?)

海未「どんな頼まれ方をしたところで結果は変わりません。早々にお引き取りください」

花陽「ま、真姫ちゃん…、こう言ってるんだから、帰った方がいいよ…!」

真姫「…わ、私は諦めないわ。仕方ないわね…。こうなったら最終手段に出るしかないわ」

海未「最終手段…?」

花陽「なにそれ…」

真姫「…これだけはあまり使いたくなかったんだけど」

真姫「んんっ…」

真姫「あなたのハート、撃ち抜くぞ?」ボソッ

海未「ラブアローシュートっ!ばぁんっ!!」

花陽「…えっ」

海未「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!やってしまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

112: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 22:58:45.58 ID:/pQaLYhzo
真姫(一瞬全ての世界が凍りついたように感じたわ)

真姫(すごいわね、ある意味)

海未「なっ、な、なな…!なぜっ…!!」

花陽「え、あ…、も、もしかして…!!?」

真姫「ふふふ…、ヒーメヒメ?」

海未「ほわわぁぁっ!!!!!」

花陽「う、嘘っ!?この人が…!?」

真姫「…えぇ、そうよ。あのメイドカフェの…」

海未「ストップ!ストーップッ!!!その話はもう少しあっちの方で…!」

海未「ど、どど…どうしてそのことを…!!」

真姫「昨日、行ったのよ。あなたのバイト先。私たち二人でね」

花陽「歌上手でした!すごいですね!」

海未「やめっ…、やめてください!!うわっ、顔熱っ…」

真姫「どうする?このこと…学校に報告してもいいのよ?」

海未「…っ!!?ま、まさか最終手段って…」

花陽「き、脅迫…」

海未「卑怯なっ!」

真姫「頑固なあなたを動かすにはこれしか方法はないわ!卑怯だろうと知ったこっちゃないのよ!」

花陽「…流石に少し引くよ」

海未「ぐ…!…っふは!ですがいくら学校に言ったところで、証拠がなくては…」

真姫「証拠ならあるわ。ほら」サッ

海未「えっ…」

真姫「あなたが歌っている写真よ。サングラスかけてはいるけど見る人が見ればすぐわかるでしょう?」

海未「あ、あの店は撮影禁止ですよっ!!?」

真姫「あ、そのセリフはバイトを認めたということになるわね。ちゃんと録音させてもらったわ」

海未「ぬあぁぁっ!!?!?!」

真姫「さぁ、あなたが作詞に協力してくれればこの場でこの写真とmp3は消去してあげるわ」

海未「ぐ、ぐ、ぐぬぬぬ…!」

花陽「どこかのアメフト部主将さんみたいな手口だね…」

海未「悪魔です…」

真姫「何とでも呼ぶがいいわ。私には消えない名前があるから」

真姫「さ、どうするの!?」

海未「…くっ、いいでしょう。協力しましょう」

真姫「やった!」

花陽「よ、よかったね…」

海未「はぁ…。いつかバイトのしわ寄せが来るとは覚悟してましたが、まさかこんな…」

113: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 22:59:46.01 ID:/pQaLYhzo
海未「…すみません。所用ができましたので早退させて頂きます」

弓道部の先輩「いいよ」

海未「早く!早く消してください!!」

真姫「わ、わかったわよ…。はい、これでいいでしょ?」

海未「…確かに。ふぅ…。焦らせないでください」

真姫(希のPCにバックアップを保存しているのは秘密)

花陽「あの…、本当に嫌だったら、その…」

海未「優しいんですね。いえ、大丈夫です。作詞程度でしたら全然」

海未「そもそも脅されるようなことをしている私が悪いのですから、何も文句は言えませんよ」

花陽「そ、そうですか…。それなら…」

真姫「そうよ。海未が全部悪いんだから私たちが気に病む必要なんてないわ」

海未「しかしあなたは許しません。いつか復讐してみせます」

真姫「…おぉ怖。ま、それはさておき次は…」

花陽「まだやるの!?」

真姫「もちろんよ。衣装係がいなかったら私たちドンキで買った安物の服着て踊るハメになるわよ?」

花陽「そ、それはちょっと…学芸会じゃないんだし…」

真姫「でしょう?だから…」

海未「もしかして…ことりを勧誘するつもりですか?」

真姫「…ん?そのつもりだけど」

海未「…」

真姫「何か、問題でもあるの?」

海未「…ことりは、無理です。絶対に協力してくれないでしょう」

花陽「え…?」

真姫「ど、どうしてよ。ことりはあなたほど強情ではないでしょう?お願いしたらきっと…」

海未「そういう問題ではありません!」

真姫「え…」

海未「どうしても、ダメな理由があるのです」

花陽「どうしても、ダメな理由…?」

真姫「それって…?」

海未「彼女は…」

海未「彼女は、A-RISEの服飾を担当しているのですから」

114: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:00:30.67 ID:/pQaLYhzo
ガチャッ

「…ッツースリーフォーファイシッセブンエイッ…」

ことり「お邪魔しまーす…」

ことり「あ、練習中…。座って待っとこ…」チョコン

「…じゃ、一旦休憩とするわね」

「各自水分補給を済ませて…、あとツバサと英玲奈はグッズ用の写真撮影がこの後あるわ。すぐ着替えること」

「あんじゅは記者の取材ね。ダンサーは適度な休憩ののちにA-RISEが戻るまで自主練習をお願い」

凛「…ごくっ、…ごくっ」

にこ「はぁ、はぁ…!つ、疲れた…!」

凛「あは、矢澤センパーイ、この程度で根を上げてちゃまた下位落ちじゃないですかー?」

にこ「…っ、ッハ。全っ然、楽勝よ…、この程度…!」

凛「へー。どこまで続くんですかねー、その強気。ぷぷぷ…」

穂乃果「んぐっ…、ふぅ…」

ことり「あ、穂乃果ちゃん…」

穂乃果「…どうしたの。何か用?」

ことり「えっと…、今度の衣装のために採寸、しようかなって…」

ことり「ほら、成長期だし、身体のサイズ変わってるかもしれないから」

穂乃果「わかった。早めにお願いね」

ことり「…うん」

ことり「…はい、おしまい」

穂乃果「ありがとう。ちょうどいい休憩になったよ。さてと…」

穂乃果「凛ちゃん、にこちゃん。自主連、再開しよう」

ことり「あ、凛ちゃんとにこちゃんの分も…」

穂乃果「…ごめん、これ以上休憩してられないから」

穂乃果「次の休憩に入るまで南さんはそこで座って待ってて」

ことり「…わかった。待ってるね」

穂乃果「よし!はじめよう!」

ことり「…」スワリッ

ことり「南、さん、か…」

115: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:01:16.57 ID:/pQaLYhzo
室内弓道場前

真姫「…ことりが、A-RISEの…?」

海未「正確に言えば、A-RISE候補生…、つまりバックダンサーズの衣装を主に担当していますね」

海未「彼女一人で、というわけではありませんが、かと言って別のスクールアイドルを担当していることりが…」

海未「他のスクールアイドルまで担当できるとは思えません。立場的な意味でも」

真姫「立場…。やっぱり、A-RISEはそういうところ厳しいの?」

海未「そう、ですね…。いわゆる、専属ということになりますから」

海未「A-RISE候補生を指導する先輩はとても厳しい方だと聞いているので、それを補佐することりが別のことにかまけてると知れば…」

海未「彼女はことりを許さないでしょうね」

花陽「そ、それって…、担当を下ろされちゃう、ってこと…ですか?」

海未「おそらくそうなります。それに…彼女は自らA-RISE候補生の服飾に立候補した一人ですから」

海未「別のアイドルの担当を兼任するとなると、批難も大きいでしょうね。その先輩がいなくとも、辞めざるを得なくなるかと」

真姫「…やっぱり、この学校はピリピリしてるわね…。そういうところ」

花陽「だけど…、例えば野球部の人が部活休んで他の野球クラブに出席してた、ってなったら怒られちゃうと思うし…」

花陽「普通と言えば、普通なのかな…」

真姫「…」

花陽「や、やっぱり他の人を見つけたほうがいいと思うよ、真姫ちゃん」

花陽「わざわざ…A-RISEを担当してる人を引き抜くなんて、無茶だよ…」

真姫「…ぐっ」

海未「服飾デザイン専攻の生徒はたくさんいます。なんならことりに頼んで誰か紹介してもらいましょう」

海未「それなら文句は…」

真姫「…ダメよ!」

海未「えっ…」

真姫「私は…、私はどうしてもことりがいいの…!」

真姫「とりあえず一回…、一回交渉だけでもさせてもらえないかしら!」

海未「そんな無茶な…」

花陽「どうしてそこまで…?その…ことりさんって人、そんなに大事なの…?」

真姫「…えぇ、すごく大事」

海未「ですが…」

真姫「どうしてもダメ、って本人から言われれば、すっぱり諦めるわ」

真姫「本人の口から、返事を貰いたいの。お願い」

海未「…」

海未「…分かりました。そこまで真剣な目で頼まれては断れません」

真姫「…恩に着るわ」

116: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:01:54.51 ID:/pQaLYhzo
多目的ホール前

海未「二人はここで待っていてください。ことりを呼んできます」

真姫「私たちは入っちゃダメなの?」

花陽「中でA-RISEやアイドル専攻の人たちが練習してるときは、普通の人は入っちゃダメな決まりなの」

花陽「ここに入れるのは中にいる人に用事がある人か、A-RISEや候補生を担当しているスタッフの人だけなの」

海未「そして今ことりがこの中にいるそうなので、私はその中にいることりに用事がある人、というわけで、中に入れるのです」

真姫「私も用事があるじゃない」

海未「基本的に複数人で入ることは許されていないのです。それに、あなたはまだことりと知り合って日が浅い」

海未「繋がりが薄い人も立ち入りは許可できないそうです」

真姫「なにそれ…」

花陽「あんまり訪問を許しちゃうとファンの人がいっぱい入ってきちゃうかも知れないから、ってことだと思う」

真姫「…やっぱり、厳しいのね。プロのアイドルみたい」

海未「そういうわけなので、少々待っていてください」

真姫「わかったわ。早めにお願いね」

花陽「うぅ…。なんだかドキドキするよ…。どうしてA-RISEの服飾の人なんか…」

真姫「どうしても必要なの。成功するためにはね」

花陽「真姫ちゃんアイドル活動にギリギリすぎる綱渡りしすぎだと思うよ…」

花陽「それに、私あんまりここには近づきたくないんだけどなぁ…」

真姫「なんで…、あ、そっか…。あなたはここから逃げ出したんだったわね」

花陽「うん。だから…」

「…んもー、なによそれぇ…」

「あれ?あなたたち、そこで何してるの?」

花陽「…っ!!」ビクッ

花陽「ごごご!ごめんなさい!!私逃げ出したとかそんなんじゃ!!」

真姫「あ、慌てすぎ…。落ち着いて花陽。別にそういうこといいに来たわけじゃないと思うし…」

真姫「…ん?って、あ!あなた…!!」

真姫「優木、あんじゅ…?」

花陽「えっ!?」

117: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:02:38.18 ID:/pQaLYhzo
あんじゅ「あ、どうもー。優木あんじゅでーす。ウフ☆」

あんじゅ「って、そうじゃなくって!あなたたち、一般生徒でしょ?そこは立入禁止よ?」

花陽「はわっ、ご、ごめんなさい…!あの、私たち…」

真姫「私たち、友人に友人を呼んできてもらうのを待ってるんです。話したいことがあって」

あんじゅ「話したいこと?」

真姫「服飾担当の人が来ているって聞いたんですけど」

あんじゅ「あー、アイドル専攻の子にじゃないのね。それならいいんじゃない?」

あんじゅ「そんなところでスタンバってるから、出待ちの子かと思っちゃったわ。もう少し離れたところにいた方がいいかもね?」

花陽「は、はい…。あ、それより!な、なんで優木あんじゅ…じゃなかった、優木先輩がこんなところに…?」

真姫「今、中で練習中のはずじゃ…」

あんじゅ「聞いてよー、それがね?なんか雑誌の取材で練習中断したんだけど…」

あんじゅ「まだ到着してないって言うのよ?ホント、スクールアイドルだからって舐めてるわよね」

あんじゅ「スケジュールずらされるの嫌だったから、来てもお断りしておいてって言って戻ってきちゃった」

花陽「ほへぇ…」

真姫「…じゃあ今私たちとこうやって立ち話してるのもダメなんじゃ」

あんじゅ「んー?でもぉ…、取材する時間分スケジュール空いちゃったし、それまでは私の自由だから」

あんじゅ「ちょっとくらい練習サボってても大丈夫かなーって」

花陽「えっ…!練習サボってたら怒られるんじゃないんですか!?」

あんじゅ「そりゃ、バレたら怒られるでしょうけど。バレなきゃいいのよ、バレなきゃ」

真姫「意外ね…。A-RISEはそういうところ厳しいのかと思ってたわ」

あんじゅ「んふ。私は例外かもね。基本、疲れることはホントはしたくないし」

あんじゅ「こうやって見知らぬ後輩ちゃんと会話するのもリラックスのうちだしねー」

花陽「あ、ありがとうございます…!わ、わぁ…、スゴイ貴重な体験…」

あんじゅ「最近はファンとのふれあいすらろくに許してもらえないのよー?ひどいと思わない?」

あんじゅ「去年まではこんなにガチガチじゃなかったんだけどね」

真姫「そう、なの…?」

あんじゅ「…えぇ。和気あいあい、ってほどではないけど、前はもう少し緩かったの」

あんじゅ「今年に入ってから人気は向上したけど…、少し空気が重くなったのは感じるわね」

真姫「へぇ…」

あんじゅ「これは多分…、彼女が原因なのかしら…」

花陽「彼女?」

あんじゅ「ん?…あー、えっとね、彼女っていうのは…」

118: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:04:38.00 ID:/pQaLYhzo
ガチャッ

海未「お待たせしました、連れてき…おや?」

ことり「あ、優木さん」

あんじゅ「あは、南ことりちゃんだ。何この子たち、あなたのお友達?」

ことり「え、あ…、はい。真姫ちゃん、と…えっと、小泉さん…?」

あんじゅ「羨ましいなぁ、私も一年生のお友達欲しいー…っと」

あんじゅ「そろそろ戻らないと怒られちゃうかも。それじゃね、また会いましょ」

花陽「あ、ありがとうございました!」

真姫「あっ…」

真姫(…彼女って結局誰よ…)

海未「優木あんじゅと話を…?これはまた珍しい…」

花陽「は、はい、偶然話しかけていただいて…!いやぁ、穂乃果さまに続いてあんじゅさんとも話せるなんて今日は奇跡だよぉっ…!!」

ことり「え…?」

海未「穂乃果と?」

真姫「あっ…。そ、そう。偶然、ホームルーム前に」

海未「…そうですか」

ことり「あっ、それで…、私に話って?」

海未「あぁそうでした!あ、えっと…、無理な話になるとは思うのですが…」

真姫「…この近くで話すのもアレね。少し離れたところに行きましょう」

ことり「…ふ、二人でスクールアイドルを…?」

真姫「別に二人に限定しているわけじゃないわ。もちろんメンバーはどんどん募集中よ。ことりもよかったらどう?」

花陽「ま、真姫ちゃん…、それは流石に無理だよ…」

真姫(私も別に彼女らがアイドルをしてくれるとは思っていない。…穂乃果というきっかけがいないわけだしね)

ことり「それで、海未ちゃんはそのアイドルの曲の作詞を…?」

海未「え、えぇ…。例のメイドの件で、脅されてしまいまして」

ことり「…あぁ」

真姫「脅したなんて人聞きが悪いわ!」

花陽「純然たる脅迫だったと思うなぁ」

ことり「…そして、私を衣装係に…」

海未「その…、ことり」

ことり「…うーん」

花陽「やっぱり…、ダメ、ですよね?」

ことり「うぅーん…」

真姫「ことり、お願い…!」

ことり「うぅぅぅ~~~~~ん…」

119: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:06:09.13 ID:/pQaLYhzo
ことり「うぅぅぅぅぅぅ~~~~~~~…ん…」

真姫「いつまで唸ってるのよ!早く決めなさい!」

ことり「んー、とね…。協力してあげたいのは山々なんだけど…」

ことり「でも…、でもなぁ…」

花陽「や、やっぱり嫌ですか…?」

ことり「嫌ってわけじゃないの…。でも…、でも…」

ことり「…うぅん、少し、考えさせて」

真姫「少しってどれくらい!?」

ことり「具体的には決められない…」

真姫「…じゃあ、いつまで」

ことり「こ、今週末までには…」

真姫「わかったわ。今週末までにはお願い」

真姫「お邪魔して悪かったわ。…よろしくね」

ことり「…うん」

真姫「…どうかしらね」

花陽「ことりさん?うーん、すごく悩んでたね…」

真姫「即お断りより全然いいわ。あとは彼女が決めてくれれば…」

海未「…確かに、彼女は迷ってはいますが…うぅん、どうなんでしょう」

真姫「なによ。まだことりはやめておいたほうがいいって言うの?本人だって満更でもない感じだったじゃない」

真姫「もう少し揺さぶってあげればきっとすぐ陥落してくれるわ…!ドゥフフフ…」

花陽「真姫ちゃん…、もう悪役の顔だよそれ…」

海未「…しかし、それでは…」

海未「うーん…」

花陽「あれ…、今度は海未さんが唸っちゃった…」

真姫「どうしたのよ。まるで海未はことりが私たちの衣装を担当するのが嫌みたいじゃない」

海未「…そうかも、しれません…」

花陽「えっ…ど、どうして…?」

海未「事情を話せば長くなりますが…、それでもよければ」

真姫「…聞かせて」

120: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:07:51.90 ID:/pQaLYhzo
音楽室

真姫「入って」

花陽「もう真姫ちゃんのお家みたいになってるね…」

海未「ここは申請がなければ使ってはいけないはずでは…」

真姫「立ち話するだけよ。うるさくしたりピアノかき鳴らしたりするわけじゃないんだし、いいじゃない」

真姫「よいしょっと」スワリッ

花陽「立ち話といいつつ座ってるし…。あ、私も座ろ」スワリッ

真姫「…それで?あなたがことりを衣装係にさせたくない事情って、なんなの」

海未「…」

海未「現在A-RISEのバックダンサーである高坂穂乃果、知っていますよね」

花陽「う、うん…。今日の朝話した、ってさっき言いましたよね」

海未「彼女は、元々私と、そしてことりの幼馴染でした」

海未「まだ年端も行かぬ幼い頃に出会い、それから小学校、中学校と、3人が離れ離れになることはありませんでした」

花陽「へぇ…、仲良しなんですね…」

真姫「…そして、予定調和のように3人は同じ高校へと通うこととなったわけだけど、それから?」

海未「UTXに入り、3人はそれぞれ別の道を歩み始めました。…といっても、単なる学科の違いなのですが」

海未「私は演劇学科を、ことりはデザイン学科を、穂乃果は芸能科を選択し、各々が違う教科を学びました」

海未「ただそれだけのことです。それ以外の時間は共に過ごし、クラスが別々でも休み時間ごとに遊びに行ったりしました」

海未「ただ、それだけ、のはずが…学科が違う、それだけのことで…、私たちは結果的に、バラバラになってしまったのです」

花陽「え、バラバラ…?」

海未「私は、去年の冬頃から、穂乃果と…」

海未「…一度も話したことがありません」

花陽「えっ…!?」

真姫「…っ」

海未「口論で、喧嘩別れをしてしまったのです」

海未「それ以来、穂乃果からは顔を見合わせても見ないふりをされ…私は…」

海未「…うぅっ…!うぐぅっ…!!」

花陽「え、えぇっ!!?ど、どうしたんですか?何か…」

海未「…いえ、平気です。すみません」

海未「話の続きをしましょう。…私と穂乃果が喧嘩別れをしたとき、ことりは仲裁に入ってくれました」

海未「穂乃果の怒りの矛先がことりに向かうこともしばしばありました。それでもことりは穂乃果を宥めるのを止めることはありませんでした」

海未「その頃から、ことりと穂乃果の仲も、…私ほどではないにせよ、相当険悪なものになってしまいました」

海未「次第に穂乃果との会話も少なくなり、このままではいけない、と思った、それから」

海未「…ことりは自ら、A-RISE候補生の服飾を申し出たのです」

海未「失ってしまいそうだった、穂乃果とのつながりを無くさないために」

121: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:09:09.74 ID:/pQaLYhzo
真姫「…」

海未「私が、ことりを衣装係にするのが嫌な訳は」

海未「…私と穂乃果の喧嘩に巻き込んでしまった挙句、失いそうになっている穂乃果とのつながりを…」

海未「もうこれ以上、ことりには失って欲しくないから、なのです」

海未「別のアイドルの衣装を担当するとなれば、きっとことりはA-RISEの服飾からは外されてしまうでしょう」

海未「そうなれば、…おそらくもう二度と、穂乃果と会話することは叶わなくなってしまう」

海未「幼い頃から築き上げてきた絆が、完全に途切れてしまう」

海未「それだけは…、避けたかったのです。ことりのためだけではなく、私自身のためにも」

真姫「…なるほどね」

花陽「海未さんやことりさんも、大切な友達と決別しちゃったんですね…」

花陽「だったらその気持ち、わかります。私も、そうだから…」

花陽「もし少しでも凛ちゃんと繋がってれば、そのつながりを完全に消すようなことは…あんまりしたくないと思うから」

真姫「つながり、ね…」

真姫(完全に分かれてしまった、花陽や海未とは違い)

真姫(ことりは、まだ大切な人と、繋がっている状態だった)

真姫(今のそのつながりが、どれほどのものかは私には分からない)

真姫(…けれど、それを断ち切る選択を迫るのは…)

真姫(私にも、残酷に思えた)

真姫(たとえどれだけ細い糸で結ばれていたのだとしても、その可能性を潰すことの辛さは)

真姫(それを信じていたいという思いを摘むことの辛さは、痛いほど理解できた)

真姫(…理解できてしまった)

122: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:09:44.88 ID:/pQaLYhzo
真姫「…」

海未「わかって、いただけましたか」

海未「ことりを、穂乃果の元から離れさせたくないんです」

海未「…お願いします。こればかりは」

花陽「…真姫ちゃん」

花陽「やっぱり、別の人にお願いしよう」

真姫「…」

花陽「真姫ちゃんっ!」

真姫「…まだ、よ」

海未「なっ…」

花陽「なんで!今のでわからなかったの!?」

花陽「穂乃果さんはことりさんの大切な人、なんだよ…!?その仲を引き裂こうとしてるのに…」

真姫「ことりは…っ!ことりは迷っていた!」

真姫「本当に穂乃果との仲を…、今の状態を良しと思うなら、即決してもいいはずよ!」

花陽「あっ…そ、そっか…」

真姫「…けれど、ことりは…。それをしなかった。決断を先延ばしにしたのよ」

海未「それは…」

真姫「つまりことりは…、完全に今のままでいいとは、思っていないはず」

真姫「葛藤しているのよ。自分がどうするべきなのかを」

真姫「…でも」

真姫(辛さを理解できてしまったゆえに)

真姫(ことりが葛藤に苦しんでいるのだろうということも想像できてしまう)

真姫(今の状態でいるか、それとも…、つながりを断ち切る選択をするか)

真姫(彼女にとっては、おそらくどちらも捨てがたいもの、なのかもしれない)

真姫(…だとするなら)

真姫「…」

花陽「ま、真姫ちゃん…。どうするの?これから」

真姫「私は…」

真姫「…まだことりを諦めたわけじゃない」

海未「そう、ですか…」

花陽「って、ことは…、さっき言ってたみたいに、何か説得するの?」

真姫「いえ。違うわ」

真姫「こればかりは、私にはどうすることもできない」

真姫「彼女のこれからを決定づける選択を揺さぶるような真似はしたくない」

真姫「…だから、今週末」

真姫「彼女の決めた選択に従おうと思うの」

真姫「今度こそ本当にダメなら、私は諦めるわ」

123: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:10:17.20 ID:/pQaLYhzo
海未「ことりがどちらを選ぶのか…それに委ねるというのですか」

真姫「えぇ、それでいいでしょう?」

真姫「これなら、あなたが口を出す権利もないわ。彼女自身の選択なんだから」

海未「…分かりました。私もそれに従います」

海未「結果、穂乃果との絆が潰えてしまっても…文句は言えないでしょう」

海未「もうすでに、風前の灯火以下の状態なのですしね」

花陽「…うぅ、聞いてるだけで辛いね…」

真姫「今になっては、選択を突きつけたのも少し後悔してきちゃったけど」

真姫「でも私にも譲れないものがあるから。それにはことりが必要なの」

真姫「彼女に可能性を提示するくらいは、やっても許されるはずよ」

海未「…それでもいいですが、彼女の心労も理解してあげてくださいね」

真姫「わかってる…つもりよ」

海未「…」

真姫「…」

花陽「…な」

花陽「なんか重い空気になっちゃったね…」

真姫「…そうね。んんっ…!」

真姫「よしっ!とりあえず今はことりのことは置いておいて…私たちは私たちの出来ることをしましょう!」

真姫「さぁ花陽!練習と行くわよ!」

花陽「えっ!もう結構な時間だよ!?今から!?」

真姫「そう今から!少しでも体力をつけるために階段アタックよ!」

花陽「お、おぉ…」

海未「それで、私はどうすればいいのですか?帰ってもいいんですか?」

真姫「ふふ…、そうはいかないわ!もう私たちの曲を考えているのだから!」

真姫「海未には花陽が階段アタックでひーこら言ってる隣で私と一緒に曲のことで話し合ってもらうんだからね!」

海未「わ、分かりました…。はぁ…、今になって思えばなんてことを引き受けてしまったのでしょう」

真姫「ふふふ…、バイトをバラされるより数倍いいでしょう?文句言わない」

真姫「じゃ、いつもどおり神田明神へレッツゴー!」

124: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:10:44.70 ID:/pQaLYhzo
多目的ホール内

「それでは今日の練習は終わり。A-RISEは早く帰って十分な休憩を取ること」

「それと、…矢澤さん。今日は息切れが多かったわね?」

にこ「…っ。そ、そんなこと…」

「普通ならそうかもしれないけど、あなたは次期A-RISE候補であり、多くの衆目に晒されるバックダンサーでもあるのよ」

「多少の乱れも許されないわ。今日は居残りで持久力をつけるための特訓ね」

にこ「う、うぐっ…!!」

凛「あはははー!やっぱり怒られてる怒られてるー!」

にこ「へ、なによ…!このくらいへっちゃらよ…!!やってやるわ…!」

凛「ふふーん、そう?ま、がんばってねー。じゃ、凛はこれでー」

ことり「あ、凛ちゃん待って。まだ凛ちゃんだけ採寸終わってないから、それだけ」

凛「あ、南先輩いたんですか。採寸?前と変わってないと思うからダイジョーブにゃー!」

ことり「えっ…」

凛「それより早くおうち帰りたーい!じゃねっ!」タッタカター

ことり「あ…、行っちゃった…」

穂乃果「凛ちゃんはワガママだなぁ…。ごめんね、迷惑かけちゃって」

ことり「…ううん。いいの。穂乃果ちゃんもにこちゃんも、前とそんなに変わってなかったから、多分凛ちゃんも平気、かな」

穂乃果「そう。じゃ、私帰るね」

ことり「あっ!待っ…」

穂乃果「…ん?どうかした?」

ことり「え、えっと…」

穂乃果「どうしたの?早く言ってよ」

ことり「その…」

ことり「…私も、一緒に帰っていいかな?」

125: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:11:37.89 ID:/pQaLYhzo
UTX学院改札前

ことり(少し無謀かも、と思えた私の提案は)

ことり(驚く程あっさりと、了承を得てしまいました)

ことり「…なんか、ドキドキしてる」

ことり(こうして2人で下校するのは、何日ぶりかな?)

ことり(あの日以来…、海未ちゃんと穂乃果ちゃんがケンカしちゃった日から?)

ことり(…うぅん、多分、もっともっと前から)

ことり(なぜなら、私が思い出せる下校風景は)

ことり(いつも3人で帰っていたものばかりだったからです)

ことり「…3人で」

ことり(あの頃は当然だと思ってたことが)

ことり(今じゃとても貴重なものになってしまいました)

ことり(でも、人生ってそんなもの?)

ことり(いつまでも変わらないものなんてない、いつかはみんな、別々の道を歩むものなのかな)

ことり(だとしたら、この胸の中で疼いている)

ことり(あの頃を取り戻したいと思う気持ちは、少し贅沢なものなんでしょうか)

ことり「…まだかな、穂乃果ちゃん」

ことり(穂乃果ちゃんは生徒会長だから、アイドルのことばかりじゃいられない)

ことり(少し生徒会に寄ってからになるけど、それでもいい?と言われました)

ことり(だから私は、こうやって学校玄関の前で穂乃果ちゃんを待っているわけです)

ことり(そんなことを頭の中の自分に説明していたら…)

ことり「あ…、ほ、穂乃果ちゃんっ」

穂乃果「…待っててくれたんだ」

126: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:12:18.72 ID:/pQaLYhzo
テクテク…

穂乃果「ゴメン、少し生徒会の仕事を片付けてて」

ことり「うぅん、お仕事だもんね。仕方ないよ」

穂乃果「ありがと…」

テクテク…

ことり「…大変でしょ?生徒会長とアイドルなんて」

穂乃果「うぅん、平気。私のやりたいことだから」

穂乃果「甘えたことは、言ってられないよ」

ことり「…そっか」

テクテク…

ことり(もっと喋りながら、楽しく帰りたいのに)

ことり(あの頃出来ていたことが、今は何故か出来ませんでした)

ことり(何かを口に出そうと思っても、穂乃果ちゃんの方を向いたら)

ことり(どうしてもそれが口に出せなくて)

ことり(いつも笑ってた穂乃果ちゃんは、今は全然笑ってくれません)

ことり(穂乃果ちゃんが笑うのは、ダンスを踊っている時と、ファンの子と喋るときだけ)

ことり(それ以外はずっと、どこか遠くを見据えている目をして、口はずっとまっすぐで)

ことり(もしかしたら、穂乃果ちゃんは…)

ことり「…ね、穂乃果ちゃん」

穂乃果「何?」

ことり「穂乃果ちゃんは…、こうして私と一緒にいて、楽しい?」

穂乃果「…なんで?」

ことり「えっ…、いや、その…」

穂乃果「…そういう変なこと聞いてこなければ、まだ楽しかったかな」

ことり「…ごめん、なさい」

穂乃果「謝るなら、言わなければいいのに」

ことり「…」

穂乃果「なんて、ごめん。言いすぎかな」

穂乃果「ホントはね、楽しいよ。すごく」

ことり「えっ…」

穂乃果「あれからずっと、一人で帰ってたから」

穂乃果「またこうしてことりちゃんと並んで帰れるのは、なんだか懐かしくて、楽しい」

ことり「…っ!」

127: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:12:53.50 ID:/pQaLYhzo
ことり(その時、私は)

穂乃果「…どうしたの?ことりちゃん」

ことり「う、うぅん…。なんでも、ないの…」

ことり(その時、私は)

ことり(私と帰るのが、楽しいと穂乃果ちゃんに言われるより)

ことり(もう一度私のことを、南さんじゃなくて、ことりちゃんと呼んでくれたことに)

ことり(これ以上なく、救われた感じがして)

ことり(同時に、自分がとても嫌になってしまって)

ことり(それだけで、幸福感を感じている自分が)

ことり(当たり前以下で、満足してしまいそうな自分が)

ことり(今を受け入れて、前に進もうとしない自分が)

ことり(嫌で、嫌で、堪らなくて)

ことり(私は前に進むために、一緒に帰ろうって、言ったはずなのに)

ことり(穂乃果ちゃんにとって、私は存在しているのだ、と感じただけで)

ことり(『存在しない誰か』と比べて、とても嬉しくなってしまって)

ことり(そんな自分に、痛いビンタを与えたくなって)

ことり(その結果、立ち止まってしまって)

ことり(穂乃果ちゃんに心配されてしまった、私なのでした)

ことり「えへ…、わ、私もこうやって穂乃果ちゃんと一緒に帰るの、楽しいよ」

穂乃果「そっか。よかった」

ことり「うん。あ、穂むら、寄って帰っていいかな?」

穂乃果「いいよ。きっとお母さんも喜ぶと思う」

ことり「うん。…うん」

ことり(一瞬、何かを提案しかけて)

ことり(それがどんなものか、自分で理解する暇もないほどに、その提案をなかったことにして)

ことり(そんな自分も、大嫌いだった)

ことり(こうして穂乃果ちゃんと一緒にいられる今が、最高にいいものだって決めつけて)

ことり(変えようと思っても変えられない、そんな私)

ことり(あぁ、私はどうしたらいいのでしょう)

ことり(また立ち止まって、今度は後ろを振り返る)

ことり(今私たちが出てきた、UTX学院。結構歩いたと思ったのに、まだ大きく見える)

ことり(1年と、ちょっと前の春。あの時も、これと同じ景色をみて)

ことり(なのに、今では何もかもが違ってしまった)

ことり(だったら私は、あぁ、どうすればいいの?)

ことり(そんな風に、悲劇のヒロインを気取る私)

ことり(虫酸が走るほど、嫌いだった)

128: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:13:25.74 ID:/pQaLYhzo

希の家

ガチャッ

真姫「ただいまー」

希「んー、おかえり。今日も遅くまでご苦労さま」

真姫「いえいえ、このくらいどうってことないわ」

真姫「でももうお腹ペコペコ。今日のご飯なに?」

希「んとね、今日は…」

希「…って、真姫ちゃんも同居生活にえらく慣れてきたね」

真姫「もう一週間近くになるからね…。そろそろ申し訳ない気持ちも薄れてきてしまったわ」

希「うふ。なんならこのまま卒業までここ使ってくれてもいいんよ?」

真姫「いやそれは…」

真姫(…流石にあと2年半もこの世界に居着くわけにはいかないし)

希「なんて、冗談やよ」

真姫「そりゃ、何年もここにいられたら希も迷惑でしょ?」

希「んー、いるだけなら、うちはいつでも大歓迎なんやけどー…」

希「でもちゃんと、いつかは家に戻らないと、ね」

真姫「…」

希「あ、今すぐ、ってわけじゃなくてもいいから、落ち着いたら…」

真姫「わ、わかってるわよ。いつかね、いつか」

真姫(希は私が家族といざこざがあったか何かで家に帰れないと思い込んでるみたいだから…)

真姫(それの早期解決も望んでるんでしょうけど、実際はそういうわけでもないし…)

真姫(余りにも希の家に居着きすぎれば逆にそれの心配もされかねないわね…)

真姫(…早めに解決方法を見つけないと)

希「さて、そんな話は置いといて、ご飯にしよか」

真姫「そ、そうね。…って今日のご飯は?」

希「それは出てからのお楽しみ~♪」

129: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:14:09.09 ID:/pQaLYhzo
食卓

希「いただきまーす!」

真姫「…」

希「どしたん真姫ちゃん。いただきますしないと」

真姫「き、今日も…肉なのね」

希「若い時はスタミナつけるためにいーっぱいお肉食べておいたほうがいいんよ?」

真姫「それは…わからないことはないんだけど」

真姫「こう毎日続くと飽きちゃうというか…」

真姫(この家に居候してから晩ご飯にお肉を欠かしたことは一度もなかった)

希「んー、そう?真姫ちゃんがそういうんならまた別のもの考えるわ」

真姫「ゔっ…、なんか、ワガママ言ってるみたいでごめんなさい…」

希「んふー、そういうところでちゃんと謝ってくれるから真姫ちゃん可愛いなぁ」

希「最初に会った時と比べたら大分変わったんと違う?」

真姫「最初…?そ、そうだったかしら」

希「せやよ。真姫ちゃん自身は気づいてないんかもしれないけど」

希「人は変わりたいと思えば知らず知らずに変わっていくもの」

希「きっと真姫ちゃんも変わりたいって思ったから、学校に来たんでしょ?」

真姫「…そ、そうかもね」

希「ん、そうよ。じゃ、冷める前にご飯はよ食べよか」

真姫「わかった。…いただきます」

真姫「…」モグモグ

真姫(人は変わりたいと思えば知らず知らずのうちに変わっていくもの…か)

真姫(多分ことりも、変わりたいって思ってるはず…。だから私に勧誘された時、唸るほど迷ってた)

真姫(けど、あと一歩が踏み出せない。それは、後戻りできない闇の中の一歩)

真姫(この先に道があるのか、それともただ底のない奈落なのかは…私にすらわからない)

真姫(だから…私にはどうしようも…)

希「ちょっと、真姫ちゃーん?」

真姫「…っ!?ぶふっ…、ごほっ!な、なによいきなり!」

希「さっきからずっと呼んでたよ。なに難しい顔して考え事してるん?」

希「ご飯は明るく楽しーく食べるものでしょ!悩み事があるなら元生徒会長さまのうちに相談せい!」

真姫「べ、別にそんな…、…そうね」

真姫「あまり詳しく言うことはしたくないけど、ちょっとくらいなら…」

希「お?なになに?」

130: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:15:16.31 ID:/pQaLYhzo
真姫「私と花陽がアイドルしてる、って知ってるわよね?」

希「うん。今日もそれで帰ってくるの遅くなったんやよね」

真姫「えぇ。それで今日は…勧誘をしてたのよ。メンバーの」

希「ふーん。二人だけでやるんやないんね」

真姫「まぁ、最悪アイドルは二人でもできるでしょうけど、他にも色々あるじゃない。作詞とか」

真姫「で、一人はその…私の華麗な交渉術でぜひ仲間に入れて欲しいと言ってきてくれたんだけど」

希「ふむふむ」

真姫「もうひとり誘いたい人がいて…、でもその子には色々と事情があって、本当にこのまま誘っていいものか悩んでたの」

真姫「このまま無理やり誘えば、大切な友達と引き離しちゃうことになるし…」

真姫「けど彼女は私たちにとっても欠かせない存在で…」

真姫「それに彼女自身も悩んでたみたいだから、私はどうすることが正解なのかな、って…」

希「ふーむ…なるほどなぁ」

希「…真姫ちゃんは、今現在は、どうしようと思ってるん?」

真姫「わ、私は…彼女の判断に全て任せるつもりで…」

希「ならそれでいいんじゃない?」

真姫「えっ?い、いや…それもなんだか無責任じゃない?」

希「かもね。でもいいんよ。きっかけなんて無責任でちょうどいい」

希「いつどこからくるかわからない、ひょんなことが、人生を変えるきっかけになるかもしれんのやし」

希「うちもその子の判断に任せるのが、彼女のためにも一番いい方法やと思うよ」

真姫「そう、なのかな…」

希「人は変わりたいと思えば知らず知らずに変わっていく」

希「真姫ちゃんがきっかけを与えて、その子が変わりたいと思ったなら、そのうち見つかるはずよ。答えがね」

真姫「…そうかも、ね」

131: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:16:05.78 ID:/pQaLYhzo

ことりの部屋

ことり「…」モグモグ

ことり「穂むらのお饅頭はやっぱり美味しいなぁ…。近頃食べてなかったから懐かしいよ」

ことり「うっ…、でもこんな夜中にお饅頭食べたら太っちゃう…?あ、明日海未ちゃんにもおすそ分けしよ…」

ピリリリ…

ことり「ん?あ、そんな話をしてたら…」ピッ

ことり「はい、もしもし?」

海未『あ、夜分遅くに失礼します。ことりですか?』

ことり「もー、私の携帯にかけてるんだから私に決まってるでしょ」

海未『あっ、そ、そうでした…。すみません』

ことり「…海未ちゃん、やっぱりまだ…」

海未『わ、私のことは良いのです!ことりのおかげで、一時とは比べ物にならないほど良くなりましたし…』

海未『私がああして…、下級生と話せるようになれたのも、ことりのおかげです』

ことり「そ、それは海未ちゃん自身の力だよー。えっと、それで今日も…穂乃果ちゃんのこと?」

海未『…はい。どんな様子でしたか?何か気にかけていたことは?』

ことり「うん、えっとね…」

ことり(いつも、夜中のこの時間には海未ちゃんからの電話が入る)

ことり(話す内容は決まって、穂乃果ちゃんのこと)

ことり(海未ちゃんはもう、穂乃果ちゃんと口も利いてもらえないから、私を通じて穂乃果ちゃんの様子を聞く)

ことり(私も穂乃果ちゃんと会えない日だってあるけど、会えた日には決まって長電話)

ことり(穂乃果ちゃんの言ったこと全部、一挙手一投足…ってほどじゃないけど、大体のことを海未ちゃんに伝える)

ことり(おかげで海未ちゃんは芸能科でもないのにアイドル専攻のことに少し詳しくなっちゃって、多分花陽ちゃんのことも知ってたんじゃないかな)

ことり(私も、そんな海未ちゃんに嫌な顔一つせず、今日の穂乃果ちゃんのことを話すんだけど…)

ことり「で、アイドル専攻が終わって、それで…」

ことり「…」

海未「…ことり?どうしたんですか急に止まって。それから、放課後は?」

ことり「…うん。それからは…」

ことり「そこで別れて、一人で帰ったよ」

ことり(海未ちゃんと自分を比べて、優越感に浸ってしまった下校道)

ことり(醜い自分を隠すために、海未ちゃんに嘘をつきました)

ことり(海未ちゃんに対して申し訳ないと思ったから?もしくは、嫌な私を海未ちゃんに見せたくなかったから?)

ことり(それとも…)

ことり(このままずっと、海未ちゃんの知らない穂乃果ちゃんを、独占したかったから?)

ことり(それ以上考えるのが怖くなって、急いで海未ちゃんとの電話を切りました)

ことり「…何やってるんだろう」

ことり(もう寝よう。それで、残ったお饅頭は…)

ことり「…明日、食べよう」

132: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:16:46.41 ID:/pQaLYhzo
翌日 朝

二年教室前

真姫「あ、おはよ」

花陽「おはようございますっ」

海未「…」

海未「…どうしてここにいるのですか」

真姫「曲のことで話したいことがあって、来ちゃった」

海未「放課後ではダメなんですか…」

真姫「別にダメってわけじゃないけど、ほら、話すならナルハヤがいいでしょ」

花陽「えーっと…、私はただの付き添いです」

海未「分かりました…。朝礼までそれほど時間があるわけでもないので、ここで話しましょう」

海未「確か真姫の言うには、甘い感じのラブソング、とのことでしたが…」

真姫「うん。作詞できた?」

花陽「プロのメイドさんなら簡単ですよね!?」

海未「…あまりここで大声で話すのはちょっと…」

花陽「あ、ご、ごめんなさい…」

海未「昨日貰った曲を聞いて軽く詩を書いてみました。なにぶん作詞なんて初めてなのでこれでいいのかはわかりませんが…」サッ

真姫「うん、仕事が早くて助かるわ。んーと…ふむふむ…」

花陽「お、おぉおぉ…!これを海未さんが…!?」

海未「お、可笑しいでしょうか…。自分でも正直少し…」

真姫「…いえ!とてもいいと思う!」

海未「ほ、本当ですか!?」

花陽「はいっ!そのっ…、恋する女の子って感じがビシビシ伝わってきます!」

花陽「この…、好きな人を待つ気持ち、というか…、気になるあの人はどんなことを考えてるんだろうか、って言う年頃の乙女!?みたいな!」

花陽「海未さんすごいですっ!その海未さんを連れてきた真姫ちゃんもすごい!」

海未「べ、ベタ褒めですね…。ありがとうございます…」

花陽「もしかして海未さん…恋をしている!?」

海未「えっ!?こ、恋ですか…?いえ、特に覚えは…」

真姫「んじゃあ何を想って書いたの?この詩」

海未「えっ…、あ、そ、そうですね…。その…」

海未「友人のことを想って…」

花陽「あ、じゃあその人のことが?!」

海未「ど、同性ですよ!?」

花陽「さらに破廉恥に!?」

真姫「…ややこしいわ」

133: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:17:34.65 ID:/pQaLYhzo
海未「好きとか、そういうことではなく…」

海未「いや、今でも好きなのですが、異性に向けるような恋愛感情ではなく…」

海未「しかしこの恋人を想う気持ちというのは私のこの想いと似たようなところがあるのではと思って…」

真姫「あーわかったわかったから。あなたもそっち方面だったら収集がつかないわ」

海未「そっち方面って…『も』、とは…?」

真姫「…なんでもない」

花陽「ん?」

真姫「ふむ、あなたの友人を想う気持ちを歌詞に乗せた、と…」

海未「し、少々大げさにアレンジして、ですよ?」

真姫「その友人って…高坂穂乃果?」

海未「…っ。そ、そうです…」

花陽「やっぱり海未さん、穂乃果さんのこと大切なんですね」

海未「あの、拡大解釈はやめてくださいよ。決してやましい気持ちは…」

真姫「わかってるって。うん、でも…」

真姫「歌詞全体としてはいいと思うんだけど、所々から少しヤンデレっぽさが漂ってくるのよね…」

海未「や、ヤンデレ…!?とは一体…」

真姫「ストーカーみたいなものよ。執着が激しすぎるというか…」

花陽「はっ、たしかに…。言われて見れば略奪愛っぽい…!?」

海未「そ、そうですか!?全然意識してませんでした…」

真姫「その点はどう釈明する?」

海未「いや、べ、別にそんなつもりないですし…」

海未「ですがそうだと言うならば改善します…」

真姫「うん。お願いね。それから追加で注文なんだけど~…」

キーンコーンカーンコーン…

キリーツ、レーイ、チャクセーキ

海未「…ふぅ」

海未(厄介なことを引き受けてしまったものです、つくづく)

海未(まさか作詞で私の心理状況を読み取られるなんて…真姫は心理学者かなにかでしょうか)

海未(しかし…、正直に話すわけにもいきません。久しぶりにできた友人に…)

海未(あんな、ことを…)

134: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:18:25.40 ID:/pQaLYhzo
授業中

2年教室

ことり「…」カキカキ

ことり(UTX学院は勉強する内容も普通に難しいから、ちゃんとノートを取らないと大変)

ことり(少しでもウトウトしちゃうと、すぐについていけなくなっちゃいます)

ことり(だから私は、こうして真面目に黒板の文字を書き写して…)

ことり(いっつも居眠りしちゃうお友達に、テストの数日前に貸してあげるために…)

ことり「…」

ことり(いえ、もうそんなお友達はいません)

ことり(海未ちゃんはあの時以来、少しボーッとするようになってしまいましたが、勉強に励む姿勢は変わってないし)

ことり(そして…)

ことり(…うぅん、もう、言うまでもないのかも)

ことり(穂乃果ちゃんは、とても優秀になった)

ことり(勉強だって私を追い抜いて、学院みんなの憧れの的にもなって)

ことり(当然、居眠りなんかしない、理想の生徒会長に)

ことり(でもそれは…、今まで16年、一緒に歩み続けた人生で)

ことり(私の知らない穂乃果ちゃんなんです)

ことり(いつから?いつからでしょう)

ことり(私の知ってる穂乃果ちゃんが、私の知らない穂乃果ちゃんになってしまったのは)

ことり(具体的にいつかは、すぐには思い出せません、…だから)

ことり(あの日から振り返ろう。きっと私たちの運命が決定づけられてしまった、あの日)

ことり(穂乃果ちゃんと海未ちゃんと、入る高校を模索していた中学3年生の春…)

2年とちょっと前

穂むら 穂乃果の部屋

ことり「それじゃー…、これとかどう?」

穂乃果「えー、遠くない?穂乃果歩いて通える場所がいいー!」

海未「でしたらこれはどうでしょうか。自転車通学にはなりますが…」

穂乃果「うぅん…、共学かぁ…。ちょっと怖いなー」

ことり「もー、じゃあどこがいいの?」

穂乃果「…んーと、ほら、こことかいいんじゃない?UTX学院!」

ことり「ここぉ?って確か…」

海未「相当なお嬢様校で、偏差値もなかなかだと記憶していますが…、穂乃果の学力では難しいのでは?」

穂乃果「ちょっ…、ひどくない!?大丈夫だよ!なんだか面白そうな学校だし!ここにしよ!ね?いいでしょ?」

海未「…穂乃果にそう言われては断れませんね。しかし、学力が追いつかなければ意味がないのですよ?」

穂乃果「わかってるって!よーし、UTX学院入学目指して、がんばろー!」

135: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:19:45.96 ID:/pQaLYhzo
ことり(たくさんの高校のパンフレットの中の一つ)

ことり(入るのを決めた理由は、近かったから)

ことり(最初は、ただそれだけの理由で、穂乃果ちゃんも学力が及ばなかったらすぐに別の高校に入学するつもりだったと思う)

ことり(けれど…)

穂乃果「ほらっ、どう!?見てみてすごいでしょ!!」

ことり「穂乃果ちゃんが模試でB判定…!」

海未「奇跡としか言いようがありません…!!」

穂乃果「努力の結果だよ!へへっ、これならもうUTX学院間違いなしだよね?」

海未「しかし、まだB判定ですよ!確信に至るには早すぎます!」

ことり「だけど、これで私たちが落ちちゃったらシャレにならないよね…」

海未「うっ…、たしかに…」

穂乃果「あはは!大丈夫だよ!だってこれまでもずっと一緒だったんだし!」

穂乃果「きっとこれからも、ずーっとずっと一緒に決まってる!だから二人共…うぅん、三人みんな、ぜーったいに合格するよ!」

海未「…えぇ、そうですね」

ことり「そのためにも、受験勉強頑張らないとね!」

穂乃果「うんっ!!」

ことり(穂乃果ちゃんの努力の甲斐もあり、成績はグングンと伸びて)

ことり(UTX学院入学も、夢じゃなくなってきちゃいました)

ことり(その頃の私たちは、それが素直に嬉しくて、そして穂乃果ちゃんに負けないように、私たちも努力しました)

ことり(これまでも一緒だったから、これからもずっと一緒)

ことり(その言葉を、私たちはその頃、信じて疑わなかったんです)

ことり(穢れを知らない無垢な小鳥のように、受け入れていたのです)

136: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:20:27.85 ID:/pQaLYhzo
ことり(そして、ついにやってきた合格発表の日)

ことり(この一年の努力は…、三人とも、報われました)

穂乃果「やった、やったやったやったぁぁぁぁっ!!」

海未「うぅっ…、良かったですね!本当にっ…、うぅぅっ…!!」

ことり「夢じゃないよね!?あははぁぁぁんっ…!やってきてよかったよぉぉぉぉっ…!!」

穂乃果「合格できたんだっ…!あの大きな建物が、春から私たちの通う学校になるんだーっ!!」

ことり(三人でお祝いもして、記念撮影もして)

ことり(落ち着いたら、入学してからどの学科にするか、何日も何日も悩みましたよね)

ことり(一緒の学科もいいですけど、やっぱりそれぞれの道を選ぶ時期も来たんじゃないですか)

ことり(うぅん。私は同じ学科がいい。私は芸能科なんて嫌ですよ。海未ちゃんも歌おうよ。嫌です!)

ことり(揉めに揉めて、結局最後は、みんなバラバラの学科、専攻に通うことになっちゃったね)

ことり(でもそれで離れ離れになるなんてことは考えませんでした。クラスが離れてても、学科が違っていても)

ことり(歩けば1分もかからない場所にずっといられる)

ことり(限りなく近くに、ずっといられる)

ことり(それは私たちにとって、最上の幸せでした)

ことり(そしてやってきた、入学の季節)

ことり(おろしたての真っ白な制服に身を包み、私たちはUTXの講堂に座っていました)

ことり(先生方のながーいありがたいお話を聞き流して、余りにも大勢の入学者にびっくりして)

ことり(クラスが多すぎて、私たちは3人それぞれ、バラバラのクラスに振り分けられました)

ことり(残念だね、って帰り際に話をしつつ、舞い散る桜を背に、三人並んで下校したっけ)

ことり(あの日も、後ろを振り返ったんだった)

ことり(雄大にそびえ立つ、私たちの学院)

ことり(きっと今までにない夢が、溢れてるって)

ことり(…信じていたのに)

137: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:21:10.88 ID:/pQaLYhzo
ことり(でも、でもね?最初から…そうじゃなかったんだよ?)

ことり(少なくとも一年生の一学期は、いつもと同じ、同じ日々しかなかった)

ことり(それどころか、三人それぞれが違う経験をするなんて、それまでそうそうなかったから)

ことり(海未ちゃんの演劇学科ではこんなことをやった、私のデザイン学科ではこういうことを)

ことり(穂乃果ちゃんの芸能科は、こんなことまでやっちゃうんだよ!)

ことり(毎日毎日、飽きることなく3人で語り合い、笑い合い)

ことり(満たされすぎて、怖いくらい)

ことり(中間テストでは穂乃果ちゃんが泣きついてきて、海未ちゃんが『受験が終わればすぐこれですか…』って呆れたりして)

ことり(私はそれを心の底から楽しんで、ちょっと離れたところで半笑い)

ことり(海未ちゃんが弓道部に入ったのを二人で見学して、穂乃果ちゃんが楽しそうだからって体験入部)

ことり(でも経験者じゃない人はすぐに弓持たせてくれないから、って、すぐやめちゃったり)

ことり(帰りはみんなで穂むらに寄って、新作のお饅頭を食べたり、恋愛映画をみて涙したり)

ことり(休日はおしゃれな街へショッピングをしたり、ちょっとオタクなお店にも寄ってみたり)

ことり(書ききれないくらい、思い出せないくらい、なんでもない日々は、何でもないように続き)

ことり(気がつけば、秋が来て)

ことり(そして…、ついに出会ってしまったの)

ことり(変わらない日から、変わる日へのスタート地点)

ことり(アイドル、ってものに)

138: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:22:30.90 ID:/pQaLYhzo
1年前

UTX学院 1年教室

海未「穂乃果が…!?」

ことり「す、スクールアイドル…!?」

穂乃果「うん!どうかな、って…」

海未「ど、どど、どうしていきなり…?」

穂乃果「いきなりじゃないよ!芸能科にはもともとアイドル専攻っていうのがあって…あ!私のやってる歌手専攻とは別なんだけど…」

穂乃果「春からずーっと気になってたんだけど、結構キツいって聞いてたから決心もつかなくて…」

穂乃果「でもね!なんと…、今参加すると、うまくいけば来年の春にはスクールアイドルと一緒に活動できるかもしれないんだって!」

ことり「スクールアイドルって…、A-RISE?」

海未「あぁ、あの…。えっと、参加は自由なのですか?」

穂乃果「うん、みたい。ただ落第基準が相当厳しいみたいなんだけど…」

穂乃果「でもね、これってチャンスだと思わない!?今まではUTXのスクールアイドルは基本的に3年生3人しか枠がなかったんだけど…」

穂乃果「来年からは2年生以下の3人も枠が増えるんだよ!今までの倍だよ倍!」

ことり「へぇ…、制度が変わるってこと?」

穂乃果「うん!聞くところによるとね、2年の先輩がやってる…、アイドルなんとか部?ってところが学校に提案したみたいで…」

穂乃果「頑張ってるアイドルの卵を1年で使い切るのはもったいない!っていう理由から、A-RISEと共にパフォーマンス出来る枠が追加されたみたいなの!」

海未「それはA-RISEと同じように…、学校側で大大にアピールされるんですか?」

穂乃果「もっちろん!だから、これはもう狙うっきゃないよ!」

海未「それは確かにチャンスではありますね…」

ことり「すごいよ!それ!」

穂乃果「あ、でも…」

ことり「ん?どうしたの?なにか問題でも?」

穂乃果「…アイドル専攻の授業は通常の授業の後にあって…、一緒に帰れなくなっちゃうかも…」

穂乃果「それに休み時間にも練習が挟まるかも知れないから、二人とお昼一緒に食べられなくなる可能性だって…」

海未「何言ってるんですか!その程度で諦めるつもりなんですか?」

ことり「今までいーっぱい、一緒に過ごしてきたじゃない。ちょっとくらい離れてても、全然平気だよ」

穂乃果「そ、そう?平気かなぁ…?」

海未「我々のことは心配いりません。穂乃果がやりたいと本気で思っているなら…」

ことり「私たちは背中押してあげるだけ!でしょ?」

穂乃果「う、海未ちゃんっ…!ことりちゃんっ…!!」

穂乃果「私は最高の友達を持ったぁぁぁぁ!!幸せものだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!うえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

海未「ちょ、穂乃果…」

ことり「みんな見てるよ…。恥ずかしい…」

139: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:23:02.29 ID:/pQaLYhzo
ことり(ちょっとくらい離れてても全然平気)

ことり(穂乃果ちゃんがやりたいなら、私たちは背中を押すだけ)

ことり(今考えれば、こんなの)

ことり(全部ゼンブ、嘘っぱちだったんです)

ことり(でも私たちをつなぐ絆はいとも容易く幻想を魅せてしまって)

ことり(そのとき、そのときにさえ止めていたら)

ことり(今私は、こんな思いをせずに済んだのかもしれない)

ことり(それから、私たちは、穂乃果ちゃんは…)

先生「…南、おい南。寝てるのか?」

ことり「…あっ。は、はいっ!えと、な、なんですか…?」

先生「さっき言ったところ、答えてみろ」

ことり「え、えっと…」

穂乃果「ことりちゃん、135ページの5行目だよ」

ことり「…」

ことり「…すみません、聞いてませんでした」

先生「ちゃんと授業は集中しろー。すぐ置いてかれるぞー。じゃあ後ろの…」

ことり(私の隣に、穂乃果ちゃんはいない)

ことり(回想は妄想を呼んで、幻聴も引き起こした)

ことり(…授業は真面目に聞こう)

ことり(思い返すのにも、疲れてきちゃったところだし)

140: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:24:04.92 ID:/pQaLYhzo
お昼

花陽「ま、真姫ちゃーーーーーーーーー…」

親衛隊ズ「「「「花陽ちゃん花陽ちゃん花陽ちゃん花陽ちゃん花陽ちゃん花陽ちゃん花陽ちゃん」」」」」

真姫「花陽ーーーー…」

真姫「…一人でご飯食べてこよ」

真姫「花陽も大人気ね…。困ったものだわ」

食堂

真姫「ううぇっ…、ここにも人だかりが…。なんでこんな…」

真姫「…あっ」

ツバサ「…ふぅっ」

英玲奈「…」

あんじゅ「お腹すいたわー」

真姫(A-RISEの3人…!が食堂に…)

真姫(直接話しかけるのはルール違反だから野次馬が大量に押し寄せてるってわけなのね…)

真姫(それにしてもこの量…、学校の先輩を囲む生徒の数としては異常よね…)

真姫(それだけ学内でも徹底してる…、近くにいながらにして会うことのできない、A-RISEへの憧れ…)

真姫(…恐怖すら感じるわね)

あんじゅ「…あ」

あんじゅ「あーっ!真姫ちゃんだー!」

真姫「…えっ」

あんじゅ「あははっ!昨日ぶりねー!元気してるー?」

真姫「あの、ちょっ…!」

野次馬ズ「「「ギロッ」」」

真姫(周りの視線が剣のように突き刺さる)

真姫(優木あんじゅ…、あなたは死刑執行人か何か?)

真姫「ご、ごめんなさいぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!」ダダダッ

あんじゅ「…あ。行っちゃった」

英玲奈「…誰?今の」

ツバサ「知り合い?」

あんじゅ「昨日知り合った子ー。可愛いわよねー」

英玲奈「あまり人前で人を呼ぶものじゃない」

あんじゅ「ごめんなさーい」

141: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:24:50.28 ID:/pQaLYhzo
???

ガチャッ

希「…」

希「ここに来るのも、久しぶり、やね」

希「なーんにもない…。前はたっくさん、あったのになあ」

希「変わりたいと思えば、知らず知らずに変わっていく、か…」

希「…うちらは、どれだけ変わりたい、って思ってしまったんやろう」

希「今、どれだけ変わってしまったんやろう」

希「何もかもが、変わっちゃったね」

希「…ねぇ、えりち?」

希「…ふぅ」

希「さーてと、それじゃあ…」

希「もしかしたら近々使うかもしれんし、掃除と備品を…あ」

希「そーいえばあれ…、生徒会に置きっぱなしやったっけ…」

希「忘れてた…。うーん…、どうしよ」

希「…誰かに見られるのも恥ずかしいし、明日の朝、こっそり取りに行けばいっか」

142: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:25:46.95 ID:/pQaLYhzo
放課後

ことり「…」カタカタ…

ことり(昨日採寸した穂乃果ちゃんたちの衣装を作るため)

ことり(デザイン専攻のA-RISE候補生担当のみんなでミシンを動かしてます)

ことり(とは言え、私は他のみんなと特別仲がいい訳ではないので会話もなく)

ことり(無言でミシンをかき鳴らしていると自然と別のことを考えてしまって)

ことり(授業中の回想の続きを半ば無意識に始めていました)

ことり(えっと、どこまで思い出したんだっけ)

ことり(そう、ちょうど穂乃果ちゃんがアイドル専攻に参加したところまでだったっけ)

ことり(あのあと、私たちは…)

一年前

ことりの部屋

プルルル… ガチャッ

穂乃果『はい、もしもし。ことりちゃん?』

ことり「あ、もしもーし」

穂乃果『どうしたのー?こんな時間に』

ことり「うん、ほら…最近一緒に帰ってないじゃない?休み時間も忙しいみたいだし」

ことり「どうしてるのかな、って思って」

穂乃果『どうしてるって…別にいつも通りだよ』

穂乃果『アイドル専攻は大変だけど楽しいし…この前も優しい先輩に誉められちゃった』

穂乃果『このまま行けば次のA-RISEにも選ばれるかもね、だって!すごくない!?』

ことり「そうなの?すごいなぁ…!穂乃果ちゃん優秀だね」

穂乃果『でしょ?いつかあの大きなスクリーンで歌って踊っちゃうよー?期待しててよね!』

ことり「うん、期待して待ってる」

穂乃果『うんっ!じゃあ、明日も早いから、おやすみ!』

ことり「あっ…。…うん、おやすみ」

ピッ ツー…

ことり「…もう少し話したかったんだけどなぁ」

143: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:26:21.87 ID:/pQaLYhzo
ことり(それからも穂乃果ちゃんはアイドル専攻に精力的になって)

ことり(そして熱心に取り組むにつれて私と海未ちゃんとの会話も少なくなってきて)

ことり(それに比例して夜の電話の頻度も上がっていました)

ことり(後から海未ちゃんから聞くと、海未ちゃんも頻繁に穂乃果ちゃんに電話をかけていたらしいです)

ことり(心配しないでいい、なんて偉そうに言っておいて、いざとなると二人とも寂しくて仕方なかったから)

ことり(きっとそれが穂乃果ちゃんには重荷になってしまったんでしょう)

ことり(真剣な彼女に、その時の私たちのお節介は)

ことり(酷く邪魔に思えて仕方なかった)

ことり(だから、あんなことになっても仕方なかった、のかな…)

UTX学院 食堂

海未「…」

ことり「…やっぱり、海未ちゃんも?」

海未「はい、まさか…」

海未「穂乃果から着信拒否されるとは…」

ことり「ちょっと、私たちかまってちゃん過ぎたのかもね」

海未「かもしれないですね…。ショックですが穂乃果には迷惑だったんでしょうね」

ことり「これからはちゃんと遠くから応援してあげよ?休み時間に会えれば少し話す程度にね」

海未「そう、ですね…」

ことり(自らの行いを反省して、それからは積極的に穂乃果ちゃんに連絡することはなくなりました)

ことり(いつかは穂乃果ちゃんも許してくれて、冬休みとかになればまた和気藹々と話し合えるようになるって)

ことり(その時は、そう信じてました)

144: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:27:05.83 ID:/pQaLYhzo
ことり(けれどその日以降、穂乃果ちゃんと私たちは次第に喋る機会も少なくなっていき)

ことり(廊下ですれ違って声をかけても無視をされるようになりました)

ことり(穂乃果ちゃん、すねてるのかなって)

ことり(最初はそんな風に、どこか軽く考えてて)

ことり(いつかは元通りに、また仲良しになれるって)

ことり(だって、今までもそうだったんだから)

ことり(でも、何日経っても、何週間経っても穂乃果ちゃんは一向に喋ってくれませんでした)

ことり(そして、とある冬の日)

ことり(業を煮やした海未ちゃんがついに、穂乃果ちゃんに詰め寄りました)

UTX学院前

穂乃果「…」スタスタ

海未「待ってください穂乃果!」

穂乃果「…」ピタッ

穂乃果「…」…スタスタ

海未「待ってというのが聞こえないのですか!」ガシィッ

穂乃果「…なんなの、この腕。離してよ、痛いから」

海未「えぇ、話してあげます。この腕をつかむ理由を」

穂乃果「何、意味わかんないこと言ってるの?」

ことり「はぁっ…、はぁっ…!う、海未ちゃんっ」タッタッ…

ことり「やっぱり、もう少し考えてからっ…!話を聞くのはそれからでもぉっ…」

海未「どうして私やことりを無視するんですかっ!私たちが何か気に障ることをしたのですか!?」

穂乃果「…」

海未「…以前、夜中に毎日電話を掛けたのは謝ります。もう二度としないと誓います。現に今は一切していないでしょう!?」

海未「ですから、お願いです!無視をするのならせめて理由を教えてください!」

海未「私たちに至らぬ点があるのなら、改善しますからっ!」

穂乃果「…」

海未「穂乃果ぁっ!!」

穂乃果「…わざわざ、律儀にアイドル専攻の授業が終わるまで待ってたのに免じて、答えてあげる」

穂乃果「前、ことりちゃんと海未ちゃんがこぞって電話をかけてきたとき」

穂乃果「とても、鬱陶しかったんだ。アイドル活動にも支障が出かねないし」

穂乃果「だから相談したの、先輩に」

穂乃果「そしたら、こう言ってくれた」

「そんな人たちとは縁を切っちゃいなさい。あなたの発展を阻害しているから」

145: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:28:01.86 ID:/pQaLYhzo
穂乃果「あなたたちと付き合っていると、私はトップを取れないらしいの」

穂乃果「だから私、あなたたちと縁を切ることにした」

海未「…」

海未「…ぇ?」

穂乃果「これが理由だよ。もういいでしょ?腕、離して…よっ!」グイッ

海未「あっ…!」

穂乃果「バイバイ。もう話しかけてこないでね」

海未「…」

ことり(その時、私も、海未ちゃんも)

ことり(あまりのことで声すら出ませんでした)

ことり(今まで、15,6年間、ともに人生を過ごしてきて)

ことり(そして、その絆を捨てる理由が…先輩にそうしろと言われたから、だなんて)

ことり(あまりにも突拍子すぎて、あまりにも理不尽すぎて)

ことり(それでも何とか、海未ちゃんは声にならない声で穂乃果ちゃんの腕を掴もうともがきました)

海未「ま、待ってっ…!!どういうことですかっ…!」

穂乃果「どういうことも何も、そのままだよ」

穂乃果「邪魔なの。あなたが」

海未「邪魔、って…!な、なぜ…!?なぜ知り合って長くもない先輩に、そういわれたからと言って…」

穂乃果「別に先輩に言われたからじゃないよ。私もそうするべきと思ったから」

穂乃果「夜中は身体を休める時間なのに、電話で無駄な体力を消耗させてくるような人とは、別れるべきだって」

穂乃果「私は、トップをとるために必死なんだから」

海未「トップって…、おかしいですよっ!どうして友達を捨ててまで、そんなものに執着するんですか…っ!?」

穂乃果「そんなもの…?…ふざけないでっ!!」バシィッ

海未「きゃぁっ!!?」

穂乃果「私は…、私はスクールアイドルでトップを獲らなきゃいけないの…!それ以外は何の意味もない…、屑同然なの…!」

穂乃果「誰よりも上へ登って、頂点を獲って…輝かしいステージに立つのが、私の夢なのっ!!」

穂乃果「それを、そんなもの呼ばわり…!?あなたに何がわかるの!?」

穂乃果「アイドルのことなんて、何も知らないくせにっ!!!」

海未「…ッ!!」

穂乃果「…お願いだから、消えてよ。もう、話したくもない」

穂乃果「さようなら。…園田さん。南さん」

146: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:29:04.18 ID:/pQaLYhzo
ことり(次こそ、海未ちゃんはその場から一歩も動けなくなってしまいました)

ことり(ショックが強すぎて、現実が理解できなかったそうです)

ことり(なんで、こうなったのか…それは未だに、私もわかりません)

ことり(でも、そんな事実をいっぺんに背負うことになってしまった荷は、海未ちゃんには少し重すぎて)

海未の部屋

ことり「…海未ちゃん、入るよ?」ガタッ…

海未「…」

ことり「これ、今日の課題と…、来週から冬休みに入るって内容のプリント」

海未「…りがと…、ざいま…す」

ことり「…海未、ちゃん。その首…また、やっちゃったの…?」

海未「首…?なんの、こと、ですか…?」

ことり「切り傷が、あるじゃない。とても痛々しい…」

海未「あぁ、これ…です、か…?いいんです、これは…」

海未「私の喉が正常であるがゆえに…、穂乃果を傷つけてしまったのですか、ら…」

海未「無くなってしまえと、自らにば、罰を…与え、たまでで、す…は、はは…」

海未「ねぇ、穂乃果は許っ、してくれま…したか?こんな、私を見て…」

ことり「…海未ちゃん、穂乃果ちゃんは…」

海未「う…、うぐっ、うぐぁぁぁぁぁぁぁっ!!!うるさいぃぃっ!!いないいないいないぃぃぃっ!!」

海未「私を認めてくれない穂乃果なんていないっ!!あぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

海未「出て行ってぇっ!!喋らないでよぉぉっ!!うるさい、あぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」

ことり「…」

ことり「…わかった、ごめんね。お邪魔して」

ことり(海未ちゃんは、心に深い深い傷を負ってしまいました)

ことり(完治にはそれこそ、3学期を丸々費やしました)

ことり(本来なら出席日数の関係上、海未ちゃんはもう一度一年生をやり直す羽目になるのですが)

ことり(海未ちゃんが専攻していた演劇舞踊は既に修了できるほどの技量があると判断されたため、事情も含め進級が許されたのです)

ことり(あの頃と比べると、なかったかのように海未ちゃんは明るくなりましたが、後遺症?なのかなんなのかはわからないけど…)

ことり(以前の海未ちゃんと比べて、行儀やマナーが少し、悪くなってしまいました。そして、私に少し、甘えん坊であるところも増えたのかな)

ことり(そう、後は…ほとんど笑わなくなってしまって。作り笑いならできるみたいだけど。私がおかしなことを言っても、クスリともしてくれません)

ことり(でも、その程度で済んで、本当に良かった。もし私が…穂乃果ちゃんと海未ちゃんを繋ぎ止めていなければ…)

ことり(…そっか、そのこともあったっけ)

147: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:29:49.66 ID:/pQaLYhzo
ことり(3学期に入り、私は学校が終わると海未ちゃんの治療のためにいつもお見舞いに行ってました)

ことり(信頼のおける友人として、海未ちゃんのカウンセリング?に付き合っていたのですが)

ことり(極度の妄想や自傷行為は、改善するどころか日に日に酷くなっていって)

ことり(このままだと、海未ちゃんは…死んでしまうかもしれなかったそうです)

ことり(これじゃあいけないって、どうにかしなきゃって思ったときに)

ことり(あの張り紙を見つけたの)

ことり「来年度、A-RISE候補生サポーター募集…?」

ことり(A-RISE候補生、というよりも、今でいうところのA-RISEのバックダンサー)

ことり(つまり穂乃果ちゃんたちのサポートをしてくれる生徒を募る、という内容の張り紙でした)

ことり(そしてその中に、衣装の作成、という文字が)

ことり(これだ、と。私はそれを見た瞬間に、応募の手続きをしに走りました)

ことり(友人としては、もはや見放されてしまった私でも)

ことり(サポーターの一人としてなら、接してもらえるかも)

ことり(もし無視されても、穂乃果ちゃんの動向を公的に見ることができるだけでも大きい)

ことり(穂乃果ちゃんが何をしていたか…、それを逐一海未ちゃんに報告することで、彼女の様態が少しでも改善するかもしれないのなら)

ことり(簡単な審査の下、私はA-RISE候補生サポーターとして選ばれることとなったのです)

ことり(3学期間は居残りでA-RISEやアイドル専攻の人たちの見学や衣装作成の基礎を学ばされました)

ことり(その際に穂乃果ちゃんに会うこともありました。話すことも、少しは)

ことり(そうやって少しずつ少しずつ穂乃果ちゃんの情報を集めて、海未ちゃんに話してはまた情報を集めて)

ことり(それを繰り返していくうち、海未ちゃんもやっと、現実に戻ってくることができました)

ことり(自らを取り戻した海未ちゃんは、真っ先に私に抱き着いて、赤ん坊のようにわんわん泣きました)

ことり(私もそれを受け入れて…って、これは思い出すと恥ずかしいや。パスパス)

ことり(こうして海未ちゃんの心の治療はほとんど完了しましたが、だからと言って…穂乃果ちゃんとの薄い絆を手放すことは、できませんでした)

ことり(そもそも来年度のサポーターの募集だったのに進級してからやめる、では示しがつかないしね)

ことり(けれど、今は)

ことり(今はその繋がりが、しがらみとなってしまって)

ことり(今のままじゃダメだって、変わらないといけないんだって思っていても)

ことり(今を享受してしまう。海未ちゃんは繋がっていなくて、私と穂乃果ちゃんが繋がっているこの状況に優越感と満足を覚えてしまう)

ことり(こんな醜い感情、消したい。でも、消したくない。この快楽に溺れていたいと感じる)

ことり(…やっぱり私、ダメな人間だ。穂乃果ちゃんに嫌われても仕方がない、海未ちゃんに失礼なくらいの…)

148: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:30:34.03 ID:/pQaLYhzo
ことり「…あっ」ガタンッ

ことり(回想に夢中になっていたせいか、ミシンの針はしつけをした場所から見当違いのところに外れ)

ことり(大きく縫い直すことになってしまいました)

ことり「…す、すみません。えと、ハサミは…」

ことり(でもやっぱり、私はどうするべきなのか、考えても考えても、一向に答えは出ません)

ことり(私はあの日からずっと、変わらないように、そう考えてここまで来ました)

ことり(これ以上、絶望的な状況にならないように慎重に、変えないように歩んできました)

ことり(けれど、変わりたい。今のままの自分は嫌…。海未ちゃんを無意識に虐げているような私に、吐き気がします)

ことり(でも、どう変わればいいの?どうすれば私は…)

ことり(結局、堂々巡り。これじゃあ、いくら考えても答えが出てこないに決まってます)

ことり(そしていつも最後には、保留という、楽な逃げ道を選んでしまっている)

ことり(だから今日も、穂乃果ちゃんと一緒に下校する。もちろん、海未ちゃんには、ないしょ)

放課後

下校道

穂乃果「…」スタスタ

ことり「…」スタスタ

ことり(ほとんど無言で帰る下校道。まるで厳格な旦那様に付き従うメイドさん?それとも…)

ことり(…はぁ。やめよう。また、いやらしい考えが脳裏をよぎりましたから)

ことり「ね、穂乃果ちゃん…」

穂乃果「…なに?ことりちゃん」

ことり「…うぅん。なんでもない。疲れてるもんね。あまり話したくないでしょ?」

穂乃果「うん。気を使わせてごめん」

ことり「…平気だよ」

ことり(だって私は、ことりちゃん、と穂乃果ちゃんに呼ばれたかった、それだけだから)

ことり(さすがにそんな本音は明かせないけど)

ことり(でもこうして穂乃果ちゃんといるうちにどんどん、引き寄せられている自分がいるのです)

ことり(変わる、より、変わらない、を選ぼうとする私に、気づいてしまうんです)

149: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:31:12.00 ID:/pQaLYhzo

海未の部屋

海未「えぇとですね、だからそこは…」

真姫『そうじゃなくって…、えーっと…』

海未「いえ、ですからこれがこうなると乙女の複雑な心境というものが浮き彫りに…」

真姫『複雑すぎてストーカーにしか見えないって言ってんの!ドン引きされるわよこんな歌詞じゃ!』

海未「お、おかしいですね…。改良しているはずなのにどんどん深みにはまっていく…」

真姫『これはもはや性格の問題なのかしら…。…あっちの海未はこんなのじゃないはずなのに』

海未「…はい?何か言いましたか?」

真姫『な、なんでもないから。けどさすがにこれはこのままじゃ使えない。明日もまた、話し合うわよ』

海未「はぁ…。わかりました…。難しいのですね、作詞というものは」

真姫『大丈夫。海未ならすぐマスターするわ。私を信じなさい』

海未「脅迫されている人にそういわれても全く信頼できませんが…、ひとまずは信じておきましょう」

海未「それでは、今日はこれで」

真姫『えぇ。また明日ね』

ピッ

海未「…作詞、ですか。どうしてなかなか、奥が深い」

海未「ふふ…、今日もまた遅くまで起きる必要がありそうですね」

海未「…おや?今私、笑った?」

海未「意外と、楽しんでいるということでしょうか。…不思議なものですね。半ば強制的にやらされていることのはずなんですが」

海未「まぁ、いいでしょう。それならそれで、驚くほどのものを提出して、真姫に目に物を見せるだけのこと、です」

海未「…」バサッ カキカキ…

海未「…そういえば、何かを忘れているような気が」

海未「いえ、今は作詞に集中しましょう。えっと…じゃあここはこういう表現なんて…」カキカキ…

ことりの部屋

ことり「もぐもぐ…」

ことり「…海未ちゃん、電話遅いなぁ。いつもならとっくに穂乃果ちゃんのこと、聞きに来るはずなのに」

ことり「もう寝ちゃったのかなぁ…もぐもぐ…、うぷっ…」

ことり「う、うぅ…。ちょっとお饅頭多く買いすぎちゃったかも…、一人じゃ食べきれないよぉ…」

ことり(でも、海未ちゃんや真姫ちゃんたちに渡したら、海未ちゃんに私が穂むらに行ったってバレちゃうし…)

ことり(そうなると、穂乃果ちゃんと下校してたって事実も知られるかもしれないから…)

ことり(そうだ、生徒会関係の人なら穂乃果ちゃんに憧れてると思うし、素直に受け取ってくれるかも)

ことり「…明日の朝、生徒会の人におすそ分けしよう。…げぷっ」

150: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:31:56.16 ID:/pQaLYhzo
翌日 朝

UTX学院 生徒会室前

ことり(今日は早めに来て、生徒会にお饅頭のおすそ分けをしに来ました)

ことり(この時間なら穂乃果ちゃんはアイドルのほうで朝練してるはずだから、生徒会室にはいないだろうし)

ことり(自分のお店で買っていってもらったものを、他の人に食べきれなかったと譲っているのを見るのは、あまり気分のいいものじゃないかな、って配慮してのものでした)

ことり(問題はこの時間に生徒会役員がいるのかどうかだけど…、ま、でも一人くらいいるでしょ!)

ガララッ…

ことり「失礼しまぁす…。お饅頭の…」

希「ほよっ!?」

ことり「あ、あれ…?」

ことり(ぜ、前生徒会長の…東條先輩?だったっけ…?)

ことり(どうして生徒会を引退したはずの東條先輩がここに…)

希「え、えっと君は…?どちら様?」

ことり「あ、私は…その、穂乃果ちゃ…生徒会長の友人の南ことり、って言います」

希「南…、あぁ!園田海未さんの件の子?」

ことり「えっ…!?海未ちゃんのこと、知ってるんですか…?」

希「うん、まぁね!問題のある子のことは一通り覚えてるんよ!あ、今は『あった子』かな」

ことり「は、はぁ…」

希「それで今日は…、おや?その手に持ってる袋…、くんくん、甘い香りがするね」

ことり「あ、わかります?これ、お饅頭をおすそ分け…」

希「お饅頭!?ちょうだい!」

ことり「えっ…」

希「うちお饅頭好きなんよ!もしかして穂むらの!?うっわー!大好物やん!」

希「いいでしょ?どうせおすそ分けなんやし、うちに全部頂戴!」

ことり「え、い、いいですけど…はい」ススッ

希「んー!ありがと!」

ことり(…変な人だなぁ。真姫ちゃんに負けず劣らず)

ことり「えと、それじゃあ私これで…」

希「おっとちょいまち」

ことり「…な、なんでですか?私もう用事は済んで…」

希「南さん。あなた…悩み事があるでしょ?それも、相当深刻な」

ことり「んなっ…!?ど、どうしてわかるんですか…!?」

希「…それはうちが、泣く子も黙る、元生徒会長サマ、だからかな」

151: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:32:46.38 ID:/pQaLYhzo
希「ほらー、なんか悩みがあるんやったら気にせずうちに相談していいんよ?」

ことり「え、えぇ…。いきなりそんなこと言われてもぉ…」

ことり(ほぼ初対面の上級生に相談事は少し気が引けるし…)

ことり「…結構です。これは、自分で決めないといけないことだから」

ことり「誰かに選択を委ねるようなことはしたくないんです」

希「んー…、うちは、あーしろ、こうすればいい、って言うつもりはないよ?」

ことり「え…?」

希「相談してくれれば、南さんとは違う目線で物事を見ることが出来るかも知れないから」

希「視点が変われば選択の幅も増えるかも。これならどうかな?」

ことり「…」

希「自分で決めないと、って言ってたけど、本当に一人で決めるのは勇気がいることやと思うんよ」

希「…ね?うちの胸を借りると思って、気軽に相談してみいひん?」

ことり「…わかりました。その、少しだけなら」

希「うふ、おっけー。頼ってくれてありがと。じゃ、ここにいつまでもおるのもなんやし…」

食堂

希「むふー、美味しそう…!いただきまー…はむっ!んんー!うまうまー!」

ことり「…」

希「この餡子の舌触りが滑らかでさっぱりとした甘みもあって…、たまらんっ!」

希「…っと、ごめんごめん。ついお饅頭に夢中に…。で、どんなことに悩んでるん?」

ことり「え、えっと…」

ことり(相談してみるとは決めてみたものの、どう説明していいのか悩みます)

ことり(真姫ちゃんからアイドルに誘われた、って正直に言うと、色々と説明がややこしそうだし…)

ことり「私、今A-RISE候補生の服飾の仕事を担当してまして…」

ことり「だけど、えぇと…、友人からその、また別のことにも誘われて、そうすると服飾の仕事を抜ける羽目になりそうなんです」

ことり「それで、どっちを選ぼうか、とても迷ってて…」

希「ふぅん…。単純に、自分の好きな方を選ぶんじゃダメなの?…ダメなんやろうね、その調子やと」

ことり「…はい」

希「その理由は言える?」

ことり「私、このままA-RISE候補生の服飾を続けるのも、ちょっと良くないって思ってて…」

ことり「だからこの機会に服飾を辞めて、別の道を探ろう、自分を変えてみよう、って思ったりもしてるんです」

ことり「…けど、今のまま、変わらずにいることも…捨てがたいんです。居心地がいい、っていうのかな…」

ことり「でもそれは同時に、私の親友にないものを得て優越感に浸っている感じがして、とても嫌で…」

ことり「だけど変わってしまえば…、今充足しているものを捨ててしまうことになって…」

ことり「…どちらを選んでも何かを捨てることになってしまって、それで悩んでるんです」

希「…ほうほう」

152: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:33:34.54 ID:/pQaLYhzo
希「うぅんー、難しいねー」

ことり「…やっぱり、そうですよね」

希「南さんは、変わりたい、って思ってるんよね?」

ことり「え、あ…、はい。今の自分は、とても嫌だから」

ことり「けど変わるための一歩を踏み出すのが、その…怖くて」

希「…そう。変わりたい、か…」

希「そういえばね、昨日も…うちの同居人に似たようなこと聞かれてんよ」

ことり「同居人?え、誰かと同棲してるんですか…?」

希「うふ。まぁね。ラブラブなんよー」

ことり「…!」

希「なんて冗談やけど。ちょっとした事情で家に帰れない子を匿ってるだけよ」

ことり「そ、そうなんですか…」

希「うふふ、でも可愛いいい子なんよー。で、その子もちょうど君みたいな子を知ってる、って言ってた」

希「どうしてもグループに誘いたい子がいるんだけど、事情があって誘うかどうかを悩んでる、やったけね」

ことり「え、すごい…。私と本当に似てる…」

希「その時、うちは『きっかけを与えて、その子が変わりたいと思ったなら答えがそのうち見つかる』って言ったんやけど…」

希「…意外と、そうはいかないんかもね。南さん見てると、そう思ったんよ」

ことり「私を?」

希「うん。簡単に言うけど、『変わる』ってすごい難しいことやと思う」

希「ただ何か行動を起こすだけじゃ本当に変われるかなんて分からないし、今足りてるものすらなくなってしまうかもしれないんやしね」

ことり「…はい」

希「進む方向、目指す方向が何か分からずに変わる、っていうのは…、勇気がいることやものね」

希「うちも昔…、似たようなことがあったからよくわかるわ」

ことり「東條先輩も?」

希「ん。変わりたい、変わりたいってずっと思ってた挙句に…」

希「うちの思ってた方向とは全然別のところに、変わってしまった話」

希「ただ闇雲に変化を求めるだけじゃ、それが本当に正しいものか、判断を見失ってしまう」

希「おかげでうちは…、かけがえのないものを失っちゃったから」

ことり「…っ。かけがえのない、もの…」

希「南さんも、もし変わりたい、と思う先に、かけがえのないものを失う未来があるなら」

希「安易に道を選んじゃダメやと思うんよ」

ことり「…じゃあ」

ことり「じゃあやっぱり…、このまま…」

ことり「…変わり続けない方が、いいってことですか」

153: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:34:52.76 ID:/pQaLYhzo
希「違う違う!」

ことり「えっ…」

希「南さん、よーく考えて」

希「『変わらない』っていうのは、停滞じゃないんよ」

希「それも立派な選択。南さんは今、『変わる』と『変わらない』の分かれ道に立たされてる」

希「うちはこの分かれ道を選ぶのを、慎重にならないとダメ、って言ったの」

ことり「『変わらない』も、選択…」

希「そう。もうひとつの道があるなら、それは分かれ道。まっすぐ進むことは一つの道を捨てること」

希「今まで歩いてきた道にも、気づかないくらいたーくさんの道があったはずよ」

ことり「だ、だったら…。立ち止まることって、できないんですか…?」

ことり「私が立ち止まってると思ってることは、…無意識に一つの道を選んでる、ってこと?」

希「せやよ。だって時間は進み続けるものだから」

希「うちがご飯を食べるか食べないか迷ってて、何日も迷い続けたら死んじゃうのと同じ」

希「必然的に食べないを選んじゃってるから、ってことやね」

ことり「早く選ばないと、後戻りができなくなっちゃう…?」

希「そういうこと。何にでも言えることやけどね」

ことり「…」

希「慎重に、けれども立ち止れる時間はない。一度選べば、引き返せない」

希「人生の選択っていうのは、だからこそ恐ろしいものがあるよね」

ことり「…でも、無理だよ…。そんなの…」

ことり「短い時間で、どちらかを選ぶなんて…」

希「うん。だけど…それも違うよ」

ことり「…え?」

希「どちらか、じゃない」

希「南さんには、もう一つ道があるでしょう?」

ことり「もう一つの…道?」

希「今まで歩んできた道、その中で選んだ道、選ばなかった道」

希「後ろを振り返れば、自分の歩いてきた軌跡が広がっている」

希「辿り直すことはできないけど、でもそれは自分の歩み続ける道の大きなヒントになる」

希「もう一度、一から考えてみて。ことりちゃん」

希「今自分が選択しようとしているのは、『何から変わる』道なのか『何から変わらない』道なのか」

希「そうすれば、今とは違う風景も見えてくるかも知れんよ?」

ことり「今とは違う、風景…」

希「…うちに言えるのはここまで。あとは…、ことりちゃん次第かな」

希「じゃ、うちはこれで。お饅頭ありがとね」スタスタ…

ことり「あっ…」

ことり「…お饅頭、結局全部食べちゃった。いつの間にかことりちゃん呼びになってるし…」

154: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:35:40.61 ID:/pQaLYhzo
授業中

二年教室

ことり「…」

(希「もう一度、一から考えてみて。ことりちゃん」)

(希「今自分が選択しようとしているのは、『何から変わる』道なのか『何から変わらない』道なのか」)

(希「そうすれば、今とは違う風景も見えてくるかも知れんよ?」)

ことり(一から考える…。私が何から変わりたいのか、何から変わりたくないのか)

ことり(変わりたいのは、自分)

ことり(穂乃果ちゃんと一緒に居られることに満足している自分、海未ちゃんにはないものを持っている優越感に浸る自分)

ことり(そんなことを考えてしまう醜い私を、変えたい)

ことり(穂乃果ちゃんとのしがらみをゼロにして、別の道を歩みたい)

ことり(変わりたくないのは、今)

ことり(穂乃果ちゃんと居られるこの状況から、抜け出したくない)

ことり(ずっとずっと前から変わらないよう、守ってきた細い、薄い絆…)

ことり(やっと、名前を呼んでもらえるくらいには戻ってきたこの絆を、捨てたくない…!)

ことり「…はぁ」

ことり(やっぱり、思い返しても)

ことり(どちらも捨て難いほどの価値があるように思えます)

ことり(新しい風景なんて、私には見えてこないよ…)

ことり(…それとも、私の考え方がダメなのかな)

ことり(一から…。それってどれくらいの一?)

ことり(それこそ、本当に最初の最初なのだとしたら…)

ことり(私たち3人が出会ったあの公園のところから?)

ことり(でも、それももう曖昧かも)

ことり(3人で一緒に遊んで、ただ楽しかった)

ことり(そういう記憶が、うっすらと残っているだけ)

ことり(なにも考えずに、夕暮れを見ながら遊んだ記憶が…)

ことり「…ふふ」

ことり(曖昧な記憶だったはずなのに、その頃の楽しさがすぐ目の前に迫ってきたかのように)

ことり(私は微笑んでしまいました)

ことり(そして、その時)

ことり(気づいたのです。見えてしまったんです)

ことり(今まで見えなかった、分かれ道の風景)

ことり(『変わりたくない』道は、『今』だけじゃない、ってことに)

155: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:36:18.06 ID:/pQaLYhzo
ことり「あっ…!」

ことり(ずっとずっと守ってきた、変わらない今)

ことり(でもそれは…既に変わってしまった後の絆)

ことり(求めるなら、もっと前)

ことり(そう、こんな小さな頃から変わらなかった『今』を)

ことり(去年の秋頃までずっと続いていた『今』を)

ことり(どうして私は求めようとしなかったのでしょう)

ことり(必死の思いで紡いできた、今にも消えそうな弱々しい絆よりも)

ことり(それまで当たり前のように存在していた、煌々しいまでに輝いていた、3人の絆を)

ことり(私は、自然と選択肢から外していたということに)

ことり(今の今まで、気づきませんでした)

ことり「…だけど、それは」

ことり(だけどそれは)

ことり(きっと変わるより、何倍も何倍も大変なことだと思います)

ことり(あの頃を、取り戻したい)

ことり(幾度も胸を揺らし、そして感じなかったことにした渇望)

ことり(今までそうしてきたのは、それができるならどれだけいいかと)

ことり(挑戦する勇気もなく、諦めてきたから)

ことり(きっと奇跡でも起きなければ、あの頃を取り戻すことなど不可能だと思っていたから)

ことり(…いえ、今でもそうでしょう)

ことり(既に変わってしまったものを、変わって欲しくないなんて)

ことり(やっぱり、馬鹿げてる、よね)

ことり「…」

ことり(一度は見えた、新しい景色)

ことり(けどそれは…、理想郷に過ぎないものでした)

ことり(どこまで手を伸ばしても掴めない景色なら、いっそ見えない方がよかったかもしれない)

ことり(…また、考え直しかなぁ)

156: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:38:11.31 ID:/pQaLYhzo
放課後

二年教室

ことり「えと、今日は…」

ことり(今日は衣装の作成はお休みです。だから放課後はまるまる空いちゃうんだけど…)

ことり(だけどアイドル専攻はあるし、穂乃果ちゃんが終わるのを待つのも…)

ことり「…なにもないのに待ってたら、逆に気持ち悪がられるよね」

ことり「いいや。一人で帰ろっと…よいしょっ…」ガサッ

ことり「…あれ?」

ことり(持ってきたお饅頭の空き箱を持って帰ろうとした時に感じた違和感)

ことり(ちょっとだけ…重い?)

ことり「空のはずなのに…、何か入ってるのかな…?」パカッ

ことり「あれ?これって…写真?」

ことり(小さな写真立てが、空箱の中に入ってました)

ことり(誰のだろう…?そう思って見たその写真には…)

ことり「あ!東條先輩!」

ことり(あの東條先輩が、おそらく同級生数名と一緒に写っていました)

ことり(そしてその後ろには何故か…A-RISEも)

ことり(しかもこれって、先代のA-RISE?先代のA-RISEと今のA-RISEと一緒に東條先輩が写ってるって…)

ことり(あの人、一体どういう…?生徒会長だから、なのかな…?)

ことり「で、でもこれ…。多分大切なものだよね…?いつ紛れ込んじゃったんだろう…」

ことり「お饅頭を食べてる時に箱に入れちゃってそのまま?うっかりさんだなぁ…」

ことり(うっかり具合ではうちの海未ちゃんに遅れを取らないかもしれません)

ことり「ってそれは言いすぎかな…。でもちゃんと返さないと…」

ことり(とりあえず今日の放課後は、東條先輩に写真を返すので埋まりそうです)

157: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:39:09.02 ID:/pQaLYhzo
ことり(急いで3年生の教室に来たはいいものの)

ことり(どこが東條先輩の教室かわからない!)

ことり(下校したり部活に行ったりする人も多くて人ごみでめちゃくちゃで…)

ことり(いろんな人に聞きまわって教室を見つけた時にはもう東條先輩はいなくて)

ことり(どこか行き先に心当たりはないかと教室にいた人に訪ねて帰ってきた答えが…)

下校道

ことり「…神田明神?」

ことり「どうしてそんなところに…。まぁ、近いからいいんだけど」

ことり(もしここまで行っていなかったらもうどうしようもありません)

ことり(普通に家に帰るつもりが、ここに至るまでで結構なスペクタクルに…)

ことり「…海未ちゃんならどうなっていたことか」

ことり(今日の私みたく、人を探すのに奔走なんてしてたら…)

ことり(もし今の海未ちゃんなら…、泣いているかもしれません)

ことり(心の病気から回復したとは言え、今でも他人とまともに話すことができない後遺症は少し続いてるし)

ことり(それに、私と話していても滅多に笑ってくれなったし…)

ことり(変なボケとかたまーにかましたりするのに…)

ことり(…バイトはある意味で振り切ってるらしいけど)

ことり「…っと。着いた着いた。ここで何やってるのかなぁ…?」

ことり「って、あれ…。あれって…」

花陽「はぁっ…!はぁっ…!!ひぃぃ…」スッタッタッタッ…

ことり「あ、花陽ちゃん。階段を往復してる…」

ことり「あ!もしかして…。アイドルの練習ってここでやってるの…!?」

ことり「そっかそっか…。公式な部活じゃないから部室とかもないし…」

ことり「大変なんだなー。ふふ、そういえば一度は見学に来てもいいよね。どんなところかも見ておきたいし…」

ことり(花陽ちゃんが階段を駆け上っていったところをバレないように死角からついていき、すぐに物陰に隠れました)

ことり(ここで真姫ちゃんと花陽ちゃんが練習…、あ、あそこ…。海未ちゃんもいるんだ)

ことり(ふふ、海未ちゃんが作詞だなんて…。ちゃんとできてるのかなー?)

ことり(好奇心と、ちょっとの嗜虐心で覗いた真姫ちゃんと海未ちゃんの会話)

ことり(でも、そこにいたのは…)

158: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:40:11.43 ID:/pQaLYhzo
海未「…!」

真姫「うん、うんうん…!いいじゃない!」

海未「ほ、本当ですか!?」

真姫「えぇ、最高!これならかなり可愛い感じのラブソングになると思う!やったわね!」

海未「はいっ!やりましたっ!!やりましたよっ!!」ギュッ

花陽「ふえぇえぇっ!!?ご、ごめんなさい今疲れて…」

海未「知りませんっ!あははは!あなたたちの歌う曲ができましたっ!やっとです!」ブンブンッ

花陽「ひゃぁぁっ…!!そんなに振り回さないでぇぇぇぇぇぇぇ…」

海未「だっていきなり任されて苦労したんですよっ!?でもようやく完成っ…!」

海未「なんだか…満たされたって感じがします!!こんな気持ち、久々です…!!」

真姫「ふふ、ならよかった。あなたを選んで正解だったわ」

海未「ありがとうございますっ!ふふふ…、よかった…」ギューッ

花陽「だ、抱きしめないでぇぇぇぇ…、ぐるじぃぃぃぃぃぃぃ…」

ことり(信じられないものを目にした気分でした)

ことり(…海未ちゃんが笑っている)

ことり(数日前に知り合った人と一緒に、笑ってる…!?)

ことり(あの、海未ちゃんがっ…!?)

ことり(正直私は、海未ちゃんは作詞をするにしてもメールとかでやり取りするものだと思ってたから)

ことり(今そこに、花陽ちゃんが練習している隣にいることにも少し驚いたんだけど)

ことり(でもまさか…一時は何度も自殺までしようとした海未ちゃんが)

ことり(あぁやって、笑えるように、なったなん、てっ…!!)

ことり「…っ!!」

ことり(声が出そうになったのを手で抑え我慢しました。でも…)

ことり(目から溢れ出る涙は止められそうにありませんでした)

ことり(よかったね、よかったねって、心の中でずっと海未ちゃんの頭を撫でてるつもりで祝福して)

ことり(自分のことのように嬉しくなって、神社の端で丸まって、声を殺して泣き続けました)

ことり(あの頃の海未ちゃんに、また会えたようで…)

ことり「…あの、頃…?」

ことり(そう、あの頃)

ことり(小さな子供の時から、去年の秋までの、海未ちゃんに)

ことり(もう二度と、戻ることのできないと思っていた過去からの海未ちゃんに、もう一度)

ことり(会うことが、できた)

ことり(起こらないと諦めていた奇跡が、今、ここで)

ことり(起きていたんです)

159: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:40:45.22 ID:/pQaLYhzo
ことり(小さかった頃の海未ちゃんは臆病で)

ことり(何かあるとすぐ、泣きべそをかいていましたね)

ことり(そんな時、手を伸ばしてあげたのが、穂乃果ちゃんでした)

ことり(私は隣で心配そうに見てただけだったけど、海未ちゃんはそれだけですぐに笑顔になれたんだったよね)

ことり(穂乃果ちゃんに聞いたことがあったっけ)

ことり(どうして海未ちゃんを誘ってあげたの?って)

ことり(寂しそうにしてたから見かねて、とか、そういう答えが帰ってくるのかなって思ってたら)

穂乃果「理由なんてないよ!友達になりたいって思ったからなったの!」

穂乃果「それで、その子も友達になりたい!って思ってそうだったから、すぐに友達になれると思ったの!」

ことり(そうだよね。友達になるのに、理由なんていらないよね)

ことり(友達になりたいから、友達になるの)

ことり(いままでずーっとずっと、それを変わらずに続けてきたんじゃない)

ことり(何が、難しいことがあるのかな)

ことり(奇跡なんて、必要ないんだよね)

ことり(だったら――――)

神田明神

希「おー、みんなやってるー?」

真姫「希っ!珍しいわね」

希「んふー、せやろー?今日は久々に美味しいもの食べたから上機嫌でねー」

希「みんなにも味わってもらおうと差し入れ!はいこれ!」

花陽「わぁぁ…!お饅頭ですか!?」

希「うん、これ美味しいんよ!食べてみて!!」

海未「穂むらのお饅頭…」

希「あ、海未ちゃんは確か穂乃果ちゃんの知り合い、やったんやったっけ…?」

海未「…そ、そうですね。友達、でした」

海未「だけど、久々です。…はむっ…」

海未「…うん、美味しい。美味しいです…」

希「それはよかった…ん?あれって…」スタスタ…

希「…うちの写真?なんでこんなところに落ちて…」

真姫「んー?どうしたのー?希の分、食べちゃうわよー?」

希「あぁぁぁっ!!あかんっ!!食べたら突き落とすからねっ!」

花陽「…こ、怖いです」

160: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:41:23.60 ID:/pQaLYhzo
翌日

放課後

多目的室

「…じゃあ今日の練習はこれでおしまい。各自家に帰ってしっかりと休憩を取るように」

穂乃果「…はぁ、…んぐっ…、ごく、ごく…。ぷはぁっ…」

凛「お疲れ様でしたー、穂乃果せんぱーい」タッタカター

穂乃果「ん、お疲れ様…。凛ちゃんは元気だね」

凛「この程度どってことないにゃー!じゃ、さよならー」

にこ「…元気ね、あいつ」

穂乃果「そうだね…ん?」

ことり「…あ、終わった?」

穂乃果「ことりちゃん…。今日は早いね、衣装作り」

ことり「ん?あー…、まぁね」

ことり「それでー…終わったなら、一緒に帰ろ?」

ロッカー前

穂乃果「…よっと」ガチャッ

ことり「靴、履けた?」

穂乃果「うん、じゃあ、帰ろうか」

ことり「…うん」

スタスタ…

穂乃果「…」

ことり「ね、穂乃果ちゃん?」

穂乃果「何?」

ことり「どうして私のこと…、もう一度、ことりちゃん、って呼んでくれるようになったの?」

ことり「友達、だから?」

穂乃果「…そうだよ?」

ことり「そっか。じゃあどうして…もう一度友達になってくれたの?」

穂乃果「そんなの、簡単だよ」

穂乃果「先輩が、サポートメンバーのみんなは大切にしなさい、って言ってたから」

穂乃果「だからことりちゃんは、大切な友達なんだ」

ことり「…そっか」

ことり「そう、だよね」

穂乃果「…うん」

161: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:41:56.13 ID:/pQaLYhzo
UTX学院 玄関

スタスタ…

穂乃果「…あれ」

ことり「…」

花陽「えっ…!?!」

海未「なっ…」

真姫「…穂乃果」

穂乃果「真姫ちゃん、花陽ちゃん。…それに、園田さん」

海未「穂乃、果…」

穂乃果「もしかして…出待ち?ダメだよ、規則違反。私がA-RISE候補生と言えどもそういう行為は…」

真姫「違うわ」

穂乃果「…え?」

真姫「呼ばれて待ってたのよ。そこの…ことりにね」

穂乃果「…ことりちゃんに?」

真姫「えぇ、この時間、この場所で待っててって」

穂乃果「それ、本当?どうして出待ちを助長するような…」

ことり「穂乃果ちゃん」

ことり「私、A-RISEの衣装やめる」

ことり「それで、この子たちが他のスクールアイドルやるから」

ことり「そっちの衣装を担当することに、決めたの」

162: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:42:39.12 ID:/pQaLYhzo
穂乃果「…っ!」

花陽「え、えぇぇっ!!?ど、どどど…」

海未「どうしてっ!!?」

穂乃果「スクール、アイドル…?」

ことり「うん。やるんだって。真姫ちゃんと花陽ちゃんが」

ことり「それで、海未ちゃんは作詞を担当してるの」

ことり「真姫ちゃんから衣装やらない?って言われたから、衣装やることにしたの」

ことり「それが伝えたかった」

穂乃果「…」

ことり「もう、これで穂乃果ちゃんとは何の関係もなくなっちゃったね」

ことり「だってもう私、サポートメンバーじゃないから」

ことり「辞表も提出してきました」

ことり「これで…もう友達じゃなくなっちゃった」

海未「な、なぜですかことりっ!!どうして穂乃果と分かれるような決断を…っ!!」

真姫「変わるのを、選択したってこと…?」

ことり「…うぅん。違う」

ことり「私は…変わりたくない」

ことり「変わりたくないからこそ、私は今のままじゃダメなんだって思った」

ことり「私が変えたくなかった今は、もう変わってしまった今だったから」

ことり「私が本当に変えたくなかったのは」

ことり「あの日、夕焼けが見える公園で三人一緒に遊んだ光景」

ことり「あの頃からずっと続いてた日々」

ことり「それをもう一度やり直すために」

ことり「今度は…私から海未ちゃんと友達になるんだ」

海未「っ!こ、ことり…!」

ことり「今のまま続けても、戻ってこないなら」

ことり「もう一度スタート地点からやり直すの」

ことり「遠すぎて手が届かないと諦めていた『今』を、もう一度…手に入れるために」

163: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:43:27.81 ID:/pQaLYhzo
穂乃果「…」

ことり「それでね。私…」

ことり「…真姫ちゃん!」

真姫「うぇっ!?な、なによ…」

ことり「…スクールアイドルも、一緒にやってみていい、かな?」

真姫「え、えぇっ!!?」

海未「ことりも、スクールアイドルを…!?」

花陽「やるんですかっ!!?」

ことり「うん。…ダメ?」

真姫「い、いや…、いいわよ。むしろ大歓迎、だけど…」

穂乃果「…」

ことり「これで、同じだね」

ことり「全てが変わってしまった、穂乃果ちゃんがアイドルになった日」

ことり「変わらない日から、変わる日へのスタート地点」

ことり「私は今、そこに立ったの」

ことり「最初からやり直すなら、私もここに立たないと」

ことり「一年、周回遅れだけど」

ことり「絶対に追いついてみせるから」

ことり「絶対に、追い越してやるから」

ことり「覚悟しててよね、穂乃果ちゃん」

穂乃果「…そう」

穂乃果「つまり、『南さん』は…敵だってことだね」

ことり「そう、だよ」

穂乃果「なら、いいよ。それで」

ことり「それでね、穂乃果ちゃ…」

穂乃果「さよなら」

スタスタ…

穂乃果「…」スタスタ…

海未「…っ」

ことり「…」

ことり「…また、友達になりたい、って思ったときは」

ことり「友達になりたい、って思ってくれたときは」

ことり「もう一回、友達になろうね」

164: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:44:12.88 ID:/pQaLYhzo
花陽「あ、高坂せんぱ…」

真姫「…今はやめなさい」

ことり「…」

海未「こ、ことり…」

真姫「よかったの?本当に」

真姫「…まだ一日、あったじゃない。週末まで」

ことり「うぅん。いいの」

ことり「だって…見ちゃったから」

海未「なにを、ですか…?」

ことり「…海未ちゃんが、笑ってるとこ…」

ことり「それ、見ちゃったら…、いままで、海未ちゃんのこと、笑ってた自分が…」

ことり「恥ずかしくてどうしようもなくって…、だから、だから…!!」

ことり「ごめんねぇぇっ…!!海未ちゃんっ!!海未ちゃぁぁぁんっ!!!うぎゅぅうっっ!!!うわぁああぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!!」

海未「こ、ことりっ!!?どうしたんですか!?わ、笑ってたって何を…」

ことり「嘘付いてたのっ!!私っ、馬鹿だからぁぁっ!!!海未ちゃんに黙ってぇぇぇぇぇぇぇ…!!」

ことり「友達なのに、なのにぃぃぃぃぃ…!!うああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁあぁぁぁぁぁあ……!!!!」

海未「ぁ…」

海未「ふふ、仕方ないですね、ことりは…。甘えん坊、なんですから…」

海未「いいんですよ。ことり…。こうやって、そばにいてくれるだけで」

海未「私は、誰よりも救われるのですから…」ギュッ

ことり「海未ぢゃあぁぁぁぁぁぁぁ…!!!うあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁ…!!!ごべんねぇぇぇぇぇ…!!ごめんんん…!!」

海未「もう…、可愛い顔がぐちゃぐちゃですよ…?ぐずっ…、ホント、バカなんですから…」

海未「穂乃果に負けず劣らず、大バカです…。うぅっ…ずずっ…!」

花陽「…よかったね、真姫ちゃん。ことり先輩、心のわだかまりが取れたみたいで」

真姫「えぇ。やっぱり希の言ってたとおりね」

真姫「きっかけを与えれば…なんとかなるのよ」

真姫(…でも、ことりが穂乃果の前で宣戦布告してくれたおかげで)

真姫(いままでひそひそとやってたスクールアイドルの活動がついに彼女たちにも知れ渡ってしまった)

真姫(本格的に始まってしまったわね)

真姫(A-RISEとの戦いが…)

もしライブ! 第三話

おわり

165: ◆Qe7X7xrNvI 2016/05/25(水) 23:45:20.80 ID:/pQaLYhzo 
以上、3話でした 続きもまた明日のこの時間 おそらく ほなな
 

次回に続きますm(__)m

元スレ
タイトル:もしライブ! ~もしもμ’sのみんながUTX学院生だったら~ 前編
URL:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1464010883/
掲載サイト:SS速報VIP@VIPサービスに投稿されたスレッドの紹介です

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